睡眠リズムがどんどんずれていく非24時間型睡眠覚醒症候群(non-24)の原因と治療法まとめ

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■同じ時刻に眠ることができず、睡眠時間帯が毎日遅れてゆく
■朝早く起きれるときもあれば睡眠リズムが逆転してまったく起きれないときも
■その時々で起きている時間帯が違うため、予定がうまく立てられない
■必死に学校や職場に合わせようとすると、時差ぼけ症状に苦しむ
■頑張りすぎて体調を壊し、ときには慢性疲労症候群(CFS)と診断される

24時間型睡眠覚醒症候群(non-24・非同調型・自由継続型)は、まだ分かっていない点が多い特殊な睡眠障害です。以前に睡眠相後退症候群について書きましたが、どちらも子どもの慢性疲労症候群(CCFS)に併発しやすい睡眠障害として知られています。

non-24の人の苦しみは並大抵ではありません。non-24が特集されている日経サイエンス2016年1月号の中で、専門医がこう述べていました

ボストンにあるベス・イスラエル・ディーコネス医療センターで睡眠科医を務め、概日リズム障害が専門のトーマス(Robert J.Thomas)は、「正直、どちらを選ぶかと聞かれたら、自分はnon-24よりも心臓病になったほうがましだと思う」と言う。

「それほど患者は苦しんでいる」。(p45)

non-24とは何でしょうか。どんな特徴があるのでしょうか。どんな原因により発症し、慢性疲労症候群と関わってくるのでしょうか。そして、どうやって治療するのでしょうか。

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非24時間型睡眠覚醒症候群とは何か?

非24時間型睡眠覚醒症候群(non-24:Non-24-hour sleep-wake syndrome)は、概日リズム睡眠障害(睡眠覚醒スケジュール障害)の一種です。自由継続型、非同調型などと呼ばれることもあります。

以前は全盲の人にみられる睡眠障害とされていましたが、今では、そうでない人たちの間にも広く発症すると言われています。

夜眠れず朝起きられない「睡眠相後退症候群(DSPS)」にどう対処するか(1)DSPSとは に書いた通り、慢性疲労状態の不登校の子どもなどに伴いやすい概日リズム睡眠障害は、おもに以下の3つに分類されます。

DSPS寝る時間は遅くなるが、周期は一定。不登校の子の多くはこのパターン。
non-24寝る時間はバラバラだが、周期は一定。難治例に見られる。
不規則型寝る時間も周期もバラバラ。乳幼児期から問題を抱えている場合がある。

non-24はDSPSと同様、慢性疾患であり、意志の力や家族の声かけなどでは治らず、社会生活に深刻な影響を及ぼします。

non-24の特徴は睡眠時間帯が毎日少しずつずれていくことです。体内時計を修正できず、睡眠時間帯がずれていくことをフリーランといいます。

どれくらいの周期でずれていくかは人によって異なります。睡眠障害の対応と治療ガイドラインによると、だいたい1時間前後が多いものの、3時間ずつずれる人や、日によって1-3時間ほどずれる度合いが変わる人もいます。(p205-209)

通常、non-24の睡眠記録表はとても特徴的な階段状になるので、一見診断しやすい病気に思えますが、そうとは限りません。

メラトニン研究の最近の進歩p179で国立精神神経センターの内山真先生(現日本大学医学部附属板橋病院)はこう述べています。

患者自身が一定の時刻に就寝し覚醒しようと努力する場合、周期的に不眠や覚醒困難として自覚される。

昼間に睡眠時間帯が出現する時期に日中無理に覚醒していても、眠気や注意力低下、集中力持続の困難や、易疲労感、倦怠感が出現する。

これらの症状のため、慢性疲労症候群と診断されることもある。こうした疲労症状は、患者の概日リズムにまかせて、毎日睡眠時間帯が遅れていくような生活をした場合は消失する。(p179)

たとえ体が求める睡眠時間帯は毎日ずれていくとしても、社会がそのような自由な生活を許してくれません。non-24を発症している患者は、学校や会社や家族の予定に合わせるため、毎日一定の時間帯に起床・就寝しようと努力していることがほとんどです。

そのため、睡眠記録表を取ると、月に10日ほど眠ることができない不眠症や、睡眠時間帯がばらばらに分断されている不規則型睡眠覚醒パターンのように見えることがあるようです。

確かな診断を得るには、ある程度長い期間にわたって睡眠記録表をつけることが必要かもしれません。

睡眠障害の対応と治療ガイドラインによると、DSPS(またはDSPT:delayed sleep-phase type )は2週間の睡眠記録表で診断できるのに対し、non-24(非同調型)は1ヶ月半の記録が必要だと書かれています。

無理やり社会生活に合わせているため睡眠記録表で判断しにくい場合は、深部体温の連続測定血中メラトニンリズムの測定が決め手となります。

非24時間型(non-24)の睡眠表2わたし自身、今は薬で抑えているものの、過去にnon-24の診断を受けていて、ある時期の睡眠表は右図のようになっていました。

このようにnon-24は、困難な症状を伴うものの、しばしば不眠として見過ごされていることもある不思議な睡眠障害です。

non-24の特徴は?

次に、non-24には、どのような特徴があるのかを知るために、通常の睡眠障害や、同じ概日リズム睡眠障害の、極端な宵っ張りの朝寝坊、しかし日によってずれていったりはしないタイプである睡眠相後退症候群(DSPS)と比べてみましょう。

■眠気:
メラトニン研究の最近の進歩によると健常者と比較して、睡眠相後退症候群(DSPS)や非24時間型(non-24)ではメラトニン分泌が始まっても眠くならないことが報告されています。

これは睡眠中枢が反応不良を起こしているためとされています。脳の興奮を鎮めることができず、寝ようとしても眠くならないので時間がずれていくのです。(p183)

■睡眠薬:
同書によると「通常の睡眠薬の投与で睡眠のタイミングを正常化しようと試みてもなかなか成功しない」と書かれています。(p179)

睡眠障害の対応と治療ガイドラインでも睡眠薬として一般的な、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は生体リズムに関与しないため、効果は期待できないとされています。(p209)

■深部体温のリズム:
メラトニン研究の最近の進歩
によると、健康な人では、睡眠の“後半”、つまり深夜4時ごろに深部体温(体の芯の温度)が最も低下するという自然なリズムが見られます。(p178)

しかしDSPSでは時間がずれているので、睡眠の“中ほど”に最低体温が現れます。このため、朝起きようとしても、深部体温が最も低い時間と重なるため、起きることが困難です。

これに対し、non-24では最低体温が睡眠の“前半”に出現し、しかも毎日ずれていきます。毎日の予定を立てることが非常に難しく、睡眠の質も日によって不安定になります。

そして小児慢性疲労症候群(CCFS)ではそもそも深部体温が下がらず、深部体温のリズムが平坦化しています。これはお年寄りに見られるパターンと似ていて、成人の慢性疲労症候群にはあまり見られないそうです。

深部体温のリズムが平坦化していると、眠りの質が悪く、疲れが回復しないことが考えられます。ですから、DSPSやnon-24は単独でも厄介な病気ですが、慢性疲労症候群が合併すると、睡眠リズム異常に疲労感が上乗せされ、日常生活が不可能になります。

■光への反応性:
メラトニン研究の最近の進歩によると、朝の高照度光によって睡眠リズムが修正されて前倒しになる反応が起こりにくくなっているか、あるいは夜の光により睡眠リズムが後ろへずれこむ反応が起こりやすくなっていると考えられています。(p180-181)

つまり光反応性が低下している場合と、過敏になっている場合があるようです。朝日を浴びても睡眠リズムが元に戻らず、夜にちょっとした光を浴びるだけで、睡眠リズムが狂いやすいということのようです。

うつとの関わり:
以下のニュースにはこう書かれています。
睡眠時間がずれていく!非24時間睡眠覚醒症候群とは [不眠・睡眠障害] All Aboutはてなブックマーク - 睡眠時間がずれていく!非24時間睡眠覚醒症候群とは [不眠・睡眠障害] All About

ある程度の期間、非24時間睡眠覚醒症候群が続くと、多くの患者さんがうつ状態になります。

これは、昼間に会社や学校へ行けず、社会生活ができなくなることへのストレスのほか、日光に当たる時間が短くなることや、体内時計がうまく働かないことも原因だと考えられています。

non-24の人はもともともうつ傾向があるわけではありません。もしうつ病と誤診されるとしたら、non-24の苦労による二次障害が出ているためです。

わたしの場合、十分な睡眠時間を取っていれば、うつは感じません。しかし、無理やり社会の時間に合わせようとしていた時期はイライラしたり落ち込んだりしやすくなりました。ときには徹夜せざるを得ないこともあり、睡眠時間も不足しました。

最近の三島和夫先生の研究で示されていましたが、うつ状態になるのは、社会の時間に合わせようとすることで生じるストレスに加え、睡眠不足も関係しているかもしれません。

■年齢により悪化する?:
主治医によると20歳を過ぎてから悪化する例が多いそうです。わたしの場合も、non-24が悪化して治療法を変えた時期がありました。活動量を増やしたためだと考えていたのですが、年齢の影響とも考えられます。

脳科学と学習・教育にはこう書かれています。

年齢が上がるにつれて24時間生活を保つ力が減少し、生活リズムが次第に24時間より長くなると同時に生活リズムの幅が大きくなってパラける傾向を示した。また24時間リズムに戻す力が衰退していくことが分かった。 (p77)

■他のタイプへの移行:
ここまで見てきたようにnon-24とDSPS、そして不規則型は一見ずいぶん異なるようですが、互いに移行することもあるので、3つに明確な境界線はないとも言われます。

睡眠障害のトピックス:睡眠・覚醒リズム障害について - 日本医科大学の中で現やまでらクリニックの山寺博史先生はこう述べています。

非24 時間型睡眠・覚醒障害や睡眠相後退症候群や不規則型睡眠・覚醒パターンを治療して経過をみていると非24 時間型睡眠・覚醒リズム障害が睡眠相後退症候群に移行したり,逆の経過をたどったりとこの3 群のなかで移行が認められることがある。

…これらのことから,睡眠・覚醒リズム障害は確かに存在するが,上記の下位カテゴリーでの分類を疑問視している研究者もいる。

この考え方では、DSPSとnon-24の病態は連続していて、DSPSがより重症化したものがnon-24だとされています。

non-24の原因は何か?

non-24の原因は長い間よく分かっていませんでしたが、昨2012年、国立精神神経センターの三島和夫先生の研究グループが手がかりを発見しました。プレスリリースにはこう書かれています。

プレスリリース詳細 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センターはてなブックマーク - プレスリリース詳細 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター

概日リズム睡眠障害(睡眠・覚醒リズム障害)の一型である非同調型の発症に体内時計周期の異常が関連していることを世界で初めて明らかにしました。

…本研究の結果、標準型生活者の体内時計周期(その人の一日の長さ)は平均24時間7分であったの対して、非同調型では平均24時間29分と大きく延長していました。

非同調型では周期が異常に長いため、遅れてゆく体内時計を24時間の昼夜リズムに日々時刻合わせをすることが困難になっている(慢性的な時差ぼけに陥っている)ことが明らかになりました。

つまり、non-24の患者は、遺伝的に体内時計の周期が長いようです。もともと遺伝的なリスクがあり、そこへ夜型生活や病気などの環境が重なると、発症してしまう場合もあるようです。

遺伝的な体質が原因である点についてさらにこう書かれています。

概日リズム睡眠障害の患者さんの多くでは幼少時から夜型傾向が見られます(環境ではなく体質が強く関連)

周期が長いほど睡眠リズムを調節する治療(時間療法)の効果が得られにくかったことも、非同調型の発症と治療経過に体内時計の周期の長さが重要な役割を果たしていることを示唆しています

 

全容が明らかでないことに加え、情報が少ないので、間違っている可能性もありますが、今のところ、わたしは以下のような意味だと理解しています。

健康な人:体内時計の周期がほぼ24時間10分前後なので、環境を変えれば、朝型にも夜型にもシフトすることができる。(環境の影響>遺伝的影響)

DSPS:遺伝的に体内時計の周期が長めなため、睡眠時間がずれ込み、遅い時間で安定させるのがやっと。(環境の影響=遺伝的影響)。

non-24:体内時計の遺伝的な周期がさらに長く24時間30分に近いので、日々ずれていくのを食い止めることさえ困難。(環境の影響<遺伝的影響)。

つまり、DSPSとnon-24は連続した病態であり、明確な境界線はないことがわかります。

この三島和夫先生の研究については、ナショナルジオグラフィックの連載記事で詳しく解説されています。皮膚や毛根などの細胞を培養して時計遺伝子の転写周期を調べることで、体内時計の周期が簡単に分かるようになったそうです。

第5回 世界初!睡眠・覚醒リズム障害の原因を解明 | ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版公式サイト第5回 世界初!睡眠・覚醒リズム障害の原因を解明 | ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版公式サイト はてなブックマーク - 第5回 世界初!睡眠・覚醒リズム障害の原因を解明 | ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版公式サイト

 

▼追記(2014/10)
三島先生のところの新しい研究で、non-24には特定の遺伝子多型が多いことが明らかになりました。しかもその遺伝子多型は、睡眠相後退症候群では多くありません。

それが何を意味するのかはまだよくわかりませんが、もしかすると、睡眠相後退症候群は環境や生活習慣など、外的要因の要素が大きい病気であり、non-24は遺伝子多型など内的要因の要素が大きい病気であることを示唆しているのかもしれません。

詳しくは以下のまとめをご覧ください。

【9/9】非24時間型睡眠覚醒症候群(フリーラン型)に関係する遺伝子が見つかる| いつも空が見えるから

 

ここまでのところで、non-24とDSPSの類似点や違いについて書いてきました。どちらも概日リズム睡眠障害であり、互いに移行することがある類似した睡眠障害です。

しかしDSPSが比較的診断しやすいのに比べ、non-24であるか診断するには、長い期間、睡眠記録表をつける必要がありました。

またDSPSが、夜型生活や、それに伴う慢性的な睡眠不足の延長として発症することもあるのに対し、non-24ではより遺伝的な要因が強いようです。

自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害が関係?

近年、non-24の発症につながる素因の一つとして、自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害が注目されています。ASDには、以前からアスペルガー症候群として知られていた人たちも含まれます。

日経サイエンス2016年1月号のnon-24の特集記事では、そのようなASD当事者で、元々、睡眠相後退症候群(DSPS)の体質を持っており、その後non-24を発症した人のエピソードが書かれています。経過がわかるように少し長めに引用します。

ジョーンズ(Sparrow Rose Jones)は人が奇異の目で見るほどの夜型人間で、これまでの人生の大半を朝方に就寝し夕方近くに起きて過ごしてきた。

ケンタッキー州ルイビルでの少女時代には学校生活でも問題があった。自閉症(自閉症スペクトラム)で人づきあいに苦労したからでもあり、いつも疲れているからでもあった。

…ジョーンズは優秀な学生で、何度か優等生表彰者リストに入ったこともある。しかし無理に昼間の時間割に合わせなければならず、そのための努力は苦行だった。疲労困憊し、経験したことのない状態になった。

…その間、睡眠時間はますます不規則になった。ある夏、仕事を入れず目覚まし時計もなしで自分の睡眠を記録し、自分が普段の夜型に戻っていくのではないことを知った。むしろ就寝時刻と起床時刻が毎日ずれていくようだった。

…自作の睡眠記録表を見せたところ、医師はあっと思い、珍しくも興味深い病気に気づいた。「非24時間睡眠覚醒症候群」、略してnon-24だった。(p41)

このエピソードによると、自閉スペクトラム症の少女ジョーンズは、子どものころからずっと極端な夜型、つまり睡眠相後退症候群(DSPS)の傾向を持っていて、とても疲れやすい体質でした。

それが、大学生活で、昼間の授業に合わせようと無理をしたところ、体調を壊し、DSPSからnon-24へと発展したのでした。

これはわたし自身の経験とよく似ていて、わたしも元々強い夜型でしたが、10代のころの学生生活で疲労困憊したとき、non-24に移行しました。

後ほど説明しますが、もともとnon-24の遺伝的傾向を持つ人の中には、ギリギリのところでフリーランをとどめていて社会生活に適応しているものの、強いストレスなどが加わると耐え切れなくなってしまい、DSPSからnon-24に移行する人たちがいるようです。

ジョーンズ自身が認めるとおり、彼女の強い夜型傾向は遺伝でした。

ずっと後にジョーンズは、自分が父から概日リズム睡眠障害(睡眠相後退症候群)を受け継いだことを知る。これは人を重度の夜型人間にして、明け方近くまで起きていて午後まで眠るのが普通のような状態になる。

…こうした遺伝する朝方夜型などの睡眠パターンはクロノタイプと呼ばれる。極端なクロノタイプはまれで、例えば睡眠相後退症候群の人は2000人に3人だ。(p43)

ジョーンズの家系に睡眠相後退症候群(DSPS)が遺伝していたのはなぜでしょうか。おそらく、ジョーンズに受け継がれていたもう一つの傾向、つまり自閉スペクトラム症と無縁ではないはずです。

以前のニュースによると、体内時計の調節はバソプレシンというホルモンのシステムが関わっているかもしれないとされていましたが、パソプレシンやオキシトシンは、発達障害や愛着障害で不足しやすいホルモンです。

近年の研究によると、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)の子どもが、学齢期以降、概日リズム睡眠障害のために病院を訪れるケースが多いとされているようです。

子どもの睡眠と発達医療センター、睡眠障害で入院する子どもの2/3が自閉スペクトラム症 | いつも空が見えるから

 

ASDとADHDとでは、それぞれ、睡眠リズムがずれやすいメカニズムは異なるかもしれません。ASDでは、さまざまな症状の根底にリズム障害がある可能性も指摘されています。

慢性疲労症候群の子ども(CCFS)には発達障害が多いー治療にはADHDや自閉スペクトラム症の理解が不可欠 | いつも空が見えるから

 

一方ADHDでは、興奮した神経モードを切り替える力が弱い可能性があります。

なぜADHDの人は寝つきが悪いのか―夜疲れていても眠れない概日リズム睡眠障害になるわけ | いつも空が見えるから

 

おそらくは重なり合っている部分もあるでしょうが、いずれにしても、ASDやADHDの発症には遺伝が大きな役割を果たしていますから、これらの発達障害の人がDSPSやnon-24になりやすいということは、概日リズム睡眠障害には遺伝的な要因があるということを示唆しているように思えます。

▼追記(2016/09/16)
non-24の原因として、遺伝的な体内時計の長周期や、発達障害におけるバソプレシンというホルモンのシステム異常が関与しているのではないか、とすでに触れました。

この点について、脳内の視交叉上核と呼ばれる体内時計の中枢に存在するバソプレシンの産生細胞が、体内時計の周期を決めているとする研究報告が金沢大学から出されました。

脳内物質「バソプレシン」産生の神経細胞が体内時計の周期を決定-金沢大 - QLifePro 医療ニュース

視交叉上核内に存在する神経細胞のうち「バソプレシン」という物質を産生する神経細胞が体内時計の周期を決めることを世界で初めて突き止めた。

バソプレシ ン産生神経細胞が生み出すリズムの周期を遺伝子操作により長くすると、体内時計により制御されるマウスの行動リズムの周期も約1時間長くなった。

逆にバソ プレシン産生神経細胞のリズムの周期を短くすると、行動リズムの周期も約30分短くなったとしている。

この研究結果について、金沢大学によるプレスリリース体内時計が刻む1日の長さを決める細胞を発見! | 金沢大学 に載せられているマウスの睡眠リズムの実験結果のグラフを見てみると、明らかにnon-24の患者の睡眠リズムそのものです。

non-24の人が抱える体内時計の遺伝的な長周期の原因が、バソプレシンの産生細胞にのみあるのかどうかはわかりません。

しかし、この研究結果からしても、自閉症などの発達障害と、それに併発しやすい概日リズム睡眠障害には、オキシトシン-バソプレシンシステムの異常という共通の原因が関わっている可能性があるように思います。

詳しくは以前の記事もご覧ください。

体内時計のペースメーカーの一端をバソプレシンが担っている | いつも空が見えるから

 

自閉症でバソプレシン(AVP)が低下している―愛着や睡眠リズムに関係するホルモン | いつも空が見えるから

 

なぜ強い疲労を感じるか?

すでに引用したとおり、メラトニン研究の最近の進歩に載せられている日本大学医学部附属板橋病院の内山真先生のnon-24についての説明には、慢性疲労症候群(CFS)との関連も書かれていました。

non-24を抱えながら社会に合わせようとする無理のある生活を続けた結果、睡眠よりも疲労の問題が大きくなり、慢性疲労症候群(CFS)と診断される場合があることが書かれています。

なぜnon-24の人は強い疲労を感じることがあるのでしょうか。

これには体内のサーカディアンリズム(概日リズム)の異常が関係しているようです。人間はさまざまなサーカディアンリズムが連動してはじめて規則正しい一日の生活ができるよう造られています。

その中には、睡眠覚醒リズム、深部体温リズム、ホルモンリズムがあります。これら3つは一般に、恒常性が強く、足並みをそろえて同調しているとされています。

つまり、目覚めるころには、コルチゾールが高まってストレスに備えさせられ、深部体温も上がってきて活動しやすくなります。夜寝る時間には眠りを誘うメラトニンが分泌され、体温が低下して自然な眠気が生じます。

神山潤先生の著書「夜ふかし」の脳科学―子どもの心と体を壊すもの (中公新書ラクレ)によると、ちょうどそれは、さまざまな楽器が、オーケストラの指揮者によって束ねられ、心地良い音楽を奏でるのと似ています。(p50-51)

内的脱同調(慢性的な時差ぼけ)とは何か?

しかし1970年代に24歳の女性で行われたある実験があります。光に当たらない生活を続けて睡眠リズムをフリーランさせると、初めの間、これら3つのリズムは足並みを揃えていたのですが、2週間経ったとき、3つともバラバラに周期を刻み始めたそうです。

まるで指揮者が眠りこんでしまい、それぞれの楽器がバラバラに不協和音を奏ではじめたかのようです。

この状態を内的脱同調といいます。

いわば、慢性的な時差ぼけ状態であり、朝起きようとしても体温が最低だったり、昼間にメラトニンが分泌されて眠くなったりして、ふつうの生活が苦痛になります。十分な活動だけでなく十分な休養も得られないので、細胞疲労が蓄積し、回復することがありません。

本来なら、日中の光によって内的脱同調が起きないよう体内時計が調整されるのですが、DSPSやnon-24の人は光への感受性体内時計の周期が普通と異なるため、内的脱同調に陥りやすいのかもしれません。

もちろん、内的脱同調の段階では、慢性的な疲労という程度であり、日常生活が送れなくなるわけではありません。時差ぼけ状態でも観光できるのと同様です。

しかし、不登校外来―眠育から不登校病態を理解するによると、内的脱同調をきっかけに睡眠障害に陥り、中枢神経にまでダメージが及ぶと、慢性疲労症候群(CFS)に移行すると考えられています。(p48-49)

慢性疲労症候群の原因はさまざまであり、内的脱同調は考えうる原因のひとつに過ぎませんが、この中枢性疾患を発症すると、社会生活は不可能になります。

non-24と慢性疲労症候群(CFS)の関係

ではnon-24の患者は必ず慢性疲労症候群(CFS)のような体調になってしまうのでしょうか。non-24とCFSを併発している場合、疲労の原因は、すべてnon-24にあるのでしょうか。

わたしが調べた限りでは、必ずしもそうではないようです。

国立精神・神経センターの三島和夫部長は非同調型の人の体質についてこう述べています。

第11回 体内時計と睡眠習慣の関係がついに明らかに! | ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版公式サイトはてなブックマーク - 第11回 体内時計と睡眠習慣の関係がついに明らかに! | ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版公式サイト

眠くなる時間が毎日毎日遅れていくのを微調整するのが大変で、要するに早寝早起きのほうにずらすことがほとんどできない。何とかその位置を保つのが精いっぱい。

物心ついた頃から全然朝起きれない、宵っぱり、寝坊の子ども時代を送って、あとは遅刻の常習魔になる

non-24の人は体質的に朝起きるのが苦手ですが、よほどひどくない限り、社会のリズムに合わせられないわけではありませんわたしの場合も、子どものころは、一応のところ、朝起きることができていました。しかし基本的に早起きは苦手で、遅刻しかけることはよくありました。

メラトニン研究の最近の進歩には、DSPSとnon-24の症例が載せられています。しかしどちらも遅刻や欠席が多いものの、社会で働くことができています。三島先生の説明でも「遅刻の常習魔になる」と書かれている以上、働けないわけではありません。(p185-186)

内的脱同調のため疲労を感じやすいとはいえ、必ずしも異常な疲労を伴う慢性疲労症候群(CFS)のようになるとは限らないことがわかります。

しかし、non-24を抱えながら無理をして学校生活や社会生活に合わせようとした結果、夜眠れないときでも早く起きる必要があるので、睡眠不足症候群(BIISS)になるかもしれません。普通の人より努力して起きているので、他のさまざまなストレスへの抵抗が弱まっているかもしれません。

先ほどの日経サイエンス2016年1月号の特集の中でジョーンズについてこう書かれています。

しかし、視力のある人がnon-24にかかることもまれにあり、その原因はわかっていない。

ジョーンズは自身が遺伝的にかかりやすく、そのことと3年に及ぶ社会的時差ぼけとが結びついて発症に至ったのではないかと考えている。

「つぎはぎの日課が何かの生物学的スイッチを切り替えたんだと思います」と言う。

そのスイッチは脳の親時計にあった可能性が高い。…親時計が正しく機能しなくなると、内臓は別々のテンポで活動するようになる。

指揮者なしで、演奏者がそれぞれ勝手に演奏しているようなものだ。その結果、病気になる。(p44)

睡眠不足、内的脱同調を抱えながら何とかバランスを保っているところへ、精神的な重圧や過重労働、インフルエンザ感染などの大きなストレスがかかると、中枢神経にまでダメージが及び、non-24や、さらに内的脱同調が悪化した慢性疲労症候群(CFS)になり得るのではないかと思います。

日本臨牀 2007年 06月号 [雑誌]には「CFS患者では…、連日ほぼ一定の時間入眠がずれていく非24時間型睡眠障害の例も見られることが知られている」と書かれています。(P1059)

はっきりとしたことは分かりませんが、遺伝的な体内時計の長周期があると内的脱同調による慢性疲労に陥りやすく、場合によっては慢性疲労症候群(CFS)を発症するリスクもあるといえそうです。

非24時間型睡眠覚醒症候群(non-24)の治療法は?

治療法は、基本的にはDSPSの場合と同じだそうです。

夜眠れず朝起きられない「睡眠相後退症候群(DSPS)」にどう対処するか(4)診断と治療夜眠れず朝起きられない「睡眠相後退症候群(DSPS)」にどう対処するか(4)診断と治療はてなブックマーク - 夜眠れず朝起きられない「睡眠相後退症候群(DSPS)」にどう対処するか(4)診断と治療

 

しかしnon-24の治療はDSPSよりも困難です。慢性疲労症候群の子どもを診ている粂先生はご自身のブログでこう書いておられました。

怒りの病名としての「小児慢性疲労症候群」: 粂 和彦のメモログはてなブックマーク - 怒りの病名としての「小児慢性疲労症候群」: 粂 和彦のメモログ

C-CFSの子の大半は、睡眠障害があり、夜型がひどくなるDSPSタイプ、睡眠時間が長くなる長時間睡眠タイプ、起きている時に眠気がひどい過眠タイプ、睡眠相がずれ続けるノン24タイプです。

この中で、だいたいこの順で、環境などの外的要因と、体質などの内的要因の強さが違うと思います。

つまり、 DSPSは、生活・睡眠衛生指導で改善することが多いのですが、この子のような非24時間タイプは、もっとも器質性の部分が大きく、なかなかフリーランを止めることができません。

多数例の解析では、メラトニンなどの薬物治療の有効率も半分程度です

ここまで考えてきたところによると、DSPSとnon-24は連続した病態ですが、non-24のほうが体内時計の遺伝的な周期が長かったり、光への感受性が低下、または過敏になっていたりするため、治療しにくいということになります。

生活を調整する

まず考えられるのが、無理やりフリーランを食い止めるのではなく、自分のリズムに合った生活を送るという選択肢です。non-24の患者は、社会ではなく自分のリズムに合わせて生活した場合、起きている間の気分はそれほど悪くなく、安定することが知られています。

不登校外来―眠育から不登校病態を理解するにはこう書かれています。

このタイプ[非24時間型]も睡眠時間はほぼ10時間を示すことが多いが、このリズムに従って生活できる場合は覚醒中の気分はそれほど悪くない。

このリズムで社会生活を続けている人もみられるが自由業などに限られる。 (p29)

リズムがはっきりわかれば、それに合わせて講義の時間を入れたり、自由業を営んだりできるかもしれません。ネット上でもそのような生活をしている方の記述がありました。

典型的なnon-24で、どのようにあがいてもフリーランが止まらないような場合は、この方向で考えるべきかもしれません。しかし、慢性疲労症候群を合併しているなら、それだけで疲労が回復するとは限りません。

光環境を整える

いっぽう、正しいリズムの生活を続けることで体が慣れてくる可能性もあるらしく、わたしの場合はそちらに期待しています。

non-24では、朝の光への感受性が低くなっていたり、夜の光への感受性が高くなっていたりします。そのため、シンプルながら、しっかり朝日を浴び、夜は暗くして電子機器の電源も切る、という対策は欠かせません。寝室のカーテンを開けたまま寝たり午後はサングラスを着用したりといった工夫もできます。

また、DSPSと同様、家庭用の光治療器や、入院による高照度光療法が選択肢に入ります。古い資料には、「難治性と考えられていた非24時間型睡眠障害には有効性が高いことがわかった」と書かれていました。

高照度光療法については以下もご覧ください。 「高照度光療法」は自宅でも可能? 睡眠障害や小児慢性疲労症候群(CCFS)の治療法 | いつも空が見えるから

 

しかしわたしの主治医によると、non-24の子どもは、入院生活中は、睡眠リズムが正常化するものの、退院後は元に戻ったりDSPSに移行したりすることが多いそうです。

non-24で、しかもCFSを発症してしまった場合、不登校外来―眠育から不登校病態を理解する書かれている次のような傾向がより強力なのかもしれません。

[CCFSの子どもは]脳機能のバランスを欠くために脳全体の細胞を総動員して興奮させなければならず、…気分不良、寝つき不良につながり生体時計がますます乱れ、脳機能もさらに乱れることになってしまう。 (p85)

わたしも一時期安定していたようなのですが、体力がついてきて、活動の予定を増やしたとき、発症当初のnon-24が再度ひどくなりました。脳が興奮しやすいため、活動が増えたり、日常の光環境にさらされたりすると、フリーランしやすいのでしょうか。

成人のCFSに関する2002年の研究では、運動負荷後のサーカディアンリズムが24時間より延長し、生体リズムの異常を引き起こすことが分かっています。CFSは軽度の負荷でも24時間以上疲労感が続きますが、ちょっとしたことで神経が興奮し休まりにくいのかもしれません。

以上の点から、フリーランを食い止めるには光環境を整えるだけでなく、脳の興奮を鎮める対策も必要であることがわかります。

薬物療法

概日リズムのずれを修正したり、脳の興奮しやすさを鎮めるために用いられるのが薬物療法です。

メラトニン、メラトニン受容体作動薬: 
毎日、希望する入眠時刻の2時間以上前(4-5時間前という人もいる)の一定時刻に、1-5㌘のメラトニンを服用すれば、生体時計同調作用により、睡眠リズムが前にずれ、正常に近づくと言われています。

ポイントは、寝る1-2時間前ではなく、本来寝たい時間の2時間以上前という点です。non-24では、健康な人に近いリズムになったころにメラトニンの服用をはじめると良いそうです。

また、メラトニンには深部体温を下げて、脳の興奮を鎮静化させる作用があるので、リズムのずれを食い止める助けになるかもしれません。

しかしメラトニンの服用は、社会的に規則正しい生活を続けていく努力をしなければ、元のリズムに戻ってしまうと言われています。別の病気も合併している場合、並行して改善しなければ、一時的な回復で終わってしまう可能性があります。

また2013年に国立精神神経センターが発表した睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドラインにはこう書かれていました。

メラトニンが不眠症や概日リズム睡眠障害(時差型、交代勤務型、睡眠相後退型、フリーラン型)に有効であるという報告が続いていたが(299)、睡眠相後退型以外の睡眠障害に対するメラトニンの有効性を疑問視するメタ解析研究もある

メラトニン受容体作動薬ロゼレムについては以下の記事にまとめています。

【10/11】睡眠のリズムを整える新しいタイプの薬「メラトニン受容体作動薬」【10/11】睡眠のリズムを整える新しいタイプの薬「メラトニン受容体作動薬」はてなブックマーク - 【10/11】睡眠のリズムを整える新しいタイプの薬「メラトニン受容体作動薬」

 

ビタミンB12(メコバラミン):
non
-24に特別効果的な治療法として、ビタミンB12大量療法が挙げられることがあります。推奨されているのは、1.5-3 mg量のメコバラミン錠(つまり3-6錠)です。

ビタミンB12には光への感受性を高める効果があると考えられていて、「概日リズム睡眠障害」(日本臨床 67(8), 1501, 2009)によるとnon-24をDSPSの状態まで軽減できる場合があるそうです。つまり、ビタミン12やメラトニンを服用しつつ、生活習慣を改善すれば、効果が見込める可能性があります。

慢性疲労症候群(CFS)の患者の場合、ビタミンC(アスコルビン酸)やB12は、服用するよりも点滴で摂取するほうが効果が高いという話をよく聞きます。錠剤より点滴のほうが吸収しやすいのかもしれません。

わたしの場合:
わたしが病院で処方されたのは、交感神経α受容体遮断薬(クロニジン)と抗ドーパミン作用をもつ薬(リスパダール)を眠前に少量服用して脳の興奮を鎮め、第一世代の抗ヒスタミン薬(レスタミン)で中途覚醒を抑える方法です。

メラトニンや光治療器、ビタミンB12の効果はほとんど感じなかったのですが、この方法でフリーランを可能な限り食い止め、社会生活に合わせられるようになりました。

人によって処方される内容は違うでしょうが、わたしの場合には効果があったようです。薬の内容から見て、わたしの場合はベースにあるADHDが関係していたということなのでしょう。

さまざまな安眠対策

定番ですが、夜はパソコンやスマートフォンを見ない、自分なりの入眠儀式を作る、寝る前にGTDのテクニックで気になることを全て書きだす、寝室に空気清浄機などの環境音を流すなど、さまざまな安眠対策を併用することは、とても大切です。

極端な話をすれば、自分に合った薬物療法をしていても、夜中にネットサーフィンをしているなら、眠れるはずはありません。わたしも、薬物療法に加え、いろいろな安眠対策を併用して、睡眠に役立ちそうなことは何であれ積極的に取り入れていきたいと考えています。

まとめ:「上質な睡眠」を手に入れる方法30選 : ライフハッカー[日本版]まとめ:「上質な睡眠」を手に入れる方法30選 : ライフハッカー[日本版]はてなブックマーク - まとめ:「上質な睡眠」を手に入れる方法30選 : ライフハッカー[日本版]

 

non-24を乗り越える!

冒頭で引用した専門医の率直な言葉が示すとおり、non-24の人の生活は悲惨です。日経サイエンス2016年1月号の中で、ジョーンズのnon-24が最も悪化した時期の苦悩についてこう綴られています。

ジョーンズのnon-24は進行してひどくなった。就寝時間は定まらず、時計の上をでたらめに移動した。計画が立てられず、友人とのお茶の約束もできなかった。

「とても生活とは言えません。結婚式やお葬式にでられるかどうかもわからないんです」。

体が真夜中だと思っている時刻に無理に起きていると病気がひどくなるだけだった。内臓がますます互いに連携しなくなり、吐き気、うつ、疲労が増していった。(p44)

わたしもまったく同じでした。

わたしは現在の活動の範囲内ではnon-24の影響を食い止めていますが、三島和夫先生が話す通り、さまざまな手段を駆使して「何とかその位置を保つのが精いっぱい」です。生活の負荷が増えると、フリーランしはじめることが多く、対策を模索しています。

しかし、ここに挙げた治療法や、今後の情報収集で得る知識を組み合わせて工夫してゆけば、対処できる可能性は大いにあると考えて、楽観的な見方をしています。

生命倫理の基本概念 (シリーズ生命倫理学)によれば、筋痛性脳脊髄炎(慢性疲労症候群の別名)を患ったスーザン・ウェンデルは次のように書いたそうです。

私にはまったく変わり果てたように感じられた身体―弱々しく、憔悴し、痛みに満ち、不快で、目眩し、これからどうなるかもわからない身体―とともに生きていく術を、私は学ばなければならなかった。

…健常な身体をもった人たちは、私が最も知らなければならないことすべてについてまったく無知なのだと私には思えてきた。

…回復を待ち望んだり、健康な身体を取り戻せると信じることは、かえって危ないことなのだと私は自覚した。私は少しずつ、私の新しい、障害のある身体との距離を縮めながら、この身体と折り合いをつけていく術を学び始めた。 (p109-110)

いつか回復するだろうと待ち望み、辛い症状をただ我慢しているだけでは、自分の病気について驚くほど何も知らないまま、何年もの歳月を過ごすことになりがちです。

闘病はデータを取ること知識を集めることから始まります。まずはライフログを記録できるアプリやツールを用いて自分の問題をデータ化します。そして問題点が明らかになったなら、情報を集め、自分に役立ちそうな方法を順次試していきます。

それは、日経サイエンス2016年1月号の特集記事のジョーンズが実践したことでもあります。彼女は結局どうなったのでしょうか。

ジョーンズは、概日リズム睡眠障害と付き合うために、普通の生活を犠牲にして、新たな人生を歩むことにしました。

ここまで、朝日を浴びる高照度光療法とか、夜はブルーライトの光に当たらないといった概日リズム修正の方法を挙げて来ましたが、ジョーンズにとってそれでは不十分でした。ジョーンズに効果があった治療法は、その程度のものではなく、まさに究極のものでした。

私たちの祖先が何百万年もしていたようなアウトドア生活を送ること、つまり毎日めいっぱい日光を浴び、夜は真っ暗闇の中で過ごすことで、概日リズム障害が治るかもしれないという理論である。

…私がこの記事を仕上げた6月には、ジョーンズの概日リズムは自然に、また無理なく、規則的な午前8時の起床時刻に落ち着きつつあるらしかつた。

ただこの規則正しい起床のリズムは、友人を訪ね屋内で眠るたびに失われた。

「屋外で眠ることが根本的な“治療”であるのに、それを実行できる人がほとんどいないのは残念なことです。私にとって、この自然療法が飛び上がるほどうまくいっているだけに」。(p48)

彼女はこれまでの生活すべてを一新させ、生き方そのものを変えました。彼女がnon-24という難病を克服するには、多くのことを犠牲にするとしても、それを選ぶほかなかったのです。

現代社会で、ジョーンズほど思い切った決定ができる人がどれほどいるでしょう。わたしもそこまでの勇気と決断力は持ちあわせていません。

しかし、ジョーンズのエピソードについて考えてみることは、non-24がいかに深刻な病であるか、そして、それに立ち向かうには、いかに大きな覚悟を必要とするかを知る助けになります。

ジョーンズは、この新しい生活を不自由に思うどころか、non-24から解放されたことを喜び、自作のCDやエッセイ集を出すなど、以前よりはるかに生き生きと過ごしているそうです。

non-24の人にとって、彼女のような大きな決断こそが、もしかすると人生を変えるチャンスになりうるのかもしれません。

▼non-24の経験談
non-24の人がどんな苦労に直面するか、という点については、こちらの方の記事がおすすめです。当事者ならではの気持ちを丁寧に描写してくださっていて、わたしも非常に共感できました。

非24時間睡眠覚醒症候群(non24,フリーラン)について詳しく。みたいな話。 - ななめ裏

 

▼概日リズム睡眠障害の病院
このエントリに関連する研究者の方々について、ドクターズガイドへのリンクを紹介しておきます。それらの先生方の治療方針について詳しいことを知っているわけではないので、情報として記載するに過ぎません。

三島和夫 医師,【不眠症、睡眠・覚醒リズム障害、冬季うつ病】,国立精神・神経医療研究センター病院-精神生理研究部 | ドクターズガイド三島和夫 医師,【不眠症、睡眠・覚醒リズム障害、冬季うつ病】,国立精神・神経医療研究センター病院-精神生理研究部 | ドクターズガイドはてなブックマーク - 三島和夫 医師,【不眠症、睡眠・覚醒リズム障害、冬季うつ病】,国立精神・神経医療研究センター病院-精神生理研究部 | ドクターズガイド

 

内山 真 医師,【気分障害 睡眠障害 統合失調症】,日本大学医学部附属 板橋病院-精神神経科 睡眠センター | ドクターズガイド内山 真 医師,【気分障害 睡眠障害 統合失調症】,日本大学医学部附属 板橋病院-精神神経科 睡眠センター | ドクターズガイドはてなブックマーク - 内山 真 医師,【気分障害 睡眠障害 統合失調症】,日本大学医学部附属 板橋病院-精神神経科 睡眠センター | ドクターズガイド

 

梶村尚史 医師,【不眠症】,むさしクリニック-心療内科、精神科 | ドクターズガイド梶村尚史 医師,【不眠症】,むさしクリニック-心療内科、精神科 | ドクターズガイドはてなブックマーク - 梶村尚史 医師,【不眠症】,むさしクリニック-心療内科、精神科 | ドクターズガイド

 

田島世貴 医師,【疲労科学(慢性疲労症候群)、睡眠医学、小児発達神経科学】,『慢性疲労症候群』,兵庫県立リハビリテーション中央病院-子どもの睡眠と発達医療センター(たじませいき,) | 名医を探すドクターズガイド田島世貴 医師,【疲労科学(慢性疲労症候群)、睡眠医学、小児発達神経科学】,『慢性疲労症候群』,兵庫県立リハビリテーション中央病院-子どもの睡眠と発達医療センター(たじませいき,) | 名医を探すドクターズガイド

 

不眠症 | ドクターズガイド不眠症 | ドクターズガイド

 
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