解離しやすい人の変な夢ー夢の中で夢を見る,リアルな夢,金縛り,体外離脱,悪夢の治療法など


夢の中に自分がいる。私はこの夢の世界にいるが、夢の中にいることに気づいていない。

次の段階にいくと、「これは夢か」みたいな感じで、その夢の外側に自分がいる。その夢に登場していながら、これは夢かなと思っている。

…さらにうしろに引いていくと、夢を見ていると思っていない最初の夢の中の私と夢を見ているとわかっている私の次に「夢の中で夢を見ているな」と感じている私が現れる。(p159)

れは、解離の専門家、柴山雅俊先生の、解離の構造―私の変容と“むすび”の治療論という本に載せられている、ある解離性障害の女性が語った、子ども時代からの夢体験です。

解離しやすい人は、このような謎めいた独特な夢を頻繁に見るといいます。もちろんオカルトなどとは関係のない医学的な現象です。

じつは今朝、夢の中で夢を見ている自分が夢を見ている夢というややこしい夢を見て、「ああ、こういう夢はときどき見るなぁ」と感じました。そして、解離性障害について学んだ今では、これが解離に関係したものだとピンときたのでした。

せっかくなのでこの機会に、解離性障害のことがよくわかる本 影の気配におびえる病 (健康ライブラリーイラスト版)などを参考に、解離しやすい人はどんな変な夢を見るのか、なぜそうなるのか、ということを記事にしておこうと思いました。

また奇妙な夢の中でも、とりわけ生活の質に影響を与える悪夢を治療する薬物療法についても調べた範囲でまとめておきます。

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解離しやすい人の夢の特徴

解離性障害のことがよくわかる本 影の気配におびえる病 (健康ライブラリーイラスト版)という本やその他の資料によると、解離しやすい人は、次のような夢をよく見るそうです。(p6-8)

■夢の中で夢を見る (夢中夢)
■夢から覚めたと思ったらそれもまた夢
■夢の中で離れたところから自分の姿を見る (夢中自己像視)
■夢の中で傷つけられたり殺されたりする
■夢の中で誰かに追いかけられる (被追跡夢)
■夢の中でせっぱつまって高いところから飛び降りる (墜落夢)
■夢の中で空を飛んだり宙に浮いたりする (夢中飛行)
■夢の中で誰かに見られていると感じる (被注察夢)
■同じ夢を反復して見る
■夢の続きを見る
■夢を見ている自分を見ている夢 (夢見自己像視)
■スクリーンに映った映像のような夢を見る
■いくつかの夢を同時並行して見る (同時並行夢)
■触覚や聴覚などリアルでありありとした感覚の夢を見る
■金縛りに遭う
■体外離脱する

こうした夢は、よく言われる明晰夢(lucid dreaming)の訓練などで身につけたものではなく、子どものころから自然に見ているものです。

また金縛りや体外離脱はオカルト的なものではなく、科学的な根拠のある脳の現象です。

解離の構造―私の変容と“むすび”の治療論によると、専門的には少し難しいですが、別の言い方で3つに分類されるようです。(p157)

■表象幻視型夢体験
…夢の中で映画のスクリーンやテレビを観ているように夢を見る

■離隔型夢体験
…夢の中で自分の姿を見たり(夢中自己像視)、夢を見ている自分を見る(夢見自己像視)。

■過敏型夢体験
リアルな夢、被追跡夢、墜落夢、被殺害夢、被注察夢。背後にいるのは誰だかわからないが、それを自分だと感じることもある。

この表象幻視、離隔、過敏というのは、それぞれ解離性障害の症状の名前です。表象幻視は、目の前にありありと映像が見えること、離隔は現実感がなくなり、自分が分離したように感じられること、過敏は気配察知など周囲世界に敏感になることを指します。

こうした解離性障害の症状は、日常の現実世界で起こるのですが、それが夢世界で似たような現象として生じているため、その名前が付けられているようです。

このうち、いくつかのものを調べてみましょう。

▼解離とは何か
解離とは、心を守る働きを担う防衛機制のひとつです。普通の人も日常的に解離現象を経験していますが、特に機能不全家庭で育ったり、虐待・犯罪の被害に遭ったりした人は病的な解離を示すことがあります。詳しくは以下の記事をご覧ください。

宮沢賢治の創造性の源? 「解離性障害―『うしろに誰かいる』の精神病理」
「後ろに誰かいる」「現実感がない」「いつも空想している」。こうした心の働きは「解離」と呼ばれています。『解離性障害―「うしろに誰かいる」の精神病理 』という本にもとづいて、解離と創

「夢の中で夢を見る」 起きたと思ったらそれもまた夢

まず最初に挙げた、夢の中で夢を見る「夢中夢」という体験です。非常に複雑なもので、何重もの入れ子構造になっていることがあります。

<眠り>をめぐるミステリー―睡眠の不思議から脳を読み解く (NHK出版新書)では、その例としてある映画が紹介されています。

最近では、2010年公開のクリストファー・ノーラン監督の大ヒット作『インセプション』という映画が、夢をテーマにした作品だった(作品の詳細は第6章参照)。

この作品の中では登場人物は、夢の中でさらに夢を見る、つまり夢に夢を重ねた「多階層構造」の夢を見る。(p87)

冒頭で少し触れた、今朝わたしが見た夢もこれに似ていました。

夢の中で外に出かけて、面白い出来事に遭遇しました。家に帰って、そのことを親に話そうとすると、こんな面白い話は夢だったに違いないと思いました。

すると、ベッドの上で目が覚めました。やはり夢だったのかと思いましたが、外出したときの服装のままだったので、家に帰ってすぐ寝てしまっただけかもしれないと思いました。面白い話はやっぱり現実のことだったのでしょうか。

すると家の前に停めた車の中で目が覚めました。車の外を見ると、家にお客さんが来るところだったので、あわてて起きてその人たちをもてなしました。ようやく起きたので変な夢を見たものだと思いました。

しかし親に話そうとしたところで、現実の部屋のベッドの上で寝ている自分に気づきました。これもまた夢だったのです。しかし金縛り状態で起きられません。

物音がして、部屋のすぐ外に親がいることがわかったので、声を上げて助けを求めましたが、親は気づいてくれません。悲痛な気持ちになって大声で叫びました。するとついに目が覚めました。部屋の外に親はいませんでした。それも夢だったのです。

起きてしばらくはクラクラして、現実と夢との区別がつきませんでした。まだ夢を見ているのかもしれないという思いが、5分くらい抜けませんでした。

わたしはいったい何重の夢を見ていたのだろう、と思いますが、この夢には、夢の中で夢を見ることのほかに、現実と区別がつかないリアルな夢、金縛り、気配察知などいくつかの解離的な特徴が出ています。

夢の中で夢を見る、という体験は、現実と夢の境界が曖昧になる解離の特徴を反映しているようです。

「夢の中に自分がいる」 スクリーンを遠くから見ている

解離の構造―私の変容と“むすび”の治療論にはこんな夢の経験談があります。

誰かから追いかけられている自分がいるけど、追いかけられている自分を見ている私がいる。近いところから見ている時もあるが、映画のカットを見ている感じがする。(p159)

解離性障害のことがよくわかる本 影の気配におびえる病 (健康ライブラリーイラスト版)によると、解離しやすい人は、自分が第三者として登場する夢をよく見るそうです。

健康な人も10-20%が夢の中で自分を見る夢中自己像視を経験します。しかし解離しやすい人はそれを毎日のように見るのです。(p59)

そのような人は、夢の中に登場する自分の姿を上や後ろから第三者視点で見ていることが多いそうです。眠って夢を見ている自分の姿を見ることもあります。

自分が何かに追いかけられる夢(被追跡夢)や、傷つけられたり殺されたりする夢、せっぱつまって飛び降りたり(墜落夢)、空を飛んだりする夢(夢中飛行)を見るといいます。

わたしは追いかけられる夢、殺される夢はほんの数回あったようにも思いますが、覚えているのは、だれかを殺してしまい、呆然としているところから始まった、裁判にかけられる夢です。そのときは、妹が弁護してくれて、その話を聞いているうちに、自分は実際には人を殺したわけではなく、誰かにはめられたのだ、ということがわかるというサスペンスタッチの夢でした。

また切羽詰まって飛び降りたり、空をとんだりする夢は、月一ペースくらいで割と頻繁にあり、自由自在にビルの上などに飛んで行けて、とても気持ちいいものです。

解離性障害は、心が二つに分かれてしまう病気です。多くの場合、現実にいる自分と、現実を見ている自分とに分離してしまいます。

そのため、現実にいる自分に現実感がなくなる「離人症」が生じたり、現実を見ている自分からの視線を感じる「気配過敏」になったりします。

そのような「私の二重化」が夢の中でも起こっているために、自分を客観視していたり、追いかけられる自分と追いかける自分に意識が分裂したりするようです。空を飛ぶ夢は、現実を見ている自分の側の浮遊感を反映したものでしょう。

「リアルな夢」 鮮やかな色、音楽、触感も

解離性障害―「うしろに誰かいる」の精神病理 (ちくま新書)にはこんなことが書いてあります。

私などは夢の記憶は曖昧で訳が分からないことが多いのだが、解離の人たちは、視覚はいうまでもなく、聴覚、触覚など五感のすべてが、こうして覚醒しているときと何ら変わりがないという。

先の今日子は、「夢は現実よりもその画素が多い。あまりに鮮やかで綺麗で印象的。それに対して現実はあまりにぼんやりとしている。夢の方がずっと現実的なのです」と述べている。(p61)

解離しやすい人は、現実と区別がつかないようなリアルな夢を見るそうです。特に内容があまりに日常的なので、現実と混同してしまうことがあるといいます。

わたしの場合は、先に挙げた今朝の夢は、かなり日常と混乱するような夢でした。

夢の中で、虹色の夕焼け、とでもいえばよいのか、現実にはありえないような美しい色合いの景色を見て、必死にスケッチしようとしたことがあります。

夢の中で名曲とも思える音楽が思い浮かんで、ずっと鳴り響いていて、起きたあともしばらく覚えていたこともしばしばあります。

うとうとして、寝ているか起きているかの はざまにいるようなときに、夢の内容を自由にコントロールして、見たい夢を見ることができる、という時もときどきあります。

解離しやすい人は、子どものころから、現実から離れて空想の中にのめり込みやすい性質、「空想傾向」(fantasy-proneness)を持っていることがよくあります。

たとえば、解離の専門家、岡野憲一郎先生による、わかりやすい「解離性障害」入門には、学校でシャーロック・ホームズを読んでいると、現実にベーカー街にいると思えるほど没頭してしまい、ふと気づいたら、なぜ自分が学校にいるのかわからず混乱した、という学生の話が出ています。(p4-5)

そのような空想世界への のめりこみやすさが夢にも反映されるのでしょう。

リアルな夢は、生理学的には、眠っているのに、まだ大脳皮質が起きている状態であることを意味しています。

そのため、寝入りばなや、寝起きのうとうとしているときなど、半分寝て半分起きているような状態で多いと考えられています。

「金縛り」 悪夢や呼吸困難も

金縛りはオカルトと結び付けられることが多いですが、医学の世界ではありふれた睡眠現象、「睡眠麻痺」として知られています。

本来、レム睡眠の最中は、夢の中で動いたとき、そのまま手足が同期して動いてしまわないよう、脳が骨格筋を脱力させるようになっています。そうしないと、夢の中でボールを蹴ったら、現実でも部屋の壁を蹴ってしまいます。

この骨格筋の脱力がうまくいかず、本当に夢の中のように手足を振り回してしまう病気はレム睡眠行動障害と言われています。

いっぽう、金縛りでは、骨格筋の脱力はうまくいっているのですが、普通なら無意識のはずのレム睡眠中に、たまたま目が覚めてしまいます。

すると、目を覚めているのに、体はレム睡眠の脱力中なので、目以外動かすことができません。これが金縛りこと「睡眠麻痺」の真実です。

睡眠麻痺は、昼寝や断眠、不規則な睡眠習慣で睡眠覚醒リズムが乱れていると生じやすくなります。特にナルコレプシーという病気で頻繁に生じます。

この睡眠麻痺の最中には、だれかが近くにいるような気配や幻視を伴う、入眠時幻覚やリアルな夢が生じることもあります。本来夢を見るレム睡眠の最中なので当然です。

また、息苦しさや重さを感じることもあります。呼吸筋は動いていますが、自分の意思で呼吸することはできないからです。手足を動かそうと必死になっても動かせないので、疲れ果てて恐怖と疲労に襲われます。

わかりやすい「解離性障害」入門では、睡眠麻痺は、「誰にでも起こりうるものであり、生理的に生じる正常な解離」と説明されています。(p13)

わたしの場合、毎日のように金縛りに遭っていて、幻覚もときどきありました。睡眠麻痺についての知識を得るまでは、恐ろしく、自分はどうなってしまったのだろうと思っていました。

無理やり手足を動かそうとすると、そのままベッドが砂のように崩れて、体が落ちていくリアルな夢を伴うこともありました。

睡眠麻痺について知って、目を動かすなど落ち着いて対処すればいい、ということがわかってからは、脅威ではなくなりましたが、金縛りの最中にそのことを思い出すのには、なかなか時間を要したと思います。

今朝のわたしの異様な夢も、金縛りと、その最中の気配が伴っていましたが、以前よりは軽くなったのか、夢の中で叫んでいるうちに解けました。

しかしながら、睡眠麻痺は、睡眠状態が良くないことを示唆しているので、起きたあとは泥のように疲れていることが多いです。

▼トラウマ後遺症としての頻繁な睡眠麻痺
その後、改めてこの問題を考えるうちに、睡眠麻痺による頻回の覚醒は、トラウマ後遺症とみなせるかもしれないことがわかりました。

トラウマ反応にはPTSDと解離があります。PTSDは交感神経系による「闘争・逃走反応」で、解離は不動系による「固まり・麻痺反応」です。

PTSDの患者は、しばしば悪夢にうなされて激しい恐怖とともに目覚めます。これは、記憶を処理するレム睡眠の最中に、トラウマ記憶が再生され、それと結びついたトラウマ経験の瞬間のからだの反応が再現されるからです。

結果、レム睡眠は中断され、あたかも今まさにトラウマの瞬間を再体験したかのように、激しい「闘争・逃走反応」とともに目覚めます。

他方、解離の患者は、やはりしばしば悪夢にうなされます。こちらも記憶を処理するレム睡眠の最中に、トラウマ記憶が再生されるところまでは同じです。しかしトラウマ記憶と結びついているからだの反応が異なっています。

解離の人たちは、過去に慢性的なトラウマを経験していることが多く、「闘争・逃走反応」ではなく、「固まり・麻痺反応」で対処しています。

すると、レム睡眠が中断されて目覚めるとき、あたかも今まさにトラウマの瞬間を再体験したかのようにからだが反応していますが、そのとき生じるのは、PTSDの人たちとは異なり、「固まり・麻痺反応」つまり、金縛り状態なのです。

PTSDの人が悪夢を見て汗びっしょりで目覚めるのと、解離の人が悪夢を見て金縛り状態で目覚めるのは、どちらもストレス反応が違うだけの同じ現象だということになります。

確証があるわけではありませんが、このように考えれば、解離性障害の人が頻繁に睡眠麻痺に陥る理由が説明できます。

PTSDの「闘争・逃走反応」と解離の「固まり・麻痺反応」の違いについては以下の記事をご覧ください。

PTSDと解離の11の違い―実は脳科学的には正反対のトラウマ反応だった
脳科学的には正反対の反応とされるPTSDと解離。両者の違いと共通点を「愛着」という観点から考え、ADHDや境界性パーソナリティ障害とも密接に関連する解離やPTSDの正体を明らかにし
だから君は慢性疲労に閉じ込められた―生きるエネルギーを枯渇させる解離そして不動状態
解離と慢性疲労は深く関係していて、不動系という生物学的メカニズムによって引き起こされているという点を、不登校や小児慢性疲労症候群の研究と比較しながら分析してみました。

「体外離脱」 体から出て飛んで行く

体外離脱または幽体離脱というとオカルトや臨死体験と結びつけて考えがちですが、実際には解離の一つの症状です。

夜中に寝ていると体外離脱して、下の方に寝ている自分が見えたり、そのまま外出して外を見て回ったりできるそうです。

体外離脱は夜寝る時以外にも生じます。

親に怒られたときに意識を飛ばして体外離脱し、怒られている自分を見ていたという人や、悲惨な事件に遭遇したときに体外離脱して、傷つけられる自分を見ていたという人もいます。どれも解離によるものです。

発達障害の専門家、杉山登志郎先生の子ども虐待という第四の発達障害 (学研のヒューマンケアブックス)にはこんな話があります。

さらに彼女は、母親から殴られるときに、いつも意識を飛ばして、幽体離脱をしていたことが分かった。天井に上がってそこから殴られる自分を見ていたので、全然痛くなかったという。

しかし時々、母親もまた幽体離脱をしていて、母親とDさんとが幽体離脱同士のバトルとなり、必ず母親に負けていたそうだ。(p47)

もちろん母親も幽体離脱をしていたというのは、Dさんのありありとした幻覚的空想によるものです。

すでに述べたように、解離性障害は現実にいる自分と、それを見ている自分とに意識が分離してしまう病気です。自分の意識が身体からずれて浮遊感を伴うこともあります。

この分離が進んだ状態が体外離脱体験です。もちろん実際に離脱しているわけではなく、意識が自分から離れたように感じられ、遠くから自分を見ているようなありありとした幻視や夢が生じているのです。

わかりやすい「解離性障害」入門によると、体外離脱は脳の側頭-頭頂接合部と呼ばれる部分で、側頭葉と頭頂葉のさまざまな感覚情報がうまく統合されないときに生じることがわかっています。薬物によって再現することもできます。(p9)

わたしたちが起きているとき、さまざまな感覚を現実的に感じられるのは、脳がいくつもの情報をしっかり統合(バインディング)してくれているおかげです。

しかしレム睡眠中は、金縛りのように、脳と体の感覚が切り離されています。視覚は、目という感覚器官から受け取る情報を処理する代わりに、記憶から受け取る情報を処理し、夢の映像として映し出します。

他の五感それぞれも、各器官ではなく記憶に基づいて処理されるので、夢の中では、実際に体を触られていなくても痛かったり、実際にはだれも呼んでいないのに声が聞こえたりします。

五感かにバラバラに入ってくる感覚がうまく統合されないので、空を飛んだり、自分の体と意識の位置がずれたり、壁をすり抜けたり、といった不思議なことが起こります。

このような夢の中と同様の感覚統合の不備が起きているときに起こると、幽体離脱などの不思議な体験として認知されるのです。

体外離脱経験の多くが、金縛りと同時に起こるのは、半分レム睡眠で眠っていて、夢うつつの状態にあるためです。

また、ショックを受けたときに体外離脱するのは、脳が解離状態になって統合機能が一時的に麻痺するためです。さらに、脳のこの機能は酸素不足に弱いので、臨死状態など、呼吸が弱くなっているときにも起こりやすいと言われています。

体外離脱のメカニズムについて詳しくはこちらで書きました。

なぜ人は死の間際に「走馬灯」を見るのか―解離として考える臨死体験のメカニズム
死の間際に人生の様々なシーンが再生される「走馬灯」現象や「体外離脱」のような臨死体験が生じる原因を、脳の働きのひとつである「解離」の観点から考察してみました。
鏡が怖い,映っているのが自分とは思えない―解離性障害は「脳の地図」の喪失だった
わたしたちの脳は「バーチャルボディー」と呼ばれる内なる地図を作り出しているという脳科学の発見から、解離性障害、幻肢痛、拒食症、慢性疼痛、体外離脱などの奇妙な症状を「身体イメージ障害

悪夢を治療する治療法いろいろ

こうした様々なタイプの夢体験の中でも、とりわけ本人にとって辛く、生活の質に影響するのは悪夢でしょう。悪夢はすでに触れたナルコレプシーや金縛り(睡眠麻痺)に伴うこともしばしばです。

悪夢やリアルな夢などの治療法はあるのでしょうか。PTSDや解離などに関する幾つかの文献から、役立つとされる治療薬を洗い出してみました。

■ビタミンB6
副腎疲労(アドレナル・ファティーグ)の専門家、本間良子先生によるしつこい疲れは副腎疲労が原因だった ストレスに勝つホルモンのつくりかた (祥伝社黄金文庫)には、悪夢を見るのはビタミンB6の欠乏ではないかとの指摘があります。(p129)

■テトラミド(四環系抗うつ薬)
発達障害・解離性障害などの薬物療法の専門書である発達障害の薬物療法-ASD・ADHD・複雑性PTSDへの少量処方には次のような記述もありました。

特異な用い方として、悪夢に対するミアンセリン(テトラミド)の服用である。1錠10mgを寝る前に服用する。

悪夢の特効薬だが、抗うつ薬なので気分変動を増悪させないよう早く止める必要がある。

筆者はトラウマ処理を開始し、侵入症状としての悪夢が辛くてたまらないという訴えにときにのみほぼ限定して使用し、トラウマ処理が進んで悪夢が軽減したら止めるようにしている。(p92-93)

■リボトリール(ベンゾジアゼピン系抗不安薬)など
今回紹介した柴山雅俊先生による本解離の構造―私の変容と“むすび”の治療論には、こんな記述もありました。

悪夢やリアルな夢がみられるときには塩酸トラゾドン(場合によっては塩酸アミトリプチリン)などの鎮静作用をもつ抗うつ剤やクロナゼパムを使用する。

それでも頑固な不眠が持続する場合にはリスペリドンの錠剤や内用液を1-2ml眠前に追加処方する。(p196-197)

■ミニプレス(α1-受容体遮断薬)など
子どものPTSD 診断と治療には、特にPTSDに関連した悪夢の薬物療法についてこう書かれていました。

特異的α1アドレナリン受容体拮抗剤のプラゾシン(ミニプレス)は2003年に少数の退役軍人を用いたcontroled studyにおいて、悪夢を含むPTSDの睡眠障害に有効であることが示され、大規模な研究により、睡眠の質が改善し、悪夢が減少することが確かめられている。(p126)

ミニプレスは、REM睡眠を正常化させることにより、睡眠の質や記憶処理を改善し、悪夢の軽減に役立つそうです。

ミニプレスと似た作用を持つクロニジン(カタプレス)やグアンファシンを用いた場合も、悪夢を減少させる効果が見られたそうです。(p127)

これらは血圧を下げる薬ですが、過度の覚醒状態を和らげる効果があり、ADHDや虐待児の過覚醒の治療にも用いられています。

■持続的陽圧呼吸療法(CPAP)
持続的陽圧呼吸療法(CPAP)は薬ではなく睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療に用いられる医療機器です。

興味深いことに、アリゾナ・プレスコットバレー睡眠障害センターのロバート・ローゼンバーグによる睡眠の教科書――睡眠専門医が教える快眠メソッドでは、PTSDのせいで悪夢を繰り返し見る人の場合、睡眠時無呼吸を併発していることが多いと書かれています。

PTSDの睡眠時無呼吸を持続的陽圧呼吸療法(CPAP)で治療すると、いやな夢を見る回数が減る、またはまったく見なくなります。

おそらくは、睡眠時無呼吸によってレム睡眠が分断され、悪夢を見るのでしょう。レム睡眠の分断によって、トラウマの処理と調整ができなくなり、悪夢が続くのです。(p210)

ここでは睡眠時無呼吸がまずあり、そのせいでレム睡眠が分断され、トラウマ記憶を処理できないとされています。つまり、もともと睡眠時無呼吸を抱えているとPTSDになるリスクが上がってしまいます。

このような睡眠時無呼吸によってレム睡眠が中断してしまうケースでは、CPAPによる治療で悪夢や不安、睡眠の質が改善する可能性があります。

他方、身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法によると、逆のケースも考えられます。

私はボストン退役軍人クリニックにいたときに同僚たちと、PTSDを持つ帰還兵はレム睡眠に入るとすぐに目覚めてしまうことが多いのを発見した。おそらく、夢を見ている間にトラウマの断片を活性化してしまったのだろう。(p430)

こちらのケースでは、もともと睡眠時無呼吸があるかどうかにかかわらず、睡眠中の記憶処理でトラウマ記憶が活性化されると、レム睡眠が中断されていました。

もしかすると、レム睡眠中にトラウマ記憶を処理しようと活性化すると、トラウマの瞬間に感じたからだの反応、たとえば恐怖で息が詰まるなどの反応が呼び覚まされ、二次的な睡眠時無呼吸が瞬間的に生じるケースがあるのかもしれません。

すなわち、もともとあった睡眠時無呼吸のせいで、トラウマ処理が進まない場合だけでなく、トラウマ処理に失敗するせいで、睡眠時無呼吸が引き起こされる可能性があります。いずれの場合も、処理に失敗するので、延々と悪夢を見ることになります。

この場合、生じる睡眠時無呼吸は、一般によくある閉塞性睡眠時無呼吸(OSA:気道が塞がれるタイプ)ではなく、中枢性睡眠時無呼吸(CSA:脳の指示で呼吸が止まるタイプ)なのかもしれません。

もしもそうだとしたら、CSAには持続的陽圧呼吸療法(CPAP)は効果がないので、順応性自動換気装置(ASV)による治療を受ける必要があります。

悪夢はいつか覚めるもの

ところで、わたしも、病気を発症した直後、身体が鉛のように重くなって学校にいけなくなる、という夢を繰り返し見ました。

今から思えば、あれは突然病気になって学校に行けなくなったショックによるPTSD(心的外傷後ストレス障害)だったのです。

ちょうどプールの中で歩くのを想像していただけたら良いと思います。一歩一歩踏み出すのも大変です。特に流れるプールで、流れに逆行して歩こうとしているのに似ています。どれだけ力をこめても、手足がほとんど動かないのです。

同級生が普通に談笑して、次の教室に行こうとするのに、わたしはそんな調子で、死に物狂いで身体を動かそうとするのですが、のろのろとしか動かせず、しまいには疲れ果てて倒れこんでしまうのです。

そんな夢を一日に一回、一年近くほぼ毎日見ました。毎回ちょっとシチュエーションは違うのですが、展開は同じです。もちろん起きたら疲れ果てています。ひどい悪夢でした。

わたしの場合も睡眠障害の病院の先生が、クロナゼパム(リボトリール)が効くことがある、と処方してくれました。

未だにそうした悪夢はときどき見るのですが、体調が悪いときに多く、比較的好調なときは少なくなります。

興味深いことに、悪夢を見やすい人は芸術的感性が豊かだと言われています。睡眠障害が専門の国立精神・神経センターの三島和夫先生はこう述べていました。

「悪夢障害」を知っていますか |ナショジオ|NIKKEI STYLE はてなブックマーク - 「悪夢障害」を知っていますか |ナショジオ|NIKKEI STYLE

ただし、頻回に悪夢を経験する人は他者への配慮に富み、寛容で、芸術性や創造性に優れていることが多いとも言われている。感受性が豊かであることも悪夢が増える要因なのかもしれない。

芸術的感性の豊かさは解離性障害の特徴でもあるので、解離しやすい感受性の強さが、芸術的感性にもなれば悪夢の見やすさにもなるということなのでしょう。

こうした感受性の強さは近年、HSP(人一倍敏感な人)としても知られています。

生まれつき敏感な子ども「HSP」とは? 繊細で疲れやすく創造性豊かな人たち
エレイン・N・アーロン博士が提唱した生まれつき「人一倍敏感な人」(HSP)の四つの特徴について説明しています。アスペルガー症候群やADHDと何が違うか、また慢性疲労症候群などの体調

小説家、夏目漱石は、今回考えたようなリアルな夢をたくさん見る人だったようで、「夢十夜」という短編集を書いています。

「夢十夜」は、さまざまな幻想的な夢の体験談であり、ほどんどが一人称であることから、夏目漱石自身の体験をベースに小説化したものだと思われます。

夏目漱石は一般に原因不明の神経衰弱だったと言われていますが、リアルな夢のほかにも、幻視や幻聴などの特徴からして、おそらくは解離性障害に近い病状だったと考えられます。

漱石は、解離のせいで苦しんでいた部分もあるようですが、自身のリアルな夢をテーマに小説を書いてしまうあたり、解離の不思議な夢世界を楽しんでいたのかもしれません。

頻繁に変な夢を見るという人は、解離性障害のことがよくわかる本 影の気配におびえる病 (健康ライブラリーイラスト版)などの本を見て、自分が解離性障害に近いかどうかをチェックしてみるようお勧めします。

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創造性 / 解離