起立性低血圧などを伴う「自己免疫性自律神経調節障害」(AAG)は免疫治療で改善


立病院機構長崎川棚医療センターによる、自己免疫性の自律神経失調症に関するニュースがありました。

これまで診断に至らなかった自律神経失調の障害の中に、自己免疫が関係しているものがあり、免疫治療で改善するというような内容です。

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長崎川棚医療センター神経内科・臨床研究部のフェイスブックページがこちらにあります。

自己免疫性自律神経調節障害とは?

自己免疫性自律神経調節障害(AAG:autoimmune autonomic ganglionopathy)は、今まで、原因不明と目されてきた自律神経失調症状の一部に自己抗体が見られ、免疫が関係していることに注目した、新しい疾患概念のようです。

医学的には、一次性自律神経性ニューロパチー(末梢神経障害)に属していて、急性汎自律神経異常症(APD)と称されてきた病態のようですが、症状は急性、慢性どちらもあるそうです。

慢性型とされている症例のなかには発症から10年以上経過しているケースや、高齢発症しているケースもあるといいます。

症状は、起立性低血圧が多く、POTS(体位性頻脈症候群)と診断されていた例もあるそうです。

そのほかに動悸・失神、口腔内の乾燥、発汗の障害や暑がり、排尿障害、便秘や下痢のような腸管運動障害、無月経のような性機能障害など、症状は多彩であるとされています。

頑固な便秘や起立性低血圧のみという症例や、中枢神経症状(物忘れ、精神症状など)を呈していた症例もあったそうで、他の病気とされている率も高いようです。

診断に際して、AAGでは、瞳孔の光の反射に対する、虹彩の大きさの変化に特徴があり、光で瞳孔が収縮するものの、疲労現象のために散大してくるということが指摘されているそうです。

またAAGの母親から新生児AAGが生まれることがあり、家族性があることも示唆されています。

抗gAChR抗体が特徴

自己免疫性自律神経調節障害(AAG)が単なる自律神経失調症と違うのは「抗gAChR抗体」という免疫物質が陽性であることにあるようです。gAChR(ganglionic acetylcholine receptor)とは、自律神経節アセチルコリン受容体のことです。

AAGの原因は、その抗体などによる「自己免疫機序を基盤に発症する自律神経節の炎症」と推測されています。

「抗gAChR抗体」は、自律神経系の交感神経・副交感神経の両方の神経節の伝達を阻害して、それぞれの自律神経障害をきたすことが、海外からの基礎研究でわかっているそうです。

その始まりは、1998年にVerninoらが、自律神経節におけるアセチルコリン受容体と結合する自己抗体を患者の血清中に発見したことでした。

日本では、抗gAChR抗体の検査が保険収載されておらず、検査ができないことにより見逃されていました。日本の患者数は未だ不明だといいます。

国立病院機構長崎川棚医療センターは、「抗gAChR抗体」を測定できる検査体制を日本で初めて確立しているところで、全国からの測定依頼に応えているそうです。

免疫治療が有効

抗gAChR抗体が陽性の症例では、免疫治療が功を奏するそうです。

自己免疫介在性の自律神経障害を疑った場合にはまず免疫治療として、IVIg,ステロイドパルス,血液浄化治療などを考慮するといいます。

これらをfirst-line治療と位置づけ,その後に免疫抑制剤などをもちいた維持治療を続ける、複合的免疫治療の有効性が最近は報告されているそうです。

それぞれの治療には下記のような特徴があります。

■IVIg
…免疫グロブリン大量療法を意味する。Fc活性をもつIgGを静脈投与する治療法。ヒトの血液(血漿)から精製した免疫グロブリンという血液製剤を用いる。

■ステロイドパルス
…3日間、ふつうの量の10倍以上のステロイド薬を点滴する治療法。採血した血液中から悪玉コレステロール、ウィルスや、有毒物質などを分離・除去して体内に戻す。

■血液浄化治療
…血液透析、血漿交換、吸着療法などの体外循環治療。

AAGという疾患概念の益についてはこう書かれています。

AAGについてはこれまでよく病態のわからなかった、診断に到達できなかった自律神経系疾患の診断にこの自己抗体の測定が貢献しています。

また、特に本症は免疫治療により自律神経障害が改善することから治療につながる可能性が考えられます。

AAGの具体例については、ネット上を調べてみてもほとんど見つかりませんでした。

目に止まった範囲では、激しい嘔吐を繰り返す摂食障害と思われた9歳の女の子や、 慢性偽性腸閉塞症(CIP)で手術を繰り返していた女性、低血圧で倒れそうになり、ほかにも自律神経症状がいろいろと出ている女性の話などがありました。

治療の効果が現れる場合とそうでない場合がやはり存在していて、原因の一端がわかったからといってすぐに治るとは限らないようです。

どれくらい身近な病気なのかということは、比較的新しい疾患概念であり、実態調査も行われていないので、現時点ではわからないようです。

自己免疫性疲労症候群(AIFS)との関係は?

自己抗体によって、自律神経異常が起こるという話は、日本医科大学で研究されていた、自己免疫性疲労症候群(AIFS)を思い起こさせます。

自己免疫性疲労症候群と周辺疾患│日本医科大学医学会雑誌第1巻第4号 - 001040200.pdf 

AIFSは、慢性疲労症候群(CFS)との関わりが指摘されていて、抗核抗体(ANA)持続陽性を示す病態で、約40%から抗Sa抗体が検出されるそうです。CFSとも診断できる場合は80%が陽性になるといいます。

AIFSはしばしば家族性であり、子どもの慢性疲労症候群に深く関係していると考えられています。線維筋痛症(FM)を合併する例もあるそうです。

こちらもすべての例で効果があるわけではないとはいえ、少量ステロイド療法などの免疫治療で良くなる場合があるそうです。

上述の免疫グロブリン大量療法は慢性疲労症候群でも一部で行われていて、効果がある患者もいましたが、有効性が薄く高価であるなどの理由によって最近は行われていない、というような話もどこかで見た記憶があります。

AAGとAIFSに関係があるのか定かではありませんが、自己免疫の働きが自律神経症状を引き起こしているという観点では似ているように思います。

起立性調節障害などの自律神経失調症や、慢性疲労症候群と診断されている場合でも、背後に自己免疫の問題がある場合が存在すると思われます。

まだ検査が一般的でないために、それらの病態は見逃されているようですが、早く研究が進んで、適切な治療ができるようになってほしいところです。

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子どもの慢性疲労 / 起立性調節障害