ある小児慢性疲労症候群(CCFS)の回復例

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1年以上前になりますが、2011年8月8日付の神戸新聞に、「小児慢性疲労症候群 入院治療で生体リズム回復」 という記事が掲載されました。

このニュースで紹介されているのは、通学できない状態のCCFSから回復した18歳の高校生の方の経験談です。とても有用な記事だったのですが、すでにリンク切れになっています。 Web上の通常参照できるサイトには、肝心な部分の内容が残っていないようです。

はてなブックマーク - 小児慢性疲労症候群 入院治療で生体リズム回復:医療・健康 - 47NEWS(よんななニュース)

小児慢性疲労症候群 入院治療で生体リズム回復:医療・健康 - 47NEWS(よんななニュース)(記事冒頭部分のみ)

わたし自身も含めて、このブログでは回復しきっていない例を取り上げてしまっているのですが、それは典型例ではありません。小児慢性疲労症候群(CCFS)の70%は回復します。希望をもたせてくれる経験談として、このニュースの内容を紹介しておきたいと思います。

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どのようにして発症したか

「勉強しないと置いていかれる」というプレッシャー。この高校生の方が小児慢性疲労症候群(CCFS)を発症したおおもとの原因はそこにありました。

2009年4月、進学校に入学してから、生活が一変しました。運動系の部活動、塾通い、予習、復習のため、心身の休まる時間がなく、就寝は午前2〜3時ごろで、そのまま6時台に起きて学校に行っていたそうです。

典型的な睡眠不足症候群(BIISS)の状態です。

小児慢性疲労症候群(CCFS)とは (3)10の原因と診断の流れ

そのような日々が1カ月ほど続いたとき、次第に37度前後の微熱と疲労感、食欲不振が続くようになり、朝も起きられずに休みがちになり、7月以降はほとんど登校できなくなりました。「疲労のため予習しないで登校すると教師に怒られ、さらに行きにくくなった」そうです。

小児慢性疲労症候群(CCFS)は突然発症する場合と、ある程度ゆるやかに発症する場合があるとされていますが、 この方の場合はどちらかと言えば徐々に悪化したようです。

どのようにして診断に至ったか

異変に気づき、インフルエンザや結核などさまざまな検査を受けますが、検査異常が見つかることはありませんでした。心療内科で睡眠薬や食欲改善薬などを処方されたそうですが、十分な効果はなかったといいます。

10月に入り、この方は、慢性疲労症候群(CFS)の可能性を疑って、大阪市立大医学部付属病院を受診されました。そのときはじめて小児慢性疲労症候群(CCFS)と診断され、少しでも自宅近くで治療ができるようにと、子どもの睡眠と発達医療センターを紹介されたそうです。

子どもの睡眠と発達医療センターでは田島世貴先生たちの指示で、2週間分の睡眠を記入する「睡眠表」を付けました。すると、1日平均約13時間、多い日には20時間寝ていて、過眠型睡眠障害を伴う、小児慢性疲労症候群(CCFS)であることがはっきり分かったのです。

小児慢性疲労症候群(CCFS)では、発症前は睡眠不足症候群(BIISS)が特色ですが、発症後は1日平均10時間以上、日によっては15時間以上眠る過眠型睡眠障害が特色となります。その多くは、朝起きられず延々と寝続ける睡眠相後退症候群(DSPS)の形を取ります。

夜眠れず朝起きられない「睡眠相後退症候群(DSPS)」にどう対処するか(3)原因と予防

どのように治療したか

この方は11月中旬から翌2010年3月下旬まで、集団での入院治療を受けることになりました。「病気の正体が分かり、治るかもしれないという希望が生まれた」 といいます。

治療法は、以下の三点でした。

◆高照度光療法:天井に設置した5千ルクスの蛍光灯の光を朝に3時間程度浴びる
◆低温サウナ療法:約60度に設定した
◆薬物治療:地球の公転や自転に合わせた人体の生体リズムを整える

朝の強い光で徐々に起きやすくなったことに加え、同じ境遇の仲間の存在を知り、励まし合えたことで治療が続けられたそうです。

治療後はどうなったか

治療の結果、生体リズムがほぼ回復し、退院することができました。睡眠は7-8時間ほどになったそうです。学校は留年したものの2010年4月の新学期から復帰でき、ほぼ通常通りに授業を受けられるようになりました。

ニュースの時点では、睡眠表の記入を続け、外来診療に月1回程度通い、体調の相談などをしていると書かれていました。また入院時の仲間とも連絡を取り合い、励まし合っているとのことです。

疲れて保健室で休むこともあるとはいえ、その折に同じように休んでいる生徒に病気の経験を話したり、相手の話に耳を傾けたりしているそうです。「闘病経験を生かして、僕のようにしんどくなりやすい生徒でも過ごしやすい学校にしたい」との言葉で締めくくられていました。

早期発見と早期治療

この方の場合はおおかた回復して学校に復帰できましたが、治療がうまくいった要因はどこにあるのでしょうか。

ひとつには、“時間”が関係しているとわたしは思います。この方は数ヶ月で診断にたどり着いています。

小児慢性疲労症候群(CCFS)でも、成人の慢性疲労症候群(CFS)でも、発見と治療が早いほど回復しやすいことが知られています。これは化学物質過敏症や線維筋痛症、脳脊髄液減少症でも同様です。

では、早期発見と早期治療のためにはどうすればよいのでしょうか。

だれかが言葉をつむぐなら

必要なのは、CCFSという深刻な病気について知っている人が増え、親や教育者、あるいは周囲の人たちが、「もしかして…」と思い当たるようになることです。だれかが早期に気づいてくれるなら、子どもたちは人生を投げ出さずにすむはずです。

そのためには、この病気について知っている人が、経験者だからこそ分かる詳細な情報を発信しなければなりません。それも、内輪にしか分からない書き方ではなく、必死の思いで情報を集めている人の目に留まるような分かりやすい書き方でまとめなければなりません。

わたしは当初、治療の覚え書きとしてこのブログを始めました。しかし、次第に、Web上には、国内のCCFSの患者自身の手で書かれた、CCFSの子どものための情報がほとんどないことに気づくようになりました。

小児慢性疲労症候群自体が新しい概念であることに加え、これまで治療を受けた子どもの多くは、まだ10代か20代そこそこであるため、情報を発信するに至っていないのかもしれません。また、典型的なCCFSでは言語能力がかなり障害されていて読み書きも困難です。

わたしの場合は、易疲労性や睡眠障害の一部は残っていますが、幸いにも思考力はかなり回復しました。本来なら、このニュース記事の方のように、完全に回復した人が書くほうが、希望を与えるだろうとは思いましたが、とにかくだれかが書き始めることが重要です。

これからきっと、CCFSについてご自身の言葉をつづってくれる人が次々に現れると信じています。そして、わたしよりももっと自由な筆致で、多くのことを書いてくれると期待しています。

日本のCFS患者の状況は過酷ですが、子どものCFSの場合は、それ以上に深刻です。小児慢性疲労症候群(CCFS)について知る人が一人でも多くなり、子どもたちの早期発見・早期治療が進展することを願ってやみません。

その不登校ーもしかして小児慢性疲労症候群?はてなブックマーク - その不登校ーもしかして小児慢性疲労症候群?

※このニュースの全文がインターネット・アーカイブに残されているのを確認しました。内容に忠実にまとめたつもりですが、原文を読みたい方はそちらで神戸新聞のURLを検索してください。

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