うつ病やほかの精神疾患は、従来考えられていた「こころの病気」ではなく、「脳の病気」さらには「全身の病気」であるとの証拠が集まっているそうです。
うつ病やストレスが「老化の加速」につながる=研究/ WSJ日本版 - jp.WSJ.com - Wsj.com
老化が加速する
記事によると、精神的ストレスやうつ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を長期間抱えている人は、年配者に多い病気を早く、重く発症する危険があります。
その原因は「加齢とともに染色体に起こる変化と同じものが大きなストレスやうつ病を経験した人にも起こる」ためだそうです。これはつまり「老化の加速」です。
次のような研究が引き合いに出されています。
脳の縮小:約20年前デューク大学では、うつ病を抱える年配者の脳スキャンを実施し、脳の縮小が早いことを発見した。その理由は不健康な生活習慣だけではない。
テロメアが短くなる:UCSFによる研究によると、テロメアはうつ病や子どもの頃のトラウマ、またほかの心理状態によって短くなるのが加速する。PTSDを抱えたグループ推定4.5歳分老化していた。スウェーデンの科学者もうつ病において同様の結果を発見した。
老化への遺伝的な耐性が関係:テロメアは、特定のストレスホルモンや炎症性の分子により短くなり、テロメラーゼという酵素がそれを防いでいる。ストレスを抱えても老化が早くならない人は、生物学的に老化に強い要素を生まれつき持っているらしい。
個人の価値観も関係:2009年、UCSFの研究者は、悲観主義がテロメアの短縮と関係し、ストレスに結びつく化学物質の分泌を増やすことを発見した。 日常直面する問題で、他の人より多くのストレスを感じやすい人たちはテロメアが短くなりやすい。
対策:生活様式を改善すると、3カ月後にテロメラーゼが活性化し、コレステロール値や心理的な苦痛の低下がみられたという研究がある。一部、抗うつ剤によってテロメラーゼの水準が高くなった人もいた。
「全身の病気」
カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の精神医学教授、オーウェン・ウォルコウィッツ氏はこう述べています。
知識を深めるにつれて、私たちはうつ病を『精神疾患』や、まして『脳の病気』と考えることは少なくなり、むしろ全身的な病気と考えるようなった。
うつ病は確かに心の状態と関係していますが、単なる心理的なものではなく、脳や体と結びつく複雑なメカニズムが関係しているようです。うつ病を改善するにはさまざまな全身的なアプローチが必要で、生活のあらゆる面が関係しているとわかります。
この研究はうつ病やPTSDが「心のかぜ」とはとても言えないような、とても深刻な病気であり、治療が難しい理由を示しているといえるかもしれません。それでも、治療は不可能ではなく、老化の加速は止めることができるという希望も与えてくれています。