体内時計の入門書「NHKサイエンスZERO 時計遺伝子の正体」

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体内時計の研究は、一人ひとりが社会のリズムに翻弄されることなく、自分の体内時計がもつ、生物としてのリズム―いわば自分の時間―を取り戻すことにも役立つことでしょう。

わたしたちが生きる24時間社会は、文字通りの「時計」が示す時間を知るための手がかりはあふれています。そのいっぽうで「体内時計」が示す時間の手がかりは覆い隠されてしまっています。時間は知るものであって感じるものではないのです。

昔から詩人や哲学者、宗教家などによって表現されてきたように、わたしたちの体には時を感じるメカニズムが備わっています。NHKサイエンスZERO 時計遺伝子の正体 (NHKサイエンスZERO) は、その研究の歴史がまとめられた一冊です。

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これはどんな本?

体内時計については、このブログで何度か別の本の書評としてまとめてきました。今更この本を読んで感じるのは、最初の一冊として読んでおきたかった、ということです。

この本の編著者、上田泰己さんは、理化学研究所の研究リーダーです。NHKサイエンスZEROで放送された内容ということもあって、本書は非常にすっきり、分かりやすくまとまめられています。

ところどころに挿入される小さな魚、電波時計、騒がしい子どもなどの例えは、もともとわかりやすく書かれている内容を、さらに理解しやすくしてくれています。

興味深いストーリーにを読みたいなら生物時計はなぜリズムを刻むのかが決定版ですが、先に向こうを読むと難しすぎます。

ここでは、わたしが覚えておきたいことてを単にメモ書きしておくにとどめますが、体内時計について学びたいなら、まず読むべき本なのは間違いありません。

体内時計についてわかったこと

■時計遺伝子のありか
体内時計の中心は視交叉上核というところにある。右目からの情報は左脳、左目からの情報は右脳に送られるが、その道筋が交差する場所が視交叉上核。直径1ミリメートルほどの組織のなかに時計細胞が詰まっている。(p14)

■時計細胞とは
文字通りの時計の部品はバラバラにすると役に立たないが、体内時計の部品である時計細胞は、ひとつひとつが時を刻んでいる。ちょうどオランダの絵本作家レオ・レオニの作品で、小さな魚が集まって大きな魚に見せ、より強くなろうとする話に似ている。(p15)

■中枢時計と末梢時計
視交叉上核の中枢時計は、男性の精巣を除く体じゅうにある末梢時計の時刻をあわせている。これは人間が開発した電波時計の仕組みに似ている。電波時計では、ほとんど狂いがない原子時計が各地の電波時計に正確な時刻を送り続けている。(p19)

■シンギュラリティ現象
1970年、アーサー・ウィンフリーが、「真夜中に強い光を浴びると体内時計が止まる」という現象を発見した。その理由は長年謎だったが、約30年後、日本の理化学研究所により、時計細胞のひとつひとつがバラバラにリズムを刻み始めるため、止まって見えることがわかった。(p21)

■体内時計の時刻を知るには?
リンネは複数の花が開いたり閉じたりするタイミングをデータ化すれば、そのとき咲いている花を見ることによって時間がわかると考え、花時計を考案した。

日本の理化学研究所は、時計細胞の中にある、時間によって増えたり減ったりするさまざまな時計物質を測定し、それらが24時間に増えたり減ったりするタイミングをデータ化した。そして一回の血液検査で、体内時計の時間がわかるようになった。(p27-32)

2010年、山口大学の明石真さんの研究では、血液検査ではなく、ヒトの毛根の細胞からもわかるようになった。(p33)

■時計遺伝子の発見
ゲノムの解読が、24時間周期で動いている時計遺伝子の発見を後押しした。まず1971年、シーモア・ベンザーがショウジョウバエの時計遺伝子を発見し、Period(周期)と名付けた。

1997年にジョゼフ・タカハシが、体内時計異常をもつマウスを探すという気の遠くなるような取り組みを始めたところ、幸運にも25匹目で24時間より長い周期を持つマウスを引き当て、時計遺伝子Clock(Circadian Locomotor Output Cycles Kaput:概日運動器出力サイクル異常)を発見した。

その後、ショウジョウバエからTimeless、BMAL、植物からCryといった具合に20以上が発見された。(p48-49)

■時計遺伝子が時を刻む仕組み
ネガティブ・フィードバックとよばれる。時計物質が一定量作られるとリセットされる仕組み。たとえば、ある家で子どもが騒ぎ始め、あまりに騒ぎが大きくなると「コラー!」と怒られ静かになる、その繰り返しが24時間周期で起こっているのと似ている。(p39)

■温度補償性
体内時計の条件は3つある。24時間周期、光によりリセット、そして温度に左右されない、という点である。

温度に左右されないというのは極めて珍しいことなので「バランス説」(さまざまな化学反応が組み合わさって平衡をとっている)と「ロバスト説」(ロバスト=強固。温度に左右されない化学反応が存在する)が唱えられていた。

2009年、体内時計に関わるCKIε/δという酵素のリン酸化という化学反応がロバスト説を満たすことが発見され、そちらが有力になっている。(p41-45)

■乱れた周期を治療する
CKIε/δをターゲットにする化合物が9種類見つかり、そのうち2種類は、細胞のリズムの周期を変えうることがわかった。CKIε/δを詳しく調べれば、概日リズム睡眠障害の治療薬が見つかるかもしれない。(p62)

■時計遺伝子はいつリズムを刻み始めるのか
受精の瞬間はまだリズムを刻んでいない。2010年、京都府立医科大学の八木田教授はES細胞に注目し、各器官に分化しはじめるとき、時計遺伝子が点滅し始めることを見つけた。(p67)

■カレンダー遺伝子
時計遺伝子とは別に、カレンダー遺伝子が見つかった。概年時計は日照時間の変化を感知していると考えられる。(p88)

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