中国から飛来する大気汚染物質であるPM2.5が話題になっていますが、それよりも副流煙による受動喫煙のほうが危険だとするニュースが掲載されています。
「たばこ」PM2.5の塊 喫煙の居酒屋は北京並み :日本経済新聞
怖がるのなら、明らかにたばこの方だ
PM2.5とは、直径が2.5マイクロメートル以下の微粒子で、化石燃料や草木などが燃えたときに発生します。通常のマスクでは十分に効果がない微粒子である点が注目されています。
この記事によると、喫煙による煙もPM2.5のひとつで、フィルターを介せずに周囲に広がる副流煙に多いそうです。
それどころか、たばこの煙の方が問題は深刻で、大気汚染のPM2.5より有害性が高く、70種類近い発がん性物質が含まれています。「禁煙していない居酒屋だと、北京市の最悪時の濃度と変わらない」そうです。
記事には専門家の次のようなコメントが掲載されています。
「禁煙学会に所属する医師たちは2006年ごろからたばこのPM2.5問題を訴えてきた」
―禁煙学会理事長の作田学医師「屋外の汚染を怖がるのなら、喫煙可能な喫茶店や飲食店を怖がってほしい
様々な調査から、受動喫煙による死亡リスクはPM2.5の値よりもはるかに高い。怖がるのなら、明らかにたばこの方だ」
―産業医科大学の大和浩教授
この記事で説明されているのは、すべて受動喫煙の場合です。もし自分自身が喫煙するうなら、さらに破壊的な害が及ぶことになってしまいます。病気と闘っている人やその家族が、喫煙から離れていることは欠かせません。
またこの記事で触れられている二次的な受動喫煙ではなく、三次的な受動喫煙の害については以前のエントリで取り上げました。
江戸時代から伝えられる養生訓
最近読んだ本現代の養生訓―未病を治すの中で呼吸器科の川上雅彦先生はこう述べていました。
たばこは喫煙者本人のみならず、愛する家族や同僚、さらには子孫に害を及ぼします。
「たばこは嗜好品」なんてとんでもない、毒物です。
幸い、最近禁煙環境が広がっています。たばこと縁を切るチャンスです。 (p129)
この本によると、おどろくべきことに、早くも江戸時代の1713年、当代稀なる80代まで生きた医師の貝原益軒が、著書「養生訓」にこう記していたそうです。
たばこは毒性があり、煙をふくみて眩い倒れることあり。損多し。病をなすことあり。習えばくせになり、むさぼりて後には止め難し。初めよりふくまざるに如かず
益軒はお酒はほどほどにすれば良いといいつつも、喫煙には全く厳しい態度で臨んでいました。人一倍、健康に気を使っていた彼は、科学の進歩を待たずして、現代と同じ結論に到達したようです。
幸い、現代では、益軒の時代より、禁煙しようとする人たちへの支援設備やさまざまな手段が整っています。禁煙して1週間経つと体内からニコチンがなくなり、一ヶ月経つと呼吸器の問題が回復するというデータもあります。
悪い習慣を克服するのは簡単なことではないと思いますが、中国のPM2.5に大騒ぎするより、まずは身近な副流煙に対処したいところです。