日本とイタリアの電磁波過敏症(ES)に関する2つの相異なる判決


ぼ同じ時期に、日本とイタリアで、電磁波がかかわる健康被害に対して、2つの相異なる判決が下されました。かたや電磁波の健康被害を認めず、かたや認定した点で、好対照をなしています。

「電磁波で健康被害」認めず 携帯基地局訴訟で宮崎地裁支部  :日本経済新聞

中日新聞:「携帯使用で脳腫瘍」と労災認定 伊最高裁、保険支払い命令:国際

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「電磁波と健康被害との立証は不十分だ」ー日本

日経新聞ほか、各社が伝えているのは、先日、以下の記事でお伝えした、電磁波過敏症に関する訴訟の結果です。

電磁波過敏症は、化学物質過敏症と深い関わりがあり、慢性疲労症候群(CFS)の患者にも併発することのある疾患です。

電磁波過敏症(ES)についての宮田幹夫先生のコメント
9/23、9/29の電磁波過敏症(ES)についての2つの記事を取り上げています。宮田幹夫先生のコメントをもとに、CFSと関わりのあるこの病気についてまとめました。

この裁判は、電磁波による具体的な「健康被害の訴え」、つまり電磁波過敏症を争点にした全国初の裁判です。

「医学的意見としての価値はない」

司法は、「これらの愁訴が虚偽であるとは考えられない。原告らには、各々が述べるとおりの症状が発生していることが認められる」、「その発症の時期は本件基地局設置後であると認められる」として、健康被害については認めました。

これまで、携帯電話基地局の設置を巡っては、九州では福岡や熊本などで少なくとも6件の裁判が起こされていますが、いずれも裁判所は、「(健康被害の)恐れが具体的にあるとは認められない」などと退けていました。

今回の事例では、初めて健康被害は認められたとはいえ、「直ちにそれが電磁波による健康被害と認定することはできない」とされ、「電磁波と健康被害との立証は不十分だ」として訴えは棄却されました。

具体的なコメントとして、

◆「反対運動などを通じて健康被害を意識したり、症状への意識が主観的に増幅されたりした可能性がある」
◆「電磁波への不安感が影響した可能性もある」
◆「問診結果を主な根拠としており、医学的意見としての価値はない」

と語られています。

世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)が2011年に「発がん可能性がある」とリスク評価している点については、「客観性に対する批判や、異なる結論の研究・報告も存在する」と結論づけるにとどめました。

「症状がますますきつくなっている」

いっぽう被害を受けた電磁波過敏症の患者たちは、「症状がますますきつくなったり、死にたいと言っている人もいる。住民の症状と正面から向き合おうとしていない。納得できない」と述べています。

ひどい場合は、キーンと耳をつんざくような耳鳴りと不眠に苦しみ、睡眠薬を服用しても毎日2時間程度しか眠れず、体調悪化のため仕事ができるのはわずか1時間という方もいらっしゃるようです。

電磁波を遮蔽する効果があるアルミ板を事務所の壁に張り巡らせて生活している方や、携帯電話が圏外となる山あいのダムに避難し、車の中で睡眠を確保する住民もいます。

専門家によると、国内の電磁波の基準値は「微量の電磁波を長期間にわたり浴び続ける場合を考慮していない」そうです。

国内基準では電力密度を1平方センチあたり1000マイクロワットとしていますが、欧州を中心により厳しい規制をする国もあり、スイスは9・5マイクロワット、ロシアは10マイクロワットで、学校や病院周辺ではより厳しい制限値を設定している場合もあるそうです。

弁護士は「これだけ多くの住民が様々な症状を訴えているにも関わらず判決では心因性と判断しており、これこそ非科学的だ」と述べ、水俣病などの環境公害と同様、企業側に制裁が下されず健康被害が拡大することを危惧しています。

KDDI電磁波裁判、退けられた住民の訴え(2) | 社会・政治 | 投資・経済・ビジネスの東洋経済オンライン

携帯基地局電磁波:操業差し止め訴訟 原告住民に怒りと失望、請求を棄却 身体症状存在は認める−−地裁延岡支部判決 /宮崎- 毎日jp(毎日新聞)(リンク切れ)

住民、主張認められず落胆…宮崎・携帯基地局訴訟

朝日新聞デジタル:原告無念さにじむ 携帯基地局訴訟住民敗訴-マイタウン宮崎 (リンク切れ)

「少なくとも原因の一つと言える」ーイタリア

この判決が下るのとほぼ同時に、イタリア最高裁では、電磁波と健康被害の関わりを認める、真逆の判決が下されました。

中日新聞の記事によると、「イタリアの最高裁は18日までに、仕事で携帯電話を長時間使用したことが脳腫瘍の発症につながったとの北部に住む男性(60)の訴えを認め、全国労働災害保険協会に労災保険の支払いを命じる判決を下し」ました。

この判決は、『長年にわたる携帯電話使用と脳腫瘍発症の因果関係を示したスウェーデンの学者らの研究結果を「信頼性が高い」』と判断して下されたものです。

この事例は電磁波過敏症とは関係がありませんが、日本の裁判で「客観性に対する批判や、異なる結論の研究・報告」と結論づけられた資料の信憑性を認めている上で興味深いものです。

事実、携帯電話や基地局から発せられる電磁波で健康影響が起こりえる、という疫学調査や研究論文は世界各地で発表されているそうです。

イタリア最高裁で携帯電話による脳腫瘍で労災認定、日本で認められる条件:MyNewsJapan

電磁波過敏症を直視する

電磁波や化学物質は非常に便利なものですが、道具は安全性が考慮されて初めて、有用なものとなります。どんなメーカーでも、ひとたび安全性が疑問視されると、製品を回収し、再発防止に向けて研究を重ねるのが常です。

たった数人に食中毒が起こった場合や、たった数件火災事故が起こった場合には事の重大性が認められるのに、これほど世界規模で問題が生じている電磁波過敏症を気のせいと片づけるのは、道理に合わない気がします。

電磁波や化学物質を扱う機器についても、本当に安全な域を目ざして、科学的な研究がなされるべき時代がきているのではないでしょうか。

 

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