「あらかい健康キャンプ村」に見る慢性疲労症候群(CFS)治療のヒント

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親戚からそう思われていた重篤な病気の女性が、今では、社会復帰に向け、精力的に働けるまでになりました。この女性は以前のエントリでも取り上げたことのある古村 美樹さんです。

古村さんは、阪大病院で慢性疲労症候群(CFS)と診断され、車椅子専用住宅に住んでいました。また線維筋痛症(FMS)の診断も受け、障害年金を受給していました。それなのに自分の足で歩け、働けるまでに回復したのはなぜでしょうか。こう言っています。

「一番の要因は、『あらかい村』に来たこと」 (p58)

『あらかい村』とは何でしょうか。それはわたしたち慢性疲労症候群(CFS)の患者とどのように関係していますか? このエントリでは、化学物質過敏症(CS)に関係する最新の書籍あらかい健康キャンプ村―日本初、化学物質・電磁波過敏症避難施設の誕生を紹介したいと思います。

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これはどんな本?

この本は、近年、化学物質過敏症(CS)の患者の希望となっている、あらかい健康キャンプ村について、その実態や理念、歴史、回復事例などを一冊にまとめたものです。

化学物質過敏症や電磁波過敏症は、周囲の環境により発症し、症状が悪化するため「環境病」と呼ばれています。

特に電磁波過敏症は世界的に注目されている病気で、有名な患者には元ノルウェー首相・元WHO事務局長のグロ・ハーレム・ブルントラントや、スウェーデンの巨大携帯電話会社の技術者だったパー・セガベックなどがいます。(p15-16)

スウェーデンでは公的扶助を受けられるれっきとした病気ですが、それでも療養できる公的支援施設はまだ存在していません。フランスにも市民団体next-up.orgによる避難施設がありますが、これも行政による避難施設ではありません。(p17-18)

それに対し、あらかい健康キャンプ村は、行政が運営する日本初、おそらくは世界初の避難施設として脚光を浴びています。今や日本のどんな片田舎でも電磁波や化学物質は存在しますが、あらかい村はそれらから計画的に隔離された唯一無二の避難施設なのです。(p6)

なぜこの本を手にとったか?

化学物質過敏症(CS)慢性疲労症候群(CFS)と関わりの深い病気です。わたしの友人の中には、大阪市立大学付属病院で倉恒先生に慢性疲労症候群(CFS)と診断されたものの、化学物質過敏症(CS)の治療で回復した人もいます。

化学物質過敏症(CS)、電磁波過敏症(ES)の治療に成果を挙げているあらかい健康キャンプ村について知るなら、慢性疲労症候群(CFS)の治療に役立つと考えました。

あらかい健康キャンプ村とは

あらかい村とは、標高770㍍の福島県会津高原に造られた、町営の転地療養施設です。東京都内から電車で3時間半、野岩鉄道の会津高原尾瀬口駅から車で5分のころにあります。(p6,8)

化学物質過敏症・電磁波過敏症・アトピー・アレルギーなどの患者のためのお役立ちサイト~

あらかい村の立役者となったのは、電磁波過敏症を発症した池谷純仁さんと、南会津町の当時の町長、湯田芳博さんでした。

池谷さんは2004年に無線LANの影響で電磁波過敏症を発症しました。苦悩のすえ、「化学物質や電磁波を感じること(感覚=センス)」を『メリット』として捉えたい」「『環境の21世紀』を子どもたちに残したい」と考え、21sense.com株式会社を立ち上げました。(p96)

湯田町長は池谷さんら電磁波過敏症・化学物質過敏症の患者に協力することを、「都会の悩みを南会津町が解決しろ」というメッセージとして受け止めました。「時代は失われつつあるものを求めて動く」という信念から、南会津町を、健康的で持続可能なは循環生活様式(ロハス)のブランド「エコヴィレッジ会津高原」にすることに決めました。(p117-119)

この構想は、単なる環境病発症者の避難施設を作るのではなく、町の利益を産み、町民の雇用にもつながるよう考えられていた点で画期的でした。その中核として2009年6月にオープンしたのが、「あらかい村」なのです。(p120

また農薬や化学物質に最も敏感な環境病の患者たちでも安心して食べられる野菜を、最高の安全ブランドとして売り出すことにしました。それらは「あらかい健康市場」から、全国へ宅配されています。(p131)

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病気の原因を自分の内に探す

あらかい健康キャンプ村は、オープン以降8727人が利用してきました。利用者は、化学物質過敏症(CS)のみの人が50%、電磁波過敏症(ES)も併発した人が50%です。何よりすばらしいのは、その80%が、一ヶ月から一年の滞在で、日常生活が送れるまでに回復していることです。(p10)

どのような治療がなされているのでしょうか。まず大前提として、周囲の環境や設備は環境病を発症した患者自身の五感により、徹底的に吟味されています。そして、その電磁波や化学物質の影響が極めて少ない環境で、次のようなことに力が注がれています。

(1)意識の改革

治療の基本は『体調不良になった原因や反応物を自分の外にのみ探し、病気になったことを恨むのでは、回復・克服は遅い。「この病気になってよかった。これまでの生活を改めるきっかけになった」と気づくことが回復の一歩となる』という理念です。(p11)

(2)食事

「心とからだは食べ物でつくられている。そのため、心もからだも食養生で改善する」という考えから、食事は一日二食、玄米ご飯と一汁二菜からなり、動物性食品は摂りません。(p11)

(3)運動

新陳代謝をよくし、免疫力を高め、有害物質を排出するのに運動は欠かせません。筋肉をつけて低体温を改善するのに役立ちます。(p12)

(4)生活リズム

夜21:00には完全消灯され、朝6時より順次生活が開始されます、スマートフォンやPCなどブルーライトを発する機器は締め出されていて、朝日がまぶしい環境なので、睡眠・覚醒リズムの治療になります。

慢性疲労症候群(CFS)の治療との類似点

これらの点を、慢性疲労症候群(CFS)に有効だとされる治療法と比較すると、非常に似通っているところが多くあります。

◆認知行動療法(CBT)

慢性疲労症候群(CFS)への手堅い地道な効果が証明されている認知行動療法(CBT)段階的運動療法(GET)は、自分自身の考え方のゆがみを修正し、限界をわきまえて運動する治療法です。考え方を変化させ、生活習慣を見直す点において共通しています。

慢性的な病気と闘う30のテクニック(上)

 

◆西式甲田療法

慢性疲労症候群(CFS)に効果があるとされる西式甲田療法では、病気を心身の癖ととらえます。病気は医者に治してもらうものではなく、自分で治すものであり、一日二食の玄米菜食と西式健康法の運動により、長い時間とたゆまぬ努力を傾けて治療します。

【甲田療法日記49】西式甲田療法とは?

◆栄養療法

慢性疲労症候群(CFS)では栄養状態の偏りのため、オーソモレキュラー療法が治療に用いられることがあります。オーソモレキュラー療法では、栄養のバランス血糖の調節ビタミンCの摂取が重要とされていますが、玄米菜食はこれらの条件をかなりの程度満たします。

【11/7 NHKあさイチ!】CFSに似た低血糖症とはー「ちゃんと知りたい!糖質」まとめ

 

◆共同生活による睡眠リズムの改善

小児慢性疲労症候群(CCFS)では、リハビリテーション中央病院における入院治療が効果を挙げていますが、そのポイントは少人数による共同生活と睡眠・覚醒リズムの改善です。三池先生はできれば自然豊かな場所に行くほうが前頭葉機能が回復するとも述べています。

慢性疲労症候群(CFS)では近年低温サウナ療法(和温療法)も注目されていますが、化学物質過敏症(CS)でもぬるめのお湯やサウナで解毒することが勧められています。

小児慢性疲労症候群(CCFS)とは (4)治療法ーそれぞれの立場でできること

ですから、あらかい健康キャンプ村の取り組みは、慢性疲労症候群(CFS)の治療法という観点から見ても理にかなっています。

では実際にどのような人があらかい健康キャンプ村で回復したのでしょうか。

あらかい村で回復した人たち

この本には多くの人たちの治療体験記が載せられていますが、特に慢性疲労症候群(CFS)や線維筋痛症(FMS)と関係している久田樹里さん(仮名)古村美樹さんのことを少しだけ取り上げます。

久田樹里さんの場合

1986年生まれの樹里さんは、2007年に博物館の室内の燻蒸に使われた毒性の強い薬剤に暴露し、目の玉が飛び出しそうな苦痛を感じ、のどの粘膜が傷つき、食事もできなくなりました。

2008年、あらかい村に逃げこんで来ても、地磁気を感じ、からだを細切れにバラバラにされる痛みを感じるほどでした。他の人が身に着けているほんのわずかな化学物質にも反応するため、ほとんどの人が近づくことができないほどの重症者でした。

しかしどんなに辛くても、からだを治すには食事と運動しかないと肝に銘じ、活性炭入りのマスクと酸素ボンベを持参して毎日山道を歩き、わずかに食べられる塩茹で野菜で体力をつなぎました。帰る場所がないため、雪の中でもテントを張って越冬しました。

やがて、たゆまぬ努力と多くの人の善意に満ちた援助により、玄米が食べられるようになり、ガスストーブが使えるまでになりました。そして2011年、4年ぶりに帰宅でき、本を読んだりテレビを見たりという当たり前のことが少しずつできるまでに回復したそうです。(p25-35)

古村美樹さんの場合

冒頭で紹介した1967年生まれの古村美樹さんは、1994年、26歳の時、39度の高熱が出て寝たきりになり、体中が痛くて動けない症状から、慢性疲労症候群(CFS)線維筋痛症(FMS)の診断も受けました。

2004年には化学物質過敏症と診断され、子どものころから洋裁関係の化学物質や殺虫剤に曝露してきたことに気づきました。2006年、NHK「きらっといきる」の「治る希望をつかみたい」という特集で取材された後、電磁波過敏症も判明しました。

網膜剥離を起こしたときは、医療機器により強烈なけいれんが起きるため、手術が中止され、急遽全身麻酔に切り替えられたほどでした。

ついに2009年車椅子であらかい村を訪れますが、一ヶ月間は寝たきりでした。しかし懸命にリハビリに励み、三ヶ月後には松葉杖なしで歩くことに成功しました。一年後には飛行機に乗ることができ、今年6/7のあさイチ!では回復した姿が全国に放映されました。(p44-59)

【6/7 NHK】化学物質過敏症とのたたかい―「あさイチ」から

慢性疲労症候群(CFS)の患者として学べること

あらかい健康キャンプの取り組みによって、化学物質過敏症(CS)や電磁波過敏症(ES)の患者はもちろん、慢性疲労症候群(CFS)線維筋痛症(FMS)と診断された人までが回復を遂げていることは注目に値します。

海外では、これらの病気は、中枢感作症候群(または中枢性過敏症候群:CSS)としてひとくくりにされることがあるそうです。発症の経緯は違っても、次々に合併していく傾向があるからです。小児慢性疲労症候群(CCFS)の専門家の三池先生も、初期のころからCFSは中枢神経の病気だと主張していました。

CSSは、脳の中枢神経が過敏になることで、疲労や痛み、化学物質、電磁波などの受け入れられる限界(閾値)が下がってしまい、ふつうの人なら問題がない軽い刺激が苦痛になってしまう状態をいうそうです。

もしもこの概念が正しいとすれば、慢性疲労症候群(CFS)や線維筋痛症(FMS)、化学物質過敏症(CS)は同じ病気の別の側面です。メカニズムが同じであれば、治療法もある程度共通するはずです。CFS患者があらかい村の取り組みで回復することも十分ありうるでしょう。

あらかい健康キャンプ村―日本初、化学物質・電磁波過敏症避難施設の誕生は慢性疲労症候群(CFS)のわたしたちにも回復へのヒントをもたらしてくれる優れた本です。ぜひ本書を手にとって、じっくり読んでほしいと思います。

あらかい健康キャンプ村の先進的な取り組みが成功し、CSやES、CFS、FMSに苦しむ人のため、日本各地に同様の施設が造られることを心から願っています。

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