慢性疲労症候群と闘う二本の柱―休息と運動に役立つテクニックをまとめました


111224 ねこ性疲労症候群(CFS)を患う人にとって休息はとても大切です。倉恒弘彦教授は、書籍危ない!「慢性疲労」 (生活人新書)のp137で「まずは十分な休養をとって、体力の回復を待つ」ように勧めています。

他方、こう述べる専門家もいます。九州大学病院心療内科の吉原一文医師、「休養はうつ病の初期においては重要となるが、CFSに対する休養は、重症あるいはうつ病の合併が認められない場合には避けたほうが望ましい」と書きました。

CFSと闘うには、休息は不可欠です。しかしそれだけではうまく対処できません。どうすれば賢く身体を休め、CFSを抱える中でも、活動範囲を広げていくことができるでしょうか。休息と運動に対してバランスのとれた見方をするにはどうすればいいでしょうか。

この記事では、CFSと闘う際に必要な二本の柱、休息と運動について考えます。

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CFSに休養が必要な3つの理由

CFSの患者に休養が必要な理由はたくさんありますが、そのうち3つを考えてみましょう。

失感情症、失体感症がある

日本大学板橋病院の村上正人医師によると、慢性疲労症候群(CFS)の患者は、「感情の認知や的確な表現が失われている失感情症、疲労や空腹などを十分に認知できず、体の声を聞くことができない失体感症」を抱えていることが多いそうです。

最新の疲労の科学に照らしてみると、これは疲労感がマスクされている状態といえるかもしれません。

研究が明らかにしたところによると、疲労感と疲労は別物です。疲労は明らかな体の危機ですが、それを告げるアラームである疲労感は、さまざまな形でマスクされ、かき消されてしまいます。たとえば、達成感があると、疲れていても疲労を感じません

慢性疲労症候群(CFS)の患者の中には、高い集中力を持つ反面、体を意識的に休めることが苦手な人が多いようです。それで村上医師は、「強迫的に物事に熱中しない、時間を決めて休養を取る、睡眠時間を確保する」ことが大切だと述べています。

「遅れを取り戻そう」と考える危険がある

CFSの患者は、もともと活動的な人が多いようです。意欲的で、やりたいことをたくさん持っていて、生産的に活動していた人が、ある日突然寝たきりか、それに近い状態になってしまうのです。

そのため、村上医師は、「わずかでも体調が改善し、気力や体力が回復すると、…遅れを取り戻したい」と考える患者が多いことを危惧しています。

CFSを患う多くの人にとって、ただ休んでいるだけ、というのは耐え難い時間です。病状が重くてどうしても動けない場合でも、心のなかで焦ってしまったり、あれこれと考えてしまったりしがちです。

しかし、そうした焦りや不安は、体調を悪化させ、たとえ回復したとしても再発を招くことになるので、辛抱強く、意識的に体を休めることが必要です。

FRが低下している

最新の疲労の科学によると、疲労を引き起こす疲労因子FFに対して、疲労を回復させる疲労回復物質FRというものが存在します。

最近の研究によって慢性疲労症候群(CFS)について分かった8つのことで取り上げたように、慢性疲労症候群(CFS)の患者は、このFRが低下していることが報告されています。

FFは酸素の消費に伴い、活性酸素が生じると増加します。一方、体の酸素消費を抑えれば、FRが優位になります。

FRは、横になって目を閉じているだけでも増加するというデータがあるので、たとえ眠れないときでも、体を休めておくのは、疲労回復に効果的です。

このように、CFS患者は、疲れをマスクしがちで、焦りを感じやすく、FRが低下しているため、休息をとることはとても大切です。

休息をとる3つの方法

FS患者の多くは、これまでさまざまなことに努力を傾け、活動的な人生を送ってきました。今度は、体を休めるための努力を払うことが必要です。

この場合の休息とは、ただ何もしないことではありません。意識的に体を休めることが必要なのです。

そのためにできるのは、リラクゼーションの技術、セルフマネージメントの技術、環境を整える努力です。

1.リラクゼーションの技術を学ぶ

多くの人はそもそもリラックスするための方法がわからないといいます。例えば自律訓練法漸進的筋弛緩法を学んでみるのはどうでしょうか。 これらの方法は特別な器具を使うことなく、いついかなる場所でも実践できるので重宝します。

自律訓練法をやってみよう トップ | ウェルリンク株式会社

疲労回復に効果的!「筋弛緩法」 [ストレス] All About

2.セルフマネージメントの技術を学ぶ

自制心を働かせて、過活動に陥らないよう注意したり、イベントに備えて計画的に行動したりすることも大切です。以下のエントリにまとめた5つの法則を活用するなら、無駄な労力を省けるでしょう。

体力を節約するのに役立つ5つの知恵 ―慢性疲労症候群(CFS)をかきわけて進むために
慢性疲労症候群のもとでも目標を達成するにはどうすればいいでしょうか。最近の研究よると、サケは水流の抵抗をうまくそらして、極力疲れないように賢く泳いで、川をさかのぼるそうです。この記

3.自分が休むための環境を整える

そもそも、家庭環境が良くなかったり、生活面で困窮していたりするなら、心身を休めることができません。

例えば、家族や友人に筋道立てて病気について話すことは肝要です。病気を知らない人たちに体調を理解してもらうのは簡単ではありませんが、役に立つテクニックをカテゴリコミュニケーションで書いていきたいと思っています。

また、場合によっては、労災や障害年金などの社会福祉制度を活用することができるでしょう。病気を治療するという目的を見失わない限り、使えるあらゆる制度を駆使して回復を目指すのは賢いことです。

慢性疲労症候群(CFS)と障害者手帳・障害年金
慢性疲労症候群(CFS)における障害者手帳の交付と、障害年金の受給について、それに関わるニュース記事とブログ記事を紹介しながら説明しています。

ただ休めばいいのか?

ここまで、体を休めることの大切さを考えてきました。

しかし、徹底的に休みさえすれば、CFSは回復するのでしょうか。そうではありません。前回、引用した言葉の通り、CFSにおいて徹底的に休養することは勧められていません。休息しても回復しない疲労、それが慢性疲労症候群(CFS)の特徴だからです。

慢性疲労症候群(CFS)の患者を幾人も見てきたわたしの主治医は、「以前は、すべてを投げ出して徹底的に休むよう指導していたが、それではかえって悪化することが分かってきた」と述べておられました。

適度な運動が必要です。

しかし一口に運動といっても、果たしてCFS患者にできる運動の方法があるのでしょうか。体調を悪化させず、適度に体を動かすためのどんな方法がありますか? 

適度な運動が必要な3つの理由

小型の渡り鳥キョクアジサシは、北極圏から南極圏まで、最大8万キロを数ヶ月かけて移動します。別の渡り鳥オオソリハシシギは、アラスカからニュージーランドまでの1万1500キロ以上を9日間で移動しました。

これら長距離飛行のレコードホルダーについて考えると、圧倒されてしまうかもしれません。どこからそんな力が湧いてくるのだろう、と思われることでしょう。

意外なことに、これらの渡り鳥は、決して、がむしゃらに無理をしているわけではありません。脳の半分を覚醒させておき、もう半分を眠らせておく“半球睡眠”を利用しているといわれています。休息と運動のバランスをとって、活動しているのです。

CFSと闘うには、休息だけでなく適度な運動も不可欠です。そういえる理由はたくさんありますが、3つだけとりあげましょう。

睡眠を改善する

CFS患者は、寝付きにくい、よく眠れないといった睡眠障害を抱えていることが少なくありません。睡眠リズムを整えるだけでも、疲労や頭痛といった症状がかなり軽減されると言われています。

睡眠リズムを整える効果的な方法は日中の適度な運動です。適度な運動は、深い睡眠を助け、寝つきやすくします。CFS患者の場合、就寝4時間前までの軽い運動やストレッチにより、睡眠の改善が見られたというデータがあります。

興味深いことに、唾液検査でCFS患者のヒトヘルペスウイルスを調べると、CFS患者の体は、実際には休まっているというデータが得られるそうです。その点は以下の記事に書きました。

検査でわかるようになる? 研究でわかった慢性疲労症候群(CFS)の10の異常
平成23年度の最新の慢性疲労症候群(CFS)の研究について紹介するエントリです。CFSは、これまで検査では異常が出ないとされていましたが、客観的な10の検査法が確立されつつあります

病的な疲労感があっても、なかなか寝つけない、という問題が生じるのは、体は生理的には休まっているからかもしれません。ですから、適度な運動によって、体に刺激を与えることは睡眠の改善に不可欠といえるでしょう

FRを増加させる

前回のエントリで言及した疲労回復因子FRは、体を休めるときだけでなく、適度な運動をした時にも増加します。

書籍間違いだらけの疲労の常識 だから、あなたは疲れている! p132では次のように説明されています。

適度なストレスがあるほうが疲労回復物質FRの反応が良くなり、疲れにくい体質をつくってくれます。

ただ…過度なトレーニングを続けると、疲労回復物質FRより疲労因子FFが上回り、その結果、細胞の修復が間に合わず、疲労回復どころか疲労を蓄積させることになります。あくまで適度な運動を心がけてください。

疲れを回復させるためにも、適度な運動は不可欠なのです。

廃用症候群を防ぐ

名古屋大学総合診療部の伴 信太郎医師は、「患者が何らかの器質的な異常を疑い続け活動を回避することで、廃用症候群をきたすケース」があることを指摘しています。

廃用症候群とは過度に長期に渡る安静を取ることにより、心身の機能が低下することをいいます。病気の治療のため安静にしていたら、筋肉の萎縮や、起立性低血圧が生じて、寝たきりになってしまう場合などがそうです。

慢性疲労症候群(CFS)の場合でも、安静状態を続け過ぎると、より症状が悪化してしまうことが知られています。筋力が失われたり、生活リズムが乱れたりして、悪循環が生じかねません。

伴 信太郎医師は「CFSに対する運動療法の効果は、この点を改善している可能性がある」と書いています。

ここまで見てきたように、適度な運動は、睡眠を改善し、FRを増加させ、廃用症候群を防ぐため、とても大切です。

しかし、無計画な運動は、CFSにとって非常に危険です。適度な運動を行う、どのような具体的な方法があるでしょうか。

適度な運動を生活に取り入れる方法

最後に考えるのは段階的運動療法、西式甲田療法、積極的安静療法です。

段階的運動療法(GET)が効果的

重症でない場合には段階的運動療法が効果的だと言われています。段階的運動療法とは医師の指示の下、段階的に運動量を増やしていくプログラムのことです。

これはただ単に「トレーニングジムにいって運動しなさい」「もうちょっと散歩してみてください」と勧めるのとはわけが違います。そうした曖昧な指示はかえって体調を悪化させかねません。

具体的には、寝たきりの場合は、上腕のストレッチや、物を拾ったりつかんだりする簡単な動作から始めます。そして、起き上がったり、服を着替えたりする基本的な動作を少しずつ取り入れていきます。

日常生活ができる場合でも、2-3分のストレッチや、短時間でできる軽い運動から始めます。徐々に運動の程度と時間を増やしていきますが、症状が増悪すれば、すぐもとのレベルに戻します。考え方としてはリハビリに近いといえるでしょう。

かかりつけの医師と相談しながら、前回のエントリで取り上げたリラクゼーション技法や、意識的な休息と組み合わせて、徐々に活動範囲を広げていく、これが段階的運動療法なのです。

段階的運動療法の効果については以下のニュースをはじめ、さまざまなところで言及されています。

慢性疲労症候群 標準治療に認知行動療法と段階的運動療法の追加は安全で有効 | 論文Watch | 学術ニュース | ニュース | ミクスOnline

慢性疲労症候群には認知行動療法や運動療法の併用が効果的(2011.2.24掲載)

積極的安静療法(ART)を活用する

休息と運動のバランスを取るには、前回のエントリでも取り上げた、以下の記事の5つの考え方が助けになることでしょう。

体力を節約するのに役立つ5つの知恵 ―慢性疲労症候群(CFS)をかきわけて進むために
慢性疲労症候群のもとでも目標を達成するにはどうすればいいでしょうか。最近の研究よると、サケは水流の抵抗をうまくそらして、極力疲れないように賢く泳いで、川をさかのぼるそうです。この記

その中でも、積極的安静療法(ART)は適度な運動を行うのにとても役立ちます。

なぜ積極的な安静と適度な運動とが関係するのか、不思議に思われるかもしれません。しかし、積極的安静療法の目的について考えるならその理由がよくわかります。

積極的安静療法とは、イベントの前に徹底的に体を休めておく対処法のことです。これは決して休息のためのテクニックではなく、活動に向けて積極的に準備するためのテクニックです。

積極的安静療法の利点は、なんといっても手軽に行えることです。医師の助けが必要な段階的運動療法や、複雑で自己管理が難しい西式甲田療法と比べて、だれでもすぐに取り組むことができます。

かといって、積極的安静療法は、ただ活動前にいくらか休憩するといった単純なものではありません。活動前に徹底的に体を休めることが求められます。起きて何か用事をしたいという気持ちにひたすら抵抗し、もどかしさを忍ぶ決意が必要です。

さらに、いつもより元気だと思えるときにこそ体を休めるという逆説的な対処も求められます。これは、効果的な投資に例えられます。投資する金額が多ければ多いほど利益が増えるように、体力があるときにこそ、それを回復のために用いる必要があるのです。

積極的安静療法には3つの益があります。

◆あらかじめ体を休めて備えておくことで、適度に体を動かすことが容易になる
◆いざ活動すべきときに、自制していた意欲がかきたてられる
◆活動後の症状の悪化を最小限に抑えられる

CFSを抱えながら活動している人の多くは、積極的安静療法を最重要の対処法の一つと考えているようです。かくいうわたしも、この対処法にはお世話になっています。

休息と運動のバランスを取るために

ここまで、慢性疲労症候群(CFS)における休息の大切さ、そして運動の大切さを考慮してきました。これらのデータから分かることは何でしょうか。

それは、ちょうど渡り鳥が半球睡眠をしつつ飛び続けるように、わたしたちも休息と運動のバランスをとるがことが大事だということです。

わたしたちは、つい運動すると症状が悪化するのではないか、と考えてしまいがちですが、運動を控えることによっても症状は悪化することを覚えておくべきです。

必要なのは、症状に応じた限界内で,注意して運動を行なうことです。

上に挙げた段階的運動療法のニュース記事でも、「CFS患者はエネルギー量が極めて限られており、閾値を越えると再発するのでその範囲内で治療に取り組まなくてはならない点に注意する必要がある」と書かれていました。

ですから,自分のペースをつかむのが最善です。自分の限界をわきまえて,その範囲内で活動していきましょう。休息と適度な運動をセットにし、良いサイクルを作りましょう。そうするならCFSを改善させる道のりが開けるに違いありません。

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