人生で最も大切なことを教えてくれる「シゴタノ! 手帳術」

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はてなブックマーク - ほぼ日手帳2013 - ほぼ日刊イトイ新聞帳選びにおいて大切なことは何でしょうか。いえ、もっとはっきりと言いましょう。人生において、最も大切なこととは何でしょうか。

そんな深遠な問いの答えさえ考えさせてくれるのが、シゴタノ!手帳術です。ブログメディアシゴタノ! 仕事を楽しくする研究日誌の方々がクラウド時代の手帳術についてまとめたこの本は、選択肢過多の時代を乗り切る心得を説いた本でもあります。

この書評では、特に紙の手帳を用いるメリットと、さまざまなライフハックの中から自分に合ったものを選ぶ一番大切なポイントについて感想を書きたいと思います。

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これはどんな本?

クラウドツールが登場した今日、情報管理のあり方は大きく変わりました。クラウドの万能性がもてはやされ、書類はすっかり時代遅れになった感があります。

しかしデジタルにはデジタルの良さが、紙には紙の良さがある、ということを力説しているのがこの本です。会社でクラウドが使えない場合や、時間を可視化して自己管理を目指す場合など、紙の手帳を役立てる方法が、ほぼ日手帳を例にいろいろと書かれています。

例えば、五カ年計画やSMARTなどを活用した目標と計画の立て方、またGoogleカレンダーやtoodledo、Googleドキュメントなどデジタルツールとの連携方法のアイデアは参考になります。

なぜ手帳が必要なのか

このブログでは、疲労対策の一環として、自分の状況をモニタリングすることや、思考を書き出すことの価値について書いてきました。わたしたちは自分のことをよく知っているつもりでいますが、体調や考えというものは、どうあがいても、ものさしでは測れません。

ゆえに、自分のことを本当に知っている、コントロールできると言うためには、それをどうにかして可視化する必要があるわけです。

確かに、今や疲労度計やペインビジョン、果てはfMRIといった、見えない感覚や心を可視化するツールが開発されてきてはいます。

それでも、そうしたフィードバック装置は決して身近なものではないので、今のところ手帳など、ありきたりのツールを使って記録することに勝る手法はないのです。

この本では、手帳は「航海士」に例えられています。「行く先で何が起こるか分からず、どんな方向にでも進むことができる人生」を乗り切るために欠かせない存在です。「不安や失敗を経験として記録し未来のあなたへと伝えてくれるかけがえのないパートナー」なのです。(p26,64)

でも、ちょっと待ってください。その役割は必ず紙の手帳でなければならないのでしょうか。今の時代、スマートフォンを使うほうがより便利でかさばらないのではないでしょうか。

を使うメリット

確かにスマートフォンは便利です。しかしこの本を読むと、スマートフォンは、紙の手帳と補い合うものではあっても、決して取って代わるものではないことが分かります。

◆質の高い情報が集まる
たとえば、デジタルデータと紙にはそれぞれ得意分野があります。デジタルデータはいくらでも記録できる分、取捨選択が苦手です。この本に書いてあることではありませんが、人は情報が多くなるほど考えることを放棄しやすくなります。これを選択肢過多といいます。

他方、紙は大事なことだけを書き留める分、より重要なことを集め、行動の動機づけとすることに向いています。著者はこう指摘しています。

利用できる情報は多いほど良いわけですが、利用の仕方によっては、限定された形で提示された方が良い場合もあります。(p41)

◆存在感がある
デジタルデータは目に見えませんが、紙の手帳は目に見え、存在感があります。人は目に見えるものによって行動するので、何気なく目に入る手帳の色や形、手に取ったときの厚みや手触りが、わたしたちの心を揺さぶります。(p59,76)

例えば、紙の手帳の分厚さを触って、わたしたちは一年を生き抜いてきたという実感を抱きます。ページをめくるという動作によって、去りし日のことを振り返り、追体験することができます。びっしり書かれた感想や、広々と残された余白が、言葉そのものより雄弁に語ります。

◆安心感がある
この本には書かれていませんが、わたしとしては、デジタルだけでなく紙のツールも使いこなせるようにしておくことには、安心感も伴うと考えています。デジタルツールはいつも使えるわけではないのに対し、紙と鉛筆は比較的どんな状況でも使えるからです。

たとえば、災害やアクシデントが起こると、いつデジタルツールが使えなくなるとも限りません。そんなときパソコンやスマートフォン、クラウドのデータがなければ考えを整理できないとしたら、混乱状態に陥るかもしれません。

それに対し、手元にある紙のメモ帳で自分をモニタリングし、マインドマップで思考を整理するテクニックが身についているなら、落ち着いて対処できるでしょう。スマートフォンに依存しないことは電磁波過敏症対策にもなります。

好きという感情

著者は紙のメリットについてこう述べています。

紙の手帳には紙の手帳なりの存在感があり、そこには力があります (p61)

この「力」の主要な部分は、心を揺さぶる、感情に訴えかける力でしょう。この本を読むと、作者が何より紙の手帳にこだわるのは、「好きという感情」のゆえだとわかります。

手帳術をはじめ、ライフハックには、これが正解という絶対的な真理はありません。この本では、確かにさまざまなライフハックが紹介されています。しかし、作者はどれも参考に挙げているだけで、押し付けようという意図は感じられません。

例えば、手帳を用いる自己管理術としてトップダウン型のフランクリン・プランナー(まず価値観やミッションを確認し、それからやることを決める)と、ボトムアップ型のGTD(まずやることを洗い出し、それから計画を立てる)が併記されています。(p79)

しかし、どちらか一方が正しいわけではなく、好きな方を選べばいいし、両方のいいとこ取りをしてもいいし、自分に合わないなら取り入れなくてもいいのです。あとがきには、GTDの基本である週次レビューについても、やってもいいしやらなくてもいいと書かれています。(p236)

技術習得のドレイファスモデルからすると、確かに初心者のうちはルールに従うのが上達の近道です。しかし、それ以降は自分に合ったものを取捨選択すればいいのです。

この本で、筆者が「ほぼ日手帳」を熱く紹介しているのは、それが「押しつけがましくない手帳」であり、「夢を書いてもいいし、書かなくてもいい」気楽なツール、「あまり身構えないノート」だからです。(p47,57,144,168)

ほぼ日手帳2013 - ほぼ日刊イトイ新聞はてなブックマーク - ほぼ日手帳2013 - ほぼ日刊イトイ新聞

結局のところ、「道具においては好きという感情も重要」なのです。そしてより便利そうに見えるデジタル機器に対し、紙のノートが引けをとらないのは、実態のある情報が五感を刺激し、脳を活性化させ、「好きという感情」を呼び起こしやすいからでしょう。(p41,56,236)

本書では「手帳に残された情報がただの記録以上の意味を持つ」と書かれています。著者の次の言葉は琴線に触れます。

もしも、手帳に生きた軌跡を残すことで、何気なく過ごせてしまう今日という日を特別な記念日に変えられるのだとすると、私はそれだけでも手帳に「ライフログ」を残す価値があると考えずにはいられないのです。(p134)

一番大事なこと

さて、結局のところ、はじめの問いの答えは何だったのでしょうか。手帳を選ぶのに重要なことは? そして人生においては?

答えはこの本のまえがきに引用されているオリバー・ウェンデル・ホームズの言葉にあります。

この世で一番大事なことは、自分が「どこ」にいるかということではなく、「どの方向」に向かっているか、ということである。
―オリバー・ウェンデル・ホームズ

著者の倉下さんは、この名言についてこうコメントしています。

このどんな仕事をしていても、どんな環境に置かれていても、「楽しむ方向」に向かって歩いていきたいものです。

それが人生を楽しむたった一つの冴えたやり方なのかもしれません。(p13-14)

どんな仕事をしていても、どんな環境に置かれていても、「楽しむ方向」に向かう、これこそライフハックの本質なのだと思います。

役に立つと思うことはどんどん吸収し、自分には合わないと思うものは、そういう考え方もあるんだ、ということを学んで笑顔で見送る、それがライフハックの魅力でもあります。

以前、@sawonyaさんがTwitterに書いておられた言葉でけだし名言だと思ったものがありました。

家から「積ん読」をなくす、とてもシンプルな方法【マインドマップ1年生 plus ライフハック!】はてなブックマーク - 家から「積ん読」をなくす、とてもシンプルな方法【マインドマップ1年生 plus ライフハック!】

だから、愛の押し付けはいかんのだよ押し付けは…。人によって恋人にしたいタイプは様々なんだからさ…。好きになれるライフハックも人それぞれだー。

わたしのブログは、さまざまな疲労対策テクニックを取り上げていますが、“医者からの処方箋”のように厳密なものではなく、“ライフハック”と思って気楽に読んでほしいという考えから、「疲労とたたかう ライフハック!!」を名乗っています。

どんな手帳をパートナーとして選ぶか、どんなライフハックを取り入れるか、どんな人生を送るか…。

何事においても、自分の基本となる価値観や譲れない信念は大切です。しかし、それ以外の部分、自由に選択できる事柄においては、思考を柔軟に保ち、常に楽しめる方向を考えて、道を選んでいきたい。

シゴタノ!手帳術は、知らず知らずこわばっていた肩の力を抜くよう、そっと気づかせてくれる書籍です。

 

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