北海道大の若尾宏准教授らの研究チームが、線維筋痛症を血液で診断できる方法を開発したとニュースになっていました。
線維筋痛症:血液で診断、初開発 北大研究チーム - 毎日新聞
北大、診断が困難な線維筋痛症候群の鑑別方法を開発 | サイエンス - 財経新聞
線維筋痛症、診断法を開発…北大研究グループ : 地域 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
【健百】線維筋痛症の客観的な診断に一歩、第一人者も期待 | あなたの健康百科
線維筋痛症の鑑別マーカー発見か/北大・若尾氏らのMAIT細胞研究:医師のための専門情報サイト[MT Pro]
約10種類のタンパク質が増減
従来、線維筋痛症は、一般的な検査ではデータに異常がないことが多く、問診と、体の複数の圧痛点が痛むかどうかの主観症状の検査で診断されることが多かったようです。
今回研究チームが見つけた方法によると、30名以上の線維筋痛症の患者から血液を採取して、免疫反応を担うTリンパ球を分析したところ、MAIT細胞と呼ばれるタイプのTリンパ球のうち、末梢血中のCD4陽性細胞が減少していました。
また、健康な人と比べて、その細胞の表面に現れる11種類のたんぱく質が増減していることがわかったそうです。リウマチなどの別の病気と比べた場合にも、10種類のタンパク質が鑑別に役立ちました。
また、痛みの程度と、MAIT細胞の存在割合に相関関係が見られたそうです。症状を和らげる薬の服用によって、MAIT細胞の数が変化するだけでなく、その表面の12のタンパク質の量が変化することもわかりました。
よって、線維筋痛症の痛みのメカニズムとMAIT細胞には密接な関係があるのではないかと考えられています。
これらを調べれば、症状が似ている関節リウマチなどとの区別が付き、早期診断が可能になるとされています。今後、企業と協力し診断キットなどとして早期の実用化を目指すと、展望が書かれています。
客観的な診断基準がないことは、線維筋痛症が難病指定から外れた一つの理由でもあります。ほかに患者数の多さといった理由もありますが、もしこうした診断キットが実用化されれば、重症患者を見分けて、支援を受けられるようにする、といったことも可能かもしれません。
京医科大学八王子医療センターの岡寛教授も、こう述べたそうです。
「(現在、線維筋痛症の診断に使われている)1990年の米国リウマチ学会の分類基準では、脊椎関節炎でも基準を満たしてしまうことが多い。
そこで、線維筋痛症と脊椎関節炎を見分けるマーカー(その病気の存在などを反映する物質)の発見が期待されていた。
今回の研究では、MAIT細胞という新しい切り口で鑑別評価を行っている点が興味深い」
線維筋痛症を血液で診断できる方法というと、以前にも「抗VGKC複合体抗体」を使った検査が有効かもしれないと言われていました。
そちらのほうも、まだ実用化に至っていませんし、今回の研究も、サンプルが30数名と少なすぎるように思うので、今の段階では過度な期待はできませんが、いずれ必ず客観的な診断法が確立するだろう、という予感を感じさせてくれます。
慢性疲労症候群のほうも、前に理研が、血液中の特定の物質の比率で診断できるということを言っていましたが、どうなったのでしょうね。きょうの健康のテキストに載っていた近赤外分光法の話も、特許をとった後、音沙汰がないですし…。