線維筋痛症の9割に顎関節症―交感神経を緊張させる歯列接触癖(TCH)とは


関節症の原因として有力視されているという歯列接触癖(TCH)についてのニュースがありました。TCHを治療して顎関節症がよくなれば、さまざまな症状がなくなる可能性があるそうです。しかもそれは自宅で治療ですることができます。

どうすれば安全安心:歯列接触癖(TCH)とは 顎、歯への負担でトラブル - 毎日新聞 はてなブックマーク - どうすれば安全安心:歯列接触癖(TCH)とは 顎、歯への負担でトラブル - 毎日新聞

顎関節症とは

「口を大きく開けられない」「顎の周りが痛い」「口を開けると顎が鳴る」が主な症状で、成人の2人に1人が一生に一度は経験するそうです。

自然に治る人が多いですが、長期化して、うつ病などの精神疾患や、原因不明の肩こり、頭痛、腰痛などの慢性疼痛につながることもあるといいます。

こちらのニュースによると、顎関節症にはさまざまなタイプがあり、タイプごとに適した治療法があるとされています。

顎の痛みには手術、マウスピースが有効?顎関節症の治療法について解説 - MEDLEYニュース

顎関節症では、その障害像(病態)によって、以下のように大きく5つの型に分けられています。

  • 咀嚼筋痛障害(I型):嚙み砕く時に必要な筋肉(咀嚼筋)の障害が主である場合
  • 顎関節痛障害(II型):靭帯や関節の袋の病変が見られる場合
  • 顎関節円板障害(III型):関節円板の障害がある場合
    • a:復位性、b:非復位性
  • 変形性顎関節症(IV型):骨の変形がある場合
  • I型からIV型では説明できないもの(V型)

それぞれの病型に合った治療法があります

線維筋痛症の9割に顎関節症

顎関節症は全身の痛みを伴う線維筋痛症に合併することが多いことも知られています。

以下の2010年のニュースでは、線維筋痛症の9割(2017年の記事では7割とされている)に顎関節症が併発しているとされていて、熊本市水道町のスガ歯科医院の菅健一院長の取り組みが紹介されていました。

医療QQ - 線維筋痛症 原因不明で全身に激しい痛み 9割に顎関節症 - 医療記事 - 熊本日日新聞社 (インターネットアーカイブによるバックアップ)

同歯科医院では、線維筋痛症と診断され、紹介されてきた患者の顎関節症治療を実施。かみ合わせ是正のためのスプリント装着、歯列矯正などに加え、痛みによるうつ症状を改善するためのカウンセリング、認知行動療法、痛みの悪循環を断つための微弱電流治療、リンパマッサージ、トリガーポイント(痛みの引き金部位)への注射、漢方、鍼灸[しんきゅう]などを併用している。統合医療が欠かせないためすべて自由診療で行う。

 熊本市の55歳の女性患者は3年前、同市内の耳鼻咽喉[いんこう]科の紹介で訪れた。来院時は「全身にガラス片が突き刺さるような」痛みがあり、食事も満足に取れず寝たきりに近かった。治療の結果、全身の痛みもほとんど治まり、山ほど飲んでいた抗てんかん薬、抗リウマチ薬、抗うつ薬、睡眠薬などの薬もすべて切れた。今は元気に日常生活を送っている。

 他の患者たちも、顎関節症や口腔顔面痛などの症状が取れると、全身に及ぶ痛みや、不眠、うつなどの随伴症状もほとんど改善されたという。「線維筋痛症のすべてが顎関節症によって起こるとは言えないが、顎関節症や口腔顔面痛の治療によってかなりの患者さんで全身症状も改善していきます」と菅院長。

 顎関節症の原因は、精神的ストレスなどによる歯ぎしり、かみしめ、咬合不全、ほおづえ、うつぶせ寝などによる咀嚼[そしゃく]筋への過度の負荷。これが長引くと筋に微細な損傷が起こる。損傷を繰り返すうちに、毛細血管が収縮して筋が血行不良になり老廃物がたまる。やがて筋の組織学的変化が起こり、筋の発痛物質が放出され痛みが発生する。痛みをかばう動作がますます筋の柔軟性を失わせ、さらなる筋の損傷を招くという。

また、2017年にも、同歯科医院の線維筋痛症に関する継続的な取り組みが紹介されています。

線維筋痛症 かみ合わせ治療で改善も - 熊本日日新聞

 「東京で線維筋痛症と診断された23歳女性は当院を受診した際、口を開け閉めすると音がする、時々かみづらい、右半身が痛いと訴えていました。上下の歯が閉じないオープンバイト(開咬[かいこう])の状態でした。かみ合わない部分に仮歯を入れたほか、顎の筋肉の緊張を取り、全身を整体やリンパマッサージなどで緩めていくと、半年程度で症状が改善しました」

 「県内の57歳女性は顎関節症を発症した後、痛みが首や肩、背中、腰へ広がり、手もしびれ、箸も持てず、寝たきりとなりました。線維筋痛症と診断され、60カ所も注射をするような治療を東京で受けていました。当院で顎関節症の治療、漢方やYNSA鍼[はり]を開始、孫を抱き締められるようになりたいと目標を立て、半年ほどで日常生活に復帰できました」

単に線維筋痛症の症状のひとつに顎関節症がある、というだけでなく、強いストレスから生じる歯ぎしりや食いしばりをきっかけとして、線維筋痛症の慢性疼痛へと発展していってしまう例もあるようです。

 -なぜ痛みが全身に広がっていくのでしょうか。

 「筋肉を覆っている筋膜を通じて、全身の筋肉は途切れることなく線路のようにつながっています。アナトミートレインと呼ばれ、身体のどこかに不都合が起こると、その影響が全身に広がると考えられています」

口が開けにくい、顎を動かすと音がするなど、顎関節症の症状が見られたら、全身の症状に発展する前に、顎関節症の専門医を受診するよう勧められています。

歯列接触癖(TCH)とは

東京医科歯科大歯学部付属病院で顎関節治療部長を務める木野孔司先生は、2000年ごろから東京慈恵会医科大と共同で、顎関節症に影響する要因を調べたそうです。

かみ合わせ、頬づえ、歯ぎしりなどさまざまな要因を探った結果、統計学的に関係があると言えるのは歯列接触癖(TCH)だけでした。顎関節症の患者の約8割にこの癖があったそうです。

この歯列接触癖(TCH)とは、上下の一部、または全部の歯が、日常的に接触してしまっている状態を言うそうです。

歯の接触によって顎に力が加わり続けると、血液循環が悪くなり、摩擦抵抗が増大して、顎関節症になりやすくなります。

TCHが起こる原因は、ストレスなどで歯を食いしばるくせが付くことです。特に仕事でパソコンを使う人の発症率は、そうでない人の2・2倍に達していたそうです。またうつ病などの病気によるストレスが原因となることもあります。

TCHがあると、歯のかぶせ物がすぐに取れたり、歯周病がなかなか治らなかったり、原因不明の歯の痛みが起こったりもします。顎関節症としてひどくなると、食事のために口を開けようとすると激痛が走るようにもなります。

TCHの改善法

記事によるとTCHの改善には3つのステップが役立ちます。

(1)こめかみと顎に指を当て、上下の歯を合わせた時に筋肉が収縮し負荷がかかっていることをしっかり認識する。

(2)日常生活で目につく場所10か所以上に「歯を離す」「顎の力を抜く」「リラックス」といったメモを張り、それらを目にする度に力を抜く。

(3)意識せずに歯が離れるようになれば「修正」は成功。3カ月程度かかる

こんな方法で本当に改善できるのか?と思ってしまいますが、睡眠障害の専門家の三島和夫先生が、他の方法で顎関節症が改善しなかった患者に効果があったことを書いておられました。

第69回 歯ぎしり治療の成功例“マーキング作戦” | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

 この“マーキング作戦”、当初患者さんは半信半疑であまり期待をしていなかったようだが、意識的な筋弛緩を続けているうちに、徐々に歯噛みによる顎の痛みが楽になってきたとのこと。

その成功体験が良かったのだろう。日中の心身の緊張感が緩和され、マークを見た時に顎に力が入っていないことも多いことに気づいた。こうなれば後は好循環である。

いろいろな症状がなくなる!

TCHを治療すればいろいろな症状がなくなるそうです。

「TCHがなくなったら腰痛、頭痛、肩こりまで治ったと言う患者さんもいます。

歯が接触していると、体が活動する時に働く交感神経が常にオンになって緊張状態が続き、それが腰痛や肩こり、頭痛などの原因になると考えられます。

自律神経の乱れは不眠やうつ病、胃腸の病気にもつながりやすいので要注意です」。

TCHについて詳しい情報は、こちらのサイトに載せられています。

次世代の顎関節症治療を考える会 木野孔司 顎関節症 サイトウ歯科 東京医科歯科大学 TCH はてなブックマーク - 次世代の顎関節症治療を考える会 木野孔司 顎関節症 サイトウ歯科 東京医科歯科大学 TCH

また、顎関節症の痛みの軽減に水溶性チタン含浸テープ(ファイテンパワーテープは)が効果があるというニュースもありました。東京医科歯科大学大学院の小川隆広先生らによる予備試験が行われたそうです。

「顎関節症による疼痛に対する水溶性チタン含浸テープの効果」として 東京医科歯科大学大学院が行った臨床予備試験が論文掲載されました。 - MSN産経ニュース

わたしも一時期、顎関節症の痛みがあって、歯医者で口を開けていられなかったり、すぐ疲れてしまって食べられなかったりしたのを覚えています。

幸い、いつの間にか症状は和らいだのですが、削ったり矯正したりする治療に比べて、こうしたテープによる治療があったら試してみたかもしれないと思いました。

以前のニュースでは、顎関節症と逆流性食道炎の関係についても報道されていたので合わせてご覧ください。

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