同意できない『起立性調節障害の診かた「朝起きられないはこうして治せ」』

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下克也先生の近刊起立性調節障害の診かた―「朝,起きられない」はこうして治せを読みました。小児CFSの関連書として目を通してみました。

単に起立性調節障害の表面だけを扱うのではなく、心身症や睡眠相後退症候群、小児慢性疲労症候群などの関連疾患についても踏み込んだ内容で、漢方薬などの治療法も網羅しており、データとしては少しは参考になる本だと思いました。

そのいっぽうで、起立性調節障害の諸問題がなぜ生じるのか、という点については、賛否両論ある説明の仕方がされていると思います。わたし自身、複雑な感情をぬぐえませんでした。

この本について、簡単にレビューしたいと思います。本書をおすすめする書評ではないので、ご注意ください。

 

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起立性調節障害の心理的側面

著者の主張は、近年増加している起立性調節障害は「身体疾患である」と断言してはいけない、という点です。(p120)

身体疾患としての一面があることは認めていますが、それに加えて、子供の未熟性や、疾病利得、脆弱なアイデンティティが絡んでいると述べています。

30年前の社会においては虚弱な子供でも、学校に行くのが当たり前でしたが、子供に優しい教育が叫ばれた結果、起立性調節障害が出現したと結論づけています。

小児科医による起立性調節障害の「診断アルゴリズム」は心身症としての問題を軽視していると、心療内科医の視点から批判しています。(p4)

著者は、このような心身症を解決するために、疾病利得や未熟性を指摘し、あえて心理的動揺をもたらすことが背中を押すことになる、と述べています。(p121)

わたし自身は、起立性調節障害ではなく慢性疲労症候群の患者として過ごしてきましたから、起立性調節障害の子供や親の気持ちはわかるとはいえません。この本の説明が、そうした立場の人にとってしっくりくるのか、それとも不快に感じられるのかは、わかりません。

しかし、著者は、睡眠相後退症候群や慢性疲労症候群についても引き合いに出しています。

著者の主張では、軽い起立性調節障害は身体疾患ですが、不登校に陥るような中等症のものは心身症であり、それが徐々に進行し、睡眠相後退症候群などを併発したのが、小児慢性疲労症候群だということです。(p111)

では、小児慢性疲労症候群も子供に優しい教育のために発症し、疾病利得や未熟性のために問題が長引いているだけなのでしょうか。

そのような意見については同意しかねます。著者は、無理やり学校に行かせていた30年前は「問題が生じなかった」(p75)としていますが、本当にそうなのでしょうか。本当に身体症状が重いために学校に行けなくなっている子供がいた場合、疾病利得や未熟性を指摘して追い込むことが必要なのでしょうか。

いくらか譲って、一部の起立性調節障害の場合には、それらはあるいは正しいのかもしれません。しかし慢性疲労症候群と呼ばれるほど症状の重い子どもに同じことが当てはまるとは、わたしには思えません。

確かに、慢性疲労症候群が心身のストレスによって発症するのは事実です。心理的な脆弱性は大きく影響しているかもしれません。

しかしそれは、いくつかの自己免疫疾患や神経疾患についてもいえることです。たとえば、多発性硬化症にも心理的ストレスは関わっていると言われています。では、多発性硬化症の人に未熟性や疾病利得の問題を指摘するべきなのでしょうか。

それらは確かに問題として存在するのかもしれませんが、指摘したところで、病気が治るわけではありません。むしろ患者を追い込むだけです。

この本に書かれている種々のアドバイスが、慢性疲労症候群の身体症状によって学校に行けない子供に対して行われたなら、とても苦痛を伴う状況に陥るのではないかと心配です。

起立性調節障害を診ている田中英高先生や、小児慢性疲労症候群を診ている三池輝久先生が、それぞれの病気の身体性を強調してきたことには十分の理由があります。

小児CFS関係の本として読んでみましたが、わたしはこの著者の本は今後読まないだろうと思います。

いろいろなデータ

この本に書かれていたデータのうち、気になったものを書き留めておこうと思います。

■ストレスの結果として起立性調節障害が起こる理由は、ハンス・セリエのストレス学説、SARTストレス動物モデルによって説明できる。ストレスが慢性化すると、1-3ヶ月で自律神経が機能不全を起こす。(p25)

■小林陽之助らの研究によると、起立性調節障害が成人後も残る確立は6-11年後で60%、それ以後で40%。(p30)

■スモールハート(滴状心)は一般児童では1.6%、起立性調節障害の児童では13%。(p37)

■起立性調節障害の性格傾向は執着気質。ごまかしやズボラができない完璧主義と、過剰な負荷がかかってもやりつづけてしまう熱中性。(p67)

■いっぽうで、その反対であるディスチミア親和型のうつも多い。これは、何事にも無関心で、やりたいことしか興味を持たず、それ以外には回避的で、コミュニケーションが苦手というもの。(p67)

■自宅で気軽に行える自律神経の機能訓練としてチルトトレーニングがよい。5分間、壁にもたれて立っているというもの。(p126)

■健康な成人がベッドで寝たきりの生活を送ると、1日に0.5%筋肉が萎縮する。たった2日間の寝たきりで、1年分の老化に相当する筋肉を失う。(p127)

■有効な漢方薬は、証によって違うが、半夏白朮天麻湯、補中益気湯、小建中湯、黄耆建中湯、六君子湯、人参湯、苓桂朮甘湯、苓姜朮甘湯、当帰芍薬散、香蘇散、加味帰脾湯、桂枝加竜骨牡蠣湯、半夏厚朴湯、四逆散、柴胡加竜骨牡蠣湯15種が挙げられている。(p138)

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