慢性疲労症候群のウイルス原因説を巡る論争について


「慢性疲労症候群(CFS)の発症にマウス白血病ウイルス(XMRV)が関わっているのではないか」、とするニュースがありました。

慢性疲労症候群の患者にレトロウィルスが存在 - WSJ日本版 - jp.WSJ.com

この話は大々的に報道されたので、慢性疲労症候群(CFS)に関心を持ってくれている人たちから、未だに「慢性疲労症候群はウイルスが原因なんだってね」と言及されるほどです。

ところが、サイエンス誌の記事が、その後反証を提出し、結局このニュースは真実ではないことが明らかになったようです。

わたしは、英語は読めませんし、SM Public Communications Awardがどれほど権威を持つ賞なのかもよくわかりません。しかしサイエンス誌の権威はよく知っています。

日本の研究でも次のような結果が出ています。

輸血の安全性の確保の観点から緊急にレトロウイルスXMRV問題に対処する必要が生じ、CFS患者100名における血清中の抗体と、末梢血単核球におけるXMRVDNAを解析した。その結果、CFS患者と健常者の血清中抗体陽性率には有意な差はなく、XMRVDNAは認めなかった。…しかし、今回用いた検査法の感度を高めると検出される可能性も否定できないため、引き続き調査研究を行う必要があると考えている。

平成22年度厚生労働科学研究 自律神経機能異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な疲労診断法の確立と慢性疲労診断指針の作成

おそらく、CFSのマウス白血病ウイルス原因説は終息したと見てよいでしょう。

根強いウイルスだけ原因説

しかし、未だに諸外国では、CFSのウイルス説に固執する人が後を絶たないと聞いています。CFSの原因はウイルスなので、認知行動療法も段階的運動療法も効果はない、いや有害でさえあると主張しているようです。そしてそれを認めさせるためには脅迫や政治活動も辞しません。それらの国では、患者を取り巻く状況は、日本よりもかなり複雑なようです

わたしは、この機会にCFSのウイルス説についての、わたし個人の立場をまとめておきたいと思いました。わたしは、ウイルス説はある程度正しいと思っています。それは日本の研究結果とも一致しています。

CFSの疲労症状はIFNのシグナル伝達系の異常調節機構であるとの仮説が注目されている。ウイルス感染を受けた宿主はIFNを産生し感染防御に対応するが、…疲労症状が起こりその反応が異常に長期間持続するものがCFSと考えられる

慢性疲労症候群の病因の解明 ウイルス感染 鳥取大学医学部生命科学科 西連寺剛 長田佳子

※IFN=インターフェロン。免疫物質の一つ。

しかし、特定のウイルスによって、あらゆる慢性疲労症候群患者の症状が引き起こされているわけではないでしょう。「慢性疲労症候群(CFS)をともに考える会(筋痛性脳脊髄炎の会)」が掲載した資料の中でも、CFS研究の権威アンソニー・コマロフ氏がこう述べています。

いくつかの感染因子が本疾患の引き金となりうることを、私 たちはすでに知っています。ことによるとXMRVは、CFSのよくみられる、あるいは稀な原因である感染因子の一つとなることでしょう。

ですからCFSは、複数のウイルスや、遺伝的背景、環境、など多彩な原因によって発症する一つの病態と考えられています。

慢性疲労症候群(CFS)のウイルス説を唱えることは、一見メリットがあるように思えます。いまだに慢性疲労症候群(CFS)は心身症や気のせいだと述べ、頑として譲らない医者は多いからです。わたしのある友人は、やっと慢性疲労症候群と診断された病院で、先生が「CFS=うつ病」とカルテに書くのを見ました。もしウイルス説が浸透すれば、そうした誤解はなくなるかもしれません。

しかし、ウイルス説をかたくなに唱え続けることには、デメリットもあるとわたしは考えています。その理由を4つ考えましょう。これから書くことは一患者の発言にすぎませんが、一つの考え方と思って、穏やかな気持ちで読んでいただけたら幸いです。

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