できないと決めつけなかった「百姓が地球を救う」

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のやり方はどう考えても間違っているように思う。しかしこのやり方を変えることは不可能だ。みんながやっているのだからしょうがない。

そんな状況に出くわすことはよくあります。悪いと分かっていることでも、立場や名誉、家族の生活を守るためには仕方がない、慣れ親しんだライフスタイルを変えることはできないと感じるのです。

はてなブックマーク - 木村興農社【木村秋則オフィシャルホームページ】農薬まみれの作物を作っていたある人物は、農業というとても伝統的な分野で、この問題に直面しました。彼はどうにもならない、とあきらめて、自分の感情を押し殺すでしょうか。それとも、犠牲を払うことになろうとも、勇気をもって一歩を踏み出すでしょうか。

書籍百姓が地球を救うを紹介したいと思います。

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これはどんな本?

映画「命の林檎」で有名な、化学物質を使わない自然栽培の木村秋則さんの書籍です。(p170-171)

木村興農社【木村秋則オフィシャルホームページ】

木村さんの自然栽培は、無農薬なだけでなく、肥料も使わないという点で、従来の農法と異なっています。農薬を撒布するのは子どもが風邪になったらすぐクスリを飲ませるようなものであり、肥料を使うのは筋肉隆々に育つようステロイドを与えるようなものだからです。(p87-88)

その代わり、注意深く作物を観察し手間をかける必要があるため、“目が農薬、手が肥料”と書かれています。(p83,132)

木村さんの自然栽培は以前から化学物質過敏症の患者の間で知られていましたが、4-5年前にNHKで取り上げられ、学識者の賛同を得、2011年には国連食糧農業機関(FAO)によって、GIHAS(世界重要農業資産システム)に認定されました。(p202-204)

この本には日本が世界一の農薬・除草剤散布国であることや(p29-31)、有機(オーガニック)栽培にも化学物質の問題があること(p155-170)など、経験と実験に裏づけられた興味深いデータがいろいろ載せられています。

それらの点は、他の化学物質過敏症の方々のブログで繰り返し触れられていますので、このブログでは別の点、すなわち身近な物事に役立つ考え方という点に目を向けてみたいと思います。

冒頭に書いた状況で、木村さんはどう行動したでしょうか。そこからわたしたちが学べる事柄は何でしょうか。

何かが間違っている感じていた

今でこそ自然栽培の普及に努めている木村さんですが、もともとは農薬や化学肥料まみれの作物をつくっていて、殺菌剤として水銀を使ったこともあったそうです。

木村さんは考えを変えるきっかけになったできごとについてこう回想しています。

ある朝のことです。いつものようにリンゴ畑に行くと、あたり一面に数え切れないほどの虫が落ちて死んでいました。足元を見ると背中を丸めた葉巻虫がたくさん転がっています。樹にしがみついたまま息絶えている虫もいました。前日にわたしが農薬を撒布した成果です。

…農薬を撒布して虫を殺すことはできても、目の前の虫を指で潰すことはできませんでした。リンゴの樹についている虫を仕方なくビニール袋に入れて持ち帰って、しばらくそのままにしておくこともありました。

「わたしが殺したんじゃない、虫が死んだんだ」

そう自分を納得させていたのです。 (p45-46)

木村さんはそのときの気持ちを、高いところから絨毯爆撃するパイロットの気持ちに例えています。自分が何をしているか深く考えると恐ろしくなるため、現実から目を背け、必死に自分を騙していたのです。(p47)

こうした恐れを感じていたのは何も木村さんだけではありません。

知り合いの農家は「自分が作ったものを、だれが食べるかなんて知ったこっちゃない。そんなことを気にしてたら、こっちがつぶれるよ」と述べたそうです。(p49)

融資担当の銀行員は無農薬の取り組みについて「そんなことできると本当に思っているの? 農薬なしでは害虫被害を防げないし、肥料をやらなければ土地が痩せて農作物が貧弱になるじゃない。間違いなく収穫は減るよね。食べていけないでしょ?」といいました。(p26)

多くの人はすっきりしない思いを抱えていました。しかし、生きていくためでは仕方がない、と自分に言い訳し、深く考えないようにしていました。

なるほどそれはすばらしい意見だ。だけど

何かが間違っている、と感じはしても、現実から目を背け、周囲の意見に従ってしまう、という場面はわたしたちの身近なところにもあります。

ほとんどの人は不正はよくないと分かっています。自分が不正をすれば、見えない所でだれかが苦しむことを知っています。それでも、何事にも正直であろうとするなら厳しい競争社会で生きていけない、と自分に言い聞かせている人は少なくありません。

タバコが健康に悪いということを知らない人はまずいません。自分の命を縮めるだけでなく、家族を病気にならせ、見ず知らずの人の命を奪う可能性さえあることも知っています。それでも、悪い習慣をやめることはできない、と心の中で言い訳しています。

円満な家庭の鍵は、共に時間を過ごすことだと言われています。しかしまず裕福になって、それから家族と時間を過ごそうと考える人はどれほど多いでしょうか。お金を得たころには家庭が緊張し、取り返しがつかなくなっていることもあります。

睡眠不足がどれほど深刻かはニュースで毎日取り沙汰されます。しかし有意義な人生を送るためには有名企業に就職する必要があり、大学・高校受験のためには、睡眠時間を削ってでも子どもを勉強に追い立てる必要があるという価値観に縛られている親は少なくありません。

どの場合でも、人々は、何かがおかしいとは薄々感じています。どうすればいいかも見聞きしています。しかし、「なるほどそれは素晴らしい意見だ。だけど…と言っては、生活を変えられないでいるのです。

どうしたらできるかを考える

対照的に木村さんは何かがおかしいと感じたとき、現実から目をそむけませんでした。大変な苦労を味わいましたが、今では、多くの人に認められるようになりました。

木村さんはこう述べています。

[できない、無理と]決めつける人がいますが、できないのではありません。いままでやらないで来ただけではないでしょうか。

これからは一歩進んで、どうしたらできるかをみんなで考え、できるための努力をするべきではないでしょうか。 (p139)

他の人と異なる生き方をすることや生活を大きく変化させることを恐れる人は多いですが、自分で考えることを放棄し、手をこまねくことが成功の鍵だとは思えません。

自分の思考力を用いて考え、行動しないなら、判断する能力が失われ、脳の機能が衰えます。理知的な判断を担う前頭前皮質は人間を他の動物と異ならせている特殊な領域です。人間が人間らしさの源を失って、それで満足のいく人生を送れるのでしょうか。

疑問を感じたなら現実から目をそむけず、じっくり調べ、考えること。間違っていると分かったなら、はっきり拒む勇気を持つこと。自分の決定に責任を持つこと。

こうした態度を持つことは難しいですが、一歩進んで「できるための努力」を傾けることの大切さを、わたし自身いつも心に留めておきたいと感じました。

百姓が地球を救うは、生き方という点でも、化学物質に関する壮絶なデータという点でも、わたしたちの思考を刺激してくれる良書です。

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