七年間乾いた木は再び花を咲かせるか

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120721アルガンの木ばつにより乾ききり、何年もの間、雨の恵みから見放され、葉がすべて落ち、すっかり死んだようになった木を想像してみてください。そのような木が再び花を咲かせることなどありうるでしょうか。

ガーデニングの経験が豊富な方なら、それは難しい、と思われることでしょう。花卉、特に観葉植物は、こまやかな世話を必要とします。あなたの家の観葉植物を、何年もの旅行でずっと放っておいたとしましょう。長い月日の後、家に戻ってきたとして、それらの草花が生きおおせていることなど期待できるでしょうか。

ところが自然界には、7年もの干ばつを乗り越えて、再び慎ましい花を咲かせる木が存在するのです。その木の名をアルガンといいます。

わたしは、先日、ある発表のため、乾いた木が花を咲かせる事例について調べることになりました。そこで見つけたのが、アルガンの木についての資料です。アルガンは、やぎが登ることで有名な木なので、映像で見たことのある方も多いでしょう。この記事では、アルガンの木について紹介し、難病を患うわたしたちが学べることについて書きたいと思います。

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過酷な環境に適応した独特な木

アルガン(Argania Spinosa)の木は、大西洋に面したアフリカ西部の国、モロッコに生育するユニークな植物です。ミラクルフルーツやサポジラと同じアカテツ科に属しています。

モロッコでは、南西のエッサウィーラ・タルダン・ティズニトの三角地帯にのみ生育し、現地の人たちは、アルガンの群生地を「森」と呼びます。しかし、その砂漠地帯に生えているのはアルガンの木だけで、わたしたちの知る森とは随分様相が違います。アルガンの木は、普通の樹木のような激しい生存競争には不向きです。肥沃な土地では、すぐに淘汰されてしまいます。ところが、非常に過酷な環境で生きおおせる独特な知恵を備えているため、モロッコの砂漠では、唯一葉を茂らせ、花を咲かせることができるのです。

モロッコの砂漠はどれほど過酷な環境なのでしょうか。その地方、いわゆるサハラ砂漠の一部は、「特別に」乾燥した地域、あるいは「非常に」乾燥した地域と呼ばれることがあります。気温は0℃から50℃にまで変化し、数ヶ月から数年乾季が続くことがあり、七年間まとまった雨が降らないことさえあるのです。想像もつかない異常な環境です。

アルガンの木は、そのような環境でゆっくりと育ち、7㍍ほどの潅木になります。干ばつの時期には、葉をすべて落とし、すっかり枯れたようになりますが、それでも死ぬことはありません。ひとたび雨が降ったなら、わずかな恵みを決して無駄にせず、すぐに新緑を芽吹きます。そして花弁がなく目立たないものの、香りの良い小さな花を咲かせます。

なぜアルガンの木は、それほど厳しい環境に耐えることができるのでしょうか。その秘訣は地下深くに伸ばす根にあるそうです。干ばつの時は地中100㍍もの深さに根を張り、水分をとりこむと言われています。また、葉からわずかな露や霧の水分を吸収することができます。そのようにしてアルガンの木は150~200年も生きることができるのです。

アルガンの木がもたらす3つの恵み

過酷な環境を生き抜くアルガンの木は、人間に動物に、さらには大地にも恵みをもたらします。

1.人間への恵み

まず有名なのはアルガンオイルです。小さな実の胚の部分を砕いて作るため、たくさん実を集めても、オイルにするとたった1/30になってしまいます。熟練の技術が求められ、一日働いても、2kgの胚を取り出すのが精一杯だそうです。それでも、アルガンオイルはとても有用なものとして珍重され、トーストにつけて食べたり、吹き出物や乾燥肌、リウマチの治療に使われたりしてきました。

2.動物への恵み

アルガンの木というと、はじめに触れたように、やぎが登ることがよく話題になります。アルガンの枝には、3センチもの棘がありますが、やぎはかまわずに登ります。何のために登るのでしょうか。栄養豊かな実を食べるためです。普通地上に生きる動物であるやぎを登らせてしまうほど、アルガンの実は魅力的なのでしょう。

アルガンの木は、どこも無駄になる部分がないことでも知られています。枝や葉は、燃料や材木として有用です。実は、オイルが取れる胚以外の部分も、やぎやラクダの餌、またかまどの焚き付けに使われます。

3.大地への恵み

アルガンの木は、地中深く伸ばす根によって、土地の保水効果を高め、砂漠化を防ぐと言われています。風や雨による侵食を防ぎ、動植物をその木陰で守ります。土地を守ることは、その地の人々の生活に直結しますから、アルガンの木のもたらす益は計り知れません。

わたしたちが学べる3つの教訓

このようにアルガンの木は過酷な環境でも生き抜き、人々にさまざまな恩恵をもたらしています。ではアルガンの木と同様、慢性疲労症候群や線維筋痛症といった、「特別に」過酷な環境、想像もつかない異常な環境で生きているわたしたちは、この木から、何を学べるでしょうか。

1.他の人と比べない

アルガンの木はこれほどすばらしい能力を持っていますが、他の樹木と競争することはできません。競争相手が多い肥沃な土地では、すぐに淘汰されてしまいます。

重い病気を抱える人たちも、激しい競争社会ではすぐに蹴落とされ、生き抜いていけないかもしれません。しかしだからといって、あなたに価値がない、他の人より劣っている、というわけではありません。アルガンが熱帯雨林で生育できないからといって、価値がない、とみなされないのと同じです。あなたにはあなたの良い所があります。アルガンの木が砂漠で生きる人々に重宝されるように、病気の過酷な環境で育んだ、あなたの優しさやめげない心に惹かれる人は必ずいるはずです。

2.深い思考力を働かせる

アルガンの木が七年もの干ばつに耐えられるのはひとえに、100㍍もの深さにまで根を張り巡らすからです。注目したいのは、アルガンの木は、干ばつに遭う前ではなく、干ばつに直面した後になってさらに根を伸ばす、ということです。

わたしたちにとって、根を伸ばすことは、深い思考力を働かせ、自分の生きる意味についてよく考えることにあたるかもしれません。病気になる前から、揺るぎない自尊心を育てていれば、それに越したことはありません。しかし、大抵の場合、順調な時には、あまり深く考える機会がないものです。

自分の存在意義を見失わないよう、深い思考力を働かせるのは、病気になってからでも決して遅くはありません。重い病気のもとでは、これまで楽しんできた生きがいも、誇りにしてきた能力も、目指してきた目標も失われるかもしれません。しかし、アルガンの木が水を求めて深く根を伸ばすように、自分の生きる意味についてよく考え、深い思考力を働かせるなら、長い闘病のもとでも、決して自尊心を失うことはないでしょう。

3.あきらめない

アルガンの実アルガンの木が干ばつを耐え忍ぶことは、無駄なことでしょうか。決してそうではありません。干ばつをくぐり抜けるために伸ばした根は砂漠化を食い止め、干ばつを乗り越えて育てた実は動物を楽しませ、人々の生活を支えます。

同じように、あなたが辛抱強く生き抜いてきた闘病の年月は決して無駄にはなりません。アルガンからとれる油のように、形になるのはほんの少しだけかもしれませんが、それは非常に貴重な実りです。

アルガンの木は、干ばつのもとでも、息を吹き返す望みを決して捨てません。幾年も雨が降らないとしても、いつか葉を芽吹き、花を咲かせる日を待ち望んでいます。

わたしたちも、同じように、あきらめない心を持つことができるでしょうか。意志を持たない木でさえ、幾年もの干ばつを辛抱できるのであれば、わたしたちはなおのこと、長年続く病苦のもとでも、希望を持ち続けることができるに違いありません。

ふたたび花を咲かせるまで

干ばつにより乾ききり、何年もの間、雨の恵みから見放され、葉がすべて落ち、すっかり死んだようになった木は、再び花を咲かせることができるでしょうか。

初めに書いたこの問いに、今なら、「できます!」と自信をもって答えることができるでしょう。この類まれな木は、わたしたちにとって見習うべき優れた手本です。

わたしたちは、幾年、あるいは幾十年病気に苦しんでいるとしても、他の人と比べず、深い思考力を働かせ、さらにはあきらめないことによってアルガンの木に倣うことができます。ぜひともアルガンの木のように、厳しい日照りを乗り越えて、再び花を咲かせたいと思われませんか。

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