小児CFSの本「フクロウ症候群を克服する―不登校児の生体リズム障害」(下)

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2番目のエントリでは、フクロウ症候群を克服する―不登校児の生体リズム障害 (健康ライブラリー)という本にもとづき、ひどい疲労と昼夜逆転の原因が、脳を休めない環境にあるという点に注目しました。

本書における「フクロウ症候群」は、成人における慢性疲労症候群とほぼ同一であると判明しています。

残念ながら、慢性疲労症候群の根本治療の方法はいまだありません。それでも、治療のために役立つどんなアドバイスがあるでしょうか。

▼シリーズ記事「小児CFSの本」

小児CFSの本では、子どもの慢性疲労症候群に直接言及している本を紹介しています。

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どうやって治療するの?

特に治療の心構えに注目して7つの点をまとめてみました。

1.まず覚悟する

残念ですが、少なくとも数ヶ月長ければ数年間、自らが納得できる社会での活動はほとんど行えなくなります。

この覚悟をまずしていただく必要があります。(実際には無理な注文であることは知っております)。

そのうえで、まず眠れるだけ眠ります。いわゆるフリーラン的な生活を1~数週間していただくのですが、この生活状態を表にしておいて下さい。治療上参考になるからです。(p166)

最初に求められるのは、すべてを捨てて回復に専念する覚悟だそうです。学校にしがみつけばしがみつくほど症状が悪化してしまいます。

休むことを決意したら、まず徹底的に眠りたいときに眠ることで、自分に必要な睡眠時間の量や、睡眠時間のタイプ(睡眠相後退型、フリーラン型、不規則型)を知るようにします。そのデータによって、治療の方針が定まるそうです。

2.最低限のくすり

自分で昼夜逆転状態を変えたいと思っても、ほとんど成功することがないので、最低限のくすりに頼ります。それには睡眠リズムにかかわるメラトニン、脳の興奮をとり成長ホルモンの分泌を促すクロニジン、生体リズムの調節に役立つビタミンB12などが含まれます。(p168-170)

注意したいのはメラトニンの服用タイミングです。睡眠剤のように眠前に飲んでしまう人も多いのですが、それでは睡眠時間がずれたまま戻りません。

メラトニンは、服用して4-5時間後に血中濃度が低下し、自分の体内で作るメラトニンの分泌が促されるという特徴があります。そのとき、ずれていたピークが引き戻されるので、午後9-10時に寝たいなら、午後6-7時ごろに飲むのがよいのではないかとされています。(p176)

3.少しでも朝食を食べる

食欲がなくても、3度の食事を少しずつでもとるよう勧められています。(p180)

「時計遺伝子」の力をもっと活かす!: がん、うつ、メタボも防ぐ、体内の「見張り番」 (小学館101新書)という本によると、最近の研究では、脳の体内時計とは別に、食事を中心にして調整される「腹時計」ともいえる体内時計が存在していることがわかっています。

脳の体内時計が損なわれていても、食事時間を適正にすれば正しい生活リズムが戻るそうです。

食事によるリズムの調整は、空腹期間(断食)が長いほど効果が高く、少量の朝食でも効果があります。夕食を早めに取り、空腹時間を長くすること、朝、食欲がなくても、少しの朝食をとることが効果的かもしれません。

なお時刻合わせの観点からすると、朝食と昼食を一緒くたにした、いわゆる“ブランチ”が一番悪い影響をもたらすそうなので、気をつけたいところです。(p168)

4.まったく新しいことを楽しむ

わずかな起きている時間には何をすべきでしょうか。遅れた分を少しでも取り戻そうとして、無理やり勉強や仕事をしようとするでしょうか。あるいはゲームやマンガなど、今までやっていた気分転換に終始してしまうでしょうか。

三池先生は「今までの生活とはまったくちがうことをやってみる度胸があるか」と問いかけています。(p181)

学校や会社に戻ろうとすると、脳の緊張が高まり、疲労が強くなります。脳は生命の危機が生じた場所や活動をよく覚えています。そのため、これまでとは異なる脳の部分を使う、新しいことに挑戦し、楽しむ時間を持つよう勧められています。

とても疲労感が強い時でも、不思議なことに、自分の好きなことであれば、思いのほか楽しめるものです。熱中していると、少しの間症状を忘れられることもあるかもしれません。

可能なら温泉に行ったり、料理を学んだり、楽器を演奏したりできるかもしれません。特に「自然と親しむことは最高です」と書かれています。(p182)

5.疲れやすさを克服する

問題は、長年、ときには幾十年も残るかもしれない、ひどい疲れやすさです。この本の執筆時点では、高圧酸素療法や低体温療法を試していると書かれています。(p185)

学校を捨ててみよう!―子どもの脳は疲れはてている (講談社プラスアルファ新書)の時点では、ピルビン酸脱水素酵素の賦活や中鎖脂肪酸の服用、抗コリンエステラーゼの使用について書かれています。(p204)

最新の不登校外来―眠育から不登校病態を理解するでは、ピルビン酸ナトリウムの服用、コエンザイムQ10をはじめとしたいくつかのサプリメントの服用、低温サウナ療法(和温療法)について書かれています。(p90)

記述が変遷しているあたり、難航している様子がうかがえますが、裏を返せば、これらの治療法はどれも、幾人かには効果があったということでしょう。個人や近くの病院で試せるものがあればやってみるのもよいかもしれません。

6.新しい環境に行ってみる

エネルギー生産性が低下している状態はたしかに後遺症として引きつづいていくように思われます。しかし、明らかにこの状態が改善してしまう状況が一つあるのです。

フクロウ症候群の若者たちがアメリカやニュージーランドなどでホームステイして外国の学校に通うようになると、つまり留学すると、みるみるうちにはつらつと元気になっていくのは、まるでマジックをみているように不思議な現象です。(p187)

高校三年生で発症し、数ヶ月の入院でも回復しきらなかったSさんは、アメリカの友人から、転地療養と思ってこちらに来なさい、と誘われたそうです。重い気持ちを何とか励まして飛行機に乗りましたが、二ヶ月後にはとても元気になっていました。

もちろん、これは、外国に行けばみんな元気になる、という話ではありません。著者は「このような話は一つのヒントを与えてくれる」と述べるにとどめています。(p188)

ポイントは、日本より外国が優れているというより、積極的に環境を変えてみるなら、何か突破口が見つかるかもしれないということだと思います。

7.豊かに生きる

ある日、娘が私にいったことを思いだします。

「…お父さんやお母さんみたいに『ほらここに花が咲いているよ。ほら小川が流れているよ、蝶が飛んでいるよ』って育てられたら、なかなか頂上に行きつかないけど、おりるときには景色や、花や、風や、いろんなものが楽しめて豊かだよね」。(p200)

以前にもこのブログで引用しましたが、ひときわ印象に残っている言葉です。必死に知識を貯めこみ、良い成績、良い大学を目指すばかりが豊かな生き方ではない、ということを物語っています。

この本は著者が渓流でヤマメ釣りを楽しんでいる場面で幕を閉じます。著者にとっての豊かな人生とは「自分の興味を追求しながら、没頭できる時間を死ぬまでもちつづけられること」です。(p201)

フクロウ症候群の人は既存のレールにつながれた、いわば「車輪の下」的な生き方によって疲れ果ててしまった面があります。心の奥で憧憬する「豊かな生き方」を見つけることは、回復を目指す推進力となるのではないでしょうか。

あきらめるのはまだ早い

わたしの知り合いに、夫婦で外国に行っていて、数ヶ月に一回だけ、診察で市大の慢性疲労外来にかかっている方がいます。疲れやすさはかなり残っていますが、海外での生活が楽しく、充実しているそうです。

わたしもそれにあこがれて、去年は、厳密に体調を整えて、かなりの無理を推して、外国に少しの間行ってみました。まだまだハードルは高そうですが、必ず回復してそちらでの生活を目指したいという目標ができました。

慢性疲労症候群は決して気のせいや心の持ちようではありません。そのことは、著者自身がはっきりと断言しています。外国に行って気分転換すれば治る病気ではないことは確かです。(p4)

ですが、頭を使う勉強も、身体をつかう運動も、心を虐げるいじめも、どれも脳の中枢神経にダメージを及ぼすというのがフクロウ症候群のメカニズムでした。大人のCFSでも、心身問わずさまざまなストレス要因が関わっているとされています。

治療で挙げた4番目の点のように、今までやっていない新しいことに挑戦すると、脳の残された機能が少し活性化されるかもしれません。

6番目、7番目の点のように、今まで行ったことのない新しい環境に身をおき、豊かな生き方を実感するなら、病気のもとでも喜びや楽しみを見いだせるかもしれません。

時間とムダの科学 (PRESIDENT BOOKS) という本にはこんな言葉があります。

人間が変わる方法は3つしかない。
1番目は時間配分を変える。
2番目は住む場所を変える。
3番目はつきあう人を変える。
この3つの要素でしか人間は変わらない。
最も無意味なのは「決意を新たにする」ことだ。

脳は単なる気の持ちようでは変わりません。一方、環境は脳を変えます。

脳の中枢神経の疾患だからこそ、同じ環境にとどまっているのではなく、今までと違う脳の使い方を試してみるなら、少しでも疲労感を和らげられる生き方が見つかる可能性があります。

フクロウ症候群を克服する―不登校児の生体リズム障害 (健康ライブラリー)は 慢性疲労症候群のわたしたちに歩むべき方向のヒントを与えてくれる一冊です。

たとえ若くして慢性疲労症候群になったとしても、まだあきらめるには早すぎるのです。

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