小児慢性疲労症候群(CCFS)は報酬系の感受性が低下している―ドーパミン系の治療法が有効?

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化学研究所の渡辺恭良先生、大阪市立大の水野敬先生、熊本大学の上土井貴子先生らの研究グループにより、小児慢性疲労症候群(CCFS)の子どもの脳において、線条体に関係する報酬系の感受性が低下していることが明らかになりました。

これは、注意欠如多動症(ADHD)の子どもの脳の活動とよく似ていて、ドーパミン神経系を標的とした投薬が効果を示す可能性があるとのことです。

小児慢性疲労症候群は報酬の感受性低下を伴う | 理化学研究所

 

小児慢性疲労症候群は報酬の感受性低下を伴うことを明らかに — 大阪市立大学

小児慢性疲労症候群は報酬の感受性低下を伴う-学習意欲の低下を招く脳領域の活性低下- - 熊本大学

小児慢性疲労症候群の治療に道、報酬低いと脳の活性が低下 理研など発表 - 産経WEST

理研など、小児慢性疲労症候群は報酬の感受性低下を伴うことを解明│日経プレスリリース

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慢性疲労症候群で不登校の子、脳が「報酬」感じにくく:朝日新聞デジタル

小児慢性疲労症候群では、報酬の感受性が低下している - 理研などが発表 | マイナビニュース

小児慢性疲労症候群、報酬に関する脳内メカニズム解明-理研 - QLifePro 医療ニュース

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CCFSでは報酬感受性が低下している

今回の研究では、MRIを用いて、小児慢性疲労症候群(CCFS)の子どもの脳機能が調査されました。

小児慢性疲労症候群(CCFS)は3ヶ月以上続く、異常な疲労感や睡眠障害がみられる病気で、不登校とも大きな関連があるとされています。

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小児慢性疲労症候群(CCFS)では、多様な身体症状だけでなく、学習意欲や記憶力、注意力の低下なども生じます。

学習意欲は脳機能の一つである、報酬感受性と関係しています。報酬感受性とは、達成感の強さと関わる脳の働きで、報酬感受性が高いと、見返りが少なくても達成感を感じやすくなり、意欲が湧きやすくなります。

研究では、CCFSの子ども13名(平均13.6歳、女6名、男7名)と健康な子ども13名を対象に、お金がもらえるカードめくりゲームをしてもらい、そのときの状態を質問表とfMRIで測定しました。

カードめくりゲームは、3つのパターンが用意されていて、高い金額が得られる高報酬課題、低い金額が得られる低報酬、およびお金の関係しない対照群からなります。自分がどの課題を行っているかは知ることができません。

実験の結果、CCFSの子どもと健康な子どもは、いずれも高報酬課題では、線条体(尾状核と被殻)と呼ばれる脳領域が同じほど活性化していました。しかし、低報酬課題では、CCFSの子どもは健常児に比べて左右の被殻の活性が低下していたとのことです。

さらに、この被殻の活性が低いほど、疲労の症状が強く、普段の学習のときに十分な評価・成績が得られていると感じる報酬感が低いことがわかりました。

ドーパミンに着目した治療が役立つ?

この線条体(尾状核と被殻)は大脳基底核の一部で、運動や学習、記憶などさまざまな機能に関与する領域です。

ドーパミン神経が豊富に存在する脳領域であり、同じ研究グループの過去の研究では、注意欠如多動症(AD/HD)や愛着障害の子どもで、同様の報酬感受性や線条体の活動の低下が明らかになっています。

脳科学が明らかにした発達障害と愛着障害、その違い
雑誌「小四教育技術2015年1月号」に載せられた、友田明美先生の研究について読みました。発達障害と愛着障害では、脳の報酬系の働きに違いがあり、脳画像で判別できるようになっているそう

こうした点から、研究チームは、ADHDと同様、ドーパミンを対象にした治療がCCFSに効果を示すのではないかとしています。

本研究により、CCFS患児の学習意欲低下には、低報酬知覚時に線条体が活性化されない状態、つまり報酬の感受性の低下状態が関係していることが分かりました。

線条体はドーパミン神経が豊富に存在する脳領域であり、報酬知覚時のドーパミン神経の活性が低下することで意欲低下に繋がる可能性が考えられます。

今後、CCFSのドーパミン神経機能に着目した治療法の検討も必要と考えられます。

ADHDの場合のドーパミン系を標的にした治療法についてはこちらにまとめています。

ADHDの治療に効果のある薬のまとめ(適応外処方も含む)
ADHDの治療に用いられている薬をまとめました。中枢神経刺激薬、NRI、SNRI、DNRI、α2アドレナリン受容体作動薬など、それぞれ参照リンク付きで解説しています。

なぜドーパミン系の機能低下が疲労と関係するのか

CCFSの子どもについては、特に不注意優勢型のADHDの特徴を満たすことが多い、という研究が以前からありました。ADHDと同様の治療によって、慢性疲労を含む症状の改善がみられる場合がある、ということは、こちらの記事で扱ったとおりです。

ADHDの人は若くして慢性疲労症候群(CFS)になりやすい―治療で疲労や痛みが改善
ADHDの子どもの脳機能の低下が友田先生により報告されています。

ADHDと同様のドーパミン系の機能低下があると、なぜ疲労感が強くなりやすいのかは、諸説あるところだと思います。

以前の記事では、ワーキングメモリの低下や、生体リズムの乱れやすさといったことから疲労感が強くなる可能性を考えました。

なぜADHDの人は慢性的な疲労や痛みを感じやすいのか―脳の注意配分能力とワーキングメモリー
注意力のコントロールが苦手なADHDなどの人では、痛みや疲労が強く感じられている可能性があります。その理由は、フロー状態・マインドフルネス・ワーキングメモリ・注意配分能力などの研究

最近 読んだ、脳はいかに治癒をもたらすか 神経可塑性研究の最前線という本では、ドーパミンによる意欲の調整と、疲労や倦怠との関係が説明されていました。

パーキンソン病患者の動機の欠如は、怠惰な性格や無関心や意思の弱さに起因するのではなく、いくら本人が動きたくても、動作を起こす動機づけを司る、ドーパミンを基盤とする脳の神経回路が、特定の動作にエネルギーを付与できなくなるために生じ、それが疲労や倦怠に見えるのである。(p151)

これはパーキンソン病についての記述ですが、ドーパミンの機能として見れば、CCFSにも当てはまるでしょう。

また、こうしたドーパミン系の働きの弱さが、ADHDのような、ある程度生まれつきのものなのか、それとも睡眠障害などに伴う二次的なものなのか、という点も気になる部分です。

もし、生まれつき報酬感受性が低い傾向があるのなら、小さなことで達成感を感じにくいため学校生活で人よりストレスを抱え込みやすかったり、他の子どもより高い報酬を求めてやりすぎてしまったりするかもしれません。

逆に、睡眠不足やデジタル機器依存の結果として、環境的要因のせいでADHDに似た特徴を示すようになる子どもがいることも知られているので、長期間にわたる慢性的な睡眠不足のせいで、ドーパミン神経系の機能が低下し、慢性疲労につながる可能性もありそうです。

最近の研究でも、疲労や意欲低下の強い子どもは、潜在的睡眠不足を抱えており、慢性的な睡眠不足状態にあることが示唆されていました。

無自覚の「潜在的睡眠不足」(PSD)が内分泌・代謝機能に慢性的な影響―子どもの疲労と関係する調査も
現代人の多くで、自分でも気づいていない「潜在的睡眠不足」(PSD)が身体的健康に慢性的な影響を及ぼし、生活習慣病などの健康リスクをもたらしているという研究が発表されました。

もっとも、生まれつきのものか二次的なものか、というよりは、遺伝要因も環境要因もどちらも関わっていて、もともとドーパミン系が不安定な子どもが、慢性的な睡眠不足や学校の単調な学習からくるストレスを抱え込みやすい、という複雑な要因があるのかもしれません。

ADHDの報酬感受性の低下については、メチルフェニデートの投薬によって改善がみられたそうですが、CCFSの場合にも同様の効果があり、意欲や記憶力が改善するのかどうかも、今後の研究に注目したいところです。

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