小児慢性疲労症候群(CCFS)とは (2)12の症状

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のエントリは、書籍「学校を捨ててみよう」やその関連書籍に基づいて、小児慢性疲労症候群(CCFS)についてまとめた一連のエントリの2番目です。

最初のエントリでは、CCFSとはどんな病気か、どんな深刻な問題があるのか、という点を考えました。この2番目の部分では、CCFSの症状に現れる12の特徴と、医学的なデータをまとめています。

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小児慢性疲労症候群(CCFS)の3つの中心症状

121127苦しみ小児慢性疲労症候群(CCFS)には、大人のCFSの診断基準とは別に、小児慢性疲労症候群国際診断基準という診断基準があります。しかし、基本的に、CCFSは大人の慢性疲労症候群と同じものです。

診断基準上の違いといえば、大人のCFSの場合、6ヶ月間症状が続いていることが必要なのに対し、CCFSは3ヶ月間症状が続けば診断されるという点だけです。これは、子どもの異変にはすばやく対処しなければならないという便宜上の違いだそうです。

しかし、データを統計的に見ると、CFSの症状には比較的ばらつきがあるのに対し、CCFSの症状には、より具体的な特徴が見られることが分かっています。

慢性疲労症候群(CFS)の研究者である渡辺恭良先生は、書籍脳と疲労 ―慢性疲労とそのメカニズム の中でこう述べています。

小児型慢性疲労症候群には睡眠位相交替パターンもあります。唾液中のコルチゾール濃度の概日リズムの平坦化、深部体温リズムの平坦化などが小児型慢性疲労症候群では知られています。ただ、成人の場合は、これは少ないものです。(p128)

CCFSの症状の特徴を詳しく見ていきましょう。まず、CCFSは大抵の場合、次の3つの特徴を兼ね備えています。

1.強い易疲労性

易疲労性はCFSの中核症状でもありますが、小児慢性疲労症候群(CCFS)の場合、特に顕著です。簡単な作業で疲れるだけでなく、少しの時間も同じ姿勢を保てません。背骨がないかのような状態です。

この易疲労性のため、CCFSの子どもたちは、座るとも寝るともつかない格好でため息をつきながらごろごろしていることが多く「だらけている」と思われがちです。

このような易疲労性は、姿勢保持筋の脆弱さによると考えられています。筋肉には赤い筋肉(タイプ1)と白い筋肉(タイプ2)がありますが、エネルギーを作るミトコンドリアを含む、赤い筋肉(タイプ1)の働きが弱くなり、筋肉のバランスがとれていないのです。(P28,98-99) 

2.学習記憶障害

気力・集中力・持久力・記銘力・判断力・認知力が想像もつかないほど低下し、損なわれます。ときには人格の変化が起こり、会話がうまくできなくなることもあります。この症状は、大人のCFSで、思考に霧がかかったような高次脳機能障害として知られているものだと思います。

この原因として、MRS(磁気共鳴スペクトロスコピー)を用いた検査によると、前頭葉に、コリンという物質が蓄積していることが分かりました。

コリンは本来、アセチルCoAと対になって、学習・記憶に関係する脳の神経伝達物質アセチルコリンに変化します。しかしなぜかアセチルCoAが不足しているので、コリンだけが不良在庫となり蓄積しているのです。(p48、55)

学習記憶障害について詳しくはこちらもご覧ください。

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3.過眠型睡眠障害

生活リズムが逆転し、社会にとっての朝が、自分にとっての夜になります。家族からどのように揺り起こされても朝起きられない過眠型睡眠障害が発症し、毎日の睡眠時間は10時間~15時間にまで増加します。

夜間の脳波を記録すると、深い睡眠が減少しており、記憶の固定や感情の整理を担うレム睡眠が表れにくくなっているようです。つまり、長時間寝てはいるものの、睡眠の質が極めて悪く、まったく疲れが取れず、思考がまとまらないのです。(p47-51)

睡眠関連病態 (小児科臨床ピクシス)には「彼ら[CCFSの子ども]の睡眠リズムが高齢者のそれと極めて類似する」と書かれています。リズミカルな深睡眠が出現せず、浅い眠りに終始し、極めて短時間の自覚できない中途覚醒が見られます。(p124-127)

メラトニン研究の最近の進歩によると子どもたちの睡眠障害はほぼ次の4つに分けられます。CCFSではおもに上3つの過眠型がみられます。生活リズムが狂うことから、概日リズム睡眠障害・睡眠覚醒スケジュール障害とも呼ばれます。(p157)

(1)睡眠相後退症候群…眠りに就く時間が遅く、朝起きられない
(2)非24時間型…眠りに就く時間が少しずつずれて一回りする
(3)不規則型…眠りに就く時間がバラバラで起きる時間も一定せず、昼夜逆転している
(4)不眠型(比較的少ない)…本人は眠った気がしないというが、脳波上は浅い眠りを示す

対照的に、うつ病の患者は80%が不眠だそうです。

過眠型睡眠障害について詳しくは以下をご覧ください。

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小児慢性疲労症候群(CCFS)の他の9つの異常

もちろん、小児慢性疲労症候群(CCFS)の症状は上の3つだけではありません。詳細な検査をすれば、一見健康に見える不登校の子どもたちの身体に、さまざまな医学的・生理学的異常が見られることがわかっています。

4.自律神経症状

手のひらの汗ばみ手足の冷えなどの末梢循環不全が生じます。またドライアイや瞳孔の過敏性反応など、お年寄りにみられるような異常が見られます。頭痛・眼痛・関節痛・腹痛などの疼痛も表れます。

こうした不定愁訴は、交感神経が緊張し、副交感神経が弱々しくなっているという、自律神経機能の異常を示すデータに裏づけられています。(p40-41)

 慢性疲労・不登校児の脳機能イメージングによる神経伝達動態によると、小児慢性疲労症候群の子どもは、安静時も交感神経が過剰に働いていて、健常な大人が8時間もの精神的作業を行ったのと同レベルの重篤な状態にあるそうです。

5.起立性調節障害(OD)

慢性疲労症候群・若年性線維筋痛症の最近の知見の中で 東京医科歯科大学大学院の森雅亮教授はCCFSについてこう述べています。

自律神経失調症状が高頻度でみられ、特に起立性調節障害が並存することが報告されています。

CCFSでは急に立ち上がった後に起こる一過性の血圧低下が正常に戻るのに時間がかかったり、脳のオキシヘモグロビン濃度が下がったりしてしまうことが、起立性調節障害(OD)の専門家である大阪医科大学の田中英高先生の研究で分かっています。(p40)

とはいえ子どもの慢性疲労にODが合併する率は3-4割なので、CCFSとODは重なり合う別の疾患概念と考えられています。

詳しくは田中英高先生によるCCFS小児における自律神経検査に関する検討. 能動的起立試験の負荷時間についてをご覧ください。

起立性調節障害(OD)については以下もご覧ください。

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6.血糖調節異常

糖負荷テストを行うと、血糖が高い状態で保たれる現象が見られます。糖からピルビン酸を経てミトコンドリアでエネルギーが作られる機能が障害を受けているためです。このため、高い血糖値を維持しようと甘いものをほしがります。(p41)

発症間もない例ではピルビン酸の高値も見られますが、これは、糖代謝が滞っている状態を改善しようとして、身体が自ら適応を試みている生体防衛反応と考えられています。

7.シナプスが混線

ふつう脳には、血糖が上がると成長ホルモンが抑えられるなど、情報のきまりがあります。しかしCCFSの子どもの場合、本来“ドアを閉める”指示が出たときに“ドアを開ける”かのような反応が生じ、情報伝達が混乱しています。(p42)

8.深部体温が高い

体の中心部の体温(深部体温)はふつう午後4時の最高体温(37℃)から、睡眠中の午前4時(35.5℃)にまで低下します。しかし小児慢性疲労症候群(CCFS)の子どもたちの場合、睡眠中の深部体温が低下しません。

深部体温と脳温はほぼ同義であることからすると、睡眠中に脳がオーバーヒートしていて、昼夜のメリハリが消えていることがわかります。脳温が睡眠中ずっと高いということは、睡眠中のエネルギー消耗がかなり多いということです。

これは生体リズムの中枢である視床下部の不調と考えられています。この深部体温の異常が改善しない限り、CCFSが再発してしまうことから、慢性疲労症候群の病態においてきわめて重要な意味があると見られています。(p43-45)

9.ホルモン異常

視床下部ホルモン、松果体ホルモン、副腎皮質ホルモンのすべてが、分泌量が少なくなっていたり、分泌時間がずれたりしています。そのため、日常生活がままならなくなり、行動する元気も湧きません。(p45-46)

このホルモンには、規則正しい睡眠を促すメラトニン、日中の活動を助けるコルチゾール、βエンドルフィンなどが含まれます。

10.脳血流の異常

思考をつかさどる視床と前頭葉の血流が低下していて、コミュニケーションしたり、計画したり、分析したりすることができません。いっぽう、基底核の脳血流は増加していて、圧倒する不安感が続いていることを物語っています。(P51-52)

脳の生理的特徴として、ある部位が働いているとき、別の部位は働くことができません。不安情報はほかの脳機能を抑えこんでしまうので、日常生活や学習に支障が生じ、睡眠もままなりません。(p89)

不登校外来―眠育から不登校病態を理解するのp54によると、視床における血流量低下が強いほど集中力の低下が著しく、基底核の血流上昇が強いほど疲労の程度が高いことが分かっています。

11.脳が過敏状態にある

発症初期の子どもたちの場合、目から入ったあらゆる情報に、素早く反応してしまう過敏状態にあるというデータがあります。脳が過敏状態にあり、必要・不必要を問わず、すべての情報に反応してしまうのです。(p53-54)

不登校外来―眠育から不登校病態を理解するのp84によると、CCFSの子どもは脳機能のバランスを欠いていて、人と会話する際、脳細胞を総動員して興奮させなければならないことが分かっています。人との何気ないやり取りにも、普通以上のエネルギーが必要なのです。

12.抗Sa抗体が現れる

不定愁訴を訴える子どもたちの約半数に抗核抗体が見られ、さらにその40%から、特異的な自己抗体である抗Sa抗体が検出されました。これは免疫系統の異常です。この異常が見られる子どもたちは、“自己免疫性疲労症候群(AIFS)”と呼ばれています。(p4)

また、起立性調節障害と診断されている例には、自己免疫性の自律神経失調症も含まれているかもしれません。

起立性低血圧などを伴う「自己免疫性自律神経調節障害」(AAG)は免疫治療で改善
自己免疫性の自律神経失調症について長崎川棚医療センターによるニュースがありました。

心身ともに健康な不登校は存在しない

以上のデータから分かるように、不登校状態の子どもたちには明らかな医学的・生理学的な異常が数多く見られます。

ところが、通常行われるCTやMRI、胃カメラや透視などではそれらしい異常が見つからないため、一般に不登校の子どもたちは“学校嫌い”のレッテルを貼られています。

不登校の子どもたちを助けるには、先入観に凝り固まった小児科医や精神科医、学校関係者に助けを仰ぐのではなく、科学的なデータに基づいて治療する、専門の医療チームの援助を求めることが不可欠です。

もちろん、家族がCCFSについての正しい知識を得ることも大切な要素です。この一連のエントリの3番目の部分では、CCFSの10の原因と診断の流れを取り上げます。

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