【4/15】神経科疾患の歴史に考えるCFSのこれから

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性疲労症候群と直接の関係はありませんが、神経科の医療の進展に関する、興味深い座談会の記事があったので、紹介したいと思います。

神経疾患治療の過去・現在・未来│医学書院/週刊医学界新聞(第3023号 2013年04月15日)はてなブックマーク - 医学書院/週刊医学界新聞(第3023号 2013年04月15日)

わたしたちの慢性疲労症候群が置かれている状況は、一昔前の神経科の疾患、パーキンソン病やアルツハイマー型認知症、筋萎縮性即索硬化症(ALS)の状況とよく似ているように思います。わたしの知人には、これら3つの病気の方がいることもあり、他人ごととは思えません。

それら神経科の疾患の置かれていた状況と、現在の慢性疲労症候群の状況はどのように似ているのでしょうか。

 

1.そんな病気があるのだろうか?

名古屋大学大学院の祖父江元教授によると、「かつては神経免疫疾患においても,疾患概念が明確にされておらず,病態の区別をすることなく治療に当たっていた状況がありました」。

東京医科歯科大学大学院の水澤英洋教授はギラン・バレー症候群についてこう述べています。

それぞれの症状によって,「ataxic form」など別々の名称がつけられており,急性・慢性を混在して診ている状態でした。

診断をつけるにしても,治療を選択するにしても,エビデンスを示すような論文は少なく,一つひとつの文献に当たって「この患者にはどの方法がベストか」と比較・検討しながら行っていました。

現在の慢性疲労症候群も、既存のさまざまな症状をひとくくりにした概念によって診断されているため、批判を浴びることがあります。

重症患者と軽症患者は同じ病気なのか、という議論がずっと続いていますし、慢性疲労症候群などという病気はない、身体表現性障害やうつ病で十分説明できる、という医者さえいます。

しかし、かつて神経科疾患のエビデンスがまだ少なかったころ、診断名や治療を選ぶ際、「患者にとっては」どの方法がベストか、という点を考えて行われました。

今日の慢性疲労症候群の症状が、たとえ他の古い概念で説明できるとしても、患者の訴えを真剣に受け止め、疲労を主とする不定愁訴の治療を研究していくには、慢性疲労症候群という診断名がベストです。

そして実際に、「症候群」としてくくれるほど独特な症状を呈する患者群がいることも明らかになってきました。

2.かつては精神科の領域だった

新しい疾病概念が登場するとき、従来の精神科の概念とオーバーラップすることは少なくありません。

精神科の病気は間口が広いため多くの病気に当てはまりますが、治療法として最善ではないことも多いと思います。極端な話を言えば、末期がんの人の多くはうつ病と診断できるかもしれませんが、だからといって精神科の治療だけで良くなるはずはありません。

慢性疲労症候群は、診断が難しく、精神科の病気とみなすこともできるとして非難されることがよくあります。しかし多くの神経変性疾患も、同じ道をたどってきました。

「パーキンソン病の病因はいまだ不明」ですが、だからといって精神科の病気とされているわけではありません。「かつては精神科医に任せがちだった精神症状への対応もできるようになった」ことが述べられています。

特に認知症について、水澤英洋教授はこう述べています

非常に大きく変わった領域として,認知症疾患が挙げられます。かつては「痴呆」と呼ばれ,精神科領域の疾患として診られることが多かったのですが,病態解明が進むとともに認知症に対する認識も変化し,神経内科医も診るようになりました。

病態解明が進むことによって、アルツハイマー型認知症は、精神科の病気ではなく、脳の病気として位置づけられるようになりました。

記事には始めてCTスキャンの画像を見たときの興奮について書かれています。慢性疲労症候群でも、今まで何の異常もないとされていたのが、fMRIなどの脳機能の描画技術や、血液のメタボローム解析の登場によって、病変が分かるようになってきました。

3.治療薬がない!

神経科の難病がかつて直面していた、そして今もそれほど変化したとは言いにくい状況のひとつは、治療薬が乏しいことです。

パーキンソン病の薬は、少し前までLドーパただひとつでした。しかし今では6種類のドパミン受容体作動薬や、MAOB阻害薬、COMT阻害薬、ゾニサミドがあり、凝固術やDBSといった手術も可能です。

また、アルツハイマー型認知症は、20年ほど前には治療薬がありませんでしたが,現在は複数の薬剤が登場しています。

しかし,ALS治療薬剤として承認が得られているのは今はリルゾールの1種類のみで、効果も十分ではありません。球脊髄性筋萎縮症(SBMA)の治療薬も研究段階です。

治療薬を見つけるにはどうすればいいのでしょうか。「病態を忠実に再現する疾患動物モデルの作製と,新たな分子標的の発見が重要なポイントになる」と書かれています。

また、ALSの治療薬が生まれにくい背景についてはこう書かれています。

例えば,ALSの進行や予後は,患者によってかなりバラつきがあるものの,自然経過をきちんと調査したデータは少ないのが現状です。

対象のバラつきを考慮せず,すべて一緒に臨床試験を行っているため,正確な比較・評価が困難であり,期待する結果を得ることも難しくなっています。それがALSの治療薬が生まれづらい背景にもなっていると思います。

慢性疲労症候群の研究の進展が遅いように思えるのも、これと同じ背景によるのかもしれません。

しかし、なんといっても、慢性疲労症候群という病気が認識され始めたのは、まだここ20-30年です。今はまだ慢性疲労症候群の治療薬がないとしても驚くには当たりません。むしろ、現在の研究が続けば、数十年後には、パーキンソン病のように、あの時代はまだ治療薬がなかったんだ、と振り返ることができるようになっているかもしれません。

子どもの慢性疲労症候群の治療の研究をしておられる三池先生や友田先生は神経科医です。分子イメージング科学研究センターの渡辺恭良先生のグループも疾患動物モデルの作成や分子標的の発見に取り組んできました。

神経科の難病がたどってきた歴史を振り返ると、たとえ今、慢性疲労症候群という概念が揺籃期にあるとしても、しだいに研究が進み、治療薬も必ず見つかる、という希望を抱くことができると感じました。

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