慢性疲労症候群(CFS)と認知行動療法・段階的運動療法(2)

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れは認知行動療法を用いて、さまざまな疾患を治療する手法を紹介した本、臨床が変わる! PT・OTのための認知行動療法入門に基づく記事の2番目です。

線維筋痛症(FM)や慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎(CFS/ME)と、認知行動療法についての情報をまとめています。

前回の部分では、認知行動療法には限界があり、症状による影響に焦点化されていることを書きました。

この2番目の部分では、CFSやFMに存在する考え方の傾向と、それによる問題を克服するための認知行動療法や段階的運動療法について書きます。

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考え方の傾向

前回説明したように、FMやCFSの患者には、考え方の傾向といったものが存在します。

それそのものが病気の原因というのは短絡的ですが、ストレスのより多い生活を選んでしまったり、病気のもとでより症状が悪化したりすることに関わっているかもしれません。

考え方の傾向というのは、もともとの気質だけでなく、病気のせいでそうなってしまっている部分もあります。

たとえば、慢性疼痛の患者は次のような循環思考をもつことが報告されています。

「なぜわたしなのか」
「この痛みに終わりはないのか」
「私にはこの痛みをどうにもできない」
「なぜ私は自分をこんな状態にしてしまったのだろう」

この循環思考についてこう書かれています。

多くの患者でこの思考は深く根づいており、この思考回路が働いていることに気づかないほどである。これらはすべて否定的な思考や感情である。

慢性疼痛患者にとって、こうした思考が問題になる場合も多いが、慢性疼痛をもつとすれば、このような思考は完全にふつうで典型的で驚くには値しないと指摘することには価値がある。(p127)

また、線維筋痛症の場合には、多くの場合次のような気質的特徴が認められたと書かれています。これらは「長所」でもあると書かれています。

気質的特徴を指摘されるのは、そのせいで病気になったと言われているようで嬉しいことではありませんが、実際にそのような傾向があるかどうか、正直に吟味してみる価値はあります。

発症前は、患者たちは、かなり意欲的で、限度を超える仕事を自分に課し、自己批判的で、完璧主義者で、勤勉な傾向があり、発症後も他者のことを優先しがちで、情動面で脆弱性がみられる。

自分がどのくらいストレスに苦しんでいるかを彼らが理解していたかどうかはわからない。しかし概して彼らにとってしなければならないことが多すぎて、時間が足りていなかった。

非常に多くの場合、彼らが考える回復とは、病前に行っていた以上のことを、実際に行うことができる状態に達することである。(p143)

小児慢性疲労症候群についても、特徴についてこう書かれています。

Rangelら(2000b)は慢性疲労を抱えた青年期患者がより神経質、順応的、依存的で、強迫的で完璧主義的といった傾向をもつことを発見した。

これらの若年者は、「私は傷つきやすい」「私は価値がない」といった中核的信念をもち、低い自尊心を示すかもしれない。

これらの中核的信念は、「私は高い基準に達するパフォーマンスをしなければ受け入れてもらえない」といった問題のある仮定を導いてしまう。(p159)

慢性疲労患者はたいていの場合、自尊心が低い。(p164)

もちろん、線維筋痛症や慢性疲労症候群の患者は、『純粋に「身体的な」医学的疾患と捉えがちであり、心理社会的な因子が関与するなどといえば不快感を示すかもしれない』ことが認められています。(p141)

しかし、そうした考え方には、「病気には実態があり身体的なものか、あるいは精神病/心身症しかないとする社会環境で育ち、ゆえにデカルトの心身二元論の誤解をしている」ことが関係しているかもしれません。(p146)

実際には、精神神経免疫学の理論によると、『いかなる「心理的」過程も、神経系と内分泌系という「ハードウェア」によってのみ可能になる』ことがわかっています。心理的な「プラセボ効果」と「ノセボ効果」によって身体的症状の程度は変わります。(p145)

つまり、精神面と身体面のプロセスは密接に関わっているため、身体の病気、精神の病気と分けることが無意味であるということです。

身体的な病気は、精神的な働きや考え方にも影響を及ぼしますし、逆に心理的な考え方もまた、身体的な症状に影響を及ぼすのです。

心理的な側面に目を向けるとしても、病気が「本物である」ことを否定したり、問題を「すべて心の中のもの」とみなして、苦痛を無視してしまうというわけではありません。(p147)

この本も、線維筋痛症を決して心の中の問題とみなしているということはなく、『精神神経免疫学的な理由によって異常に感染しやすく、血液脳関門の透過性がストレスにより上昇するために、薬物療法によるすべての神経学的な「副作用」の被害を受けやすい。…腸透過性にも影響を与えるかもしれない』と述べています。(P142)

多くの身体的な病気に心の働きも関与していることを理解するには、わたしにとっては以下の本が助けになりました。

『身体が「ノー」と言うとき 抑圧された感情の代価』を読んで| いつも空が見えるから口で「ノー」と言えなければ身体が「ノー」と言うようになる― 抑圧された感情が招く難病と慢性疾患│いつも空が見えるから

典型的な過活動と不活動の循環

こうした心理的な特徴に注目すべきなのは、それが闘病生活に悪い影響をもたらすからです。それは、典型的な過活動と不活動の循環です。以下の文はおもに慢性疼痛に関して言えることですが、線維筋痛症や慢性疲労症候群とも関係しています。

慢性疼痛にみられる不幸な特徴は、体調がよいときに運動や活動を過剰にしてしまう人がいることである。

体力の限界まで活動を続け、その結果、疲労や痛みが再燃し、長期の休養期間を要することとなる。

…再燃が収まると、人はいくぶんかはよくなったと感じ、疼痛によって失った時間を埋めようと再び無理をする傾向がある。そうすることによって次の再燃の可能性が高まる。(p130)

慢性疲労症候群(CFS)の場合にも、疲労に対する対処は休養しかないという信念や、前述の自尊心の低さからく過活動によって体調がより悪くなる危険性が触れられています。

疲労したとき、とるべき最善の方法は休むことであると考えるかもしれない。

もしこの休息が長引けば、結果として活動を再開する際にさらなる筋疲労と筋痛を伴う身体調節異常がみられる。症状の悪化への恐れは、いっそうに不活動、さらなる身体調節異常につながる。

一方、すぐによくなろうとする意欲は、過剰な活動、引き続いて起こる疲労、その結果、長期間の静養を要してしまう可能性がある。(p159)

CFSやFMの患者は、もともと自分の限界をわきまえない傾向がありますが、過度の活動や過度の休息は害となるのです。

過度の休息と過活動の悪循環から抜け出すには、その原因となっている自分の感情に気づく必要があります。

あるときは、「自分はもうダメだ。こんなにしんどいなら、ゆっくり休んでいるしかない」と考えて、過度の休息に陥っていないでしょう。

別の時には、休みすぎたことに罪悪感を覚えたり、家族や周囲の目を気にしすぎて、「もっとやらなければ認めてもらえない」と考えて、過活動に陥っていないでしょうか。

こうした誤った仮定に気づいたなら、自分の考えを調節することが大切です。そして次に挙げる3つの技法、ペース配分、ゴール設定、段階的運動療法によって無理のない範囲で身体を動かすことができます。

ペース配分

「疼痛管理の恩恵を受けた人は、ペース配分とゴール設定が彼らの獲得したなかでもっとも有用な技能であると述べている」そうです。(p129)

ペース配分の基本的な考え方は、本人の気持ちで決めていた活動量を、あらかじめ定めた活動量と置き換えることです。

ペース配分の技術には、自分の耐久性、つまり問題を引き起こす限界の活動量を見極め、その耐久性の範囲内で、活動のベースラインを決定すること、そしてその途中に休息を組み入れることが関係しています。

座ってする作業、立ってする作業、歩く時間や距離のベースラインをそれぞれ決めておきます。

難しいのは、しばしば、長時間の活動による悪影響は、直ちに感じられず、翌日以降にわかる場合もあるということです。

ですから、耐久性とベースラインを決めるには、調査や試行錯誤が必要で、専門家の指導も有益です。ベースラインは耐久性の80%にするという専門家もいれば、50%にするという専門家もいます。

ペース配分についてはこう要約されています。

要するにペース配分とは、何かをしすぎることとしなさすぎることの間、活動的すぎることと、活動的ではないこととの間のバランスを見つけることである。

この技能は、小さくまとめた活動の間に定期的な休息をはさみこんでいく方法をパターンとして学習するために有効である。(p130)

ゴール設定

ペース配分と並んで、ゴール設定は、慢性的な病気の患者が身につけるべき一種の技能です。

慢性疼痛の患者は、ゴール設定の点で問題を抱えがちです。

たとえば、前述の勤勉さや目標意識の高さから、時間内では到底達成できないようなゴール設定をすることがよくあるそうです。ゴールに到達できなければ、失望の原因になります。

また設定するゴールが不明確な場合もあります。そのゴールに到達したか、しなかったかを判断できないのです。

そこで役立つのがSMARTの法則です。

SはSpecific「具体的な」を意味します。目標を「歩きたい」ではなく、「河川敷を10分間歩きたい」というように明確にします。

MはMeasurable「測定可能な」を意味します。時間や距離を明確にしておきます。

AはActivity-related「活動に則した」を意味します。実際に何かを行うことをゴールに含めます。

RはRealistic「現実的な」を意味します。体力や資金の点で達成可能な目標を定めます。

TはTime-related「時間を区切った」を意味します。ゴールに到達するまでの期日を決めておきます。

ゴール設定についてはこう要約されています。

セラピストは、到達ゴールを小さく区切るように支援する。患者は、小ゴールに到達した成功体験を報酬として受け取り、同時に最終ゴールへも前進するのである。(p131)

段階的運動療法

段階的運動療法は、FulcherとWhite(1998)によって提唱されました。彼らは活動を段階的に増やすことを勧めており、もし症状が悪化したら、ペースを落とすか、安静を保つ機会を設けるとしています。

運動活動における重要な点は、運動強度を上げることよりも、中程度の負荷活動の長さを増やすことです。(p170)

載せられている線維筋痛症の症例では、「きわめて段階的かつ連続的なエクササイズプログラムによる体力回復」として週2回の15分のエクササイズバイクからはじめていました。(P148,150)

もちろん、どんな運動をするかは、その人の体調と合わせて考えなければなりません。

前に読んだチャールズ・ラップ先生の講演では、「一回に3~5分の運動と、5分の休憩を組み合わせる」ことが勧められていました。また心拍数が上がりにくい運動をすることや、1日の歩数を1000歩以上、5000歩未満にとどめることが推奨されていました。

慢性疲労症候群(CFS)の患者に対する認知行動療法のポイントは、「活動、運動、休息のような維持的要因についての信念」に取り組むことだと書かれています。(p156,162)

たとえば、慢性疲労症候群(CFS)の患者は、「運動が身体に悪影響をもたらすという信念や、回復手段としての休息の必要性という信念」を持っていることがあります。

しかし実際には、過度に活動を控えたり、過活動に陥って寝込んだりすることにより、筋力が低下し、身体調節異常が生じるため、さらに体調は悪くなってしまいます。

「ベッド上の休養や不活動は筋容量や筋力を低下させる。それゆえ不活動は筋機能の低下を招くだけである」と警告されています。(p170)

「疲労症状の経験と休息との関連は、次第に弱める必要がある」のです。(p163)

認知的アプローチと、段階的な運動は、「治療の第一選択」とみなせるほどのエビデンスがあるそうです。(p162)

認知行動療法に関するランダム化対照試験では、従来の医学的管理やリラクセーション法に比べて、認知行動療法がCFSの外来成人患者の身体的機能を有意に改善したことがわかったそうです。(p156)

2002年の報告では、家族に対する認知行動療法も、11-18歳の患者にとって効果的だとわかっています。(P157)

治療開始までの期間が短ければ短いほど、予後が良好であるというエビデンスもあります。(p158)

子どものCFSは比較的まれですが、長期不登校の最も一般的な原因であるといわれています。(P156)

1997年の報告では、子どもの54-94%は治療によって望ましい回復がみられました。特に良好な予後と関係していたのは、特定の身体的誘因、秋学期での発症、社会経済的地位の高さだったそうです。(P157)

その一方で、成人の予後は良好ではなく、1994年の論文では「専門医に紹介されて完全に回復したのはCFS患者の10%以下である」とされています。(P158)

つまり、CFSを完治させるのは難しいとはいえ、少しでも改善するために認知行動療法や段階的運動療法にはやってみる価値があるといえます。

CFSやFMの患者は過活動と過度の休息の悪循環に陥りやすいですが、それを打ち破るために認知行動療法によって信念を調節し、段階的運動療法に取り組むことが大切なのです。

この記事の最後の部分では、そのほかの技法について簡単に解説します。

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