小児慢性疲労症候群(CCFS)と起立性調節障害(OD)ー何が違うか(下)

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121204親子2のエントリは、起立性調節障害(OD)と小児慢性疲労症候群(CCFS)の違いを考察した前後編のエントリの後半です。

朝起きられないもう一つの病気「起立性調節障害(OD)にどう対処するか」というエントリで取り上げたように起立性調節障害(OD)と小児慢性疲労症候群(CCFS)には多くの共通点があります。

前半のエントリでは、この二つの病気の類似点を確認し、それぞれの専門家の意見を比べてみました。それによると、ODのほうが限定的で、症状が比較的軽い患者も含み、CCFSのほうは多彩で、重度の患者も含むといえるようです。

この後半のエントリでは、関連書籍に基づいて、それぞれの違いを具体的に考えたいと思います。

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当事者から見たCCFSとODの異なる点

わたしはCFSであると同時に、OD(特に体位性頻脈)の傾向があることが検査で分かっています。

以下に記すのは、関連書籍に基づいてはいるものの、わたしの感覚的な理解に基づくODとCCFSの違いです。専門家ではなく、一当事者としての意見であることをお含み置きのうえお読みください。

1.発症の原因

ODの場合:
思春期になると、特に前触れもなく発症することがあります。心理的ストレスや遺伝的要因の影響で発症することが多いようですが、起立性調節障害(OD)の書籍で、発症の原因を具体的に書いている箇所はほとんどありません。

CCFSの場合:
ある程度の期間にわたる共通のストレス背景があって初めて発症します。CCFSには以下のエントリで書いたような典型的な発症パターンがあるとされています。ODと違って、原因は明らかな場合が多いのです。

small小児慢性疲労症候群(CCFS)とは (3)10の原因

 

CCFSを発症した当人としては、明確な理由がわからず、なぜ学校に行けなくなったのか混乱するのですが、家族のほうは、睡眠不足症候群(BIISS)を前々から心配していることがあります。子ども自身も発症からしばらく経って、混乱期を過ぎると、何が原因だったのか理解するかもしれません。

2.発症時の症状

ODの場合:
ある程度前兆があり、たまに遅刻したり、休みが多くなったりすることに始まり、やがて学校に行けなくなります。

CCFSの場合:
不登校外来―眠育から不登校病態を理解するのp91によると、CCFSは発症が極端で、場合によっては発病期のPS3-4(ときどき学校に行けない)から、突然 極期のPS7(ほぼ寝たきり)に悪化することがあります。

3.日内変動・季節変動

ODの場合:
起立性調節障害の子どもの正しい理解と対応のp62にはこうあります。

起立性調節障害は、午前中から昼過ぎまで元気がなく無気力ですが、夜になると普段のように元気になり、バラエティー番組を見たり好きなゲームに興じて笑ったりします。

一方夜になっても活力が回復せずぐったりして、意味もなく涙を流したりイライラが強いようならうつ病の可能性が高くなります」朝は相当体調が悪そうでも、昼過ぎから夕方にかけて症状が和らぎ、夜には比較的元気になると言われています。

つまり、ODには特有の日内変動があり、夜にはほぼ健康に見えるようです。

また、同書のp101によると、春から梅雨ごろに悪くなり、秋になると軽快するという季節変動があります。

CCFSの場合:
睡眠相後退症候群(DSPS)の症状があり、ODも症状の一つとして表れうるので、ODと似た日内変動があります。不登校外来―眠育から不登校病態を理解するによると、やはり午後9時ごろが最も調子がよいという記述があります。(p139)

ただし、疲れる理由―現代人のための処方せんには、「健康群でも慢性疲労症候群にかかっているグループでも、元気はつらつ感は、日中のいかなる時期よりも朝に高かった」とあり、うつ病とは反対だとされていました。(p32)

慢性疲労症候群の症状に季節変動があるという情報は知りません。メカニズム的には、日照時間が短くなり、睡眠障害が悪化しやすい冬場のほうが体調が悪くなる可能性がああるのでは?と思いますが定かではありません。

4.睡眠障害

ODの場合:
自律神経バランスの乱れにより、起床・入眠が困難になります。

CCFSの場合
睡眠相後退症候群(DSPS)を併発することが多いようです。

不登校外来―眠育から不登校病態を理解するのp91によると、発症後すぐは一日15時間寝ていることもまれではありません。回復期に入っても、何年もの間、10時間以上の睡眠時間が続きます。

DSPSの症状について詳しくは以下のエントリをご覧ください。

small夜眠れず朝起きられない「睡眠相後退症候群(DSPS)」にどう対処するか(2)症状

 

5.症状の経過

ODの場合:
軽症の場合は学校に何とか通えます。起立性調節障害の子どもの日常生活サポートブックのp9には「軽症例では登校にほとんど支障はありませんが、重症では週1回登校するのもやっとです」と書かれています。

また予後については、朝起きられないもう一つの病気「起立性調節障害(OD)」にどう対処するか(下) に書いたように、1年後の治癒率は50%、2-3年後は70-80%とされています。

ODは思春期が終わると回復するか、軽くなることが多いので、長引く場合はCCFSや子どもの脳脊髄液減少症を疑うべきかもしれません。脳脊髄液減少症も立ち上がったときの頭痛“起立性頭痛”があるので、あながち無関係とはいえません。

詳しくはこちらの記事や、小児・若年者の起立性頭痛と脳脊髄液減少症という本をご覧ください。

その起立性調節障害は小児期発症の脳脊髄液減少症かも | いつも空が見えるから

 

CCFSの場合:
子どものCFSのPS(パフォーマンス・ステータス)のうちPS3以上で発症としますが、そのうち5-8の段階は学校に行けません。

イギリスの小児型慢性疲労症候群のうち、毎日登校できるのは11%程度で、62%は規定された全登校日数の40%以下しか登校できておらず、うち28%はまったく登校できていないという報告もあります。

予後については子どもの心身症ガイドブック不登校外来―眠育から不登校病態を理解するによると、回復に非常に時間がかかり、3-5年でようやく70%が回復します。残りの30%は引きこもり状態です。

6.検査による異常

ODの場合 :
新起立試験やフィナプレスにより異常が確認できます。

small朝起きられないもう一つの病気「起立性調節障害(OD)」にどう対処するか(下)

 

CCFSの場合:
具体的な検査でさまざまな異常が見られます。おそらく、ODの子どもでもそれらの検査で異常は確認できますが、CCFSのほうが、より広範な異常が現れるのではないかと思います。

しかし、前半のエントリで取り上げたように、典型的な不登校の時期には、起立性低血圧などの自立神経症状が消失していることもあるようです。

small小児慢性疲労症候群(CCFS)とは (2)12の症状

 

専門機関の選び方

結論として、次のように考えて専門機関を受診すれば良いのではないかと思います。

1.立ちくらみ、失神などOD特有の症状が目立つ場合
2.軽いOD以外の症状がない軽症の場合

→起立性調節障害(OD)の専門機関を受診する

3.OD特有の症状に加え、過眠型睡眠障害や強い疲労・痛みなど幅広い症状が見られる場合
4.OD特有の立ちくらみなどがあまり見られないのに、過眠型睡眠障害や疲労・痛み、思考力の低下が見られる場合
5.学校にまったく行けず、日常生活すらままならない重症の場合

→慢性疲労症候群(CFS)の専門機関を受診する

大切なのは、保護者や患者本人が、起立性調節障害(OD)と小児慢性疲労症候群(CCFS)、睡眠相後退症候群(DSPS)をはじめ、似ている病気についてよく調べ、理解しておくことだと思います。

一般の検査でわかりにくいため、家族が知っておくべき他の類似疾患としては、ほんの一例ですが以下のようなものがあります。

◆交通事故などがきっかけ→子どもの脳脊髄液減少症(きっかけが不明な場合もある)
◆化学物質がきっかけ→シックハウスやシックスクールなどの化学物質過敏症(CS)
◆痛みが強い→若年性線維筋痛症(FMS)

これは非常に大ざっぱな分け方にすぎないので、よく調査するようお勧めします。その他の病気については以下のエントリで紹介した本も参考になります。

smallあまり知られていない優れたCFSの本(2)子どもの心身症ガイドブック

思春期に何が生じるか

ODとCCFSさらにDSPS(睡眠相後退症候群)には共通点が多く、まったく無関係とは思えません。いずれも思春期の不安定な時期に発症しやすく、睡眠・覚醒、深部体温、内分泌のいずれかのサーカディアンリズム障害を伴い、重症の場合は日常生活が困難になるという点で共通しています。

わたしの理解では、もしかすると身体のシステムが発達途上にある思春期に、どのシステムがどれほど破綻するかによってこれらの違いが生まれるのかもしれない、と思います。

それぞれは連続した病態であり、起立性調節障害というアラームの時点で適切な対処をしないと不登校(慢性疲労症候群)になるのかもしれません。

いずれにせよ、どの病気も思春期の多感な時期に発症するなので、子どもにとっては、アイデンティティが根こそぎひっくり返されるような、極めて危機的な試練になります。このブログの情報が、困難な病気に勇敢に立ち向かう家族にとって役立つことを願ってやみません。

なお、このエントリでは、あえてODとCCFSの違いを考えてみましたが、症状は子どもによってさまざまです。ODとCCFSは、明確に分けることのできない連続性(スペクトラム)をもった病態だと思っています。

わたしの場合には、ODの説明よりCFSの説明のほうが、自分が感じてきた症状と近いと思ったため、そちらの治療を受けてきました。そして確かにかなり改善しました。

親の皆さんには子どもがどんなことを訴えようと真剣に耳を傾け、このブログを含めた周りの意見より、子どもの意見を、またわたしのような素人の意見ではなく専門家の意見をまず第一に尊重していただきたいと思います。

▼追記(2016年10月)
2016年3月に改定された慢性疲労症候群(CFS)の診断基準では、正式に「起立性調節障害」(OD)が慢性疲労症候群の症状のひとつであると記載されています。詳しくはこちらをご覧ください。

2016年3月に改定されたME/CFS診断基準、最近の研究でわかった7つのこと | いつも空が見えるから

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