頚椎、脊柱、背骨のゆがみが病気につながる、という話は新しいものではありません。
今回紹介する本は、西式甲田療法の甲田先生が、背骨のゆがみと病気との関係に注目されて書いた本背骨のゆがみは万病のもと―やさしい西式健康法です。
甲田先生の本の中でも、少し異彩を放つ独特な語り口が特徴のユニークな一冊です。
この書評では、本の概要を紹介しつつ、背骨のゆがみをチェックできる9つの方法を取り上げましょう。
目次 ( 各項目までジャンプできます)
これはどんな本?
甲田療法の本としては珍しく、背骨のゆがみの観点から、詳しく説明されています。
さらに珍しいのは対話形式である点です。「おじいちゃん」こと甲田先生が、孫の「マーちゃん」に、最近増えている「背中くにゃ」の危険を解説する物語形式になっていて、読みやすく仕立ててあります。
内容はというと、子供に話している場面であるのに、「おじいちゃん」が文献や研究から矢継ぎ早に引用し、とても詳しい解説をしているのが、なんともこっけいで笑いを誘います。その詳しさたるや、類書の甲田療法本を凌駕するほどで、知識目当てに読む価値も十分です。
「背中くにゃ」の原因は?
この本では、背骨のゆがみをさして、「背中くにゃ」という表現が使われています。背筋が曲がって猫背になるなど、同じ姿勢を保てない子供たちのことをいうのでしょう。この背骨のゆがみの原因は、幾つかあります。以下に例を上げましょう。
◆人間本来の二足歩行により自然に生じてしまう (p12)
◆栄養分の偏った食生活により、圧力に弱くなる
◆日常生活の左右非対象の起居動作の癖によっても悪化する (p48)
背骨がゆがむとどうなるか
脊髄が歪んで副脱臼を引き起こすと、脊髄神経が出ている椎間孔が圧迫されます。すると手足の動きが鈍ったり、ホルモンが乱れたりするおそれがあり、全身に影響が及びます。まさに万病につながりかねないと警告されています。
このことは最近の研究によっても裏づけられています。以下のようなニュースが掲載されました。
(人間が)手指を器用に動かせるのは、大脳からの指令が筋肉に直接送られる神経回路のほかに、脊髄にあるもう1つ別の“間接回路”による
脊髄の“間接回路”の役割を解明 (ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト) - Yahoo!ニュース(リンク切れ)
脊髄を通る神経の大切さは、検証によっても裏付けられているのです。
背骨のゆがみをどうやって治すか
いつもの通り、治す方法については、西式健康法や、少食、生菜食が効果的だと書かれています。それらの説明は、重複するので省きますが、この本にはユニークな点があります。
なぜ西式健康法が効くのか書いてある
西式健康法の各運動について、なぜ効果的なのか、とても詳しく書かれています。たとえば、背腹運動の準備運動の各動作の効果まで書かれています。この点は、甲田療法日記で今後取り上げる各運動の解説に反映したいと思います。
甲田先生の壮絶な体験談がおもしろい。
「おじいちゃん」が西式健康法を実践して背骨のゆがみを治した体験談がときどき出てきますが、壮絶なのに、おもしろおかしく「マーちゃん」に話しています。例を挙げると、
◆こすれた皮膚から出血するまで金魚運動をした (p112)
◆合掌合蹠運動を毎朝30-40分続けていると板の木目が彫れた (p58)
などのように、「雨垂れ石を穿つ」がごとく辛抱強く体の矯正に励んだと書かれています。
他の人たちの体験談も独特
「おじいちゃん」の話の途中で引用されている、他の人たちが背骨のゆがみを治した体験談も総じて独特です。
◆慢性疲労症候群のSさん (p66)
毛管運動を一日 分ひたすら行ったことが書かれています。この経験談は、【甲田療法日記50】大きな飛躍を試みるで引用しました。名前や背景が似ている気がするのですが、もしかすると、心身症克服のコツに出てきたSちゃんと同一人物でしょうか。
◆自分の体で生菜食を実験した体育教師 (p85)
◆膝のけがから生菜食で56㌖の六甲山縦走に復帰し、しかも記録を伸ばした60歳の女性 p104
これら二つは、【甲田療法日記52】玄米を主食にする効果と生菜食で簡単に紹介しました。
◆ひどいアトピーで顔がズルむけだった女の子。ステロイドを中止して甲田療法をはじめると、アトピーが大きく悪化してひどい痛みとかゆさに苦しめられるまでになった。しかしたぐいまれな辛抱強さで継続し、6ヶ月目にして好転した。(p189)
背骨のゆがみをチェックする8つの方法
続く部分では、背骨のゆがみを自分でチェックできる簡単な方法が幾つか挙げられています。
外見から見分ける方法 p7
◆1.左右の肩の高さに違いはないか
◆2.左右の肩胛骨の位置に違いはないか
◆3.前屈姿勢をとったとき、肩や腰のラインが左右に傾いていないか
西式健康法を活用した検査方法
◆4.平床に寝たとき、両足の角度が逆ハの字になっているか p44
両足が開きすぎていたり、左右非対象に開いていたりすると、股関節がゆがんでいるか、副脱臼していると考えられます。
◆5.合掌合蹠運動で、股関節が180度開けられるか p56
もし開かないなら、これも1と同様の問題があり、大腿骨が股関節にずれてはまっていると考えられます。合掌合蹠運動を繰り返して整える必要があります。
◆6.毛管運動のとき、左右とも自然に微振動させられるか p54
もしどちらかの足を微振動させられないなら、脊柱がゆがみ、椎間孔から出る神経が圧迫されて、細かい動作が妨げられている可能性があります。
◆7.足の指を5本とも広げられるか p55
どちらか片方の足しかできない人が多いといいます。その場合、6.と同
じ問題が生じています。
◆8.腰が反り返っているか
この本では書かれていませんが、以前に読んだ甲田先生の本では、板の上に寝るとき腰がアーチ状になって隙間が空いてしまう人も、背骨がゆがんでいると書かれていました。
わたしも隙間が空いていて、むしろアーチ状になっている方が普通だと思っていたぐらいです。平床に寝はじめた最初のころは、尾骶骨が痛くてたまりませんでしたが、最近はゆがみが解消されてきたのか、普通に寝ることができます。この反り腰の確認方法は、以下の記事でも取り上げられています。
ぽっこり腹や腰痛の原因にも 「反り腰」を改善 ゆがみリセット学(4) :日本経済新聞
さて、あなたの背骨はどうでしたか? たとえチェックした結果、ゆがんでいるとわかったとしても、気を落とさないでください。甲田先生自身も、西式健康法をはじめる前は相当ゆがんでいたそうですし、診察のとき、ゆがんでいない人はほとんど見たことがない、と書いておられます。
ゆがみが気になる人は、ぜひ本書を参考にして、西式健康法というお金のかからない手段で、コツコツ矯正してみてください。
このように、書籍背骨のゆがみは万病のもと―やさしい西式健康法は、とてもユニークな本です。ふだん少食メインで語られることの多い甲田療法が、脊柱のゆがみという観点から、対話形式という面白い仕方で説明されています。
甲田療法の少食はよくわかった、今度は西式健康法の六大法則が知りたい、という方や一風変わった甲田療法本を読みたい方におすすめの一冊です。