「産んでくれてありがとう」からCFSの方の闘病記

LINEで送る
Pocket

「この子をどのように育てるべきか」

はてなブックマーク - 難病のこども支援全国ネットワーク子どもが難病だと分かったときの親の不安と孤独には計り知れないものがあります。何があってもこの子を守りぬいてやりたいと思いつつも、想像を超える重圧に押しひしがれ、現実から目をそむけたり、パニックに陥ったりすることもあります。

苦しむ我が子を目にして、親はできることなら、自分が変わってやりたいと思うものです。子どもの闘病は、ときに自分自身が闘病するより、辛く耐えがたいものとなります。

産んでくれてありがとう―笑顔で生きる2歳児から高校生までの難病の子どもたちは、そのような難病のもとでも、親子で協力し合い、懸命に生きる9家族へのインタビューからなる書籍です。慢性疲労症候群(CFS)の経験談も含められているこの本を簡単に紹介したいと思います。

▼シリーズ記事「小児CFSの本」

小児CFSの本では、子どもの慢性疲労症候群に直接言及している本を紹介しています。

スポンサーリンク

これはどんな

この本は、「難病のこども支援全国ネットワーク」の協力を得て、難病の子どもを持つ父母の方から取材し、構成された本です。

難病のこども支援全国ネットワーク

 子どもの難病はよく知られているものから、名前を聞いたこともないようなものまで500種類を超え、全国で200万人以上の子どもが闘病しているといいます。

国と都道府県によって小児慢性特定疾患治療研究事業特定疾患治療研究事業、難治性疾患克服研究事業、在宅支援などのさまざまなサービスが行われていますが、手の行き届いていないところも多く、患者同士で助け合う民間活動が活発に行われています。

本書によると子どもの難病には特有の特徴があります。(p3-4)

◆患者数が少ないため、診断が遅れたり、治療法の周知が不十分だったりする
◆子どもであるために、患者が成長発達する。病院や学校の選択など、闘病生活に多様な困難が伴う
◆親が若いために経済的な負担が大きい
◆多くは兄弟・姉妹がいて、その配慮が重要
◆先天的な疾患が多く、誤解や偏見によって傷つく患者や家族が少なくない
◆一人の家族だけで乗り越えるのは難しい

この本に載せられている9つの体験記も、これらの難しい特徴を如実に反映したものです。その9つの体験記とは、マルファン症候群、先天性巨大リンパ管腫、三尖弁閉鎖症、二分脊椎症、脊髄性筋萎縮症、先天性多発性関節拘縮症、胆道閉鎖症、プラダー・ウィリー症候群、そして慢性疲労症候群の子どもたちとその家族のエピソードです。

なぜこの本を手にとったか

この本を手にとったのは、以前に筋痛性脳脊髄炎の会のホームページで紹介されていたためでした。

「産んでくれてありがとう」 新刊本のご案内 | NPO法人 筋痛性脳脊髄炎の会(ME/CFSの会)「産んでくれてありがとう」 新刊本のご案内 | NPO法人 筋痛性脳脊髄炎の会(ME/CFSの会)はてなブックマーク - 「産んでくれてありがとう」 新刊本のご案内 | NPO法人 筋痛性脳脊髄炎の会(ME/CFSの会)

 

しかしなかなか読めないでいたのは、わたしの生い立ちの関係で、少し読むことに抵抗があったからです。

わたしは子供のころ、弟をウイルムス腫瘍で亡くしています。そのとき親の言語を絶する苦しみを間近で見ていました。わたし自身、上に書いた難病特有の特徴である、兄弟としての辛い日々を経験しました。

産んでくれてありがとう―笑顔で生きる2歳児から高校生までの難病の子どもたちはとてもすばらしい書籍ですが、壮絶な闘いの末、子どもを、また兄弟を亡くした家族にとっては複雑な気持ちであるのも事実です。子どもを亡くした家族から見ると、心の底から、良かったね!と言いたくても、やはりそう言い切れないところがあるのです。

しかしこの書籍が難病と闘う家族に希望を与えてくれるのは間違いありません。この書評では、特にCFSの山口さんたち(仮名)の闘病記について書きたいと思います。

山口和子さんと英明くん(仮名)の闘病記

和子さんが書いておられる、英明くんの闘病記には、同じCFS患者として、共感できる点が多くありました。わたしと英明くんでは発症の年齢が少し違いますが、経験もところどころ似ています、

発症

英明くんが発症したのは、小学校5年生の2月14日の朝だったそうです。ちょっと起き上がろうとすると頭痛に襲われ、ベッドに横になったまま動けなくなりました。数日のうちに、立ちくらみや羞明(光への過敏性)、脱力感など次々に症状が現れたといいます(p203-205)

英明くんはしばらくの間、トータルとして目が覚めている時間は1日に4時間もなく、ほとんど寝たきりの状態にあったそうです。(p206)

突然発症することや、発症直後に著しい過眠に陥ることは若年性の慢性疲労症候群の特徴です。わたしも自分では覚えていないものの、ひたすら寝ていたと家族から聞いています。

小児慢性疲労症候群(CCFS)とは (4)典型的な発症パターン

周囲の対応

医師から「学校に行きたくないんじゃない?」と仮病扱いされたり、「小学校5年生くらいだと、起立性低血圧の症状は出ません」と無知な対応をされたり、「この一週間、何か、楽しいことはあった?」と不登校扱いされたそうです。(p207-208)

わたしの若年性パーキンソンの友人も、「学校は楽しいか?」と聞かれてとても腹立たしかったと言っていました。

学校の先生は「本当にそんなに痛いの?」と疑ってかかったり、クラスには「『うつ病だ』と説明すればいい」と脳天気だったり、5年生のときも6年生のときもひどい対応だったといいます。教頭先生は本人や家族に問題があるかのように親御さんや教育委員会に触れ回ったそうです。

家庭訪問のときには、気遣ってくれるどころか、クラスの問題を反対に愚痴るような状態で、 特別支援教育はしてもらえませんでした。挙句の果てには、小学校 から中学校へ提出された書類には、さも誠実に対応したかのような嘘の報告が書かれており、いかにも怠けているかのように脚色されていたといいます。 (p218)

わたしの場合もやはり、医師の対応はひどいものでした。学校は小学校ではなかったので、ここまで自分勝手ではありませんでしたが、クラスにうつ病と説明されたり、担任が送ってきてくれるメールがぼやきのようだったり、ということはありました。

しかしながら、この本には、周りの人たちの反応について、必ずしも消極的なことばかりが載せられているわけではありません。中には、医師の無神経な言葉に発奮して頑張った経験や、困難な状況への反応を見るためにわざと厳しい言葉遣いをしていた医師のことも書かれていました。(p34,191)

また本書の他の8家族の経験談を読むと、医者や学校の対応はまちまちで、とても真摯な対応に感謝の言葉をつづっておられる方も幾人かおられました。病気の種類にもよるのでしょうが、当たり外れが激しいようです。(p41,82,113,134,145)

本書のp148には、脊髄性筋萎縮症の愼 允翼くんが友人の侑希くんに宛てた手紙が掲載されています。真の意味で「対等に」接してくれる友人がいることに感謝がつづられています。

山口さんたちも、困難な時でも励ましてくれるお母さんや先生方がいて、力になったと書いておられます。わたしも病気そのものは辛い経験ですが、そこで出会った友人はかけがえのない宝物だと感じています。

治療

当初は鎮痛薬やベンゾジアゼピン系の強い薬を躊躇せず処方されるばかりだったと書かれています。幸いお母さんが医療関係者だったので、依存は防げたようです。子どもに安易に処方される薬は昨今問題視されています。(p209)

“薬漬け”になりたくない - NHK クローズアップ現代 「アシュトンマニュアル」日本語版が公開 : 医療ニュース : yomiDr./ヨミドクター(読売新聞)

その後、インターネットで慢性疲労症候群(CFS)について知り、「子どもの場合、不登校や他の誤診されやすい病気との鑑別ポイントが書いてあって、それが長男の症状にぴったり」でした。発症から半年で、東京の医大で「慢性疲労症候群(免疫型)に間違いないでしょう」と診断されたそうです。(p213)

とはいえ、診断されたからといって、病気から解放されるわけではありません。

和子さんは、「治療法で確定されたものがないというのは、ほんとうに苦しいです。患者自身が情報を集めて、自分で試してみて、よくなるか悪くなるかわからないけどやってみるしかありません」と述べておられます。(p226)

また「慢性疲労症候群という病名ゆえ、世間で誤解されやすく、日ごろの疲労が蓄積して、過労になって、そこから慢性的な疲労、慢性疲労症候群になると捉えられやすい」と書かれています。(p227)

さらにCFS特有の誤解についてはこう書いておられます。

『小学校でも中学校でも学校に行けるときがありましたけど、そこだけ見ている人には、その前後で寝こむなんていくら言っても信じてもらえない。「だから怠けている」「親が勝手に言っている」「精神病だ」という見方をされてしまいます』(p228)

わたしも診断前の薬漬けの問題や、診断後にさらされる誤解に直面して来ました。「なんだ元気そうじゃない」「もうすっかり治ったみたいだ」と言われることは本当によくあります。

それでも、CFSという病名がつくことは少なくとも安心感につながりますし、治療の方針も定まります。インターネットを通して、さまざまな患者が発信している役立つ情報を探すこともできます。わたしも、このブログを通して対処法を探っていきたいと思います。

山口さんと英明くんにとっては、難しい日々が続いていると思いますが、患者会の助けも得ながら上手に対処され、一日一日回復へと進んでゆかれるよう願っています。

もっとを向けてもらうために

30ページからなるCFSの闘病記をかいつまんで紹介させてもらいました。わたしは生い立ちゆえに抵抗があったと述べましたが、ほかの8つの闘病記も、親子の絆や、あきらめない強さを感じさせてくれる励みになる内容でした。

二分脊椎症の娘さんを持つ木原久さんは、p127で「難病だ、大変だというよりも、社会全体が、もっといろいろな障害を持つ人間に目を向けることが重要です」と書いておられました。この本が、その一助として、一人でも多くの人に読まれるなら嬉しく思います。

スポンサーリンク
LINEで送る
Pocket

▼こちらの記事もおすすめです


スポンサーリンク