慢性疲労症候群についての村上正人先生のラジオ番組(2014年)

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日紹介した、子どもの慢性疲労(小児慢性疲労症候群=CCFS)を扱った友田明美先生のラジオ医学講座のときにも触れましたが、成人の慢性疲労症候群を扱った、日本大学医学部附属板橋病院心療内科(※2015年に山王病院に移られました) 村上正人先生による医学講座も、2014年8月28日に放送されていました。

慢性疲労症候群の診断と治療(2014.8.28放送) |ラジオNIKKEI

内容は専門的で少々難解ですが、慢性疲労症候群の歴史的背景から、ウイルス感染や最新の脳内炎症の研究も含めたさまざまな原因論、治療方法までを網羅していて、慢性疲労症候群の研究の現状を知るにはわかりやすい医学講座だと思います。

以下に内容を聞き取っていますが、ところどころ聞き取りがあやふやなところもあります。 また一部内容は省いています。

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慢性疲労症候群の歴史的背景

疲労とは過度の肉体的、精神的活動により生じた、独特の病的不快感と休養への欲求を伴う健康システムの障害。1999年の旧厚生労働省疲労研究班の疫学検査では、国民の1/3以上が慢性的な疲労を自覚しており、生活に支障をきたすレベルは5.2%存在していた。

慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome)は、健康に生活していた人がある日突然、原因不明の激しい全員倦怠感や極端な疲労感に襲われ、長期に渡り 微熱、筋肉痛、脱力感、リンパ節の腫脹、咽頭痛などの身体症状、思考力や意欲の減退、不安感や抑うつ感などの精神神経症状を伴い、心身両面のパフォーマンスが低下する病態

アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、スウェーデン、オーストラリアなどで研究されており、国際的にはよく認知されている。

18世紀、微熱を伴う疾患として、ナーバス・フィーバー、ヒステリック・フィーバー、ベトル・フィーバー(?)として報告されている。1960年代にはアメリカ陸軍省の医務官ダ・コスタが南北戦争の従軍兵士の中に、原因不明の疲労感やめまい、失神発作を起こすダ・コスタ症候群を報告し、注目された。

1948年にアイスランドのアークレイリで流行したアイスランド病、1955年、イギリスのロイヤルフリー病院で流行した、医師や看護師に、筋痛、脱力、咽頭痛などの症状が現れるロイヤルフリー病は、のちに世界各地で発症した同様の症状とともに慢性疲労症候群と呼ばれるようになった。

近代看護教育の母フローレンス・ナイチンゲールが1850年代のクリミア戦争の後、慢性疲労症候群のため、30歳半ばから50年間寝たきりであったというエピソードがある。

19世紀の自然科学者ダーウィンも、慢性疲労症候群に悩まされた。

慢性疲労症候群の類似病態として、流行性神経筋無力症、慢性単球性症候群、ウイルス感染後疲労症候群に注目が集まり、1988年、米国CDCはこれらの症候群を一本化して慢性疲労症候群と命名し、仮の診断基準を作成した。第二のエイズとさわがれたりもした。2003年には新たなCDC診断基準が発表され、2011年には、慢性疲労症候群と類似病態と考えられる筋痛性脳脊髄炎(ME)の国際診断基準が発表された。筋痛性脳脊髄炎患者はイギリスでは約15万人いるとされる。

最近では、慢性疲労症候群という呼称が誤解を招くとして、国際的にも筋痛性脳脊髄炎、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)を使うべきとする患者団体の動きもある。

日本では、1985年、NK細胞活性低下症候群といて、はじめて慢性疲労症候群が報告され、1991年旧厚生労働省に慢性疲労症候群研究班が発足した。

この研究班の疫学調査では、慢性疲労症候群の診断基準を満たす者は人口の0.3%存在し、患者数は36万人と明らかになった。

2005年、慢性疲労症候群研究会、疲労研究会、文部科学省疲労研究班が母体となり、日本疲労学会が発足し、2007年に慢性疲労症候群診断指針を発表した。2009年には改めて厚生労働省疲労研究班が発足した。

1988年の米国CDCの診断基準を受けて、1992年、疲労研究班が診断基準の試案を発表した。数回の検討が加えられて、2013年に最新の基準を発表した。パフォーマンス・ステータスのPS3以上で診断し、7以上を重症とする。

(診断基準の詳細な解説などは省いています)

慢性疲労症候群の原因

最新の研究によると、慢性疲労症候群は神経系、免疫系、内分泌代謝系の異常が複雑にからみあった病態であることがわかった。

視床下部・下垂体・副腎系の異常が報告されていて、コルチゾールやCRHの動態がうつ病と異なっているので鑑別ができる。

風邪や胃腸炎など、感染後に発症することが多いため、感染説に基づいた研究は多い。EBウイルス、ヒトヘルペスウイルス6,7,8、ボルナ病ウイルスなどの再活性化や、風邪や無菌性髄膜炎などを起こすコクサッキーB型ウイルス、風疹ウイルス、トキソプラズマ、吸熱リケッチアなどの単独・複数のウイルスなどの感染後症候群が疑われている。しかし原因ウイルスの特定はなされていない。

抗核抗体の出現やNK細胞の活性低下、T8抑制性Tリンパ球活性の上昇(?)、インターロイキン、αインターフェロンなどのサイトカイン異常などの免疫異常も考えられているが、一定の傾向はつかみがたい。

内分泌系の側面から、モノアミン代謝や骨格筋の解糖系に関与するアシルカルニチン代謝の異常が報告されたが、疲労という生理的な現象を説明できても、慢性疲労症候群の病因とはならない。

ポジトロンCT、PET検査にて、前頭葉、側頭葉、基底核など、脳の各部位の局所脳血流量の低下や、脳幹部、帯状回、その近傍における糖代謝の低下、前帯状回を中心としたセロトニン系の代謝異常が見られることから、慢性疲労症候群は種々の原因によって引き起こされた脳機能異常とも考えられている。

また脳内炎症の有無を調べるために、活性型ミクログリアに結合する特殊リガンドとPETを用いた検査で、左視床や中脳に炎症が存在することが明らかになっており、PS7以上の重症のCFSでは、脳内炎症による器質的変化が示されている。

バイオマーカーの研究は特異度・感度の観点からいまだ確認されていない。

慢性疲労症候群患者の訴えである身体的不定愁訴は多彩だが、それは大脳皮質のブロードマン10野の前帯状回が疲労を感じる部位であると同時に、痛み、自律神経調節、集中力、不安感に関係しているためであるとする説もある。

いまだ明確な病因論が特定できない原因の一つに、慢性疲労症候群のヘテロジェナイティー(異質性・異種性)があり、その名が示すとおり、慢性疲労症候群は単一の疾患概念ではなく、さまざまな病因が関与している症候群の可能性が示唆されている。

慢性疲労症候群の治療

生命的予後は良好だが、10年以上遷延する例もある。病因論や病態の解明は進みつつあるが、治療に関しては大きな進展がない。

抗ウイルス薬、γグロブリンの投与、血漿交換、免疫調整薬が有効との報告もあるが、一定の効果は期待できず、実施している医療機関はほとんどない。

十全大補湯、補中益気湯、人参養栄湯などの漢方薬、抗うつ薬や抗不安薬、大量ビタミンC療法などが行われており、長期展望的には有効である場合もある。

慢性疲労症候群の発症要因に何らかのウイルス感染や再活性化、内分泌的、免疫学的な異常が関わっているにせよ、心理社会的ストレスや、患者特有の行動特性の認識は重要。

それは、ナイチンゲールやダーウィン、キャリアウーマンやシステムエンジニアなど活発な神経活動の持ち主が慢性疲労症候群に陥る理由にもなる。

睡眠不足や身体的疲弊、交感神経系の興奮や緊張、自律神経系のバランスの乱れなど、多くのストレス要因が関与して、ウイルスの再活性化、内分泌的、免疫的異常などがジャックされるメカニズムは多くの研究者が共通して認識している。その背景には行動特性やさまざまな心理的ストレスが関係しているので、慢性疲労症候群の治療のためにはカウンセリング、生活指導、認知行動療法などを並行して行うことも必要。

診断や治療法が十分に確率していない現在、安易に慢性疲労症候群の診断に走らず、全人的医療の本質をわきまえた対応が肝要。

 

村上正人先生についてはこちらに書かれています。

村上正人 医師,【慢性疲労、慢性疼痛、心療内科学、リウマチ学・呼吸器病学、心身医学的治療法、交流分析療法、漢方療法】,『慢性疲労症候群』,日本大学医学部附属 板橋病院-心療内科(むらかみまさと,) | 名医を探すドクターズガイド

 

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