「アスペルガーですが、妻で母で社長です」に学ぶ“自分トリセツ”の作り方


121022【書籍】アスペルガーですが妻で母で社長です。や手術で治療できる病気とは異なり、生まれ持った障害慢性的な病気の場合は独特な問題がつきまといます。うまく症状と付き合い、日常生活を送るためにはどうすればよいでしょうか。

あるアスペルガー症候群の方は、その自分なりの対処法、“自分トリセツ”を30のルールにまとめることにしました。

この書評では、書籍アスペルガーですが、 妻で母で社長です。を通して、慢性的な障害や病気を抱える人が、自分なりの対処法を見いだす鍵を紹介したいと思います。

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これはどんな本?

この本は、アスペルガー症候群注意欠陥障害(ADD)を抱えながら、パッチフラワーのビジネスと家事に奮闘するアズ直子さんが障害との付き合い方をつづった本です。アズ直子さんの「アズ」とはアスペルガーの略語です。

本書の構成は、大きく分けると、アスペルガー症候群と診断される前と、診断された後とが対比されています。はじめは混沌とした生活だったのが、病名が分かり、対処するルールを作ったことで、最後には障害を強みと思えるまでに生活が一変しました。

アスペルガー症候群は、知能や言語の遅れがなく、社会性に支障が出やすいと言われる広汎性発達障害のひとつです。アスペルガー症候群の症状については、以前に以下のエントリにまとめました。

【7/2 あさイチ!】大人の発達障害(ASD、アスペルガー症候群)に対処する
NHKのあさイチで取り上げられた、「子どもも大人も増加!発達障害」という番組のまとめです。特に大人の発達障害が特集されています。ASDとは何か、なぜ子供のころ見過ごされてしまうのか

アズさんの場合は、非典型的なアスペルガー症候群注意欠陥障害が合わさって、次のような症状が問題になっているそうです。(p28)

◆行動パターン
 過集中(時間が経つのを忘れたり、人の声が聞こえなくなったりする)
 衝動的に行動し、計画性がない
 時間を守るのが苦手 
 規則やルールにこだわる

◆コミュニケーション
 敬語をうまく使えない
 距離感が測れない
 思ったことを全部言ってしまう
 比喩や婉曲表現がわからない

言ってみれば、「中身は子どもの変な大人」のようだとご自身で説明しておられます。(p33)

なぜこの本を手に取ったか?

慢性疲労症候群(CFS)には、しばしばアスペルガー症候群と似た問題が生じます。

たとえば、CFS患者の神経系は病気の影響を受けていて、人との通常のやり取りにさえ困難を覚えます。アスペルガー症候群とは特徴が異なるものの、コミュニケーションが難しくなる点は共通しています。

また、慢性疲労症候群(CFS)の患者は、しばしば音過敏光過敏に悩まされます。人が大勢いるところで、目の前の相手の声を聞き取れない選択的注意力の障害を抱える人もいます。こうした症状は、アスペルガー症候群に特有のものです。

小児慢性疲労症候群(CCFS)の場合は、2010年6/26付の神戸新聞のニュースで、注意配分能力の低下が報じられました。2つの作業を同時に進行する能力が損なわれているのです。これもやはり、アスペルガー症候群の症状として知られています。

慢性疲労症候群(CFS)とアスペルガー症候群の症状の違いは、CFSの場合は一過性であることです。小児慢性疲労症候群(CCFS)の子どもたちはときおリアスペルガー症候群と誤診されますが、体調が回復すると、上記の症状も消えるそうです。

アスペルガー症候群をはじめとする発達障害は脳機能の偏りと考えられています。慢性疲労症候群(CFS)も局所的に脳の血流が低下しますから、一時的に似た症状が出ることは十分考えられるのではないでしょうか。

そのようなわけで、アスペルガー症候群と上手に対処している方の経験は、慢性疲労症候群(CFS)の患者にとっても役に立つはずです。

“自分トリセツ”を作るための3つのステップ

アズ直子さんは、もともと、『片づけられない、時間が足りない、人とぶつかってばかり。一日「混乱」ばかり』という生活を送っていました。読んでいるこちらが疲れてしまいそうなほど、想像を絶するドタバタな生活がつづられています。(p22)

しかし、あることをきっかけに、生活がガラリと変わることになります。

まず病気を知る

転機になったのは2009年4月、マインドマップに巡りあったことでした。マインドマップとは英国の教育者、トニー・ブザンが開発したノート術です。

ストレスフリーのノート術「マインドマップ」―5つのメリットとかき方のステップ
トニー・ブザン氏が開発した効果的なノート術、「マインドマップ」について紹介しています。マインドマップのなりたち、5つのメリットやかき方のステップについて書いています。

アズさんは、マインドマップが恐ろしく自分にフィットすることに気づき、そのノート術の源であるエジソンダ・ヴィンチアインシュタインについて調べ、自分と似ていると感じます。

それらかつての天才たちは、学校や社会に馴染むことができず、家庭教育で育ちましたが、すさまじいまでの集中力と粘り強さを発揮して、偉業を成し遂げました。彼らの共通点、それはアスペルガー症候群などの発達障害ではないか、と言われていることです。

最近の研究によると、「天才」とは、脳機能のアンバランスさであると考えられています。歴史上の天才たちは、限られた分野において非常に高い能力を発揮しましたが、一般人なら当然できるはずのことができませんでした。

そして、同じく最新の研究では、アスペルガー症候群などの発達障害もまた、脳機能の偏りであるとされています。つまり、天才とは、時代や環境に恵まれ、運良く大成することのできた発達障害児、または愛着障害児ではないか、というわけです。

アズさんは、このできごとをきっかけに、アスペルガー症候群という診断名にたどりつきました。そのときの気持ちをこのように書いておられます。

診断名を聞いたときの気持ち。私の場合は「安堵」と「希望」でした。

ずっと「どうしてうまくいかないのだろう」と悩み続けたことに「原因」があったのです。私には「一生懸命やってもできない理由」があった。

…これまでの失敗経験から私に染みついてしまった強い劣等感や自己否定感は和らぎました。 (p73-74)

わたしも、CFSと診断されるまで、どうして自分は少し活動しただけで数日動けなくなってしまうのだろう、なぜちょっとした会話にも集中できず、記憶もできないのだろう、と思い悩んでいました。

病気について知って、周りの人と同じようにできない医学的な理由があることが分かると、本当にホッとします。アズさんが、診断された一つ目の益として「安堵」を挙げておられることにはとても共感できました。

まずは病気について知ることが最初のステップなのです。

ルールを作る

アスペルガー症候群と診断されたことについて、アズさんが挙げておられる2つ目の益は、「希望」です。その理由を次のように書いておられます。

「アスペルガー症候群」「ADD(注意欠陥障害)」という手がかりができたことで、客観的に自分の不得意分野を知ることができました。

…たとえば、自分の「あいまいな言い回しに弱い」という特性を知識として知ると、人のあいまいな表現から気持ちを汲むことができなかったわけも分かり、「具体的な指示や真意を確認する」という工夫をすることができます。

私は診断を受けることでようやく「自分自身の取扱説明書」を手に入れ、うまく自分とつきあうルールをつくる術を知ったのです。 (p74-75)

アズさんは、障害について学び、その知識をもとに、病気の自分なりの対処法“自分トリセツ”として、30のルールを作りました。

例えば「遅刻をしない3つの鉄則」「腕一本ルール」「タイマーを使い倒そう!」など、アスペルガー症候群の特性に合わせた、健康な人にとっても役に立つさまざまな工夫が載せられています。

強みに変える

具体的な対策ルールを作ることができたら、病気や障害をある程度コントロールできるようになります。すると、さらなるステップとして、障害を強みに変えてしまうことさえできるかもしれません。

アズさんの30のルールのうち、27-30番目は、まさにそのような内容です。

アズさんは「過集中」というアスペルガー症候群特有の能力を持っています。これは「面白さを感じたものには徹底的に集中」することができる能力です。 (p134)

過集中は、制御できなければ、寝食を忘れて生活がめちゃくちゃになり、大切な約束や待ち合わせをすっぽかしてしまう原因になってしまいます。しかし、“自分トリセツ”により制御すれば、これほど強力な武器はありません。

また、あいまいな表現が苦手、という特徴は、うまく使えば、きっちり日付を決めることができるという能力に早変わりします。アズさんは、40歳までに本を3冊、と考えておられたそうですが、今年、目標を達成されました。

今では、「アスペルガー名刺」を作り、名前も「アズ直子」に改名し、自己紹介のときには必ず、自分がアスペルガー症候群だとカミングアウトするようにしているそうです。

アズさんにとって、アスペルガー症候群は、混乱の大元ではなく、「愛すべき私の個性」になりました。 (p110)

まず病気を知ることから始めよう

アズさんのアスペルガー症候群と、わたしの抱える慢性疲労症候群(CFS)はかなり違うものです。しかしどちらも治すことは難しく、“自分トリセツ”を作り、うまく対処するのが最善の方法です。

わたしは、慢性疲労症候群(CFS)について詳しく調べ、さまざまな対処法を講じることで、CFSを患ってはいても生活を楽しめるまでになってきました。

しかし残念なことに、わたしがこれまで会ったCFS患者のうち、「自分はCFSという病気で、これこれの薬を飲んでいる」、という以上の知識を持ち合わせている人はわずかでした。

慢性疲労症候群(CFS)は情報が少ない病気ですが、しっかり調べれば、原因もメカニズムも、症状の特徴も、かなりの程度わかります。また記録をつけて状況を整理すれば、ある程度の対策を講じることができます。

アズさんは「人の役に立つ情報発信」として、『私をいつも助けてくれる「ルール」の配信』をされています。 (p160)

わたしもこのブログで、ささやかながら、病気の知識と、わたし個人の対処法を書きとめていきたいと思っています。それが、同じ問題に悩む人たちにとって少しでも参考になれば幸いです。

なお、アズ直子さんは、2012年、アスペルガーですが、ご理解とご協力をお願いいたします。あなたにも起きるフェイスブックで本当にあった奇跡の物語という新刊を書いて3冊の本を書くという目標を成し遂げておられます。そちらの方も、余裕があれば読んでみたいと思っています。

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ASD(自閉スペクトラム症) / いろいろな考え方