あまり知られていない優れたCFSの本(2)子どもの心身症ガイドブック


はてなブックマーク - 小児慢性疲労症候群(CCFS)の12の症状 「学校を捨ててみよう」から(2) | いつも空が見えるからし子どもが見知らぬ土地で迷子になったなら、親の立場にあるみなさんは、どのように感じるでしょうか。きっと、なんとしても探し出したい、助け出したいと思うことでしょう。

ある日突然、子どもが原因不明の体調不良に陥った家族も、それと同じ思いをしています。子どもはいったいどこに迷い込んでしまったのでしょうか。再び日常生活に帰ってくることはできるのでしょうか。子どもを助けだすための地図、ガイドブックがあるでしょうか。

今回紹介する子どもの心身症ガイドブックはまさに助けになる一冊です。この本は、子どものCFS、小児慢性疲労症候群(CCFS)のことを詳しくわかりやすく説明している点でも優れています。このガイドブックの特徴をお話ししましょう。

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見知らぬ世界のガイドブック

子どもの心身症ガイドブックは、平成13-15年度の厚生労働省、小児心身症対策の推進に関する研究班の研究結果をまとめた書籍です。

子どもの心身の問題があますところなくリストアップされているので、子どもを扱う医療関係者にとっても、我が子の不調を理解したいにとっても、そして原因不明の体調不良に悩まされる子ども自身にとっても、非常に参考になります。

ここでいう“心身症”という言葉は、いわゆる気のせい、こころの問題、という意味ではなく、「身体疾患があり、その治療に際して誘因あるいは増強因子となった心理社会的要因を考慮する必要がある場合」すべてに使われています。 (p9)

つまりストレスで症状が悪化するような病気すべてを網羅しているということです。「低年齢ほど生活を周囲に依存しており、環境(周囲の人)の影響を受けやすい」ので、事実上、子供がかかるほとんどの病気を取り扱っています。(p12)

ですから、子どもの心身症ガイドブックは、子どもが原因不明の体調不良に陥ったとき、それがはたして何なのかを突き止める助けになります。見知らぬ世界に迷い込んだ子どもを助けるガイドブックなのです。

小児慢性疲労症候群(CCFS)のガイドブック!

広い意味で子どもの心身症を取り扱っているため、当然ながらこの本では小児慢性疲労症候群(CCFS)も紹介されています。三池輝久先生によってp164-175の12ページにまとめられた説明は、たいへん明快です。

CCFSについては、これまで学校を捨ててみよう!―子どもの脳は疲れはてている不登校外来―眠育から不登校病態を理解するをおすすめしてきました。

しかし内容が冗長だったり、専門的すぎたりするため、最も簡単に読めるCCFSの解説書は、ということになると、子どもの心身症ガイドブックに軍配が上がります。たった12ページ読むだけで、CCFSについて大事なことはすべてわかります。

このブログでは、CCFSについて以下の一連のエントリにまとめましたが、いずれ子どもの心身症ガイドブックの情報も取り上げたいと思います。(11/25に以下のエントリに情報を追加し改定しました)

小児慢性疲労症候群(CCFS)とは (4)典型的な発症パターン
小児慢性疲労症候群(CCFS)の典型的な発症パターンについてまとめています。CCFSはどのような経緯で発症し、悪化しますか。これは一連の記事の4番目です

似ている病気についてのガイドブック

そのツラさは、病気ですを紹介したときにも書きましたが、CFSだけを扱った本より、他の病気と比較対照されている本のほうが、CFSとはどんな病気か理解しやすいことがあります。

たとえば、起立性調節障害(OD)は以下のエントリで触れたとおり、必ずしもCCFSと同じ病気ではないのですが、しばしばよく似ていると言われます。どちらも深刻な病気ですから、違いを理解しておくと治療の助けになります。

小児慢性疲労症候群(CCFS)とは (2)12の症状
小児慢性疲労症候群(CCFS)の症状の12の特徴を取り上げています。不登校の子どもたちの身体を調べたところ、どのような医学的な問題が明らかになったのでしょうか。これは一連の記事の2

またこの本では、子どもの不調として見過ごされやすい過敏性大腸症候群(IBS)や、うつ病性障害などの児童精神疾患、ADHD、摂食障害、境界性人格障害など周囲が違和感を感じていても、なかなか原因を見いだしにくい問題についても触れられています。

そのツラさは、病気ですと異なり、各章を同じ筆者が書いているわけではないので、 はっきり比較対照されているわけではありませんが、各病気の特徴を知るには役立ちます。

病気の子どもへの接し方のガイドブック

子どもの心身症ガイドブックの優れた点は、病気の子どもへの接し方が詳しく書かれている点です。家族として、医療関係者として、学校関係者としてどのように接することができるか、事細かに書かれています。2つほど例を挙げましょう。

言ってはいけないこと

次のような表があります。(ブログに引用するにあたって細部を調整しています)。

◆慎むべき言葉・態度◆ (p36-37、184)

家族、医師、教師がこの表を当てはめるだけでも、子どもの負担は随分軽減されるのではないでしょうか。

性格のせいではない

もう一つ、個人的に勉強になったのは、チック障害についての、よく聞かれる質問です。(p131)

「お母さんの完璧主義のせいでチックになった」という意見に対し、チックを起こしやすい脳の体質は、男の子ではチックを出しやすく、女性では完璧主義を作る可能性があると書かれています

つまりお母さんの完璧主義のせいでチックになるのではなく、親子で同じ脳の体質があるため、育て方とは関係なく、子どもはチックを発症し、親は神経質になってしまうことがあるのです。

慢性疲労症候群(CFS)でも短絡的に「完璧主義だからそんな病気になる」、という人がいますが、おそらく遺伝的な性質が関係しているか、CFSになったために神経質な性格に変わったということもあるでしょう。

ちなみに疲れやすい子どもはむしろ「完璧主義でない」傾向があると言われています。また諸外国ではCFS患者に完璧主義の傾向があるとはまったく思えないと述べる研究者もいます。

いずれにせよ、まるで性格のせいで病気になったかのように述べるのは愛の無いことです。どんな病気にもいろいろな要因が関わっていて、ただ性格によってのみ、何かの病気が発症することはありえません。

ほかにも、それぞれの病気の項には、診察の時の接し方が書かれていて、特に摂食障害の子どもへの話し方などは巧みで、子どもの気持ちがよく考えぬかれています。 (p40,147)

子どもと歩む未来へのガイドブック

見知らぬ病気の世界に迷い込んだ子どもは、右も左も分からず、ただ呆然として立ち尽くすか、闇雲にさまよい歩くしかありません。頼りにできるのは、医師、先生、そしてなんといっても親だけです。

この子どもの心身症ガイドブックは未知なる世界に迷い込んでしまった子どもを持つ親の皆さんに、ぜひ手にとっていただきたいガイドブックです。また、冒頭で紹介したように、この本は小児慢性疲労症候群(CCFS)の家族にとっても、ひときわ優れたガイドブックです。

この本を手に子どもと力を合わせるなら、うっそうと視界を遮るさまざまな問題をかきわけ、再び楽しい日常生活へと、大切な子どもを連れて生還することができるでしょう。

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子どもの慢性疲労 / 起立性調節障害