トキソプラズマなどの寄生虫感染がもたらす脳の慢性疾患。CFSとも関係?

ェコの進化生物学者ヤロスラフ・フレグル(Jaroslav Flegr)氏の研究に基づき、トキソプラズマが統合失調症などの脳の障害を引き起こす可能性について報道されています。

トキソプラズマなどの寄生虫は慢性疲労症候群(特に感染後CFSと呼ばれるタイプ)の発症にも関わるとされています。

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トキソプラズマはどのように脳に影響を及ぼすか

記事によるとトキソプラズマが脳の障害と関連しているというデータが近年集まっているそうです。例えば以下のような報告について書かれています。

◆感染した人は反応時間が遅くなり、無気力になり、危険を恐れなくなる。
◆反応時間が遅くなる結果として、交通事故に遭う確率が2倍以上高まる
◆トキソプラズマは統合失調症の発症に関わるドーパミンを増加させる
◆トキソプラズマ感染は自殺率の上昇に関連している

これまでトキソプラズマが脳に影響を及ぼすメカニズムは明らかにされていませんでした。

しかし今回、ヤロスラフ・フレグルの研究によって、トキソプラズマが免疫細胞を乗っ取って体内を移動し、宿主の脳に到達していることが明らかになりました。

トキソプラズマは乗っ取った免疫細胞を移動させるために神経伝達物質のガンマ-アミノ酪酸(GABA)を作らせていました。統合失調症など多くの脳機能障害では、一般にGABAの機能の乱れが観察され、GABAの量が増えることは恐怖感や不安感の低下と関係しています。

統合失調症とトキソプラズマの関係については、 心を操る寄生生物 : 感情から文化・社会までに非常に詳しくまとめられています。とても興味深い内容なので、ぜひご一読ください。

感染がもたらす慢性疾患

CFS研究班のページにはこう書かれています。

CFSの中にはウイルス感染症だけでなくクラミジア、マイコプラズマ、コクシエラ、トキソプラズマ、カンジダなどの感染症がきっかけとなり発症した症例が少なからず存在する。

…CFS患者でみつかってくる多くの感染症は、種々のヘルペスウイルスの再活性化やマイコプラズマ、コクシエラ、トキソプラズマなどの慢性感染症であり、免疫力の低下が関連しているものと思われる。

感染と直接関係があるかどうかは不明ですが、慢性疲労症候群(CFS)でも、GABAなどの神経伝達物質の異常が報告されています。

また国内のウイルス感染に関する研究では、HHV-6やボルナ病ウイルスが脳の慢性疾患と関わっている可能性が示唆されています。

ウイルスや寄生虫が、どのような経路で脳に影響を及ぼしているかが明らかになれば、感染をきっかけに発症する脳の中枢神経機能異常としての慢性疲労症候群(CFS)のメカニズムがわかってくるかもしれません。

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