勇気をもらえる本「若年性パーキンソン病を生きる―ふるえても、すくんでも、それでも前へ!」

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はてなブックマーク - 若年発症のパーキンソン病についてんな年齢で発症したとしても、重い病気は苦痛です。生活が打ち壊され、悩みに苛まれることは間違いありません。しかし若くして難病を発症すると、年齢特有の、次のような独特の苦悩が伴うことも事実です。

自分と同年代の友人たちは元気に力強く、疲れを知らないかのように活躍しています。でも自分はもはやそうすることができません。

ようやく仕事を見つけ、社会的に自立し、生活が安定してきたばかりです。家庭も持ちました。それなのに、今病気であることが明るみに出ると、築き上げてきたものすべてを失うかもしれません。

若年性パーキンソン病の人たちは、こうしたもどかしさ、不安、恐怖とずっと闘ってきました。その闘病記録は若くして他の慢性的な病気と闘う人たちにも勇気を与えてくれます。

この書評では、購入して以来、わたしがずっと励みにしていて、友人に勧めたり貸したりしている本、若年性パーキンソン病を生きる―ふるえても、すくんでも、それでも前へ!を紹介したいと思います。

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これはどんな本?

若年性パーキンソン病とは、おもに40歳までに発症するパーキンソン病のことをいいます。有名なマイケル・J・フォックスが発症したのはこの若年性パーキンソン病です。

特に遺伝子が関係するタイプは常染色体性劣性遺伝性若年性パーキンソニズム(AR-JP)と呼ばれます。若年性パーキンソン病について詳しくはこちらの解説をご覧ください。

20代で発症も? 若年性パーキンソン病の7つの特徴&治療に役立つ情報まとめ | いつも空が見えるから

わたしには若年性パーキンソン病の知り合いが3人います。そのうちのひとりは、わたしが慢性疲労症候群ではないか、と言って大阪市立大学医学部附属病院を紹介した結果、若年性パーキンソン病と判明した人で、まだ20代です。

正直なところ、わたしは、その友人が話す、若年性パーキンソン病独特の症状を理解できていませんでした。たとえば、体が重力に引っ張られるようだと話していたとき、わたしはそれが疲労であると思っていました。

しかし この本の中で、医師であり患者である橋爪さんが、ブラックホールに吸い込まれるような感覚について書いているのを読んで、それがパーキンソン病特有の“固縮”であることを知りました。

そしてもっとこの病気をよく知りたいと思い、マイケル・J・フォックスの著書も3冊読みました。うち一冊の書評は以下に書いています。

small「マイケル・J・フォックスの贈る言葉」に学ぶ、病気を受け入れ、今を生きるということはてなブックマーク - 「マイケル・J・フォックスの贈る言葉」に学ぶ、病気を受け入れ、今を生きるということ

若年性パーキンソン病を生きる―ふるえても、すくんでも、それでも前へ!「振戦」によってふるえても、「固縮」によってすくんでも、あるいは他のさまざまなつらい症状に身を縛られても、前へ進もうとする奮闘、および前へ進んで行かなければならない若年患者ゆえの苦悩が描かれている本です。

第一章「病と共に生きる」は、2007年から2011年の間に書かれた若年性パーキンソン病患者20人ほどの手記をまとめたものです。第二章「患者をつなぐ輪」にはさまざまな患者会の現状が、第三章には、若年性パーキンソン病を理解するための基礎知識が含められています。

この本の序文にはこうあります。

本書には、どんな人にでも多くの感動と勇気を与える、若年性パーキンソン病患者さんたちの手記がぎっしりと詰まっています。(p3)

まさにそのとおりでした!

とてもボリュームのある本なので、感想も少し長くなりますが、この書評では、わたしが励まされたことを3つ紹介したいと思います。

1.そうしたら笑顔があるよ

慢性疲労症候群(CFS)と比べて、若年性パーキンソン病が悲惨であると感じるのは、容赦なく症状が進行する点です。

CFSは基本的に時間とともに悪化するわけではないとされているので、工夫を重ねれば、ある程度生活しやすくなります。

しかしパーキンソン病の場合はそうはいきません。一刻一刻症状が進行していくので、将来の見通しは絶望的です。CFS患者以上に恐怖と闘いながら生きていかなければならない病気です。

それでも、未来へ進んでいく勇気を持つことができるのでしょうか。患者の一人である小安さん(仮名)はフラの先輩であり、病気の良き理解者である友人からこう言われたそうです

私が、「左手がほとんど動かなくなったらどうしたら……」と言うと、「じゃあ右手をむちゃくちゃ練習しなさい、見る人が右手の美しさに見とれて左手が気にならなくなるくらいに」と。

「でも、今動く右側にもいずれは病気が襲うんだよ」と、駄々をこねる私に彼女は「そうしたら笑顔があるよ」と言ったのだった。(p59)

もちろん、そうした励ましにすぐに納得できるわけではありません。小安さんはこう書いています。

病気という試練にあって、はじめは打ちひしがれていたけれど、周囲の協力もあって、今は元気に前向きに生きています」なんて結論にはならない。

じわじわと進行するこの病気の絶妙さは、まさに真綿で首を締められるようだ。自分の状況に慣れてくる頃には、さらに病状が進行するのだ。(p60)

病気は人間の理解の限界を超えたものです。ようやく受容したときには次の段階に進んでいる進行性の病気は特にそうです。だれもがマイケル・J・フォックスのように、自分はラッキーマンだと受けいれられるわけではありません。

しかしそのような普通を超えた環境でも、タイトルにある通り、「震えもすくんでも、それでも前へ」進もうとする人たちの姿には胸を打たれます。この心境は筋萎縮性即索硬化症(ALS)の方の心境に近いものがあると思います。

わたし自身、慢性疲労症候群(CFS)になって数えきれないほど多くのものを失いましたが、「そうしたら笑顔があるよ」という言葉を忘れず、まだできること、病気になったからこそできることに目を向けていきたいと思いました。

2.病気なのは人間として劣っているからではない

病気になると、行政や医師、そしてときには家族から、まるで落伍者のような目で見られることがあります。社会や家族の一員として価値がないかのように、見下げられるのです。

そうした扱いを受けると、自尊心が削られ、落胆してしまいます。そのような折にぜひ思い出したいのが、若年性パーキンソン病を17歳で発症し、45年間闘病を続けてこられた阿刀田俊子さんの言葉です。

時々、病気の人にお説教する人がいる。まるで病気だということが人間として劣っている印か何かのように。患者の家族に向かって、「患者は楽をしたがるから、甘えさせてはいけない」という言葉を体操のボランティアから聞いたことがある。

病気なのは人間として劣っているからではない。自分にかけていることが大きければ大きいほど、人は考えるようになる。…患者が楽をしたいというのは、体が動かないのがそれほど辛いということなのだ。

…人間が本来持っている能力を発揮するのに、こんなに苦闘しなければならない私たち患者の方こそ、人に教えられることがあるように思う。

…パーキンソン病で覆われていても、その内側には、ひとりのふつうの人間がいる。このことをわかってもらいたい。(p93)

私は考えた。人の目にさらしたくない弱点を抱えているのが私なのだ。それを恥ずかしいと思っては、私は生きていけない。私自身を恥ずかしいと思うのは、自分で「病気を持つ自分」を差別していることになる。(p97)

一部分しか引用することはできませんが、この一連の言葉は、同じく若いして慢性疲労症候群(CFS)になったわたしにとって、とても慰めになりました。

わたしもずっと、慢性疲労症候群(CFS)の自分を恥ずかしいと思っていました。この病名を明かすと、誤解されることが多かった、というのもありますが、それよりも自分が社会の落ちこぼれになったかのように感じていたのです。

しかしあるとき、先輩のCFS患者からこう言われました。

病気であることは決して弱いことではないと思うんです。だから、堂々と、雄々しく、胸を張って、力強く、立派に生きていればいいんです。

実際はこの二倍くらい形容詞がついていたと思うのですが、その確信のこもった口調は深く印象に残っています。病気の人には病気の人の役割があり、人間として劣る部分などどこにもないのです。

阿刀田俊子さんは、パーキンソン病について別の本も書いておられます。わたしの若年性パーキンソンの友人が読んでいたので、わたしもそのうち読みたいと思います。

3.家族以上にわかってもらうためにできること

若年性パーキンソン病で最も大きな問題のひとつとなるのが、病気を隠して働き続けるか、それともカミングアウトするか、という問題です。これは最近のニュースで、別のさまざまな難病の人たちも口にしていた悩みです。

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病気を明かすなら、仕事、人間関係、生活を失うかもしれない、という思いから、巧みに薬を活用してウェアリング・オフ(薬の効果が切れて症状が表面化すること)の姿を見せず、病気を明かすまいと必死の努力を払っている人たちがいます。

この本では、そうした努力の末、体調が悪化してもはやどうにもならなくなり、カミングアウトに踏み切るという例が幾つも出てきます。周りの人に疎外されるという恐れは、たいていは杞憂に終わり、暖かく迎えられるのですが、想像以上に家族から凄惨な扱いを受けた人もいます。

その中で、職場の人たちに病気を明かすだけでなく、病気を理解してもらおうと、おもしろい取り組みをなさっていた原田さんの話が、わたしの心に残りました。

そこで、なんとか理解していただこうと、「原田通信」(資料参照)という自分の病気のことや飲み薬、その副作用、体の状態など書いた自作の新聞を2ヶ月に1回発行することをはじめた。

また、家族のことや趣味のことなども書いて近況報告をすることで、皆さんに理解してもらい、足りないコミュニケーションの助けになればと思ったのである。

…その甲斐あってか、職場のスタッフは家族以上に私の状態を見てすぐに、オン、オフが分かり…暖かい目で明るく手助けしてくださる。(p118)

この話を2011年に読んでから、わたしもそれに倣おうと思って、CFSとはどんな病気か、どんな気持ちになるのか、といったことをまとめたイラスト入りの解説を作って、周りの人に読んでもらうようにしました。じつはその内容が、このブログのもとになっています。

理解されにくい病気だからといって諦めてしまうのではなく、工夫して説明するなら、周囲に味方を増やせるかもしれない、ということを学びました。

それでもへ!

たとえ病名は違うとしても、ふるえても、すくんでも、それでも前へ進み続ける若年性パーキンソン病の方たちの姿勢は、あらゆる人に勇気を与えてくれます。

わたしは、この本と出会えて、考え方が随分変わりましたし、今なお、若年性パーキンソン病の友人たちの近況を聞いたり、実際に会ったりして、力をもらっています。わたしの病院にとりぷる(電子版もある)が置かれていることもあって、若年性パーキンソンは身近な存在です。

若年性パーキンソン病を生きる―ふるえても、すくんでも、それでも前へ!にあるとおり、わたしも病気のもとでもあきらめることなく、自分にできることを行って、たゆまず前進して行きたいと思います。

この本をまとめてくださった広島国際大学の秋山智さん、そして闘病記を書いてくださった若年性パーキンソンの方たちに感謝いたします。

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