All About(オールアバウト)に、日本睡眠学会の坪田聡先生による、メラトニン受容体作動薬ロゼレムについての記事が掲載されました。
現代型不眠と新しいタイプの睡眠薬「ロゼレム錠」 [不眠・睡眠障害] All About
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全く新しいタイプの睡眠薬
メラトニン受容体作動薬(メラトニン受容体アゴニスト)のロゼレム(ラメルテオン)は、2010年4月16日に承認された全く新しいタイプの睡眠薬です。
いつもブログを拝見している ろくろさんがロゼレムやブルーライトについて書いておられたので、このブログでも、最近のニュースからロゼレムについて調べてみることにしました。
メラトニン受容体作動薬については、慢性疲労症候群(CFS)に合併しやすい、過眠を伴う概日リズム睡眠障害である睡眠相後退症候群(DSPS)について書いたとき、ほんの少し言及しましたが、このブログに詳しく書いたことはありませんでした。
これまで広く用いられてきたベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬がいわば無理やり寝かしつける薬で会ったのに対し、メラトニン受容体アゴニストは、睡眠に関係するホルモンであるメラトニンと同様の働きをし、自然な眠りに導くと言われています。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬
この記事によると、ベンゾジアゼピン系睡眠薬・非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は「脳神経の興奮を抑えるガンマ・アミノ酪酸(GABA)の働きを助けて眠気を強め」ます。「主な副作用として、持ち越し効果や記憶障害、依存症、離脱症状」があるとされています。
特にベンゾジアゼピン系睡眠薬の副作用は深刻になることもあります。今年8/19には、副作用や薬物依存の症状や、減薬するための手順などを記した「アシュトンマニュアル」の日本語版が公開され、話題になりました。
「アシュトンマニュアル」日本語版が公開 : 医療ニュース : yomiDr./ヨミドクター(読売新聞)
またベンゾジアゼピン系睡眠薬や抗不安薬の安易な処方の害について佐藤記者の「精神医療ルネサンス」 : yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞)で連載されていました。第八回は、マニュアル公開記念・アシュトン教授に聞いたという内容でした。
抗不安・睡眠薬依存(1) 患者依存させ金もうけ! : 佐藤記者の「精神医療ルネサンス」 : yomiDr./ヨミドクター(読売新聞)
10/8には、過去に服用していただけで認知症のリスクが増加するという報道もありました。しかし不眠を治療しないでいるのも認知症リスクを高めるため、判断が難しいようです。
ベンゾジアゼピン系薬の服用で認知症のリスクが1.6倍に増加 - QLifePro医療ニュース
わたしは現在いずれの睡眠薬も服用していないのですが、何らかの睡眠薬を長期間服用しておられる方は内容を知っておいたほうがよいかもしれません。特に未成年の子どもの場合は良心的な医師の処方に従わない限り、害が生じうることを必ず知っておくべきだと思います。
メラトニン受容体作動薬
他方、メラトニン受容体作動薬は「体内時計に働きかけて睡眠と覚醒のリズムを改善する薬」です。わたしたちが眠くなるのはメラトニンという脳内ホルモンが睡眠リズムを整えているからですが、その受容体を刺激して、作用を強めるというメカニズムで眠気を誘います。
ベンゾジアゼピン系ほど即効性はなく、不眠症にはあまり効果はなさそうです。しかし睡眠相後退症候群(DSPS)などは不眠ではなく、体内時計の障害なので、効果があるのではないかと言われているようです。
夜眠れず朝起きられない「睡眠相後退症候群(DSPS)」にどう対処するか(4)診断と治療
「これまでのベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬とは作用の仕方が全く違うので、ふらつきや記憶障害、依存性などの副作用が少なく、長く飲んでいても睡眠効果が弱くなりにくいという特長」があるとありますが、副作用がないわけではありません。
特にSSRIのルボックスまたはデプロメールとの併用は禁忌となっています。慢性疲労症候群(CFS)の患者ではSSRIを服用している方も多いので、注意が必要でしょう。
記事で書かれているように、できる限りは、睡眠薬に頼らない対策をまず重視するのがよさそうです。睡眠薬を使うかどうかは信頼できる医師に相談し、患者ひとりひとりが決めるべきことであり、このブログでは情報を提供しているに過ぎません。