線維筋痛症と自閉スペクトラム症には免疫細胞ミクログリアの活性化が関係している?


性疼痛と自閉症には、どちらも脳の免疫細胞であるミクログリアの活性化が関係しているというニュースがあったので、関連情報を調べてみました。

慢性的な「痛み」の裏に自閉症と共通した仕組み、脳内麻薬をうまく働かなくしている | Medエッジ はてなブックマーク - 慢性的な「痛み」の裏に自閉症と共通した仕組み、脳内麻薬をうまく働かなくしている | Medエッジ

線維筋痛症とミクログリアの関係、自閉スペクトラム症とミクログリアの関係について、それぞれ最近のニュースを調べた上で、両者の関係について考察しています。

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線維筋痛症とミクログリア

まず、このニュースでは、慢性疼痛とミクログリアが関係していると言われています。

脳や脊髄に見られる免疫細胞であるミクログリアは、活性化すると、脳内麻薬とも表現されるドーパミンの放出を制限します。そうすると痛みを抑えにくくなり、オピオイド鎮痛薬も効きにくくなるそうです。

これは特に新しい見解ではないようで、ニュースをたどっていくと、過去にも同様の研究がなされていました。

2014年5月には、九州大学の研究チームが神経障害性疼痛とミクログリアとの関わりについて発表しています。2003年から繰り返し発表してきた内容だそうです。

共同発表:神経障害性疼痛の仕組みを解明~ミクログリアを「痛みモード」にかえる実行役を特定~ はてなブックマーク - 共同発表:神経障害性疼痛の仕組みを解明~ミクログリアを「痛みモード」にかえる実行役を特定~

研究グループでは、脳や脊髄の免疫細胞と呼ばれる「ミクログリア」が、神経損傷後の脊髄で活性化した状態になり、それが慢性的な痛みを引き起こしていることを明らかにしてきました(Nature 2003;Nature 2005;PNAS 2009;EMBO J 2011;Cell Rep 2012)。

ミクログリアは、細胞の働きを調節するタンパク質が増えることで活性化状態となりますが、その中でも、私たちが2003年にNature誌に発表したP2X4受容体は神経障害性疼痛の発症に非常に重要な役割を果たしていると考えられています。

ここでは「慢性疼痛」や「神経障害性疼痛」と表記されていますが、慢性疲労症候群線維筋痛症の痛みの場合もメカニズムは同等である、と考える研究者もいるようです。

たとえば名古屋大学大学院の機能組織学/第二解剖学教室は慢性的な疲労や痛みについて研究していて、教室代表の木山博資教授は2014年にこう述べています。

教室紹介 | 名古屋大学大学院 医学系研究科 機能構築医学専攻 機能組織学 はてなブックマーク - 教室紹介 | 名古屋大学大学院 医学系研究科 機能構築医学専攻 機能組織学

安井らが中心になっている、慢性ストレスの生体に及ぼす各種の影響とその分子メカニズムについても、慢性疲労症候群や線維筋痛症の疼痛の原因がミクログリアにあることなどが明らかになり、今年はさらに面白い論文が出せそうです。

この名古屋大学らの研究チームは、2014年5月に、九州大学と協力して慢性疲労症候群の異常な痛み(実質、線維筋痛症を含んでいるものと思われる)についての研究発表をしていて、それはこのブログでも取り上げました。

動物レベルで慢性疲労症候群(CFS)の異常な痛み(アロディニア)を抑えることに成功
実験モデルのマウスの異常な痛みを抑えることに成功したそうです。

かなり大々的に報道されたので、記憶に新しい方もおられると思いますが、ミクログリアが活性化して強い痛みを感じるモデル動物を作り、ミクログリアの活性化を抑制する薬(ミノサイクリン)を脊髄髄腔内に投与したところ、動物の異常な痛みは抑制されたとされています。

この研究について、先ほどの木山博資教授はこう述べていました。

慢性疲労症候群はいろいろなストレスが原因になっており、症状も多彩で、一筋縄ではいかないが、この研究で痛みの原因は絞り込めた。

今後は脊髄内にミクログリアが増殖活性化する仕組みを解析したい。患者の診断に、脊髄のミクログリアの検査が使えるのではないか。

痛みを和らげる治療の標的としてミクログリアの活動抑制が役立つことも予想される。

自閉スペクトラム症とミクログリア

それに対し、自閉症とミクログリアの活性化が関係しているというのは、さきほどのニュースサイトでは、この記事にリンクされていました。

自閉症の原因に新事実が判明、脳の免疫を担う「ミクログリア」が関与 | Medエッジ はてなブックマーク - 自閉症の原因に新事実が判明、脳の免疫を担う「ミクログリア」が関与 | Medエッジ

ミクログリアが活発に活動すると、神経細胞で働く遺伝子が減ってくるため、自閉症の原因のひとつではないかと言われています。

2012年の浜松医科大の研究でも自閉症の人は、ミクログリアが過剰に働いていることが報告されています。

自閉症、脳の免疫細胞が過剰活動 浜松医大  :日本経済新聞 はてなブックマーク - 自閉症、脳の免疫細胞が過剰活動 浜松医大  :日本経済新聞

自閉症の人は、自閉症の症状に関係するとされる小脳や脳幹などの部位のミクログリアが過剰に働いていることを見つけた。

チームは、この現象はミクログリアの数が多いためと判断。数が多いのは、この細胞が脳内に定着する胎児の時期に増えたことが原因と推測している。

 2013年の自閉症スペクトラム障害を持つ若年成人におけるミクログリア活性化|大日本住友製薬:では、高機能自閉症の人のミクログリアについて調べた結果について、こう書かれています。

本研究の結果から,自閉症脳の広汎な部位でミクログリアが活性化していることが明らかとなった。

本研究の被験者には脳局所の萎縮や脳炎などのないことが確認されていること,及び,自閉症者の活性化ミクログリアの脳内分布が健常対照者と変わらないという所見から,自閉症ではミクログリアの分布は正常と同様ながら,その総数が増加していることが示唆される。

高機能自閉症では、脳全体で、活性化ミクログリアが、定型の人より多くなっているようです。アスペルガーなど、自閉スペクトラム症の人に広く見られる特徴なのかもしれません。

自閉症とミクログリアの増加の関係は、これまでも脳の局所において、たびたび報告されていましたが、最近になって、ミクログリアが脳全体で増加しており、自閉症の原因そのものとも関わっているようだ、ということがわかってきたようです。

ちなみに浜松医科大の研究では、統合失調症でも、発症直後・または症状の現れるタイミングでミクログリアの活性化が見られることがわかったそうです。

統合失調症予防の施設 浜医大が全国初:静岡:中日新聞(CHUNICHI Web) はてなブックマーク - 統合失調症予防の施設 浜医大が全国初:静岡:中日新聞(CHUNICHI Web)

自閉スペクトラム症だから線維筋痛症が生じることもある?

少なくとも慢性疼痛の患者の大部分は自閉症ではないでしょうし、たいていのミクログリア異常による神経障害性疼痛は、手術とか病気とか事故など、後天的な環境要因によって生じたものなのでしょう。

しかし、自閉症の人の脳(や脊髄?)では活性化ミクログリアが多くなりやすいのだとしたら、自閉症の人は慢性疼痛などになりやすいのでしょうか。

わたしは専門家ではないので、はっきりとしたことはわかりません。この点は慎重になる必要があると思います。実際ミクログリアの活性化はいろいろな病気と関わっているようで、それらをすべて自閉症と結びつけるのは妥当とはいえません。

しかしひとつ思い出されるのは、若年性線維筋痛症の素因として、しばしば自閉スペクトラム症が見られるとされていたことです。

子供の体の慢性的な痛み「若年性線維筋痛症(JFM)」とは? 原因と治療法
子どもの慢性痛、若年性線維筋痛症とはどんな病気なのでしょうか。どんな治療法が可能でしょうか。東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センターの宮前 多佳子先生による「小児の線維筋痛症」

もしかすると、生まれつき、活性化ミクログリアが多い、あるいは多くなりやすいために、生涯の早い時期に脳内麻薬が抑制されるようになり、若くして異常な痛みを感じやすくなる人もいるのかもしれません。

そのような場合は、慢性疼痛の原因として、ストレスなどだけでなく、生まれつきの脳の構造としての自閉症が関係している可能性もある、ということになるでしょう。

自閉スペクトラム症の人は、感情を表現するのが難しく身体化されやすい、つまり失感情症(アレキシサイミア)になって心身症にかかりやすいと言われたりしますが、それは心の問題ではなく脳の構造的な問題である可能性もあります。

ネットで調べると、以前に東京大学先端科学技術研究センターにより「発達障害と痛みに関する研究会&意見交換会」といったものも開かれていました。結果がどうだったのかはわかりませんが、両者の関係を推測している研究者もいるようです。

(この研究会の主催者側には発達障害などの当事者研究で知られる小児科医の熊谷晋一郎先生(@skumagaya)がおられたようです。)

発達障害と痛みに関する研究会&意見交換会を開催します。 | 文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究:構成論的発達科学-胎児からの発達原理の解明に基づく発達障害のシステム的理解- はてなブックマーク - 発達障害と痛みに関する研究会&意見交換会を開催します。 | 文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究:構成論的発達科学-胎児からの発達原理の解明に基づく発達障害のシステム的理解-

そのような、他人とのやり取り以前に生じている身体レベルの困りごとの一つに、「痛み」の問題があります。

発達障害と慢性の体の痛みを合併している 当事者は少なくなく、また一部の専門家によると、生まれつき痛みを感じない無痛無汗症という疾患の当事者は、自閉症スペクトラムの診断基準を満たすことが 多いとも言われています。

さらには、生まれたばかりの新生児室での痛みの経験が、その後の発達に影響を与える可能性についても報告されています。

加えて、広い意味での発達障害に数えられる虐待経験者についても、幼少期の虐待など、苦痛を伴う経験が、その後、慢性の体の痛みや、その苦しみに対する自己対処としての依存症を引き起こす原因として、重大なものであるとも報告されています。

このように、発達障害と体の痛みとの間には、深い関係がありそうであるということが示唆されるものの、これら二つをつなぐような研究は、これまでの ところ限られています。

わたしとしては、いろいろ調べてきて、慢性疲労症候群や線維筋痛症などを人生の早い時期で発症する「小児性」「若年性」の場合は、発達障害(先天的な発達障害であるADHDや自閉スペクトラム症、あるいは虐待による第四の発達障害)が関わっている場合も多いのではないか、と踏んでいるのですが、今回のニュースもそれに関わる情報といえるかもしれません。

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ASD(自閉スペクトラム症) / 線維筋痛症 / 若年性線維筋痛症