化学物質過敏症に遺伝子多型が関与、「気持ちの問題」ではない


農医誌63巻4号の「遺伝子多型性と農薬の慢性影響」(永美大志)の中で、化学物質過敏症のことが触れられていました。2014年11月の資料となっています。

遺伝子多型性と農薬の慢性影響 - _pdf はてなブックマーク - 遺伝子多型性と農薬の慢性影響 - _pdf

がん、小児がん、パーキンソン病、出生障害、発達障害、化学物質過敏症などに関して、発症に農薬の影響と遺伝子多型の相互作用が発見されたという内容です。

化学物質過敏症(CS)、および線維筋痛症(FM)、慢性疲労症候群(ここではFCS表記)については、以下のように書かれていました。

化学物質過敏症については,遺伝子多型との関係を認める報告があった。表5に,疫学報告の主な結果をまとめた。

McKeown-Eyssen et al.30)は,カナダにおいて白人女性の化学物質過敏症について症例対照研究を行ない,CYP,NAT,PON1の遺伝子多型について関係を認め,CYPとNATの組み合わせによっては10以上のリスク比を認めた。

Cassamo et al.31)は化学物質過敏症,慢性疲労症候群,線維筋痛症の症例対照研究を行ない,いくつかのCYP多型において,症例と対照とで存在割合が異なっていたとした。

化学物質過敏症は,精神的な因子が重視されることがしばしばであるが,遺伝子多型性と化学物質曝露の交互作用の観点から,疫学的に検討を進めることが望まれる。

前者のカナダの研究は203人の白人のMCS患者と162人の健康群を比較したもの、後者のイタリアの研究は156人のMCS患者、80人のFM/FCS患者、113人の健康群を比較した研究であり、どちらも規模が十分で信頼できそうです。

引用文中の遺伝子の名称については、以下のように解説されています。

CYP…シトクロームP450系。化学物質の酸化,加水分解,還元が行なわれる。

NAT…N―アセチル転移酵素。グルタチオン、酢酸などの小さな分子の水溶性物質を添加して、腎臓や肝臓から排出しやすい水溶性物質とする。

PON…パラオキソナーゼ。有機リン殺虫剤のリン酸エステルの加水分解を担う。

化学物質過敏症は精神的なもの、気のせいとされることがありますが、遺伝子多型について細かく見ていくと、ある種の化学物質に暴露した際、それを処理する遺伝子が弱いのかもしれません。

肝臓や腎臓における化学物質の処理に関わる遺伝子が多数関係しているとすると、単なる脳の問題でもなく、全身的なもののようにも思えます。

慢性疲労症候群や線維筋痛症についての説明は乏しく、どれくらい関係があるのかはわかりませんが、化学物質への曝露がきっかけとなって発症する人もいるそうですから、化学物質関連の遺伝子多型が関わっている可能性もありそうです。

遺伝子レベルの研究が進むことで、これまで原因不明の精神的な訴えに過ぎないと考えられてきたこれらの病気のメカニズムが明らかになり、しっかりした立場が与えられることを期待したいと思います。

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