「植物はすごい」に学ぶ、逆境で生きる3つのポイント

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120924【書籍】植物はすごい「もういやだ! 逃げ出したい!」

わたしたちはだれしも、そのような逆境に置かれることがあります。

逃げ出せる場合は良いのですが、問題となるのは、どうあがいても逃げることがかなわない、変えることのできない逆境です。それは人間関係かもしれませんし、職場の環境や、わたしのような病気、または障害かもしれません。

逆境のもとで踏ん張って対処せざるを得ないとき、長年逆境と闘ってきたプロフェッショナルから秘訣を学べたら心強いのではないでしょうか

わたしたちの身近にいる植物は、まさにそのような存在です。植物は自分で身動きが取れないため、逆境に積極的に対処するほかないのです。この書評では植物はすごい - 生き残りをかけたしくみと工夫 (中公新書)から学べる、逆境に生きるポイントを3つご紹介します。

植物はすごい - 生き残りをかけたしくみと工夫 (中公新書)

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これはどんな本?

題名に違わず、初めから終わりまで、さまざまな観点から植物の“すごさ”が解説されている本です。著者の田中修教授は、NHKのラジオ番組「夏休み子ども科学電話相談」の回答者も務めています。

著者は「おわりに」でこの本の目的をこう述べています。

私は、五感で感じ、心で味わったあと、もう一歩踏み込んで「植物たちの生き方に思いを巡らせてほしい」と思います。

そうすると五感で感じ、心で味わうだけでは分からない、植物たちのかしこさ、生きるためのしくみの巧みさ。逆境に耐えるための努力など、植物たちのほんとうの“すごさ”に出会うことができます。p233

なぜこの本を手にとったか?

自然界の奥深い構造は、調べれば調べるほど興味深い発見があります。じっくり考えて適用するなら、わたしたち障害や病気のもとで生きる人にとって、励みになることも見いだせます。このブログのカテゴリー自然界からに書いているとおりです。

この本も、逆境のもとで賢く生きるための励みが得られるのではないか、と期待して手に取りました。そして期待に違わず、わくわくするような話を楽しませてもらいました。

この書評では、数多く挙げられていた植物たちの“すごさ”のうち、わたしが感心した点を3つご紹介したいと思います。それは、(1)自分独自の工夫を凝らすすごさ、(2)逆境で美しくなるすごさ、そして(3)見えない努力というすごさ です。

1.自分独自の工夫を凝らすすごさ

タデオナール、サンシヨウオール、ショウガオール、パパイン、ミラクリン…。

これらはいったい何でしょうか。

それぞれ、タデ、サンショウ、ショウガ、パパイヤ、ミラクルフルーツに含まれる独特の成分だそうです。ほかの植物には見られない固有の物質なので、各々の植物名にちなんだ名で呼ばれています。

なぜ、植物によって含まれる成分が異なるのでしょうか。それはどの植物も、それぞれ生きる環境が違うからです。その場その場にいる生き物に気に入ってもらう味をつくり出したり、身を守る毒をつくり出したりしているので、一つとして同じものはありません。

本書にはこう書かれています。

それらの物質の名前は、その植物の属名や英語名などの呼び名に由来してつけられています。つまり、それぞれ構造が異なっているのです。

多くの植物が、独特の有毒物質をつくり出して、からだを守っているのです。それぞれの植物が自分独自の化学物質をつくり出す「化学者」なのです。p106

言ってみれば、どの植物も、自分が置かれた状況を分析して、オーダーメイドの対処法を実践しているというわけです。おかげでわたしたちは、様々な味を楽しんだり、病気に効く特殊な薬を精製できたりします。

わたしをはじめ、病気や障害に面する人たちも、何らかの病名があるとはいえ、それぞれの症状や悩みには個人差があります。ある人には適した治療法も、別の人には効果的ではないかもしれません。

ではどうすればいいのでしょうか。

そうです、自分が置かれた状況をよく分析して、自分に適した対処法を見つけることが必要です。植物でさえ各々に適した対処法を実践しているのですから、わたしたちはなおさら工夫を凝らしたいと思うのではないでしょうか。

2.逆境で美しくなるすごさ

高山植物がとても鮮やかな花を咲かせるのはなぜでしょうか。あるいは日当たりの良いところに育つ果物が、食欲をそそるおいしそうな色に実るのはなぜですか。

本書によると、その秘訣は、植物の色を生み出す色素、アントシアニンやカロテンにあるそうです。そしてこれらの色素は、「抗酸化物質」、酸化ストレスを撃退する成分でもあります。

抗酸化物質や酸化ストレスというと、このブログを読んでくださっている方には馴染み深いかもしれません。なぜなら、疲労は活性酸素による酸化ストレスから生じるからです。

8/21 知っておきたい3つの疲労対策―「みんなの家庭の医学 夏バテの原因は脳が錆びることにあった!」まとめ

上のエントリでは、酸化ストレスによる疲労を避けるために紫外線対策が勧められています。しかし紫外線による酸化ストレスにさらされているのは、何も人間だけではありません。

わたしたちは紫外線対策グッズとしておしゃれな日傘やサングラスを使いますが、植物はアントシアニンやカロテンといった色素によって紫外線対策をします。ですから、日が当たるところの植物ほど、これらの色素で装って、色があざやかになるのです。

著者は次のような印象深い言葉を述べています。

高山植物の花には、美しくきれいであざやかな色をしているものが数多く存在します。空気が澄んだ高い山の上には、紫外線が多く注ぐからです。

…紫外線や強い光という有害なものが多ければ多いほど、植物たちはあざやかに魅力的になるのです。植物たちは逆境に抗して美しくなるのです。p152

わたしも慢性疲労症候群(CFS)の患者として、疲労を軽減するために、文字通りの紫外線対策をしたり、抗酸化物質を摂ったりしています。

しかし植物は、逆境のもとで、紫外線対策をすると同時に、より美しくなるというのですから、恐れ入ります。わたしも、病気という逆境のもとで、単に問題に対処するだけでなく、大切な教訓を学んで、より内面を美しく磨き、成長したいと感じました。

3.見えない努力というすごさ

なぜスギやマツ、ツバキなどの常緑樹は、寒い冬も青々とした葉っぱをつけていられるのでしょうか。なぜ冬場のハクサイやダイコンは甘くて美味しいのでしょうか。

まったく異なる話に思えますが、じつは、この2つには共通の理由があるそうです。その秘訣は、「凝固点降下」という熱力学の原理です。

「凝固点降下」については、「沸点上昇」と一緒に中学校で倣って覚えておられる方も多いかもしれません。本書によると、冬場の植物は、この原理を応用し、葉っぱに糖分を増やすことで、凍らないよう身を守っているそうです。

そのため、冬場の常緑樹は枯れずに葉をつけていられ、寒中に育つハクサイやキャベツは甘く美味しい味わいになります。

著者は感嘆してこう述べています。

外から見れば何の変化もなく、「寒さに強いから、ずっと緑色をしている」と思われがちな常緑樹の葉っぱは、じつは、寒さに耐える工夫を凝らして生きているのです。

何にも努力をしないように見えて、じつは“すごい”努力家なのです。何の努力もなしに、寒い冬に、やわらかい日差しを浴びて、緑に輝くことはできないのです。p170

病気や障害を抱える人たちも、一見、何の努力もしていないように思える場合があるかもしれません。しかし、何の努力もなしに、厳しい病気の日々を生き抜けるはずがありません。

ほんのわずかに家事をするだけでも、家から少し出歩くだけでも、そして、ときには一日一日生き抜くだけでも、並大抵のことではない、ということは以下のエントリに書いたとおりです。

苦しんでいる人を思いやる3つの方法   

それで、わたしとしては、「外から見ても何の変化も」ない場合でも、その人が払っている努力に気づけるような目ざとさを持ちたいと感じました。みなさんの身の回りにも「じつは“すごい”努力家」が大勢いらっしゃるかもしれません。

植物は“すごい”

植物たちの“すごさ”をじっくり考えてみると、自分の置かれた状況で、もっと思考力を働かせて生きていこう、という気持ちになります。

植物たちは、植えられた場所から一生涯動くことはできません。悪い状況が生じても逃げ出すことはかなわないのです。ですから、ひときわ工夫を凝らして、置かれた環境を乗り越えます。

わたしたちも、自分には変えることのできない状況に直面したとしても、植物たちの創意工夫を思い起こせば、あきらめない勇気が湧いてくるのではないでしょうか。

ここで取り上げたのは、この本で挙げられている植物たちの“すごさ”のほんの一面にすぎません。さらに、この本で取り上げられている点もまたほんの一部に過ぎません。

この本をはじめ、植物の“すごさ”を解説した本はイタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか―樹木の個性と生き残り戦略ミラクル植物記身近な雑草のゆかいな生き方などいろいろあるので、行き詰まったときにはぜひ植物の“すごさ”をじっくり考えて突破口を見いだしていきたいと思います。

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