慢性疲労症候群(CFS)を乗り越えた森崎和幸選手から学べるさらに3つのこと(下) (追記あり)

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ンフレッチェ広島の森崎和幸選手慢性疲労症候群(CFS)について書かれた「難病を乗り越えて手にした栄冠(後編)」の記事が掲載されました。この記事では特に、森崎選手の助けになった、妻の志乃さん、前任のペドロヴィッチ監督、現在の森保監督について書かれています。

このエントリでは、記事の中で語られている森崎選手の闘病生活からわたしたちが学べることを、前回の記事に引き続き、さらに3つ考えます。

【Jリーグ】引退を決意していた広島・森崎和幸を救った3人の恩人|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva|J Football

 

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森崎選手から学べるさらに3つのこと

森崎和幸選手が慢性疲労症候群(CFS)を抱えながらも、首尾よく克服してチームのJ1優勝に貢献できたのはなぜでしょうか。この後半記事からも、心に残った点を3つほどまとめておこうと思います。

1.自分を孤立させない

ひとりで考える時間が長過ぎたことが和幸の不安を一層煽(あお)った。そして、行き場のない不安に追い詰められた和幸は、空港から広島市内へ戻るバスの中で、妻へ一通のメールを送った。

「オレがサッカーを辞めるか、それともオレが死ぬか。志乃が選んでくれ」

広島駅に着くと、迎えに来ていた妻の顔を見るなり和幸は号泣した。

この後半記事の主題にもなっていますが、森崎選手が闘病するうえで、特に助けになったのは、家族や監督、チームメイトの存在でした。

森崎選手はこう述べています。

「僕は本当に周りに恵まれていた。ひとりだったらきっと苦しいときを乗り越えられなかったと思う」。

慢性疲労症候群(CFS)は理解されにくい病気なので、患者は孤立してしまいがちです。しかし森崎選手の経験が示す通り、孤立するなら自分が追い詰められるだけです。長期間孤立すると情動行動や認知行動に関わるミエリンの産生が低下するそうです。

長期の孤立状態で脳に変化が | MediEigo(メディエイゴ)|Weekly Topic

前半にも書きましたが、わたしたち慢性疲労症候群(CFS)の患者は、病気と首尾よく戦うために、まず周りの人の協力を得ることが不可欠です。独りではサッカーの試合に勝利できないどころか、試合をはじめることすらかなわないのと同じです。

慢性疲労症候群(CFS)の患者の神経系はダメージを受けており、脳の血流も低下しているので、話すことや聞くことといった通常のコミュニケーションでさえ簡単ではありません。ですから、家族や友人、医師との会話するためには、さまざまな工夫が求められます。

このブログではコミュニケーションに役立つ情報をときどき掲載しています。

2.自分の居場所を見つける

「自信はなかったですけど、試合に出ると勝手に身体が動くんですよね。試合にも負けなくて、みんなと喜びを分かち合っていると、『これがサッカーのいいところだな。自分が求められている場所はここなんだな』と自然に思えるようになった。

ナビスコカップ決勝に臨んだときには、もう『辞めたい』とは思わなくなっていた。それまでが地獄だったので、ここで勝てれば、それこそ天国。だから全力でやってやるって思っていました」

慢性疲労症候群(CFS)になると、それまでの能力や立場、人間関係など、大切な物すべてを失ってしまったように感じます。あまりの体調のひどさのため、何も手につかなくなってしまうかもしれません。自暴自棄になってしまうとしても、それはしかたのないことです。

しかしある程度 気持ちや症状が落ち着いたなら、残された自分の体力・能力をじっくり分析し、その範囲内でできることを見つけるのが良いでしょう。

森崎選手のようにフィールドを走りまわることは難しいかもしれませんが、以前の仕事のほんの一部を担当させてもらったり、家族や友人のためにできる役割を探し求めたり、闘病の経験を生かして仲間の患者の助けになったりできるかもしれません。

わたしのある友人は、20年もの間CFSを耐え忍んできましたが、その間に培った医療福祉制度の知識を生かして、家族や親族が病気になったり、介護が必要になったりしたときにアドバイザーの役割を果たしています。

その友人は、「ずっと健康に過ごしてきた人は医療福祉制度やさまざまな病気についてほとんど知らないので、そのようなときには、病気のわたしのほうが頼りにしてもらえる」と言っていました。

つまり、たとえ病気がすぐには治らないとしても、自分の居場所・何らかの社会的な役割を見つけるなら、慢性疲労症候群(CFS)のもとでも自尊心を取り戻すことができるのです。自尊心を持つことができれば、心身の健康にも寄与します。

3.自分に対して過度に期待しない

和幸の主治医が言うには、もともと彼には「自己評価が厳し過ぎる」ところがあった。周囲がいかに称賛しようとも、自分自身が納得しなければ満足はしないのだ。

それが、不安を増幅させ、コンディションを崩していく原因のひとつでもあったのだが、森保監督のもとで和幸は「自分の評価と周囲の評価が割れるのであれば、良いほうを選択しよう」と考えるようになっていった。

慢性疲労症候群(CFS)の患者は、一般に、努力/報酬比の不均衡があり、自分に対する要求が高いと言われています。それは決して悪いことではなく、健康な時には強力な克己心となるのですが、病気のもとでは自分を責める態度として表れてしまいます。

「わたしはもっとできるはずだ」と感じて、自分を責めてしまうこともあれば、周りの人から、「がんばりが足りない」と言われて落ち込むこともあるでしょう。そのようなときには、自分のことを必要以上に考え過ぎないのが助けになります。

自分のことを必要以下に考えて自尊心を失う、という点について考えたのが2番目のポイントでしたが、自分のことを必要以上に考えすぎて責めさいなむのもよくありません。

自分自身が今できること、できないことをよく分析して、公平な評価を下すなら、両極端の問題を避けられるでしょう。

森崎選手からのメッセージ

森崎選手は、最後に、仲間の慢性疲労症候群(CFS)の患者に対して、このようなメッセージを送っています。

「ただ、僕がこうしてプレイを続けていることで、(慢性疲労症候群は)乗り越えられる病気だということを、少なからず証明できたと思う。

僕も苦しんでいたときは、同じように苦しんでいる人のことを調べて、どうやって乗り越えたかを知り、その姿を見て勇気づけられた。

今回、Jリーグで優勝した僕の存在が少しでも、同じ病気で苦しんでいる人たちの力になればいいな、と思っています」

慢性疲労症候群(CFS)は確かに乗り越えられる病気です。CFSは単独の病気ではない可能性があるので、すべての人の場合に森崎選手のようになるとは限りませんが、あきらめない限り、CFSに敗れるということは決してありません。

わたしたちはどんな病気や問題を抱えているにせよ、決して独りで闘っているわけではありません。仲間の患者や支えてくれる人たちというチームメイトと励まし合いながら、闘い続け、決してあきらめないなら、わたしたちも森崎選手のように勝利のトロフィーを手にできるに違いありません。

▼追記:森崎選手をきっかけに慢性疲労症候群(CFS)を知られた方へ

森崎選手の経験は慢性疲労症候群(CFS)の患者に励みを与えてくれます。しかしぜひ知っておいていただきたいのは、確かにCFSは乗り越えられる病気であるとはいえ、森崎選手ほど元気になれるとは限らないということです。

このエントリにおける「乗り越える」とは病気と上手に付き合えるようになる、という意味です。CFSを抱えていても、前向きな気持ちでいられるようになる人は大勢いますが、森崎選手のようにフィールドを駆け回れる元気を取り戻せる人は比較的少数です。

多くのCFS患者は、雀の涙ほどしかない体力をうまくやりくりして、ときには車椅子で、ときには寝たきりで、自分にできるわずかなことに意義を見いだして生活しています。

ですから、もし周りに慢性疲労症候群(CFS)の方がいらっしゃるなら、森崎選手のことを思い出して、その辛さに感情移入してあげてください。同時に森崎選手と比べることは避けてください。ひとりひとり症状は違い、効果のある治療も違うのです。

慢性疲労症候群(CFS)の患者の気持ちは、以下のエントリで、CFS患者の方が書いてくださっているとおりです。そちらも読んでいただけたら嬉しく思います。

森﨑和幸選手と慢性疲労症候群|CFSって何?~謎の病気、慢性疲労症候群~

▼森崎和幸選手とCFS

J1制覇から間もない11/25の報道は以下をご覧ください。

【11/25 デイリースポーツほか】サンフレッチェ広島の森崎和幸選手とCFS

 また闘病の詳しいインタビューは、 GIANT KILLING extra Vol.05のp132から8ページにわたって、とても詳しく掲載されています。

その後、2016年、森崎選手が400試合達成された際に、慢性疲労症候群との闘病について幾つかのメディアで報道されていたのでリンクを貼っておきます。

■CHANT(ご自身も慢性疲労症候群の方によるコラム)

【サンフレッチェ広島】 森崎和幸400試合達成。光の射す希望を与える「偉業」 【J1】|CHANT(チャント) サンフレッチェ広島版|コラム|サポーターが作るソーシャルサッカーマガジン

私は、慢性疲労症候群という病気を抱えた一人となった。

真っ暗な長きトンネルをじわりじわりと時間をかけて歩む中で、森崎和幸が同じ病から復活していたという記事に辿り着いた。
同じ病名といえども人それぞれの症状や状況があるが、それでもその事実は明るい兆しだった。
光を射す感覚というのはこういうことだと知るほどに、その事実は立ち上がるに大きな力となった。

ピッチに立っているその姿は、「希望」だった。

 

■J's GOALニュース

【広島 vs G大阪】 ウォーミングアップコラム:森崎和幸、J1通算400試合出場。それは、想像を絶する苦難に満ちた物語(後編)。 - J's GOAL

2011年も、森崎和の身体は完璧に症状から回復したわけではなかった。試合前日、全く眠れない状態に何度も陥った。だが、それでも彼は1年間、離脱することなく戦い抜いた。
「一生、この症状と付き合っていくという覚悟ができたんです。実は、2012年になっても、不安は消えなかった。でも、森保一監督から『無理をしなくていい。自然でいいから』と言ってもらえた。その感覚を意識し始めて、今に至っているんですよ」

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