「メラトニン研究の最近の進歩」は不登校から始まった

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はてなブックマーク - 【2/5 QLifePro】わずか3ルクスの光で睡眠リズムが狂うかもしれない児慢性疲労症候群(CCFS)の治療を受けていると、必ず名前を効くことになる薬(サプリメント)のひとつがメラトニンです。わたしもメラトニンにはお世話になってきました。

しかし正直なところ、メラトニンとは何か、ということをよく知らなかったのも事実です。メラトニンが睡眠にかかわることは知っていましたが、なぜ小児慢性疲労症候群の治療に使われるのか、あまり考えたことがありませんでした。

今回取り上げるメラトニン研究の最近の進歩はメラトニン一色の中身の濃い本です。メラトニンを効果的に用いるヒントを与えてくれます。そして意外なことに、今やすっかり有名になったメラトニンは、CFS患者と深い関わりのある物質だったのです。

▼シリーズ記事「小児CFSの本」
小児CFSの本では、子どもの慢性疲労症候群に直接言及している本を紹介しています。

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これはどんな本?

この本は、メラトニンについての研究を総集した、国内初の学術書とされています。20人以上の先生方が、さまざまな病気の治療にメラトニンを用いた研究成果が集められています。

今となっては「最近の進歩」というには少し古い内容ですが、日本でもよく知られるようになったメラトニンの歴史や、単なるホルモンという枠に収まらない不思議な特徴を知ることができます。

気軽に読める本ではありませんが、小児慢性疲労症候群と関わりの深いメラトニンや概日リズム睡眠障害について知ることができ、勉強になりました。

日本におけるメラトニンの歴史

1980年半ば、熊本大学の三池教授らは、「学校にしがみつきながらも登校できない」 学生たちの問題に直面していました。昼夜逆転や自律神経症状、家庭内暴力など、さまざまな臨床症状の不可思議さに戸惑いながら、悪戦苦闘する日々でした。

1990年代、集まったデータから明らかになったのは、彼らが慢性的な時差ぼけ状態にある、という世にも奇妙なものでした。今まで見たこともない病態に、三池教授らは“フクロウ症候群”という名前をつけます。後の小児型慢性疲労症候群です。

三池教授らは、彼らを治療する方法を必死になって探します。そこで出会ったのが、当時、欧米で飛行機の乗組員の時差症候群(今で言う時差ぼけ)の治療薬として使用されていたメラトニンでした。

1993年、熊本大学先進医療審議会を通して、メラトニンが初めて、子どもたちを対象とした医療に用いられます。その結果が満足のいくものであったことは、今日、ありとあらゆる睡眠関係の本に、メラトニンについて記載されていることから明らかです。

そのころアメリカでは、1995年にラッセル・ライターの奇跡のホルモン、メラトニンやウォルター・ピエルパオリの驚異のメラトニン が相次いで発刊され、メラトニンは万能健康食品として一大ブームを引き起こします。

日本でも1996年、国立精神神経センターを中心に、メラトニンを医療に用いようと研究会や講演会が開催され始めます。そして三池教授を中心にメラトニン研究会が結成され、2004年にこの書籍がまとめられました。

今や、メラトニンは睡眠障害の治療に欠かせないものとされていますが、その始まりは、小児型慢性疲労症候群の治療薬として注目されたことでした。今でも、メラトニンは高照度光療法と並んで小児型慢性疲労症候群の早期治療に大きな成果を挙げています。(pⅲ-ⅳ,162-163,167)

この本が書かれてからしばらくして、メラトニンと同様の働きをする、より効果の強いメラトニン製剤、ロゼレム(ラメルテオン)も発売されました。

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メラトニンにはどんな効果があるか

メラトニンは脳の松果体で造られるアミノ酸誘導体です。自然界のいたるところに存在していて、虫や植物にも含まれています。人間の体内のメラトニンは1-3歳にピークを示し、思春期以降減少し、70歳以上では1/10になります。(p18)

この本には、メラトニンの特徴が詳しく書かれています。ただし情報としては古いので、2013年現在の理解にそぐわないものもあるかもしれません。

抗酸化作用

活性酸素やフリーラジカルを直接除去する抗酸化作用があります。原始生物は、活性酸素から身を守るためにメラトニンを用いていたのではないか、という推論も書かれています。(p10,26-28)

ホルモンへの影響

視床下部に働いて生殖ホルモンを抑制したり、成長ホルモンを分泌させたりします。思春期にメラトニンが十分合成されず、普通より少なくなることが、側わん症などの病気につながると考えられています。(p240)

睡眠誘発作用

副作用の少ない睡眠薬として用いることができます。しかし眠くなる度合いは人によって10倍から数10倍の個人差があるようです。(p73)

メラトニンによる眠気は睡眠薬のような直接の睡眠効果ではなく、リラクセーション、もしくは鎮静効果だと言われています。不眠に対する効果は、ベンゾジアゼピン系の薬より低いとされます。(p193,201)

生体時計同調作用

メラトニンを夕方に服用すると、睡眠のリズムが前にずれ、午前中に服用すると後ろにずれます。この効果から、メラトニンは概日リズム睡眠障害(睡眠相後退症候群や非24時間型睡眠覚醒症候群)の治療に使われています。(p74)

深部体温低下作用

メラトニンには脳の温度を下げて、興奮を鎮め、眠る時間を知らせる作用もあります。そのため、不安や緊張により、寝つけない場合に効果が期待できます。(p74)

性腺抑制作用

この本には書かれていませんが、メラトニンには性腺を抑制する作用があるようです。現代の若い人が性的に早熟の傾向を持っているのは、24時間社会のため、メラトニンの分泌が抑制されているからではないかと考える研究者もいます。

メラトニン服用のポイント

この本は睡眠のアドバイスについて書いた本ではありませんが、メラトニンの特徴についていろいろ書かれています。以下のポイントを知っておくなら、サプリメントとして服用するとき、参考になります。

目的によって服用する時間が違う

メラトニンは、小児型慢性疲労症候群の早期治療や概日リズム睡眠障害の治療に効果がありますが、服用する時間帯に注意が必要です。

◆眠気を引き起こしたい場合:
睡眠誘発作用を目的とする場合は、自然なメラトニンの分泌がはじまる就寝直前の時刻(30分-1時間前)にメラトニンを服用します。(p188)

メラトニンによる眠気は、立っていると感じず、横になって初めて効果が現れるといいます。眠気を引き起こしたい場合は、服用したら、眠気が出るまで起きているのではなく、横になったほうがいいようです。(p193)

こちらの目的で用いる場合は、睡眠導入剤のほうが効果があります。しかし、そもそも概日リズム睡眠障害には、睡眠導入剤はあまり効果がありません。

◆生活リズムを修正したい場合:
生体時計同調作用によって睡眠リズムを修正することを目的とする場合、つまり概日リズム睡眠障害(睡眠相後退症候群や、非24時間型睡眠覚醒症候群)の治療に使う場合は、メラトニンが分泌されていない時間帯に毎日服用します。

望ましい時間帯は、希望する就寝時刻の1-2時間以上前です。「いつも寝ている時刻」ではなく、「希望する就寝時刻」であることに注意してください。こちらの場合は即効性はなく、効果が出てくるまでに数週間を要します。(p76,188)

わたしの場合は、3mg製剤を購入し、1/4錠から1錠を17-20時に服用するよう指示されました。人によって服用方法は異なるかもしれません。

生活面での注意

メラトニンの服用は、生活の改善と並行して行わないなら、あまり効果がないと言われています。

◆夜は暗くする:
暗い場所にいる時間が長いほど、血中のメラトニンレベルの高い時間が続きます。夜はしっかり暗くして寝たほうがよいようです。(p60)

◆弱い光でもNG:
300ルクス以下の弱い光でも、夜に2時間あたるとメラトニンが減ると書かれています。これは一般家庭でも注意が必要なレベルです。(p86)

最近のニュースではその1/100の明るさ、豆電球程度の光でも問題があるかもしれないとのことでした。

研究結果:わずか3ルクスの光で睡眠リズムが狂うかもしれない | いつも空が見えるから

 

◆メリハリのある生活:
昼間に浴びる光が強いほど、夜にメラトニンが出やすくなり、昼間に光を浴びていないほど、夜に少しの光に当たるだけでメラトニンが出にくくなるそうです。メリハリのある生活が大切だとわかります。(p83,85)

◆目に光を浴びる:
目に光を浴びなければ、メラトニンは分泌されません。膝の後ろに光を当てるとよいというのはよく聞きますが、この本の時点では「後の実験では否定的となっている」とあります。光治療器を買っても、治療器の前で目に光を当てないと効果がありません。(p85)

◆高照度光療法:
午前中の高照度光療法により、日中のメラトニンの分泌が抑制され、概日リズムが正常になります。しかし脳の中枢の病気などがあると、光への感受性が低下し、効果が乏しくなるようです。(p214)

◆メラトニンリズムが崩れると…:
季節性うつ病では、冬場、昼間から血中のメラトニンの濃度が高いそうです。そのため、昼間から眠く、過食になったり、炭水化物を食べたがったりします。(p221)

薬としての特徴

◆中途覚醒に注意:
メラトニンは吸収が早く、服用後、30分でピークに達してしまいます。そのため睡眠リズムが不規則だと、眠気を催しても3-4時間で起きてしまう場合があるようです。不眠や中途覚醒、早朝覚醒を改善するには別の薬との併用が必要かもしれません。(p135,151)

◆副作用はほとんどない:
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬に比べて、日中に眠気が持ち越されたり、ぼーっとしたりするといった副作用はほとんどありません。むしろ、記憶力が改善したり、気分がよくなるといった報告があるほどです。自然な眠りが促されるからかもしれません。(p198)

◆ビジネスにならない:
メラトニンに効果が無いと思える場合でも、医師の指導のもとに2度に分けて分割服用したり、多く服用したりすれば効く可能性があります。しかし日本のメラトニンを取り巻く情勢(保険適応、製薬会社の扱い、購入にまつわる経済面)がそれを閉ざしていると書かれています。メラトニンは儲からないのでビジネスにならないのです。(p117)

しかし、当時審査中だったメラトニン受容体作動薬ラメルテオン(ロゼレム)が2010年に認可されたので、状況は良くなっているといえるでしょう。

最近では金沢大学とJAXAが協力して宇宙メラトニン研究会として活動しているというニュースがありました。

研究では、宇宙飛行士(あるいは宇宙滞在動物)の加齢加速現象を利用し、メラトニンの抗加齢機能の解明を目指しているそうです。疲労と老化は非常に近いメカニズムであることが知られているので、どこかでCFSと関係してくるかもしれません。

▼メラトニンの入手について
三池教授の別著子どもとねむり 乳幼児編―良質の睡眠が発達障害を予防するにはこう書かれています。

メラトニンは、副作用もほとんど報告されておらず、牛などの動物由来ではなく合成された化学物質ですから、ウイルス感染などの心配がない安全なサプリメントです。

日本の薬局では売っていませんが、インターネットにより安価に手に入れることができます。その際は、なるべくビタミン類やその他の添加物の少ないものを選んでください。 (p75)

メラトニン研究の進歩

メラトニンの研究は、概日リズム睡眠障害の研究や、小児型慢性疲労症候群の研究と共に進展してきました。

今のところは、まだこれらの病気の治療法が確立されたとは言いがたいのは事実です。

しかし治療法の手がかりさえなかった時代に、不登校の子どもを助けるために、欧米からメラトニンを導入してくださった三池先生の研究が、今日のメラトニン医療の礎となったことは感慨深く思います。

メラトニン研究の最近の進歩は、今後も必ず医療が進歩し、CCFSやDSPSなど難しい病気の治療法が増えるに違いないという希望を持たせてくれます。

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