【6/4】弱い人を追いつめる“心因性”という言葉

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まざまな痛みと自殺との関連について書かれたニュースがありました。その中には究極の痛みである線維筋痛症(FM)がもちろん含まれていました。とても悲しいことですが、痛みは間違いなく最も耐え難い苦しみだと思います。

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 しかし気になったのは、記事の中にこう書かれていたことです。

自殺リスクが最も高かったのは心因性疼痛で、片頭痛、背部痛がそれに続いた。心因性疼痛は十分に解明されていないため、患者は治療に希望がもてず自殺リスクが高まると考えられる

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“心因性疼痛”というレッテルが人を追い詰める

戸田克広先生が公開しておられる著作の中に、同一症状、同一患者が診療科により全く異なる診断、治療が行われている異常事態 ―線維筋痛症か身体表現性障害、または心因性疼痛か―という本があります。

同一症状、同一患者が診療科により全く異なる診断、治療が行われている異常事態 - 戸田克広 | ブクログのパブー同一症状、同一患者が診療科により全く異なる診断、治療が行われている異常事態 - 戸田克広 | ブクログのパブー

その本では身体表現性障害や心因性疼痛単独という考え方に異議が唱えられています。そのような診断は、患者の痛みを心の問題にすり替えているだけで、有効な治療法がないからです。

しかし心因性疼痛と診断されていた人を線維筋痛症、またはその不全型とみなし、線維筋痛症の治療を施せば改善する人も多いそうです。精神状態によって変動しない痛みなどなく、どんな痛みであれ、痛み専門の治療が必要だと書かれています。

このことからすると、ニュースの中の、心因性疼痛と診断されて絶望してしまう人たちの中には、精神科で心の問題といういわれないレッテルを貼られて、治療法もなく放り出されている人が含まれているのではないかという気がします。

生きることさえ困難な状態の中、最後の力を振り絞って医師に助けを求めているのに、治療法を示してもらえるどころか、「心因性」という、暗に「あなた自身が悪いのであり、我々にはどうしようもない」というような返事をされるなら、絶望しても当然だと思います。

心の問題という逃げ口上

これは以前にも書いた、基本的帰属錯誤の最も深刻な例のひとつだと思います。

【5/21】「病気になった人が悪い」のか―基本的帰属錯誤という落とし穴【5/21】「病気になった人が悪い」のか―基本的帰属錯誤という落とし穴はてなブックマーク - 【5/21】「病気になった人が悪い」のか―基本的帰属錯誤という落とし穴

心の問題、意志の問題、気のせいという言葉はあらゆる面で都合よく乱用されます。

医師の知識不足ないしは力不足で説明できない症状を、「心の問題」という言葉で、患者の責任にすり替えることができるからです。問題はそれを説明できない医療の側にあったはずですが、いつの間にか、患者の「心」が悪いことになるのです。

慢性疲労症候群(CFS)の問題に関わってきた神経科医の三池輝久先生は、不登校外来ー眠育から不登校病態を理解するという本の中で、はっきりこう論じています。

 

まず、“こころの問題”とはどのような問題であろうか。…何もかも曖昧で、明確な方向性を示すことができない医療現場の“逃げ口上”ともいえる。

…苦しむ彼らを医学生理学的に明確に評価する方法を持たない医療は、漠然としてとりとめのない無責任な言葉、“こころ”に逃げ道を求めたにすぎないのではないか。

…現代の医療レベルの発展を考えるとき、医療に従事する者が“こころの問題”などと逃げること自体が許されないことだと考えている。 (p12)

“心因性疼痛”という言葉は、この逃げ口上の最たるものかもしれません。

身体的な痛みや疲労で苦しんでいる人に対して、心の問題という言葉で追い打ちをかけるのは辛さを増し加えることに思えます。

どんな問題であれ、心の状態が関わらない問題はありません。同時にどんな問題であれ、当人や周りの人が思う以上に、環境の影響を受けています。そのことは、基本的帰属錯誤についての説明で述べました。

わたしたちはだれでも問題の原因を当事者自身の内面に求めてしまいがちです。しかし、それは正しくありません。とりわけ、それが当人を追い詰め、自殺を招いてしまうような場合はなおさらです。

線維筋痛症(FM)や慢性疲労症候群(CFS)は非常に辛い病気ですが、こうした言葉によってさらに苦痛が上乗せ、心身ともに追いつめられてしまうことほど悲しいことはありません。

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