『住む人が健康になる「本物の家」の建て方』の5つのポイント

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快適に住まうどころか、住んで病気になる家など決してあっていいはずがありません。

はてなブックマーク - デザインオフィス ウィズ・ワン | 株式会社ウィズ・ワンれは書籍住む人が健康になる「本物の家」の建て方 (小学館101新書)p17に載せられている、全体を貫くテーマともいえる言葉です。

世界一疲れている人が多い疲労大国日本は、世界で唯一、プレハブ住宅が普及した、住宅を粗製濫造している国でもあります。日本の住宅は、住む人のことを考えた“作品”ではなく既成の“工業製品”であり、人が生活を楽しむために作られたものではありません。(p14,22,29)

慢性疲労症候群(CFS)を研究してきた専門家たちは、休みを知らない、眠らない社会に警鐘を鳴らしていますが、休み場となるべき家がこれほどおざなりにされてきたことを考えると、それも当然かもしれません。

住む人が健康になる「本物の家」の建て方 は特にシックハウス症候群について述べた本ですが、単に化学物質にとどまらない、健康な家の5つのポイントを紹介したいと思います。

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これはどんな本?

この本は「日本の家を本気で良くしたい」と考えて、世界を見て回り、自然派素材や最新の技術を駆使して家を建ててきたdesign office ウィズワンの嘉村正彦さんの著書です。

デザインオフィス ウィズ・ワン | 株式会社ウィズ・ワン

 「住む人が健康になる家」といっても、この本は単に自然素材を使えばいい、という単純な天然志向の本ではありません。また日本古来の建て方にこだわる懐古主義の内容でもありません。(p53,122)

筆者が“本物の家”の条件と考える3つのポイント、すなわち(1)「健康」に暮らせること、(2)「長持ち」すること、(3)「デザイン」がすぐれていること を理論編と実践編に分けて丁寧に解説した、マイホームづくりの総合的な教科書です。(p20)

なぜこの本を手にとったか

この本を読もうと思ったのは、化学物質過敏症・シックハウス症候群の関連書籍として紹介されていたからです。またAmazonレビューで非常に高く評価されていることも興味をそそられました。

実際に読んでみると、専門知識がなくても読みやすく、建設に興味がなくても、次々と明かされる家と健康の深い関係に惹きこまれます。今まで建築関係の本はあまり読んだことがなかっただけに、前評判通りとてもおもしろい一冊でした。

住む人が健康になる家の5つのポイント

このブログのテーマである慢性疲労症候群(CFS)は、化学物質過敏症(CS)と似通った病気です。明確な予防法はないとはいえ、身体的、心理的、生物学的なストレス環境を和らげるなら、発症や悪化をある程度防げます。それには、どんな家に住むかということも無関係ではありません。

この書評では、CFS患者の観点から見た、住む人が健康になる家の5つのポイントに焦点を当ててみましょう。

1.化学物質を含まない空気

人が一生涯で、口に入れるもののうち、もっとも多いのは空気です。食べ物と飲み物が約1割ずつ、そして空気が約8割を占めます。しかもその空気の4分の3が住まいの中で吸い込む空気だと言われています。(p97)

この本では、住む人を度外視した家造りがもたらした病気として、シックハウス症候群や化学物質過敏症が繰り返し言及されています。どうすれば「24時間計画換気をしなくてもシックハウス症候群が発症しない家」を作れるでしょうか。(p16,50)

嘉村さんがカギとして挙げている素材のひとつは、壁に用いられる“石灰”です。

嘉村さんは、石灰は「地球からの贈り物」だといいます。p58-60には石灰の6つのメリットが挙げられていますが、そのひとつは化学物質やにおいを吸着することです。壁材として石灰を用いるなら、天然の空気清浄機として利用できるのです。

また天井を標準より高くするなら、室内の驚くほど開放的に感じられるだけでなく、容積が大きくなって化学物質が撹拌されるそうです。(p95,171-172)

2.ウイルスから身を守る調湿機能

人間が快適な状態で暮らせる湿度は、およそ50%といわれています。…50%前後の湿度ではバクテリアやウイルス、カビ、ダニが生息できません。(p62)

慢性疲労症候群は、弱った体を急性のウイルス感染が襲うことがきっかけで、発症することがあります。プレハブや合板で建てられた既成品の家は、湿気やすく、乾燥しやすいのでウイルスや細菌が蔓延しがちです。

それに対し、さきほどの石灰には、優れた吸湿性と放湿性があります。植物から作るセルロースファイバー、羊毛から作るサーモウールなどの天然の断熱材もまた、特殊な原理で水分を保ち、湿度を一定に保ってくれます。(p59,66)

わたしたちは冬になると、ひどい結露に悩まされますが、じつは夏にも壁の中という見えない場所で結露しているそうです。しかしセルロースファイバーを用いた専門的な断熱工事をするなら「無結露20年」を保証できると言います。(p70,133)

3.住む人を内側から温める断熱

[壁暖房は]向かい合った壁から放射される赤外線で体を芯から暖める遠赤外線効果があり、暖房効率がいい。(p148)

慢性疲労症候群(CFS)では近年、体を遠赤外線によって内側から温める低温サウナ療法が注目を集めています。ぬくもりのある家は、どんな病気の人にとっても住みやすいに違いありません。

断熱材や採光を工夫し、温まりにくく冷めにくい蓄熱効果のある素材を用いることで、年中過ごしやすい家を実現できるそうです。床暖房に比べ、劣化しにくく、全身をまんべんなく暖められる「壁暖房」という方法も紹介されています。(p140,147-148)

4.頭をスッキリさせる採光

アメリカのカリフォルニア州の「パシフィク・ガス・アンド・エレクトリック・カンパニー(Pacific Gas and Electric Company)」が行った「日光と人の能力との関連性調査」によると、自然光あふれる教室で勉強する子供は、そうでない子どもより読解力が26%高まり、計算が20%早くなったと報告しています。(p144)

子どもの慢性疲労症候群の場合、概日リズム障害が顕著です。治療法として高照度光療法が重視されていますが、もし採光の優れた部屋があれば、入院する必要はないかもしれません。

太陽光を最大限に活用する家づくりはパッシブソーラーと呼ばれるそうです。夏は太陽光が直接室内に入らないように、冬は部屋の奥まで届くように窓の配置を工夫したり、太陽光によって生まれる日陰を利用して涼しさを演出したりします。(p140)

特に、子ども部屋には、トップライトという屋根に据え付ける窓を作るよう提案されています。高い技術が要求されますが、明るく広がりのある部屋は子どもの健康を支えてくれるでしょう。(p144)。

5.生命力を守る木造

住む人が健康に暮らせるという、一番大切な要素については、1986年に静岡大学農学部で行われた実験結果が知られています。

この実験によると、木、コンクリート、金属製のケージにそれぞれマウスを入れて観察したところ、木のケージのマウスが産んだ仔の生存率がもっとも高かったということです。(p116)

鉄筋コンクリート、鉄骨、木造。この中で最も強く長持ちするのはどれでしょうか。

意外なことに、それはダントツで木造だそうです。鉄筋や鉄骨は作られたときが最も強靭で、あとは劣化するいっぽうです。

それに対し、木は切られてから200年もの間、逆に強くなっていき、1400年後にやっと建てられた当時の強度に戻るそうです。木造のすばらしさを示す顕著な例が法隆寺といえます。(p79)

p76-80、113-119、126-128で列挙されている木造の利点はこの本の白眉といってもよく、天然素材としての木がいかに優れた贈り物であるかがよく分かります。切られてなお、美しく、強く生き続け、住む人の健康を守り続ける木の生きざまは感動的でさえあります。

もちろん木造には欠点もありますが、それを補うための専門的な工法も詳しく説明されています。(p128-131、120-126)

筆者は、住む人を健康にする家とはLOHAS(=Lifestyles Of Health And Sustainability:原稿で持続可能なライフスタイル)であると述べていますが、無垢材を丁寧に活用した家造りは、まさに住む人の健康を持続させ、疲労を予防するものとなるでしょう。(p139)

結果的に節約になる

住む人が健康になる家を作るのは一見高い買い物です。

しかし、もし化学物質過敏症(MCS)などの難病を発症したり、日々の生活が妨げられたりするなら、ローコスト住宅はお買い得どころか大損です。ローコスト住宅は寿命が短く、支払金額のうち半分がマージンや広告費になるとも言われています。

この記事ではCFSに関する内容にしぼってまとめましたが、この本には理想的な依頼先を探す8つのコツや、素材・工法の選び方、家のデザインのポイントも丁寧に書かれています。筆者が展開する家づくりの哲学は読み物として面白く、考え方を広げる助けになりました。

もし今後家を建てるなら、この本はまさに、本物の家を作るためのガイドブックとなってくれるでしょう。そうして造られた家は、あなたの健康を損なう欠陥品ではなく、あなたとともに生き、一生にわたって健康を支える休み場になってくれるに違いありません。

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