慢性疲労症候群(ME/CFS)と診断されている人のうち27%が起立性調節障害の一形態である体位性頻脈症候群(POTS)を持っている、という英文ニュースが多数流れていました。
Third of ME cases 'wrongly diagnosed', experts say | Mail Online
Do doctors confuse ME with a heart problem? - Thorne and District Gazette
POT syndrome: when dizziness doesn’t go away - Health & wellness - The Boston Globe
ME: one third of patients 'wrongly diagnosed' – Telegraph
グーグル翻訳に頼って内容をまとめてみます。そのため正確でない部分もあるかと思いますがご容赦ください。できれば本文をご確認ください。文章はわからないので箇条書きで書きます。
慢性疲労の27%は実際にはPOTSに苦しんでいる
◆MEは英国で25万人が罹患している。
◆Julia Newton教授は慢性疲労に苦しんでいる人の27%は、実際にはPOTSに苦しんでいると述べている。
◆体位性頻脈症候群(POTS)は、直立時にめまい、不安、吐き気、動悸、偏頭痛、および他の悲惨な症状を感じる症候群である。
◆逆にPOTS患者の20%以上がCFSとも診断される。 歴史的にはPOTSの患者の多くがME/CFSと診断されてきた。
◆慢性疲労症候群は、神経系の障害として、2005年までにWHOに認識されている。現在の時点ではPOTSの人は慢性疲労症候群と同程度に苦しむが、同じような保護を受けていないことが問題視されている。
◆マスコミはPOTS患者がCFSと誤診されていたと報道しているが、この研究はそのような結果を示すものではない。むしろ、両者のオーバーラップを示すものである。
◆POTSだからといって特に治療法があるわけではない。 ニュートン教授は「我々の経験は、一部の患者が回復しないことを示唆している」と述べている。
◆POTS患者には若い高学歴の女性が多い。ホルモンの変化やウイルスや交通事故、頭部外傷、免疫細胞が正常な血管機能を混乱させる自己免疫状態、その他の健康上の問題によって引き起こされると考えている。 女性のほうが男性よりも5倍多い
◆β遮断薬による治療が効く場合もある。アルコール、カフェイン、砂糖と甘味料を避けることが大切。毎日約8 8オンスの水と2,000〜4,000ミリグラムの塩をとるように。圧迫ストッキングを身に着けていることにも役立つ。
座ったり、日中に長時間横になったりすることは身体が休まるように思えるが、長期的には身体が衰えるのでよくない。
現時点では、POTSのためのエビデンスに基づいた治療法、およびその基礎となる病因は完全には理解されていない
◆ME/CFSの有名人として、女優Martine Mccutcheon(マルティン・マカッチョン)が挙げられている 。彼女は7年間闘病し、失神発作があり、歩くことも、テレビのリモコンを持ち上げることも、パソコンの画面を見ることもできなかった。
POTSとCFSのオーバーラップ
まとめると、慢性疲労症候群(CFS)と体位性頻脈症候群(POTS:ポッツ)はオーバーラップしているという従来の見解に落ち着くもので、それほど新しい話ではないと思います。
以前にこういう研究がありました。
慢性疲労症候群と起立性頻脈症候群 : 腰痛、肩こりから慢性広範痛症、線維筋痛症へ ー中枢性過敏症候群ー 戸田克広
47人のPOTSのうち、93%がひどい疲労 を訴え、64%がCFSの基準を満たしたそうです。
起立性調節障害ピアネットAliceのトピックスまとめに書いてあった、2013/3/30(土)の北山真次先生のまとめでも
②体位性頻脈症候群:起立中に血圧低下を伴わず、著しい心拍増加を認める
脈が速くなるので凄く疲れやすい。立っているだけでヘロヘロ。頭痛も起こりやすいが、立ちくらみは少ない。
とありました。
注意はなければならないのは、日本のOD研究におけるPOTSと、海外の研究によるPOTSとは、多少意味合いが異なっていることです。
小児・若年者の起立性頭痛と脳脊髄液減少症によると、海外ではPOTSは病因の違いから、おもに3つに分類されています。(p64-67)
■partial dysautonomic (PD) type…ウイルス感染などに続発する自己免疫性の自律神経障害(血管運動障害)。
■hyperadrenergic type…さまざまな原因でノルアドレナリンの作用が過剰になる病態。
■deconditioned type…長期臥床など廃用症候群(デコンディショニング)の起立不耐症。
このうち、最も頻度が高いのは、ウイルス感染後のPD typeのPOTSで、ある日を境に急激に発症し、30代前後の女性に多いとされています。
今回の英文ニュースで扱われていたPOTSは、日本でなじみのある起立性調節障害のサブタイプの1つとしてのPOTSではなく、欧米で研究されているPD typeのPOTSなのでしょう。
今のところ、POTSとCFSは、どちらの診断名がつくにしても、格別、有効な治療法はないというのが残念なところです。
ただし、ニュースでも言われていましたが、CFSのほうが、WHOに認められている分、社会保障を少しは受けやすいのかも?しれません。
この分野の研究を行っているのは、日本では三羽先生だと思います。慢性疲労症候群と循環器異常の関連について多くの論文を出しています。
三羽邦久 医師,【慢性疲労症候群、循環器関連疾患をはじめとした内科疾患】,『慢性疲労症候群』,ミワ内科クリニック-院長(みわくにひさ,) | 名医を探すドクターズガイド
診療内容|ミワ内科クリニック|内科・循環器内科|富山駅前|病院・医院|慢性疲労症候群・小心症候群
結局のところCFSもPOTSも、どちらの病名が正しいかというより、体位性頻脈のせいで疲労している場合もあれば、別の要因によるCFSで自律神経が乱れ、体位性頻脈が生じている場合もあり、互いに関係しあっている病態ではないかと思います。