小児慢性疲労症候群(CCFS)とは (3)10の原因と診断の流れ

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のエントリは、書籍学校を捨ててみようなど幾つかの資料に基づいて、小児慢性疲労症候群(CCFS)についてまとめた一連のエントリの3番目です。

130109男の子2番目のエントリでは、CCFSの症状の12の特徴をまとめました。

この3番目の部分では、子どもの心身症ガイドブック不登校外来―眠育から不登校病態を理解するの情報をもとに、CCFSの10の原因診断の流れを取り上げています。

子どもたちはどのような原因によって、小児慢性疲労症候群(CCFS)を発症するのでしょうか。そして、どのように診断されるのでしょうか。

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小児慢性疲労症候群(CCFS)の10の原因

CCFSは、3つの共通のストレス背景に加えて、7つのさらなる緊張不可のうちいずれかが重なったときに発症すると見られています。(p66、194)

3つの共通のストレス背景

◆1.夜型生活による日常的睡眠不足状態
夜型の大人社会に伴い、気づかないうちに慢性的な睡眠不足が生じます。

電子機器による夜更かしが原因のこともあれば、家族全体の生活習慣、受験や塾通いによる夜遅くまでの勉強が原因になることもあります。また学校での人間関係のストレスが脳を興奮させ、眠りにつく時間が遅くなる場合もあります。

社会に引きずられて寝る時間はどんどん遅くなるのに、毎朝の登校時間は変わらず、むしろ朝練や早起き運動で睡眠時間がさらに削られます。異常なことですが、2007年の調査では、小学2年生から中学2年生の65%が、一番欲しいものは「寝る時間」だと答えたそうです。

この慢性的な睡眠不足状態は睡眠不足症候群(ISS)と呼ばれ、エネルギー生産性を低下させ、慢性疲労状態をもたらします。ISSについて詳しくは、以下のエントリをご覧ください。(p194)

 
夜眠れず朝起きられない「睡眠相後退症候群(DSPS)」にどう対処するか(3)原因と予防
朝どうしても起きられない、夜なかなか寝つけない、一度眠ると10時間以上目が覚めない、早起きしようと努力するとかえって夜寝つけなくなる…。この記事はCFSに合併しやすい病気、睡眠相後

フクロウ症候群を克服する―不登校児の生体リズム障害 (健康ライブラリー)によると、睡眠不足の蓄積は、睡眠パターンにも表れます。

調査によると、特に夜遅く(1時過ぎ)に寝るタイプ、および学校から帰って一度仮眠をとり、その後明け方まで勉強し、再度睡眠をとるグループは危ないそうです。(p107)

わたしはまさに後者でした。

 ◆2.情報量の多さに伴う競争社会でのがんばり
学校教育は、コンピュータと同じ働きを学生たちの脳に要求しています。学校社会における評価は、知識を溜め込み、即座に答えを出すことで決められます。このような教育では、創造性や自主性、コミュニケーション能力をつかさどる前頭葉機能が衰えます。

実際に、子どもたちの脳に、前頭葉の廃用性萎縮が見られることが確認されているそうです。そのままだと“人形”や“ロボット”のようになってしまうので、学校を離れようとするのは、心を守るための自己防衛的な逃避反応だと言えます。(p126、152)

特に受験や試合前のハードスケジュール、すなわち中学校、高校の受験、土日も休みのない部活、朝練、塾通いなどが発症の共通背景として目立つようです。

それは体罰の問題ではないー背後にある「壮大な人体実験」とは何か
高校のバスケットボール部に所属していた方が、体罰を苦に自殺されたという痛ましいニュースが話題になっています。しかしこの事件を体罰の問題とみなしてしまうのは、問題のすり替えといえます

 ◆3.偏差値知育教育の元での自己抑制的よい子の生活
個性を殺し、集団行動を重んじ、通り一辺倒の価値観を押し付ける偏差値教育のもとで、まじめな子どもたちは、自己抑制的よい子の生活を強いられます。強い自己抑制は、価値観をつかさどる扁桃体の機能を衰えさせます。

扁桃体の機能の異常は、「なれなれしさ」「性的な乱れ」、「ロボットのような感情の鈍麻」をもたらし、人間らしい温かさを損ないます。扁桃体が損なわれる学校に通い続けることは当然ながら強いストレスになります。(p130、155、179)

この3つのストレス背景は、好奇心の強い子ども、個性豊かな子どもほど苦痛に感じます。

すべての子を同じ型に押し込める教育のいびつさがもたらす病気
10/6の毎日新聞に、柔道必修化が脳脊髄液減少症を増加させる懸念が掲載されました。その記事を通し、教育制度のあり方について考えています。

▼疲れる子どもの特徴
学校を捨ててみようのp110によると、遺伝子レベルの解析で、CCFSの子どもたちはいろいろなものに興味を持ちやすい性格だと分かっています。

その後、社会技術研究開発事業「脳科学と社会」内でなされた最近の調査では、疲れる子どもの特徴、つまりCCFSになりやすい子どもの性格は次のようなものだと言われています。

「衝動的」、「新しいもの好き」、「現実的」、「心配性でやや内向的」、「完璧主義でない」、「野心が少ない」、「あまり協力的でない」「目標達成に執着しない」

この調査はクロニンジャー博士の気質・性格質問票を日本の子どもに応用したものです。あくまで傾向に過ぎず、そのような子どもがすべてCCFSになるわけではありません。

しかしながら、これらの傾向は、協調性を重視し、完璧を求め、現実的でない知識を詰め込み、良い高校、大学に入ることが人生の目標だとほのめかし、競争をあおる現在の教育制度と比べると、正反対ではないでしょうか。

そのほか、もともと発達障害や愛着障害の傾向がある子どもも、CCFSを発症しやすいかもしれません。

慢性疲労症候群の子ども(CCFS)には発達障害が多いー治療にはADHDや自閉スペクトラム症の理解が不可欠
小児慢性疲労症候群にはやASD(自閉スペクトラム症/アスペルガー症候群)やADHD(注意欠如多動症)が併発しやすいという最新の研究を、「いま、小児科医に必要な実践臨床小児睡眠医学」

7つのさらなる緊張負荷

上記の3つの共通のストレス背景に加え、以下のようなさまざまなストレスが重なりあったときにCCFSが発症します。(p66、194)

◆4.重圧となる責任が与えられる
生徒会長、キャプテンになるなど

5.家庭環境
両親の離婚、両親の夜遅くまでの共働き、家族の重い病気など

6.人間関係でのトラブル
家族、友人、先生との関係、いじめなど

7.事故や災害のショック
交通事故、地震など

8.生活環境の変化
転校、引越し、シックハウスなど

9.生活習慣
電子機器による夜更かし、不規則な食事時間など

10.感染症
発熱による消耗など

3つの共通のストレス背景に苦しむ子どもは、過度の重荷を背負って、必死の思いで立っています。そこへ、さらにもう一つ重荷がポンと載せられたとき、子どもはついに地面に倒れ、起き上がれなくなってしまうのです。

なお、成人型のCFSも、過労や心配、ウイルス感染や化学物質など、さまざまなストレス要因が重なりあったときに発症すると言われています。

日本の疲労研究が明らかにした「慢性疲労に陥るメカニズム」と対処法まとめ
慢性疲労症候群研究の第一人者、倉恒弘彦先生の講座「慢性疲労に陥るメカニズムと評価・対処法」を参考に、日本の疲労研究の歴史や、慢性疲労の原因などをまとめました。

特に諸外国を中心にウイルス感染との関係を強く示唆するデータが提出されていますが、国内の小児慢性疲労症候群(CCFS)の場合は、現代の養生訓―未病を治すにこう書かれています。

不登校状態と小児慢性疲労症候群(CCFS)の関係から、私たちはウイルスとの関係をほとんど考えずに、彼らの症状に合わせた臨床的検査をおこなった結果、慢性的な睡眠欠乏との関係を強く示唆する結果を得ています。 (p208-209)

ただし、子どもの慢性疲労症候群(CFS)でも、ウイルス感染や免疫システムとの関係が疑われる難治例が一部に見られるそうです。

▼遺伝的背景
CCFSなりやすい子どもには、ある種の遺伝的背景が認められるようです。

まず、学校を捨ててみようでは、ドーパミントランスポーター遺伝子の変異について指摘されています。

不登校の子どもたちのドーパミントランスポーター遺伝子の過多について、東大の石浦章一教授に検討していただいた結果、彼らはいろいろなものに興味をもちやすい性質をもっている可能性が示唆されるデータを得た。(p109-110)

また、文教大学教育学部教授、小児科専門医の成田奈緒子さんは、基礎研究 | 子育て科学 の中で、「疾患病態の解明の糸口を作ることが出来た小児の疾患」として慢性疲労症候群に触れています。

その説明によると、乳幼児突然死症候群に関わっているのと同じセロトニントランスポーター遺伝子の多型が偏っていたことがわかったそうです。

また慢性疲労症候群に関連しているかもしれない新規ペプチドをラット脳から抽出し、「マンセリン」と命名、その機能解析を進めているとのことです。

これらの遺伝子の変異は、共に「感受性の遺伝子」として知られるものです。このような子どもは、さまざまな環境から良くも悪くも影響を受けやすく、近年では生まれつきの敏感な子ども「HSP」として知られています。

HSPという体質は、決して欠点や弱点ではなく、良い環境に恵まれると大きく飛躍する可能性を秘めています。しかし、同時に感覚が鋭敏で情報過多に陥りやすいため、ストレスが多い状況では慢性疲労症候群などの体調不良を発症しやすいのでしょう。

生まれつき敏感な子ども「HSP」とは? 繊細で疲れやすく創造性豊かな人たち
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小児慢性疲労症候群(CCFS)の診断の流れ

小児慢性疲労症候群(CCFS)はどのように診断されるのでしょうか。

用いられるのは2007年に定められた国際的な診断基準です。詳しくは以下のサイトの表をご覧ください。

B:過眠型睡眠障害 | 子どもの睡眠と発達医療センター | 兵庫県立リハビリテーション中央病院 はてなブックマーク - B:過眠型睡眠障害 | 子どもの睡眠と発達医療センター | 兵庫県立リハビリテーション中央病院

 加えて学校を捨ててみようのp39や子どもの心身症ガイドブックのp167には、書籍が執筆された当時の診断フローチャートが載せられています。

それによると、血液検査や自律神経機能検査、深部体温検査、かなひろいテスト、終夜脳波、ホルモン検査、MRS、Xe-CTやSPECTによる脳血流解析を通してCCFSを診断します。

三池先生によると、それらの検査でまったく異常が見られず、自分の意志で不登校の生き方を選んだと思える子どもはこれまで一人もいなかったそうです。

目安として慢性疲労症候群(CFS)でお馴染みのPS(パフォーマンス・ステータス)も用いられます。CCFSのPS表は、CFSのPS表と比べて、子どもの環境に合わせて、表現が調整されています。

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このように、小児慢性疲労症候群(CCFS)は、複雑な要因が重なりあって発症する難治性疾患です。怠けているかのように誤解されがちですが、しっかりとした診断基準に基づいて診断されます。

続く4番目のエントリでは、小児慢性疲労症候群(CCFS)の典型的な発症パターンを紹介したいと思います

小児慢性疲労症候群(CCFS)とは (4)典型的な発症パターン
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