甲田先生の「心身症克服のコツ 慢性疲労症候群も治る」。心身症は心の問題ではない


のところ体がだるい、頭痛や微熱がある、日によっては、体がドロドロになりそうなほどしんどいのに、検査ではなんの異常も出ない。医者からは「気のせいでしょう」、「なんともありませんね」と言われる…。ついた診断名は「自律神経失調症」。

このような理不尽な経験をしたことがありますか? 書籍心身症治療のコツ―慢性疲労症候群も治るは、まさにそのような人たちのことを取り上げた本です。

「心身症」「気のせい」ではなく、具体的な治療法もある、ということが書かれています。前半のエントリでは、この本の概要と、「心身症」の身体的な原因5つを取り上げます。

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これはどんな本?

世間で「心身症」というレッテルを貼られ、西洋医学からも東洋医学からも見放された人たちの苦しい症状を、西式甲田療法で治す、という趣旨の本です。

前半では、一般に「心身症」と呼ばれている不定愁訴には、身体的な隠れた原因があるということを解説していて、後半には具体的な経験談が綴られています。

これら「心身症」の中には、自律神経失調症、過換気症候群、胃下垂、アトピー、更年期障害、ノイローゼ、喘息、フケ症、脱毛、慢性疲労症候群などが含まれます。

「心身症」と呼ばないで

この本の題名を見て、もしかすると慢性疲労症候群の患者の方の中には、不快に思われた方がいるかもしれません。あたかも、慢性疲労症候群が「心身症」、つまり心因的な病気だと言っているようにも思えるからです。

しかし、この本の主張はその正反対です。まずp22に、「心身症」の一般的な定義として「心理的・社会的な因子についての配慮が特に重要な意味をもつ病態である」と書かれています。

次いで、その後p38,80,92,116,184,360などでは、それら「心身症」の多くは、検査に出ない肉体の異常によるものなので、抗うつ薬や自律訓練法、カウンセリング、呼吸法、森田療法などでは完治しない、という甲田先生の見方が繰り返されています。そのひとつp80にはこうあります。

大体において心身症の治療に当たる指導者の中には、このような器質的な原因で起こってきた症状も「気のせい」にして、精神面での治療に終始している方が少なくありません。これでは、いくら熱心に指導しても、その病気は治らないでしょう。 p80

身体的に明らかに苦しいのに、ろくな検査も受けられず、心身症や身体表現性障害と烙印を押され、果ては精神科に送られてしまう理不尽さは、多くの慢性疲労症候群(CFS)患者が経験しています。甲田先生は、そのような考え方とは逆に、身体面の治療によって治ると励ましているのです。

「心身症」の原因と対策

検査に出ないさまざまな不定愁訴の原因と対策は、おおまかに言うと以下の5つに分けられていました。

1.鈍重肝臓 p38

原因:大食や食品添加物の摂取により、肝臓に負担がかかり、検査には出ないが、機能が低下している。慢性的な疲れやイライラが生じる。
対策:少食を徹底し、食材にも気を使う

2.背骨の狂い p79

原因:日常動作の癖による重心の偏りや、偏食による栄養の偏り
対策:西式健康法の合掌合蹠運動など

3.鈍重腎臓 p96

原因:足首の故障。慢性疲労症候群(CFS)と関連
対策:西式健康法の毛管運動

4.宿便の停滞 p120

原因:処理能力を超えた食事を食べることで、便が渋滞して腸内で腐敗したり、腸管が伸びて癒着し、腸麻痺が生じたりする
対策:胃腸内残留物の“交通整理”。一時的な通行止め(=断食)や通行制限(=少食)。

5.自己中心的な考えの癖 p194

原因:金儲けばかりを考える物質主義や、消極的な心の持ちよう  
対策:心のそこから感謝する習慣をもつ。厳しい姑のもとに嫁いだ歌人 税所敦子さんの経験が載せられている。あるとき、姑から「鬼婆と人は言うなり」という句の上の句を詠むよう言われたとき、「仏にも勝る心と知らずして」と歌った。

この5つは単独で存在するのではなく、密接に関連しています。例えば、背骨が狂えば、肝臓が圧迫され、働きが低下することもあります。

このように、慢性疲労症候群(CFS)を含め、一般的に「心身症」と誤解されている病気は、「気のせい」ではありません。「心身症」は一般的に使われる「気のせい」という意味ではなく、文字通り、心身両面の癖が深く関わった病気だととらえる必要があるのです。

CFSにも甲田療法が効く?

この本では、「心身症」は「気のせい」ではなく、しっかりした身体的原因があり、その身体的な原因を取り除くには、西式甲田療法の少食と運動が効果的だとされています。

甲田療法みたいな民間療法より、薬やサプリメントに頼ったほうがいいのではないだろうか、と思うこともありますが、甲田先生はこう述べています。

断食という「マイナス栄養」にはこの自己融解が行われているのです。…人間のメスで癒着を剥がすより、神の手(自然治癒力)に頼る方が勝っているということができるでしょう p187

神の手、などと言うと、仰々しいですが、要は自然治癒力のことです。本文中では何気なく書かれている一文ですが、わたしは妙に納得してしまいました。

バイオミメティクスを研究していると、自然界に見られる英知が、人間の発想のはるか上を行くという例は、枚挙にいとまがありません。あらゆる人間にもともと備わっている免疫機構にしても、お金で普及させることが到底不可能なほど高性能なものです。

少食や断食をしてると言うと、変人のように見なされることもありますが、この本には、そんな経験をしながらも黙々と体質改善に取り組んだ人の話も出てきます。

この養生法をしていることで他人に笑われたり、批判を受けたりして、様々な複雑な思いを味わいました。それはこれをはじめた人なら誰でもそうだと思います。

…しかし最近はこう思います。人がやることのうちで食を規制するという最もむつかしいことにいどんでいるのだ、…どんなに世間的に偉いと言われているような人だって、ひょっとしたら逃げ出すような道ではないか。人が身ぐるみはがされて、丸裸で神様にその人間性を問われる世界ではないか。たとえ病気がきっかけでやむなくはじめたとしても、そんな道をなんとか歩いてゆく努力をしてゆくことは人間の最も真摯な生き方であり、とても誇りに思い、自分も胸を張ってよいし、人にすすめるべき道なのであると。   ー岡崎明子さん p309

この言葉はけだし名言だと思いました。甲田療法をしていると、周りの人たちとは180°異なることをするので、やりもしない人から、いろいろ批判をされ、とやかく言われます。しかし、もし体調が改善する可能性があるなら、試してみる価値はあるでしょう。

そうやって、病気の中でも主体的に行動する積極的な精神は、闘病を成功させる力になります。

「この病気が治ったら、私もそのような菩薩行をさせていただきます」と云われる患者さんがおられますが、それは間違っていると思います。

つらい症状に苦しんでいる、その今から菩薩行を始めるのでなかったらだめなのです。本当に解った人は、つらい症状の中から、その菩薩行を始められるのです。p213

病気が治ったら生活を改善させよう、と考えて、しんどい今は自暴自棄でも構わない、と思って投げやりに過ごす人もいます。

しかし、病気である今から、治るための努力を傾け、自分の経験を活かして、他の人を助けよう、と考えるなら、失ったもの以上のものを得られるかもしれません。

「心身症」は克服できる

いわゆる「心身症」と診断された人の多くは、医者から見放されたり、家族や社会から不当な扱いを受けてきた人たちです。苦しい症状について訴えたのに「気のせい」と言われ、悔しくて夜も眠れなかった、という経験をお持ちかもしれません。

喜ばしいことに、この書籍は、そのような悔しさを、治療法に取り組む力に変えるよう励ましてくれます。実際に治癒した多くの方の経験談が、自分も治るかもしれない、という期待を抱かせてくれます。

もっとも、これは非常に厳しい道です。特に慢性疲労症候群についてこう書かれています。

CFSの治る道はこの狭き門をくぐることです。
しかし、このような厳しい道を進むことに賛成される専門家がいかに少ないことでしょうか。

…だから、このCFSはそう簡単に治らないでしょう。文明病としてこれからますます増え、生涯病苦に悩みながら終わってしまう患者さんが多いことと思います p112

この書籍には、中学3年生のSさんや、三村聡子さん、池ノ谷由里子さん、前述の岡崎明子さんなど、大勢の慢性疲労症候群の方の経験談が綴られています。その数は、慢性疲労症候群克服への道に次いで多いと思います。

慢性疲労症候群をはじめ、検査に表れず、医者から「心身症」のレッテルを貼られる病気を治療するのは簡単ではありません。しかし、この書籍は、そうした難病を治療する上でモチベーションを高める助けになるでしょう。

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西式甲田療法とは