だれに対して慢性疲労症候群(CFS)をカミングアウトすべきか―わかってもらうためのアドバイス

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120806マイケルJフォックス性疲労症候群(CFS)であることをだれに対して明かすべきでしょうか。どんな方法によって伝えることができますか。

わたしにとってはこれは非常にストレスになる問題です。前に詳しく書いたように、カミングアウトするのは非常に恐ろしいことなのです。

大人の発達障害(ASD、アスペルガー症候群)に対処するーNHKの番組あさイチからで言及したように、病気や障害について明かすことは、いじめや差別、偏見をあおることがあります。自分の病気について明かす際には、慎重になるのが身のためでしょう。それは臆病の表れではなく、災害に備えて準備するのと同様、知恵のある選択です。

このエントリでは、だれに、どのようにカミングアウトすべきかという問題を考えます。

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お読みになる前に、以下に書くことはわたし個人の意見に過ぎず、だれにでも当てはまるわけではないことをお含みおきください。どんな対処法を選ぶかは各々が責任をもって判断すべきことであり、このブログは一つの見方を提供しているにすぎません。

だれに対してカミングアウトするべきか

だれに対してカミングアウトするべきでしょうか。まただれに対してはカミングアウトしないほうがよいでしょうか。これは相手の立場と状況によって変わります。

(1)医師はどうか

慢性疲労症候群であっても、歯医者や皮膚科や耳鼻科など、他のいろいろな病院にかかることはあります。病院では必ず既往症や治療中の病気を訊かれます。そのような場合、慢性疲労症候群として治療を受けていることを伝えるべきですか。

わたしの経験からすると、あまり伝えるのは得策でないように思えます。なぜなら、慢性疲労症候群という病気に関して、最も議論になりやすいのが医療従事者だからです。人は、自分の知らない分野に関しては、相手の意見を批判しようと思いません。しかし、自分が専門家だと自負していて、何らかの信念を持っている分野に関しては、過敏に反応しやすいものです。これは、科学や宗教の世界で、対立が起きやすいことからよく分かります。

たいていの医療従事者は、慢性疲労症候群という病気について、少なくとも何らかのことを聞き及んでいて、自分なりの意見を持っています。先日発表された研究報告書には「(CFSは)客観性が乏しいため、プライマリケアを担っている内科系の医療機関においてはCFSという疾患の存在は懐疑的にとらえる医師も多い」と書かれています。わざわざ、議論になりかねない点を持ちだすのは、茨の茂みに飛び込むようなものです。良い医療にあずかる前に傷だらけになってしまうでしょう。

しかしこのように考える患者もいるかもしれません。医療従事者がCFSについて正しく理解していないのであれば、せめて自分が声を上げるべきではないか。

CFSの周知を目指すそのような考え方はたいへん立派ですが、大抵の場合、患者が慢性疲労症候群について話したところで、医師の考え方は何ら変わらないでしょう。一般に医者と患者は対等ではないからです。病気を認知してもらうには医学的な権威が必要であり、それはわたしたちではなく研究者や学会の役目です。

ですから、何らかの医療機関を受診するときは、慢性疲労症候群について話すことに慎重になったほうが良いというのがわたしの意見です。そもそも血液検査には何の異常も出ない病気なので、慢性疲労症候群だと伝えたところで、治療に影響が及ぶことはないでしょう。

ただし、一部の薬には飲み合わせがあるので、服用している睡眠薬やサプリメントなどがあれば、ちょっとした不調や虚弱体質のため、○○病院でこうした処方をうけている、と言っておくとよいでしょう。嘘をつくわけではなく、必要のない情報は明かさないということです。

例外として、長期間にわたり、何度もかかることになる医者に対しては、最初のうちに慢性疲労症候群について話しておくべきです。二次的に重い病気を発症した場合や、手術を受ける場合などがそうです。自分の体を委ねることになるわけですから、ひどい体調であることを理解しておいてもらう必要があります。

もしあなたが慢性疲労症候群であることを受け入れようとしない医師であれば、その段階で別の医師をあたったほうが賢明でしょう。

(2)家族や親族はどうか

身近な人、特に同居している人に対しては、あらゆる手段を尽くしてでも、慢性疲労症候群について理解してもらうよう努めるべきです。家族や親族が、良き理解者であるかどうかは、闘病生活がスムーズに進むかどうかを大きく左右するからです。わたしたちが闘う相手は慢性疲労症候群であって家族ではないのですから、良い関係を築いておくに越したことはありません。

家族など身近な人に慢性疲労症候群について説明する際、どんな方法が使えるでしょうか。診察のときに、一緒に先生の話を聞いてもらえるよう頼むのが一番でしょう。できるなら、最初の一度だけでなく、毎回つきそってもらえるよう頼んでみてください。

また、慢性疲労症候群を正しく取り上げた書籍TV番組を見てもらうこともできます。例えば、このブログのサイドバーで取り上げている書籍や、薄くて読みやすい働き世代の疲労対策 疲れのメカニズムとセルフケアがおすすめです。

さらに厚生労働省疲労研究班慢性疲労症候群 - Wikipediaなどのウェブサイトを通して、世界各国の政府機関がこの病気に注目し、国際的に研究されている、ということを説明できるかもしれません。

身の回りの人は、ときに理解のない言葉や辛辣な批判を浴びせてくるかもしれません。しかし、あなたが突然変わってしまったために、身の回りの人も戸惑っているのだ、ということを忘れないようにしましょう。

わたしたちの側も、病気によるいらだちを家族に転嫁しないよう気をつける必要があります。「そうまでして生きるわけ―線維筋痛症だからといって、絶望はしない」ための3つの処方箋で取り上げたように、自分は家族にこれこれのことをしてもらえていない、と考えるのではなく、自分は家族に、どんなことをしてあげられるだろうか、と考えましょう。

病床において家族と良い関係を保つのは、非常に困難な場合がありますが、それは、あらゆる努力を傾ける価値のあることなのです。

「そうまでして生きるわけ―線維筋痛症だからといって、絶望はしない」ための3つの処方箋
書籍「そうまでして生きるわけ―線維筋痛症だからといって、絶望はしない」の書評です。線維筋痛症を患う橋本裕子さんの闘病記から、難病のもとでも絶望しないための秘訣を3つ要約しています。

(3)友人はどうか

慢性疲労症候群についてカミングアウトすることは、良い友人を見分ける効果的な方法です。書籍「うつ」とよりそう仕事術 (Nanaブックス)p52には、「今まで友だちだと信じてきた人」を病気によって喪失することの辛さが書かれています。わたしもそのような経験があります。

今まで親しくしてきた人を失うのを恐れて、カミングアウトをためらうのは当然の気持ちです。しかし、あなたが慢性疲労症候群になったと知って離れていくような人は本当に「友だち」だったのでしょうか。反対に、もしあなたが慢性疲労症候群になったと知っても、変わらず友だちでいてくれる人がいるなら、その人は生涯の親友になるでしょう。

このように、カミングアウトするかどうかは、おもに接する時間の長さに左右されます。迷ったときは、わたしは、この人とどれほどの時間を共に過ごすことになるだろうか、と考えてみましょう。あなたと頻繁に会い、長い時間接し、深く交流する人ほど、あなたの本当の姿について知っておく必要があります。

バック・トゥ・ザ・フューチャーやファミリータイズで有名な俳優のマイケル・J・フォックスは、書籍ラッキーマンの中で、若年性パーキンソン病という病気を患い、カミングアウトに踏み切るまでの葛藤を綴っています。

彼はカミングアウトしたことにより、病気を患う多くの人の共感を勝ち得て、新たな人生を歩むことになりました。しかしラッキーマンのつづきである二冊目の自叙伝、いつも上を向いて 超楽観主義者の冒険では偽りの非難にさらされたことも明かしています。

ですから、カミングアウトは必要以上に恐れるべきものではないとはいえ、慎重になるべき問題なのは間違いありません

(4)初めて会う人

それでは、初対面の人に対してはどうですか。初対面の人にカミングアウトするのは、例えるなら金属探知機をかざして砂浜を歩くことに似ています。カミングアウトという扱いにくい問題において、少しばかり「わくわくする」シチュエーションだからです。いったいどういうことでしょうか。

重症のCFS患者の場合、新しくだれかと知り合う、ということは少ないかもしれません。しかし、わたしは立場上、頻繁に初対面の人と話すので、「初めて会う人」という項目について考えることにしました。闘病中も社会的な活動に携わっている方や、社会復帰を目指しておられる方向けの内容かと思います。

先ほど取り上げた医者、身の回りの人や家族、友人と違って、今回取り上げる「初めて会う人」、というのは少々特殊です。なぜなら、判断材料が非常に乏しいからです。

医者であれば、一般的に、慢性疲労症候群について快く思っていない可能性がある、というデータがありました。家族や身の回りの人、友人であれば、気心が知れているので、いつどのように説明すればよいか、対策を練ることができます。

しかし、初対面の人の場合、分からないことが多すぎます。どこまで行っても砂しかない海岸線のようです。

しかし、これは別の角度から見れば、先入観がないがゆえに、自由に対処しやすいとも言えます。金属探知機を手に砂浜を練り歩く人にとっては、何の変哲もない海岸線も、金がまぎれているかもしれないわくわくする場所です。

以下の部分では「初めて会う人」を交流する時間ごとに分けて考えます。とはいえ、カミングアウトするかどうかは、時間的要素のみに左右されるわけではありません。

(ⅰ)これからもずっと関わることになる人

新しく同じ職場になった同僚や、趣味やサークルで出会う人などがこれにあたるかもしれません。わたしの意見では、これからもずっと関わる必要のある人と出会ったなら、できるかぎり病気について伝えておくべきです。単刀直入に、「じつはわたし自身について、あらかじめお伝えしておかなければならないことがあるのですが…」と言えるかもしれません。

このような場合、カミングアウトは早いに越したことはありません。あとになればなるほど、関係が深まれば深まるほど言い出しにくくなるでしょう。はじめにことわっておかなければ、相手は、健康な人に向けるのと同じレベルの期待をあなたに向けるかもしれません。そして、あなたが期待に添えないとがっかりして戸惑うかもしれません。あなたはやがて、自分が期待に添えないのはなぜか説明せざるを得なくなるでしょう。

ずっとつきあう相手の場合、あなたの病気が治らない限り、どこかでカミングアウトする必要が間違いなく生じます。切羽詰まって精神的に追い詰められるよりは、初対面の場で伝えてしまったほうが、どれだけ楽かしれません。

わたしはこの点で失敗した経験があり、それ以降は、早い段階でのカミングアウトを心がけています。そうすることで、できないことを告げたり、助けを求めたりするのがはるかに楽になりました。

(ⅱ)その場限りの人、ほんの数回だけ会う人

待合室で話す相手や、講習会やちょっとしたパーティ、披露宴などで出会う人などがこれにあたるかもしれません。こちらの場合は比較的自由です。慢性疲労症候群について伝えなくてもまったく構いません。

しかし、そのような出会いの場で、慢性疲労症候群について隠しておくことは、とてももったいない場合があるのです。どういう意味でしょうか。

わたしの経験を幾つか書きましょう。あるとき、同じくらいの年の人と出会い、話し込んだことがありました。どんな仕事をしているのか、という話になり、できれば黙っていたかったのですが、正直に慢性疲労症候群の闘病生活について話しました。社会的な活動がほとんどできていないころだったので、軽蔑されることを覚悟したのですが、意外にも、若くして重い病気とたたかっていることに感動した、という反応が返ってきました。

また別のとき、わたしがためらいながらも慢性疲労症候群について話すと、相手の方は驚いて、自分の友人にも、慢性疲労症候群の方がいると教えてくださいました。それがきっかけで、友だちの輪が広がりました。

ほかにも、わたしが病気を明かしたことで、相手の方が自分や家族の重い病気を明かしてくださり、その場限りで終わるはずだった出会いが、今も続く友情へと発展した経験が幾つかあります。中には、わたしの話がきっかけで、ずっと探していた病名に辿りつけた人もいました。

カミングアウトを楽しむ

もちろん、慢性疲労症候群だと伝えると、そっけない反応が返ってきたり、戸惑わせてしまったりすることもあります。しかしその場限りの出会い、というのは、もし気持ちが通わなくても、あとあと尾を引く被害がありません。また初対面の医者と違って、上から目線でひどいことを言われることもまずありません。

ですから、慢性疲労症候群であることを隠すよりは、何か反応があるかもしれないと思って、気楽にカミングアウトしてみるとおもしろい、とわたしは思っています。もしかしたら金が見つかるかもしれません。

さて、ここまで、だれに対してカミングアウトするべきか、という話題を考えてきました。では、どうやってカミングアウトすべきでしょうか。自分が慢性疲労症候群であることをだれかに伝える際、役に立つテクニックがありますか。

どのようにカミングアウトするか

1998年8月、ノルウェーの、ヒェル・ボンデビック首相は就任直後にうつ病であることを公にし、4週間の病気休暇を取りました。

この驚くべきカミングアウトに対して、野党や国民は非難するどころか共感を覚え、彼がいない間、連立政権の党首たちは協力して彼の仕事を分担しました。そして一ヶ月後に復職してきた首相は拍手を持って迎えられました。首相はその後職務を全うし、現在は各地で自分の経験をもとに講演しています。

ノルウェーの首相の逸話は、カミングアウトすることが自分と周りの人にとってプラスに働く可能性もある、ということを強力に教えています。

ここまでとりあげた、家族に対してカミングアウトするためのヒントを復習しましょう。それは次のようなものでした。

◆一緒に診察を受け。医師の説明を聴いてもらう
◆CFSについて正しく取り上げた書籍やTV番組を見てもらう
◆国際的・国家的なCFS研究の取り組みについて説明しているウェブサイトを見てもらう
◆助けになりたいと思ってもらえるような患者になる

複数の手段で視覚に訴える

さらに、わたしの現時点での結論では、複数の手段で視覚に訴えることが効果的だと考えています。

長年CFSと闘っている患者の多くは、車椅子マスクを用いています。これらは、体力や免疫力を補うために使用しているのですが、慢性疲労症候群について話すハードルを下げるためにも活用できます。

これらを活用して、以下のように会話できるかもしれません。

相手「 (車椅子や杖を見て) 足が悪いんですか?」

あなた「ああ、これですね。どうも気遣ってくださってありがとうございます。よく訊かれるんです。じつは、わたしは脚が悪いというより、全身に関わる内部障害を抱えているんです。慢性疲労症候群、っていう病気なんですが、ご存じですか?」

マスクをつけている場合は「足が悪いんですか」という代わりに「風邪ですか」とか「花粉症ですか」と訊かれるかもしれません。その場合も同じように会話を進めて、「全身に関わる」の部分を「免疫に関わる」と言い換えるとよいでしょう。

何も訊かれない場合

しかし、相手の方が、それら視覚に訴えるものを見ても、何も訊いてこない場合はどうですか。もしも気にしてくれてはいるものの、訊いてよいのかどうか迷っている様子であれば、自分からこう言うことができるでしょう。

「どうして車椅子を使っているの (または、「杖をついてるの」、「いつもマスクをしているの」),とよく聞かれるんです。少しわたしの身体のことをお話させてもらっていいですか? じつは…」

そもそも関心がない場合

問題は、明らかに関心がなさそうな場合です。そのような人は、身近に病気や障害を持つ人がおらず、比較的健康で、弱い立場の人について考えたこともないのかもしれません。カミングアウトしたところで同情心のこもった返事は期待できないでしょう。慎重になったほうがよいといえます。

そのような人に対して、もし病気について話す必要がないのであれば無理に打ち明けることはありません。

しかし打ち明ける必要のある相手であれば、ここまでで紹介したいろいろなテクニックを駆使する必要があります。それに加えて、今後紹介していく予定の比喩表現などを用いて、少しでも相手がイメージしやすくなる分かりやすい説明を心がけましょう。

カミングアウトがうまくいかなかった場合

せっかく勇気を振り絞って自分の病気について話したのに、無神経なことを言われたり、グサリとくる言葉を返されたりすることはあります。

そのようなとき、自分を否定されたような気持ちになるかもしれませんが、落ち込む必要はありません。そうした言葉をかける人は、あなただけでなく、だれに対しても、無神経に振る舞っているものです。また、常識的に考えて、あらゆる人から好かれることは期待できません。そのような人は、歴史上一人もいませんでした。どれほど魅力的な人であっても、その人を気に食わないと思う人はいたのです。

カミングアウトがうまくいかなかった場合、わたしたちにできるのは、相手の反応に倣わないことです。もしひどいことを言い返すなら、自分も相手と同じになってしまいます。

気持ちを切り替えて、あなたのことを受け入れてくれている人たちのことに目を向けましょう。慢性疲労症候群であることを知った上で、自分の力になってくれている人たちのことを考えましょう。そうすれば、今後別の機会が生じたときに、恐れずカミングアウトすることができるでしょう。

この記事で考えたように、カミングアウトは、慎重に考えるべき問題ではあるものの、慢性疲労症候群に対処する上で、避けては通れない道です。そして場合によっては、予想外の喜ばしい反応が返ってくることもあります。

続くエントリでは、CFS患者にとってよくある会話の具体例「こう言われたら」を取り上げます。

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