先生をあっといわせて、友だちをびっくりさせて、親にもほめられる。集中力がアップして、宿題なんかあっという間にできてしまう。あとは好きなだけ遊べる。最高だ。
じつは、私はその魔法を知っているんだ。魔法のやり方をね。(P4)
ディズニーランドへ行っても、夢の国を一歩出れば魔法は解けてしまいます。「ハリー・ポッター」を読んでもホグワーツ魔法魔術学校には入校できません。ところが書籍「マインドマップ(R)for kids勉強が楽しくなるノート術」はひと味違います。
ワクワクする言葉で子どもたちに語りかけ、子どもに夢を与える。それだけでなく、夢を実現させるとっておきの魔法を教えてしまう。これはまさにそんな本だといえるでしょう。
教育者トニー・ブザンが教えるマインドマップは、現代の窮屈な学校に通う子どもたちにとっても、厳しい競争社会に疲れ果てる大人たちにとっても、まさに魔法のようなテクニックです。
このエントリでは、書籍「マインドマップ(R)for kids勉強が楽しくなるノート術」を読んだ感想をまとめます。
目次 ( 各項目までジャンプできます)
これはどんな本?
この本は、英国の教育者トニー・ブザンが、小学校高学年から中学生の子どもたちに向けて書いたマインドマップのテキストです。マインドマップをを楽しく学べるよう、随所に工夫が凝らされていて、大人でも十分楽しめます。
トニー・ブザンは、「学び方」を教える世界的権威で、マインドマップの発明者です。
GMやウォルトディズニー、IBMなどの一流企業や、イギリス、シンガポールなどの政府機関のコンサルタントとして知られていて、著書は100ヶ国以上で親しまれています。(p2)
マインドマップとは、トニー・ブザンが、過去の天才たちのノートを研究し、その特徴を集約した、だれにでも親しめるノート術です。詳しくは以下のエントリをご覧ください。
なぜこの本を手にとったか?
このブログを見てくださっている方であれば、わたしがずっと、ある一つの病気に関心を持っているのをご存じだと思います。その病気とは、小児慢性疲労症候群(CCFS)です。
小児慢性疲労症候群(CCFS)はほとんどすべての場合、学校教育のいびつさを背景に発症することは以下のエントリに書いたとおりです。
本来は、好奇心旺盛で、個性豊かで、想像力に満ちあふれている。そんな子どもに対し、現代のいびつな学校教育が、みんなと同じであることを求め、成績だけがすべてだと教え、窮屈な一つの型に押し込めようとするとき、発症してしまう病気です。
わたしは、そのような病気を抱える患者の一人として、トニー・ブザンの教え方とマインドマップが、いびつな学校教育とは正反対の特徴を持っていることに気づくようになりました。
マインドマップは、しばしば、自閉症やアスペルガー症候群の子どもを生き生きとさせ、発達障害児の能力を開花させるといわれます。わたしは、CCFSの子どもの場合もそうだと思います。マインドマップはCCFSの子どもの手になじむ魔法の杖なのです。
この本「マインドマップ(R)for kids勉強が楽しくなるノート術」には、マインドマップの考え方について、こう書かれています。
次のページのマインドマップと、キミが作ったマインドマップをくらべてみようか。
まったく違う? それでいいんだ。
マインドマップは、キミの頭の中で起こっていることを地図にしたものだ。キミの考えは、世界にたったひとつしかない。キミのマインドマップは、キミだけのものなんだ。 (p29)
できあがったら、次のページのマインドマップと、キミのをくらべてみよう。ぜんぜん違うからおもしろいよね! (p35)
トニー・ブザンは、マインドマップの効果を要約して、次の一言にまとめました。
「つまり、周囲に振り回されることなく、自分らしく生きられるのです」
マインドマップは、他人と同じであることを求める現代社会において、子ども一人ひとりの個性を大切にするツールです。わたしは、トニー・ブザンが、特に子供向けにマインドマップを解説しているこの本を興味深く思っていました。
マインドマップと“問題児”の子どもたち
マインドマップと子どもたちを結ぶ、ひとつの興味深いエピソードがあります。
トニー・ブザンは、あるとき、英国放送協会(BBC)から挑戦状を叩きつけられました。「マインドマップに本当に魔法の杖であるのなら、学校が手に負えない子どもたちを相手にそれを証明してみせてください」というのです。
非常に不利な挑戦状です。場合によってはトニー・ブザンとマインドマップの輝かしい経歴に傷がつきかねません。
しかしトニー・ブザンはそれを堂々と受けて立ちます。かくして、勉強に何の興味も持てず、集中力がほんの少ししか持たず、好き放題に行動する子どもたちが集められました。それはあまりにもひどいありさまでした。(p2)
トニー・ブザンに与えられた猶予はたったの半年。
この公開試験の結果は、はたしてどうなったのでしょうか。
驚くべき成果が報告されます。子どもたちは半年後、別人のように生き生きと輝いていました。
ロンドン大学教育研究所の調べによると、「予想を超える速度で能力が向上」していたのです。70%以上で認知力が向上し、言語能力は5倍以上の速さで発達しました。「調査を担当していなければこの結果を信じなかった」と述べる人もいました。
ブザンは彼らを矯正しようとしたわけではありません。彼らを信じ、彼らの味方になり、彼らとともに悩みを考えました。手がつけられない問題児とみなされていた彼らのほんとうの姿を見てもらいたい、潜在能力を証明したいと考えたのです。
このできごとはBBCにより放映され、センセーションを巻き起こしました。番組は「ブザン 6ヶ月の奇跡」として今でもマインドマップ公式サイトで公開されています。マインドマップに興味がある方であれば、とっかかりとしてもぜひ視聴をおすすめします。
マインドマップ ブザン6ヵ月の奇跡│速読術スキルアップのALMACREATIONS
このように、マインドマップは、抑圧されている子どもたちの強力な味方です。もちろんマインドマップは、学習障害や発達障害、病気の子どもたちに効果があるだけではありません。健康な子どもたちすべての能力を飛躍的に向上させ、可能性を広げます。
マインドマップは“魔法”で“あみ”で“高度な落書き”
マインドマップとはそもそもどのようなものなのでしょうか。マインドマップのかき方については、以前にまとめたので、ここでは、本書からトニー・ブザンの3つのたとえを引用しましょう。
キミの魔法の杖
マインドマップはキミの魔法の杖だ。
マインドマップは、これからずっとキミの大切な友だちとして、いろいろなことを助けてくれるはずだ。何かを覚えたり、問題を解決したり、集中力を高めたり、ストレスをへらしたり、テストでいい点を取って、先生や友だちをあっといわせたりできる。
マインドマップ(とキミ)で、これからすごいことができる。 (p123)
マインドマップは、使えば使うほど上達する魔法の杖のようなものです。あらゆることに役立つ、“深く考える力”を育てます。一度身につければ、もう手放したいとは思えないたのもしい道具です。 (p52,91)
チョウをつかまえる巨大なあみ
マインドマップはいわば、アイデアや知識のチョウをつかまえる巨大なあみだ。先生が授業中に話したこと、本やインターネットの情報、友だちの言ったこと、キミの考えやアイデアといったチョウが飛んできたら、キミのマインドマップのあみがかたっぱしからつかまえてくれる。
知識のチョウをつかまえると、チョウはあみの一部になる。知識をつかまえるたびにあみは大きくなり、さらに知識をつかまえやすくなる。 (p90-91)
マインドマップは、記憶のための道具です。情報を一枚の紙にまとめているので、復習し、つながりをみつけ、目標をはっきり知るのがとても簡単です。“整理する力”、“全体を見る力”が育ちます。(p76,103)
ものすごく高度な落書き
キミは、落書きをすることがあるかな?
ほとんどのひとは、何かを考えながら、落書きをする。落書きは時間のムダじゃない。落書きをすると集中しやすくなるんだ。
最近の研究では、落書きが記憶を助ける役目もはたすことがわかってきた。いわばマインドマップは「ものすごく高度な落書き」というわけだ。 (p79)
脳は言葉を聞くと、書き記された文字ではなく、色付きのイメージを思いうかべます。文字や順序を扱う左脳だけでなく、色や映像を扱う右脳も使っているのです。マインドマップは両方の脳に働きかけるので、考えることに“集中する力”が育ちます。 (p12-13)
「ウソだろ」と思ってる?
「ただのペンで魔法ができるわけないよ」と思ってる?それができるんだ。
キミのすばらしい脳みそを使えばね。
さあ、いっしょに遊びながら学んでいこう!
マインドマップはこう使う
本書には、マインドマップの使い方が、場面ごとに具体的に書かれています。
(1)記憶に役立つクエスチョン・キット
各枝の先に、覚えたいストーリーやニュースをまとめていきます。複雑な内容が簡単に整理できるだけでなく、ただマインドマップをかいていくだけで、要点が記憶に定着します。(p28)
(2)教科別マインドマップの使い方
本書のp39-85には、各教科を楽しく学ぶための方法が、実例マインドマップ付きで詳しく説明されています。国語や歴史はもちろん、数学や英語でもマインドマップは使えます。p91ではテスト本番で使う方法まで書いてあります。
ところどころにトニー・ブザンの秀逸なしゃれが散りばめられていて、読んでいるだけで楽しくなるセクションです。
先生:オーストラリアの気候を説明しなさい
女の子:とっても寒いです!
先生:違いますよ
女の子:でも先生、スーパーで買うオーストラリアのお肉はいつも凍ってます (p76)
邦訳の影響で厳しい駄洒落に差し替わっているところも多々ありますが…。
(3)さまざまな場面に
p92以降では、遊びの計画や部屋の片付け、手紙の草案などに用いる意外な作例が載せられています。手紙の草案のためのマインドマップは、わたしもかなり頻繁に使っています。
『いつもは「書くことがない」のに、書くことがありすぎて「紙が足りない!」ってことになるかもしれないよ』というトニー・ブザンの言葉のとおりになっています。 (p110)
子どもと楽しくマインドマップを学ぶ本
この本は、子どもといっしょにマインドマップを学びたいと思う親にとって、もっともふさわしいマインドマップの教科書です。
子どもにマインドマップに興味を持たせるもっともスムーズな方法は、まず大人が自分で描いてみること、そしていっしょに楽しむことだと書かれています(p3)
お母さんが買い物リストをマインドマップで描いたり、お父さんが旅行の計画をマインドマップで練ったり…。そうしているうちに親から子へ、しぜんにマインドマップの楽しさは伝染します。
わたしの家の場合は、逆のパターンで、わたしから親にマインドマップが伝染しました。今では親子で楽しくマインドマップを使いこなしています。
マインドマップは老若男女問わず、だれもが使える魔法のツールです。それどころか、前半のエントリに書いたように、学習障害や発達障害のある子どもでさえ楽しめる「勉強が楽しくなるノート術」です。
まだマインドマップに触れたことがない方も、ちょっとかいて挫折してしまった方も、ぜひ、マインドマップ(R)for kids勉強が楽しくなるノート術を読んで、親子で、家族で、友だち同士で、マインドマップを楽しんでみてください。
同じく「for Kids」の副題を掲げている読書法の解説書「考える力がつくフォトリーディング PHOTOREADING for KIDS」の書評もご覧ください