夜眠れず朝起きられない「睡眠相後退症候群(DSPS)」にどう対処するか(2)症状


120927睡眠障害1のエントリは、慢性疲労症候群(CFS)に合併しやすい概日リズム睡眠障害のひとつ、睡眠相後退症候群(DSPS)について解説する一連のエントリの2番目です。

最初のエントリでは、DSPSとCFSの関係について説明しました。DSPSはCFSの全患者に見られるわけではありませんが、比較的合併しやすい疾患です。また、DSPS特有の問題として、病気であることを認識するまでが困難極まりないことに注目しました。

この2番目のエントリでは、DSPS特有の症状をまとめたいと思います。

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DSPSの特徴

睡眠相後退症候群(DSPS)は、その特徴的なパターンにより容易に見分けがつきます。具体的な特徴を以下に列挙します。

睡眠時間

◆10時間睡眠
なかなか寝つけませんが、いったん眠るとおよそ10時間は目が覚めません。つまり慢性不眠ではありません。

この10時間というのは、連続睡眠時間ではなく、総睡眠時間であるようです。ですから、朝に予定があるなど、社会生活ゆえに10時間寝続けるのが難しい患者の場合、昼寝によって睡眠時間を補い、合計で10時間前後になることもあります。

自分の睡眠時間を知るには、2週間~1ヶ月ほど正確な睡眠ログを取り、平均を算出するとよいでしょう。

◆モーニング・ストーム
DSPSを合併している場合は、中途覚醒はほとんどなく、強く揺すっても目が覚めないようです。一度眠り始めると死んだように眠ってしまう、けれども疲れがまったく取れないのが過眠型睡眠障害の特色です。

睡眠障害のトピックス:睡眠・覚醒リズム障害について - 日本医科大学の中で山寺博史先生はこう述べています。

途中周りの人がどんなに起こそうとしても覚醒しなく,たとえそれに対して反応してもあとで記憶がなく,時にはあたかも反抗するかの如く物を投げるなど暴力行為を呈することがある.

これを morning storm ともよび,もうろう状態に近い意識障害の状態である

◆気づかない中途覚醒
見かけ上の中途覚醒はないとしても、実際には浅い眠りに終始しているため、自覚できない中途覚醒が頻発しています。兵庫県立総合リハビリテーションセンターの田島世貴先生は、疲労バスターズの研究者コラムでこう述べています。

睡眠中に、記憶に残るほどではないけれども脳波上は目が覚めているのと同じ状態が一晩で100回、200回と頻発している人が多いことがわかってきまし た。

健康な人の場合でも10回程度は起こるのですが、睡眠障害の人では半数以上でそのような状態がみられます。脳の働きになんらかの異常が生じていると考 えられます。

睡眠リズム

◆眠りにつく時間
夜12時より前には眠れず、入眠は深夜2時以降になります。ひどい場合は明け方になるまで眠くなりません。

これは本来午前0~2時にピークを迎えるはずの松果体からのメラトニンの分泌が朝方にずれ込んでいるために起こる症状です。

◆起きる時間
社会の活動開始時間には起きられず、自然に目がさめるのは昼ごろになります。朝早く家族の助けや目覚まし時計によって起きようとしてもまず起きられません。

これは本来午前6時ごろにピークを迎えるはずのコルチゾールをはじめ、副腎皮質ホルモンの分泌が、場合によっては12時間も午後にずれこむために起こる症状です。コルチゾールは抗ストレスホルモンであり、それが分泌されないと、朝起きるというストレスに対処できません。

また、後述するように脳の温度(深部体温)のサーカディアンリズムが明け方にずれこんでいるため、社会生活が始まる朝6~8時に体温が上がらず、最も活動が不可能な状態になります。

◆最も調子のいい時間帯
夕方から夜にかけて目が冴え、夜9時ごろに活動的になるケースが多いようです。

◆早起きによって矯正できない
無理をして社会のリズムに合わせようとすると、逆に大きくリズムを乱します。朝早く起きると、早く眠れるどころか、睡眠相が後退してより眠れなくなります。

気合を入れ、鞭打って起床し、なんとか社会生活を持続させようとする場合、微熱や痛み、不定愁訴などが表れます。病気に抗うこのような努力は、ほとんどの場合実りがなく、より重症化することにつながります。

次回のエントリで取り上げますが、睡眠相後退症候群(DSPS)はそもそも、社会生活のために睡眠時間を削って早起きする習慣、「睡眠不足症候群(BIISS)」が慢性化したときに発症する疾患だそうです。

身体症状

◆疲労感
目が覚めるのと同時に疲労感を訴え、まるで疲れるために寝たように感じます。長時間の睡眠にもかかわらず、日中の眠気、頭痛、倦怠感、食欲の乱れが見られます。

原因として、睡眠中の脳の温度(深部体温)が高く、特に最低温が上昇することが分かっています。一日の体温の変動の幅が著しく小さくなっています。

一般に深部体温の一日の変動、つまりサーカディアンリズムは安定していて、ずれることは少ないとされています。その安定的な深部体温のリズムがずれてしまうのがDSPSであり、深部体温リズムを1週間以上記録することがDSPS診断の手がかりになります。

また睡眠中の自律神経バランスは圧倒的に交感神経優位で、睡眠中にエネルギーが大量に消費されていると考えられています。

秋田大学医学部附属病院精神科 睡眠覚醒リズム外来のホームページによると、「無理をして起床すると、眠気、頭痛、倦怠感、疲労感といった身体症状や、抑うつ気分、意欲低下といった精神症状も生じやすく、慢性疲労症候群やうつ病と診断されている場合もあります」

◆レム睡眠の出現が遅い
ノンレム睡眠が脳を休めるのに対し、レム睡眠は脳を成長させます。レム睡眠中には記憶の固定や感情の整理が行われます。

ですから、レム睡眠の出現が遅いことは、睡眠の質が劣悪で、頭がすっきりしないことに直結します。原因としては成長ホルモンの分泌に問題があるのかもしれません。

精神症状

◆うつ状態
社会に適応できない状態が続くと、二次的に抑うつ状態を発症することがあります。その確率は5割ほどとする資料もあります。この原因はβエンドルフィンの分泌異常と考えられています。

◆学業や仕事に集中できない
授業が頭に入らない、学習意欲が落ちる、集中力、記憶力が落ちる、身辺の世話ができなくなる、読書をしても頭に入らない、暗記物は何とかこなせるが文章読解や作文ができない、などの症状が現れます。

また、小児慢性疲労症候群(CCFS)の場合、昼ごろにのっそり起きてきては、テレビ、ゲーム、マンガ、音楽で1日が終わることになってしまいます。しかしだからといって怠けているわけではありません。それぐらいしかできないほど脳機能が低下しているのです。

重症時には、テレビやラジオでさえ疲れるので視聴しなくなったり、雑誌やマンガを読むことさえ苦痛になり、目で見てはいるがストーリーは入っていかない、という症状が顕著になります。

原因として脳画像検査により、血流の異常が判明しています。視床で血流が低下するほど集中力が低下しており、基底核で血流が上昇するほど疲労感が強い傾向があります。

こうした脳機能の異常は深刻な問題ですが、前回のエントリで書いたように、病気とは考えられず、見過ごされがちです。日本臨牀 65巻6号p1131にはこあうあります。

「知らず知らずのうちに睡眠時間がずれてしまった児童たちの大多数は、持続力、集中力、判断力の低下が認められ、特に午前中に本来の自分ではない体調の悪さを、場合によっては一日じゅう疲れを感じているが、実際に医者が尋ねるまで、そのことを問題だと自覚していない」

適切な治療が必要

最後に、DSPSの大きな特色として一般的な治療が極めて困難であるということがあります。リラックス方法やアルコール、睡眠薬などはほとんど効かないそうです。

つまり、睡眠相後退症候群(DSPS)という診断に基づいて治療を選択しないなら、通常の不眠治療や心療内科の処方では治癒が期待できません。自分の睡眠パターンを分析し、適切な病院で診察を受けることが必要です。

次の3番目のエントリではDSPSはなぜ発症するのか、原因は何なのか、という点を考えます。次いで4番目のエントリで治療法をまとめる予定です。

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子どもの慢性疲労 / 概日リズム睡眠障害