「失敗について考える? そんな消極的なことでどうするんだ。わたしはこれを最後に二度と以前の過ちは繰り返さないという固い決意でいるのに…」。
失敗に備える、と書くと、ある人たちはそのように感じるかもしれません。禁煙にしても禁酒にしても、わたしが努力している甲田療法にしても、良い習慣を身につけようという人は、以前の習慣には二度と戻らない覚悟でいることでしょう。
失敗に備えるのは、消極的なことなのでしょうか。
現実的に見て、失敗に備えるのは積極的なことです。「意志の力だけでは不十分」という本にはこう述べられています。
失敗に備えるのは,防火訓練をするようなものです。…決して火事が起きることを望んでいるわけではありませんが,備えをしておけば、いざ起きたときに、しっかりした対応ができるようになります
意志の力は弱いので、ふとしたことで失敗することは誰にでもあります。大切なのは、失敗しないことではなく、失敗したときに、そのままずるずると習慣を台無しにしてしまうか、もう一度気を取り直して続けられるかということです。
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つまずいたら、はじめから登るべきか
例えで考えてみましょう。ある新しい習慣を続けるのは、階段を一段一段登るようなものです。
もし途中で足を踏み外し、つまずいてしまった場合、最初の段から登り直すのは賢いことでしょうか。それとも、気を取り直して立ち上がり、途中から登り始めるべきですか。答えは明白です。せっかく途中まで登ったのです。いまこの瞬間に立ち上がり、再び歩みだすべきです。
ところが、こと習慣に関して述べると、失敗したときに途中から登り出すのは難しいと言わざるを得ません。失敗した場合、たいていの人はひどくがっかりして意気消沈してしまうからです。そしてずるずると一番下まで滑り落ち、しばらく元の生活に戻った後に、最初の段から再び登り始めます。わたしも、そのような経験が多くあります。
では、そうならないよう、どのように失敗に備えることができるでしょうか?
意欲を燃え立たせるリストを作っておく
わたしが取り組んでいるのは、「意欲を燃え立たせるリスト」を作っておくことです。わたしのリストには、50個ほどの項目が並んでいます。これらは決して同時に思いついたものではありません。最初は少なくても、思いつくたびにどんどん書き込んでいくことで、項目が増えたのです。
わたしは、このリストを、見やすいように、また書き加えやすいように、幾つかのカテゴリに分けています。
目標
なぜその習慣を始めたいと思ったのか、できるだけ具体的に書いておきます。もし思いつかないとすれば、あなたはその習慣を本当に身につけたいとは思っていないのかもしれません。
ex
■健康になって、前々からしたかった…の仕事に就きたい
■○○に好きになってもらえるような、自己管理のできる人間になりたい
■体力をつけて…に旅行したい
■○○のような立派な人間になりたい
■…という自分の思いを貫きたい
期限
期限のない目標は、単なる夢に過ぎません。
ex
■…月のイベントまでに体調を整える
■…月に○○に会うときまでに、この習慣を身につける
■…歳になるまでに、自己管理のできる人間になる
動機
目標ほど大切ではないものの、自分の心に火をつける発奮材料になる言葉を何でも書き留めておきます。
ex
■わたしにはこの習慣はできないと決めつけていた○○を見返したい
■この習慣をまず身につけなければ、人生を棒に振ることになる
■命をかけて病気と闘っている人もいる。わたしが弱音をはくわけにはいかない
■○○の笑顔が見たい
■自分をコントロールできない人が、どうして他の人を幸せにできるだろうか
対策
誘惑に耐え切れなくなったときの対策を、できる限りいろいろ書いておきます。
ex
■散歩に出かける
■シャワーを浴びる
■○○に電話する
■水を飲む
■ピアノを弾く
以下のことは気にしない
何かほかのやるべきことがストレスになって、習慣がつまずくことがあります。たいていの場合、習慣を身につけることのほうが大切なはずですが、目先の用事で頭がいっぱいになって習慣をないがしろにしてしまうのです。それを避けるために、思い煩いやすいことをあらかじめ書いておきます。
ex
■ブログが更新できていない
■メルマガが読めていない
■運動ができていない
■語学の勉強ができていない
■…歳にもなるのに、みんなと同じように活躍できていない。
今の良い習慣が確立できれば、これらのことは皆できるようになるのだとわきまえましょう。
リストを何度も見なおそう
このリストには、新しいことを思いつくたびに、どんどん項目を書き加えましょう。「あとで書こう」と思ってはいけません。このリストは「意欲を燃え立たせるリスト」だからです。思いついたときに、思いついたままの表現で書き込んでこそ、勢いのある、自分を燃え立たせるフレーズになるでしょう。
また、書こうとしていることが「バカげている」「書くまでもない」と思ってもなりません。そうした突拍子もないことや細かいことにこそ、自分の本心が表れている場合があります。だれかに見せるわけではないので、口に出すには恥ずかしいようなことでも、とりあえず書いておくようお勧めします。
それでは、これからも、失敗に備えた「意欲を燃え立たせるリスト」を片手に、階段を登り続けましょう。そうすれば、つまずいて転んでも、再び心を燃え立たせ、輝かしい頂上へとたどり着くことができるのです。