小児CFSの本「フクロウ症候群を克服する―不登校児の生体リズム障害」(中)

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Hさんは通学に往復三時間ほどかかってしまいます。大学受験のための朝の課外を受けなくてはなりませんので、朝五時半に起きて登校し、部活のために帰りは夜九時を回ってしまうという毎日です。

二年生のはじめから、疲労感があると訴えはじめておりましたが、ある日家にたどりつくと同時に倒れて病院に運ばれました。

点滴などの治療を受けましたが疲労が回復せず、日常生活ができなくなりました。睡眠時間がずれて昼夜逆転が起こりました。

…もしこのような生活を学生たちに強いているのがふつうだと感じられる大人たちがいるとすれば、それこそふつうではないと思います。(p109)

初のエントリでは、フクロウ症候群を克服する―不登校児の生体リズム障害 (健康ライブラリー)という本にもとづき、不登校の子どもの一部に、ひどい疲労と昼夜逆転を伴う人たちがいる、という点に注目しました。

本書の執筆時点では、それは「フクロウ症候群」と呼ばれていましたが、今では、成人における慢性疲労症候群とほぼ同一であると判明しています。

育ち盛りの子どもが慢性疲労症候群になる原因はどこにあるのでしょうか。

▼シリーズ記事「小児CFSの本」

小児CFSの本では、子どもの慢性疲労症候群に直接言及している本を紹介しています。

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フクロウ症候群の原因は何か

前半のエントリの最後で、慢性疲労症候群の昼夜逆転は、「夜型生活をつづけているうちに、自分の生活リズムと社会の生活リズムとの間にずれができてしまって、社会生活に適応できなくなった」のではない、という点を引用しました。(p138)

現に、「フクロウ症候群の若者たちは、幼稚園、小学校時代を通して早寝早起きの朝型生活だった子どもが意外に多いという結果になっている」そうです。(p102)

単に夜型生活を続けるだけで慢性疲労症候群になるとは考えられません。夜のコンビニの光やゲーム、スマートフォンより、比べ物にならないほど強力な発症因子があるのです。それは何でしょうか。冒頭に引用した話に答えがあります。

受験勉強を控えた頑張り

最大の要因は、端的にこう要約されています。

とくに受験を控えた中学生や高校生の多くにフクロウ症候群が多発する事実は、睡眠覚醒リズムを犠牲にした毎日の頑張りが疲れを生み、生体リズムに障害をおこす可能性を示しています。(p106)

調査によると、特に夜遅く(1時過ぎ)に寝るタイプ、および学校から帰って一度仮眠をとり、その後明け方まで勉強し、再度睡眠をとるグループは危ないそうです。こうした受験勉強を控えた過密スケジュールは、以下のニュース記事でも問題視されています。

【アーカイブから】眠れぬ子供たち 夜型生活の犠牲者【アーカイブから】眠れぬ子供たち 夜型生活の犠牲者

日本の偏差値教育は「右腕が太くて腕相撲だけは強いが、左腕や足腰は弱く、人生のマラソンには向いていない」人間をつくり出しています。しかも他の人の成功を一緒に喜ぶよう促すのではなく、他の人に勝つことを喜ぶよう仕向けます。(p150)

「今は勉強だけの時である。遊びごころは一切捨てて受験にまい進しなさい」という時間が半年も何年もつづくのは、人権を無視した貧困な環境だと著者は指摘しています。(p152)

連日の激しい運動

結論をいえば、日本における部活の本態は若者を疲れさせることにあり、フクロウ症候群の源であるということになります。

…さらには学校社会の「休むことを許さない」体質が、子どもたちをフクロウ症候群に追い込んでいると考えられます。 (p117-118)

スポーツは一見からだを動かすものと考えられがちですが、実は最初に疲労を感じるのは脳の中枢神経だそうです。筋肉は超回復によって成長するので、適度に休みを取るなら身体機能が成長しますが、毎日行うなら、疲労が蓄積するばかりです。(p113)

連日の激しい運動の結果、待っているのは、オーバートレーニング症候群(OTS)です。OTSは慢性疲労症候群と同等の状態、つまり慢性疲労を通り越した、容易には回復しない生体リズム障害だと言われています。

有能なコーチは、休みたがらない選手にいかに休養を与えるか第一に考えるそうですが、日本の学校の部活はほぼ毎日、土日の休みなく行われています。ときには体罰さえ伴う過酷なものであることは、先日取りざたされたとおりです。

それは体罰の問題ではないー背後にある「壮大な人体実験」とは何かそれは体罰の問題ではないー背後にある「壮大な人体実験」とは何かはてなブックマーク - それは体罰の問題ではないー背後にある「壮大な人体実験」とは何か

200以上ある国の中で、体育を教科としている国は10程度だそうです。大多数の国の人にとってスポーツは自分で楽しむ「レジャー」ですが、日本では人に言われてやる「労働」なのです。(p134)

いじめ

これまでの話から、日本という国はよくよく疲れることの好きなところだと感じていただけたかと思います。休みのない詰め込み勉強、休みのない部活、休みのない仕事、とつづきましたが、まだまだ大物がフクロウ症候群の背景に残っております。(p120)

慢性疲労症候群のきっかけは凄惨ないじめかもしれません。いじめは自分の存在が否定される衝撃的な経験です。いじめられた子どもの脳は緊張状態になり、一時足りとも休まりません。(p120)

日常的な虐待や暴言が脳を萎縮させてしまうことは、以下のエントリでも取り上げました。

だれも知らなかった「いやされない傷 児童虐待と傷ついていく脳」(2012新版)だれも知らなかった「いやされない傷 児童虐待と傷ついていく脳」(2011新版)はてなブックマーク - だれも知らなかった「いやされない傷 児童虐待と傷ついていく脳」(2012新版)

偏差値社会における「何事においても他人と比較する」という体質と、いじめにおける「ダメな人間だ」というレッテルは同じものです。(p145)

ここに挙げた3つの背景は、どれも脳の一部の興奮状態をもたらします。脳細胞の過労と機能低下が生じ、生体リズムを保つ体内時計が狂います。中枢神経が疲労し、自分ではどうしようもない疲労感や昼夜逆転が生じてしまうのです。

このほか、インフルエンザやカゼがきっかけになり、朝起きができなくなる場合もあるそうです。(p130)

では、フクロウ症候群はどうやって治療すればよいのでしょうか。今苦しんでいる人に役立つアドバイスがあるでしょうか。 慢性疲労症候群はいまだ万人に有効な治療法はない病気ですが、最後のエントリでは、特に治療の心構えに注目したいと思います。

 

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