「高照度光療法」は自宅でも可能? 睡眠障害や小児慢性疲労症候群(CCFS)の治療法


照度光療法の新しい機器についての記事が9/29付、および10/6付の室蘭民報に掲載されました。

概日リズム睡眠障害や季節性情動障害(冬季うつ病)などの治療に高照度光療法が効果的なのはよく知られています。しかし、これまでは据え置き型の光治療器しかなく、自宅での治療は難しいと考えられてきました。

ところが、このニュースによると、室蘭工業大学の精神科医、三浦淳准教授がゴーグル型の高照度光療法器の開発を企業と共同で進めており、特許を申請しているそうです。

室蘭民報ニュース 室蘭工大と製鉄病院の「高照度光療法」医工連携で探る

室蘭民報ニュース 室蘭工大の三浦准教授がゴーグル型高照度光療法器試作

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高照度光療法とは

高照度光療法は、1982年にノーマン・E. ローゼンタール医師らが季節性情動障害に関して確立した治療法です。

季節性うつ病 ノーマン・E. ローゼンタール (講談社現代新書)

特殊な機器を用いて5,000-10,000ルクス程度の光を目から取り入れ、概日リズムの乱れを修正します。

高照度光療法の詳しい説明、および概日リズム睡眠障害や季節性情動障害への効果については、文部科学省のサイトの報告書に詳しく記載されています。

科学技術・学術審議会 資源調査分科会 光資源を活用し、創造する科学技術の振興(持続可能な「光の世紀」に向けて)第3章 2 光の治療的応用(光による生体リズム調節)-文部科学省

小児慢性疲労症候群(CCFS)と高照度光療法

高照度光療法は近年、小児慢性疲労症候群(CCFS)に効果的であることが注目されています。

2010年3/8付の神戸新聞には、「疲労」研究で世界リード 神戸の2拠点というニュースが掲載されました。その記事によると、「入院して朝に蛍光灯の強い光を当て、体内時計による起床リズムを回復させる光治療では、8割近い患者の日常生活が安定した」そうです

また、2011年6/4付の神戸新聞には、「小児慢性疲労症候群、患者全員が改善 県センター」というニュースが掲載されました。本文がすでにリンク切れになっているので、高照度光療法の効果について、以下に長めに引用させていただきます。

原因不明の疲労が長く続き、不登校の一因ともいわれる「小児慢性疲労症候群」の子どものうち、光や低温サウナなどを使った治療で全員の疲労が改善し、半数以上はほぼ通常通りの学校生活に戻ったことが、兵庫県立総合リハビリテーションセンター(神戸市西区)内にある「子どもの睡眠と発達医療センター」の追跡調査で分かった。

…田島世貴(せいき)医長、三池輝久センター長らは09年度、同症候群と診断された12~19歳の患者29人を対象に、天井に設置した5千ルクスの蛍光灯の 光を朝に3時間当てる「光治療」▽約60度に設定した「低温サウナ治療」▽生体リズムを整える薬物による治療‐を8週間にわたって実施した。

その結果、10時間以上眠る「過眠」(治療前14人)と、眠るのが午前0時以降の「睡眠相後退」(同6人)が治療後、いずれもゼロに。これらとは別に、体温を高めて活動を始める時刻が遅くなる患者も治療前に20人いたが、9人に減った。全員の生体リズムが改善されて疲労が軽減し、半数超の16人がほぼ通常通りの学校生活に戻った。

さらに2011年12月28日付の日経新聞の記事にはこう書かれています。

睡眠のリズム乱れたら…光で治療 体内時計を正常化 :日本経済新聞

神戸市西区にある兵庫県立リハビリテーション中央病院。ここにある「子どもの睡眠と発達医療センター」の入院施設には、計15床の光療法に対応した病室がある。各病室の天井や壁には約7000ルクス以上のまぶしいくらいの光を出す照明装置があり、患者は毎日決まった時間に光を浴びる。

 同センターで入院を受け入れているのは原則として未成年者。外来を含めて、睡眠障害で年間約200人の患者が新たに訪れている。睡眠障害が重症化して不登校や引きこもりになった中高生らが多い。慢性疲労症候群と診断される人も多い。

 「特に子どもの場合、睡眠障害が若者の身体の様々な不調の引き金になっている。光療法などにより睡眠のリズムを回復することで、症状が改善できる」と、三池輝久センター長は説明する。

高照度光療法をはじめとする体系的な治療によって、小児慢性疲労症候群(CCFS)の子どもたちの多くが回復したことがわかります。

今回のニュース記事の中で、三浦准教授は高照度光療法についてこうコメントしています。

「光療法は薬を使わない。季節性の感情障害や認知症の周辺症状、時差ぼけ、シフト勤務者の睡眠障害などに有効とされているが、知識の不足や医療を取り巻く環境、機器に関する要因などがあり、普及していない」

従来の据え置き型の光治療器

高照度光療法の効果が認められているにもかかわらず、薬物療法に比べて普及していないのは、従来の高照度光療法は自宅で行うのが難しかったためだそうです。

現在家庭用として用いられている光治療器は、たとえば【送料無料】 光療法の標準器ブライトライトME と 交換ランプのセットのようなものがあります。

こうした据え置き型の機器は、高価であったり、光治療器のほうを向いてじっとしている必要があったりするため、治療効果につなげるのが難しいのが欠点です。

今回のニュースの三浦准教授も「高照度光療法の効果があるのは分かっているが、現在の据え置き型では行動が制限され、毎日浴びることはできない」と述べています。

子どもの睡眠と発達医療センターのように、高照度光治療室を備え付けた施設に入院するのが確実ですが、退院後に再び症状が悪化する例もありました。

そのため、上記の2011年の小児慢性疲労症候群(CCFS)についての記事の末尾では、「今後…光治療器を小型化して在宅治療も試みたい」と書かれていて、小型かつ携帯できる光治療器への期待が高まっていました。

身につけられる携帯型の光治療器

今回のニュースで紹介されているような、装着できる光治療器が開発されれば、CCFSをはじめ、季節性情動障害(冬季うつ病)睡眠障害が治療しやすくなる可能性があります。

ニュースでは、この新しい光治療器の特徴がこう説明されています。

白色発光ダイオード(LED)を使い、1万ルクスの光を目に照射するゴーグル型の高照度光療法器を試作。

1日30分浴びると効果が得られるほか、ゴーグルをかけながら食事や歯磨きも可能、行動を制限されないという。

臨床試験を製鉄記念室蘭病院、機器開発を道内企業と共同で進めており、実用化・製品化を目指している。

この新しい光治療器が、このまま製品化され、医療に導入されるかどうかは未知数ですが、高照度光療法の今後の発展に期待させてくれるニュースといえるでしょう。

▼製品化されました。(2016/09/30追記)
この記事で紹介した、室蘭工業大学による、携帯できるゴーグル型の高照度光療法機器がついに製品化されました。

ウエアラブル型の体内時計調節器「ルーチェグラス」として2016年10月3日に発売されます。価格は2万7000円で、医療機関を中心に販売を開始するそうです。

電制、ウエアラブル型体内時計調節器発売-疑似太陽光で体内時計のずれ改善 | 医療・健康・食品 ニュース | 日刊工業新聞

ルーチェグラスは1日当たり使用時間は30分間で、効果と目への優しさのバランスを考えた光を採用している。装着中も前方などの視界を妨げず、本を読んだり、食事をしたりすることも可能だ。

光を照射して体内時計のずれなどを改善する「高照度光照射療法」は、睡眠障害やうつ病にも効果があるとされる。医療機関などでは据え置き型の装置が使われているが、ウエアラブル型は国内で初めてという。

今のところはまだ医療機器として専門機関への販売とのことですが、今後の展開に期待していきたいところです。

そのほかにも、ウェアラブル型の光治療器として、アメリカではスマホと連動するアイマスク「Neuroon」が開発されています。

スマホで体内時計を調節。新開発アイマスク「ニューロン」 | cafeglobe

時差ぼけを防ぐハイテクアイマスク「Neuroon」登場 - ITライフch

フィンランドではイヤホン型光治療器ヒューマンチャージャーも開発されていますが、本当に効果があるのかどうかについては反証とんる研究もあるようです。

イヤホン型光治療器「ヒューマンチャージャー」、耳の奥から脳に光を当てて時差ボケを治す発明
外耳道を通って脳に光を当てる光治療器が開発されているそうです。

小児慢性疲労症候群(CCFS)や概日リズム睡眠障害について詳しくはこちらをご覧ください。

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小児慢性疲労症候群 / 概日リズム睡眠障害