最近の研究によって慢性疲労症候群(CFS)について分かった8つのこと


はてなブックマーク - 厚生労働省疲労研究班年も6/1-6/3に日本疲労学会が開催されたようです。

毎年、慢性疲労症候群(CFS)について最新の研究成果が発表されますが、ここ3年間「自律神経機能異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する 客観的な疲労診断法の確立と慢性疲労診断指針の作成」という取り組みが行われていました。長い名前でわかりにくいですが、つまりは、疲労を客観的な数値で表す研究です。今年はその最終的なまとめが発表されたはずです。

まだ情報は入ってきていませんが、いずれ、厚生労働省疲労研究班に資料がアップされるのではないかと思います。このエントリでは、その前に、去年の研究でわかったことをおさらいしておこうと思います。

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平成22年度厚生労働科学研究 で明らかになったこと

この研究報告のPDFはこちらからダウンロードできます。研究成果は13の分担研究報告に分けられていますが、論文形式なので、一般人にはわかりづらい内容です。

このエントリでは、個人的に興味深く思ったところをまとめたいと思います。ずいぶん前に読んだものですし、わたしは専門家ではないため、誤りが含まれている可能性もあることを、どうぞお含みおきください。

前書き

慢性疲労症候群は、5000もの英語論文が執筆されている病気ですが、診断基準が客観性に欠けるため、医師の理解が十分に得られていません。そこで、客観的に異常を見つけるため、日本では次のような研究が行われています。

◆副交感神経系の機能低下などの観点から
大阪市立大学疲労クリニカルセンター、名古屋大学医学部附属病院総合診療科、国立病院機構さいがた病院、九州大学病院心療内科

◆前頭葉を中心とした脳機能低下の観点から
理化学研究所分子イメージング科学センター

これらの研究の、平成22年度における目立った成果が、以下の8つの点です。

1.XMRV―見つからなかった

XMRVは2006年、前立腺がん患者らから発見された新しいウイルスです。米国で101名の慢性疲労症候群(CFS)の患者のうち67名から発見されたとして大騒ぎになりました

しかし、日本の研究では、100名中2人のみ陽性でした。これは健常者と変わらない数字です。さらにXMRVに関係するDNAはまったく発見されませんでした。

このため、XMRVは慢性疲労症候群の診断には使えません。もっとも、検査法の感度を高めると見つかる可能性もあるとは書かれています。

2.自律神経機能―副交感神経の機能が低下

これまで自律神経機能は、VHS(ビジュアル・アナログ・スケール)という問診表で判断していたので、客観性にかけるという難点がありました。

そこで指尖加速度脈波という装置を用いて検査したところ、慢性疲労症候群(CFS)の患者では、副交感神経の機能が減少していると分かりました。これにより、「相対的な」交感神経亢進状態にあることが、数値で分かるようになりました。つまり、慢性疲労症候群(CFS)の患者は、身体を休める神経が働いていないということです。

3.身体活動量―パフォーマンスが明らかに低下

この分野では過去に多くの報告がありました。

◆1997年…CFS患者では疲労感が大きくなるほど活動量が低下する。

◆1998年…CFS患者が運動すると、5-7日間、活動量が低下する。つまり疲れの影響がかなり長引く。また、筋肉中のATP(エネルギー)が健常人より急激に減少する。

◆2000年…CFS患者は、活動量のピークを維持できる時間が短く、しかも活動後に長い休息が必要である。

◆2002年…運動したあと、一日24時間の生活リズム(サーカディアンリズム)が乱れ、24時間より長くなる。24時間以上長引く疲労感は、この乱れによると思われる。

◆2004年…起きてから3時間以上経過すると、イベントに対応する柔軟性が低下する。

そして今回、アクティグラフを用いて活動時の加速度の変化を調べたところ、60-80%の確率でCFSを診断できるようになりました。このパフォーマンスが低下した状態は、感染症や膠原病、睡眠異常に似ています。

4.精神疾患の併存率―60-70%

CFS患者の60-70%に何らかの精神疾患が見られます。大うつ病(MMD)は15-44%、不安障害は20%でした。

5.治療法―漢方薬と認知行動療法

漢方薬を用いた治療では、著しい改善が27%、改善が41%見られました。しかし、漢方薬で癒せるのは身体面だけです。

心理面の問題や、環境の問題を解決するには、認知行動療法が有効でした。無意識に行っていた行動を意識化することで、疲労させる要素に気づいたり、回復のためのリハビリを継続できたりします。

6.脳の炎症と中枢神経異常―認知能力が低下

PET(ポジトロンCT)を用いた検査では、左視床に炎症がみられ、セロトニン神経系に異常がありました。

またMRS(磁気共鳴スペクトロスコピー)による検査では、深部反射が亢進し、コリンが低下していました。これは中枢神経に異常があり、認知能力が低下していることを示しています。慢性疲労症候群(CFS)患者は疲れやすさが改善しても、集中力の低下が残ることがありますが、これがその理由ではないかとされています。

7.酸化ストレスと抗酸化能力―CFSではどちらも低下

酸素は代謝の過程で活性酸素(フリーラジカル)になります。この活性酸素は化学反応性が強く、人体に有害ですが、ふつうは抗酸化物質により無害化されます。このバランスが崩れた状態を、酸化ストレスといいます。酸化ストレス値と抗酸化能力値の比率を調べると、疲労度が分かります。

◆慢性疲労症候群の患者
酸化ストレス/抗酸化能力=非常に高い/低い

◆激務時のプログラマー
酸化ストレス/抗酸化能力=非常に高い/ふつう

◆ストレスを受けている健常者
酸化ストレス/抗酸化能力=高い/高い

これらを比較すると、慢性疲労症候群(CFS)患者は、酸化ストレスが高く、確かに疲れています。しかも健康な人とは違い、抗酸化能力も低くなっています。そのため、いつまでも酸化ストレスをはねのけることができず、疲労感が長引くのです。

8.唾液中のヘルペスウイルス―CFSは異常な疲労

潜伏しているヘルペスウイルスは、宿主が疲労すると、生命の危機を察知して、外に逃れるため唾液に現れます。そのため、疲労の度合を測定するときに役立ちます。これは、肉体・精神疲労両方で有効です。

去年の研究では、疲労のシグナルは、抹消臓器細胞に出現する疲労因子FFによって伝えられることが分かりました。今回の研究では、FFがヘルペスウイルスを活性化させることや、FRと呼ばれるFFを抑制する疲労回復因子が存在することが分かりました。

ふつうの疲労では、FFもFRも増加し、その結果、唾液中のヘルペスウイルスが増加します。それらが多いほど、疲れがひどいということになります。ところがCFSでは、どれもが低い数値でした。どういうことでしょうか。

まずFFやヘルペスウイルスの値が低いことから、通常の疲労ではないことが伺えます。疲労そのものは回復しているのに、疲労感だけが亢進している異常な状態のようです。またFRの低さから、疲労がなかなか回復しないことも分かります。これは非常に特徴的な結果なので、優秀ながんマーカーかそれ以上の精度でCFSを診断できるとのことでした。

これからの疲労研究

このように、日本の研究班は、慢性疲労症候群(CFS)について多くのことを明らかにしてきました。わたしたち患者を対象に実施されてきた疲労検査によって、疲労の度合いを量れる「疲労度計」も開発されていると聞いています。

疲労は、慢性疲労症候群(CFS)患者のみならず、日本に生きるほとんどすべての人が抱える問題です。その研究に、わたしたち患者が貢献できているのは喜ばしいことです。わたしたちの病気を通して、やがて革新的な疲労対策が開発されるとしたら、願ってもみないことではないでしょうか。

▼追記
平成23年度分のまとめはこちら

検査でわかるようになる? 研究でわかった慢性疲労症候群(CFS)の10の異常
平成23年度の最新の慢性疲労症候群(CFS)の研究について紹介するエントリです。CFSは、これまで検査では異常が出ないとされていましたが、客観的な10の検査法が確立されつつあります
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