サードマン・イマジナリーフレンドが現れる5つの条件―「いつもきみのそばを歩くもう一人がいる」


いつもきみのそばを歩いている第三の人は誰だ?
数えてみると、きみとぼくしかいない
けれど白い道の先を見ると
いつもきみのそばを歩くもう一人がいる
フードのついた茶色のマントに身を包み音もなく行く
男か女かもわからない
―だが、きみの隣にいるのは誰だ?

―T.S.エリオット「荒地」

れは奇跡の生還へ導く人―極限状況の「サードマン現象」という本の冒頭の扉に載せられている詩です。

「いつもきみのそばを歩くもう一人がいる」。わたしはこのフレーズが大好きです。この記事をわざわざ読んでくださるような方の中には、わたしと同じように、このフレーズに温かい感動を覚える方もいるでしょう。

危機的状況に現れる「もう一人」。それは、ある状況では「サードマン」と呼ばれていますし、別の状況では「イマジナリーフレンド」と呼ばれています。実際のところ、研究者たちは、この二つの現象は根本のメカニズムは同一だと考えています。

「サードマン」とは何でしょうか。どんな危機的状況で現れるのでしょうか。サードマンとイマジナリーフレンドが現れるときに共通する5つの条件とは何でしょうか。

 

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これはどんな本?

この本の著者ジョン・ガイガーは、歴史学者、また探検家です。

ジョン・ガイガーは、子どものとき、サードマンに似た経験をしたことをきっかけに、サードマン現象の体験談を収集しはじめ、www.thirdmanfactor.comというサイトで公開するようになりました。

この本は、サードマン現象のさまざまな体験談を網羅しつつ、それを科学的に分析したものです。

サードマンとは―「きみの隣にいるのは誰だ?」

はじめに、サードマンとは何なのかを理解しやすくするために、2つの具体的な事例を紹介しましょう。もちろん2つとも実話です。

9.11の日に現れたサードマン

9.11の世界貿易センタービル同時多発テロのとき、ロン・ディフランチェスコは南棟の84階にいました。飛行機が衝突したとき、彼は壁にたたきつけられ、破片を浴びました。

深い煙にさえぎられ、1メートル先も見えませんでしたが、ロンはなんとしても妻と子どもにもう一度会おうと決めていました。それで活路を探しましたが、途中崩れた壁に遮られ、もうダメだと思いました。

そのとき「立ち上がれ!」という言葉が聞こえました。男の声でしたが、周りにいただれの声でもありません。その声は「さあ、お前にならできるはずだ」と言いました。確かな存在がはっきりと感じられました。

ロンは、その存在に励まされ、まるで導かれるかのように突破口を見つけました。そして炎の中を駆け抜けました。火に向かって走るなんて自殺行為に思えますが、その存在がそうするよう命じたのです。

彼は「手をつかまれたわけではなかったと思うが、連れて行かれたのはたしかだ」と後に述べています。

そしてついに、難所をくぐりぬけ、出口まで逃げ延びました。81階より上から逃げることができたのは彼を含め、わずか4人でした。(P13-18)

ケイブダイビングで現れたサードマン

ステファニー・シュワーベは、グランドバハマ島の南の海底洞窟、マーメイズ・レアに潜っていました。彼女は地球微生物学者でした。夫はケイブダイビングのプロでしたが、事故で亡くなっていました。

一人っきりで潜った洞窟の中で、彼女は命綱が見えないことに気づきました。ケイブダイビングでは水面に浮上する機会が少なく、方向感覚がなくなるので、命綱は不可欠です。

同行者はおらず、空気はあと20分。もうダメだと感じ、怒りと悲しみでいっぱいになりました。

そのとき、自分のそばにだれかがいるのを感じました。「大丈夫、ステフィ、落ち着いて。いいかい、できると信じるのもいい、できないと信じるのもいい、どちらも正しいんだ、いいね」。それは夫の声でした。

ステファニーは呆然としましたが、すぐに冷静さを取り戻し、自分の状況やたどってきたルートを分析しました。そして残り15分、ちらりと白いひもが見えました。命綱を見つけたのです。その瞬間、存在はいなくなりました。(P21-24)

この2つの例は、どちらも極限状況で、本来そこにいないはずの〈存在〉を感じ、声が聞こえました。これこそがサードマン現象です。

サードマン現象は、さまざまな機会に見られ、かなりありふれた現象だと言われています。それで、ジョン・ガイガーはこう説明しています。

こうした体験は長年にわたって繰り返し起きている。

9.11の生還者や登山家やダイバーだけでなく、極地探検家、戦争捕虜、単独航海家、海難事故の生存者、パイロット、宇宙飛行士にも、誰もが衝撃的な出来事から逃げのびたとき、すぐそばに仲間や救済者、あるいは「強大な人間のような」存在があったという酷似した話をする。

この〈存在〉は、守られ、導かれているという安心感や希望をもたらし、普通に考えれば誰もいないはずなのだが、自分は一人ではなく、そばに誰かがいると確信させる。(P25)

サードマン現象の名前の由来

危機的状況で、何者かの存在を感じ、声が聞こえるという この現象は、なぜサードマン(第三の人)現象と呼ばれているのでしょうか。

サードマン現象が知られるようになったのは、アーネスト・シャクルトンの物語「南へ―エンデュアランス号漂流」がきっかけでした。

1914年から1916年、アーネスト・シャクルトンと部下たちは、イギリスの「帝国南極横断探検隊」として、南極地方のサウスジョージア島を横断していました。しかし氷に閉ざされて10ヶ月漂流し、とうとう船は壊れ、28人の隊員は氷の上に取り残されました。

彼らは、5ヶ月間、救命艇を引きながら氷の上を歩きましたが、もはや食糧の蓄えも気力も限界に達し、15ヶ月後の1916年4月9日、ボートで海洋に出ました。

なんとかとある島にたどり着きましたが、まだまだ生還には程遠い状況でした。島に部下のほとんどを残し、シャルクトンと5人だけが、先へ進みました。彼らが向かった先は、「世界で最も荒れる海域」でした。

17日間強風、雪の嵐、荒れる海に耐えましたが、ひどい脱水症状や、氷山の崩壊に巻きこまれかけたこと、飢餓、不眠などで、全員が今にも死にそうでした。ついにサウスジョージア島に到達して上陸しましたが、救助してもらうには島の反対側まで行かなければなりません。

サウスジョージア島は氷河に覆われた2000メートルの山脈からなる島でした。先に進めたのは3人だけでした。

最後にして最悪の試練となった氷河の横断に際して、シャルクトンは不思議な感覚を持ちました。

サウスジョージアの名もない山々や氷河を越えた36時間におよぶ長くつらい行軍のあいだ、ときおりわれわれは三人ではなく四人いるように思われた。(P46)

しかも三人が三人とも、その奇妙な感覚を共有していました。彼らは、その存在に勇気づけられ、ついに生還を果たし、途中においてきた仲間たちを救助することもできたのです。

この「第四の人」は、冒頭で紹介した、1922年のT.S.エリオットの詩「荒地 (岩波文庫)」のモチーフとなりました。エリオットは詩的表現のため、「第四の人」を「第三の人」(サードマン)に変えました。

同様の現象が非常に多く報告されたために、その名称は広く知られるようになり、「サードマン現象」として現代にまで伝えられています。(場合によっては、サードマンはシャドウパーソン「影の人」と呼ばれることもあります)

なぜサードマンが現れるのか―5つの条件

サードマン現象は、当然のことながら、最初に報告されて以降、さまざまな超人的な霊の存在と結び付けられてきました。多くの体験者は、それが「神」や「守護天使」だったと報告しました。あるいは「死んだ家族の霊」だったという人もいました。

シャーロック・ホームズの作者コナン・ドイルは、サードマン現象は、霊媒と関係があると述べました。(P70)

しかし、そう考えると不合理な点も数多くあります。なぜ、天使たちや亡くなった人の霊は、ある人は助け、ある人は助けず選り好みするのでしょうか。サードマン現象はすべての人が経験するわけではなく、危機的状況でただ死ぬしかない人も大勢いるのです。

それよりも、神経学者たちは、危機的状況のサードマン現象と似たような体験が、精神疾患の患者に見られることに注目しました。

たとえばヒステリー(現在の解離性障害)の人たちは、見えない存在の気配を感じたり、ありありとした幻覚を見たり、幻聴を聞いたりします。解離症状はときに、その場にいる複数の人に同時に起こることもあります。(集団解離)

そうした解離症状とサードマン現象の研究が進むにつれ、サードマン現象には5つの基本原則があることがわかってきました。

1.退屈の病理

サードマンは、極限の特殊な環境(EUE:extreme and unusual environment)で現れます。EUEの特徴の一つは単調であることです。同じ光景が果てしなく続く空、海、氷河、砂漠などです。

心理学者ウッドバーン・ヘロンは、感覚入力が乏しい単調な環境について「退屈の病理」という用語を作りました。(p96)

以前の記事で説明したように感覚刺激が乏しい単調な環境では幻覚が生じます。

宇宙飛行士ジェリー・M・リネンジャーは、宇宙ステーションミールで危機的な事故に遭遇し、もう少しで死ぬところでした。最も大きな苦痛は、隔離されたことと単調さでした。

その孤独と単調さの中で、ミールは亡き父の〈存在〉を感じました。沈黙の会話を交わし、勇気づけられました。リネンジャーはのちにこう述べたそうです。

あれは宗教的体験ではない。私は医者だから、あれは心理的な防衛機制だと理解していた。でも、否定したくはなかったし、理論づけもしなかった。(p108)

2.複数誘因の法則

サードマンは、いろいろな要因が重なりあったときに現れます。単調さ・隔離に加え、ほかの一つ以上のストレスが加わったことがきっかけになりえます。(p118)

その一つは低温ストレスです。極地探検や高山地帯で現れるサードマンには、低温ストレスが関係しているのでしょう。深部体温が低下して幻覚が生じるのは医学的には珍しくないそうです。

また血中グルコース濃度の低下も引き金になりえます。極地探検や海上遭難の飢餓状態で、サードマンは現れます。砂漠で飢餓状態になってオアシスの幻覚を見るといった話は定番です。

そのほか低酸素症も関係していそうです。高山やダイビング中など、酸素不足の環境でサードマンに出会う人がいます。以前に述べたように酸素不足は、体外離脱などの解離症状と深く関係しています。

ほかにも疲労・睡眠不足・恐怖など、さまざまな要因が重なりあったときにサードマンが生じやすくなります。

3.喪失効果

サードマンは、仲間を失ったときに、その穴を埋めるように現れることがあります。登山の際には、同行者と別れたり、同行者が重症を負ったり、死んだりしたときに、サードマンが現れた、という例が数多くあります。(p154)

すでに述べたケイブダイバーや宇宙飛行士の例のように、亡くなった家族が、サードマンとして現れることもあります。

実際に、ウェールズで行われた、配偶者を亡くした約300人の男女を対象とした調査では、約半数が、死んだ配偶者の存在を感じたことがあると述べ、10%の人は、いつもそばにいてくれる感覚があると述べました。

日本の研究では、この現象は「喪失に適応させるという点で良い徴候と考えられる」とも言われています。(p155)

亡くなった人との対話がサードマンと同様の現象であることは以前の記事をご覧ください

4.経験への開放性

サードマンは外的要因だけによってもたらされるわけではありません。個人の性格的特徴である「経験への開放性」も関係しています。(p187)

「経験への開放性」を持つ人は、アイデアに富み、物事をすばやく理解し、常識にとらわれない価値観を持っていて、美的感性が強く、変化や探検が大好きです。そして、何かに異常に没頭する能力を持っています。

「経験への開放性」の高い人は、そうでない人よりもサードマンを経験しやすく、必要条件が緩いと考えられています。このような性質があるかどうかが、危機的状況でサードマンと出会う人、出会わない人を分けているようです。

5.必ず生き延びるという信念

苦難に遭ったとき、サードマンと出会う人もいれば、サードマンと出会わない人もいます。さらに逆に破壊的な幻覚を見て死ぬ人もいます。

たとえばありえない風景や歪んだ幻覚、あるいは偽りの希望の幻覚を見て、危険な行動をとり、死んでしまう人もいます。ある人は海上で遭難したとき、自分の家の幻を見て、そこに行こうとして船から落ちて死にました。

助け手となるサードマンを見るか、破壊的な妄想を見るかは、その人の信念にある程度依存しているようです。つまり、「必ず生き延びる」と決意している人のほうが、助け手であるサードマンに出会いやすいのです。(p217)

イマジナリーフレンドという近縁の現象

さて、サードマン現象は、日常生活で生じることもあります。すでに述べたように、解離性障害の患者は似たような体験をします。

それとは別に、健康な子どもの多くが、想像上の友だち(イマジナリーフレンド)という形で、サードマンに似た体験をしています。

サードマン現象の研究をしている神経学者マクドナルド・クリッチレーは、子どものイマジナリーフレンドとサードマンとを結びつけました。(p154)

イマジナリーフレンドは青年期以降も体験することがあり、それがいわば、日常生活の中に現れるサードマンである、ということは、こう説明されています。

空想上の遊び友達が就学年齢以降も続くことがあるが、その場合、「それは子供とともに成長し、ストレスがかかったときにどうすべきかを教え始める」。

最近の研究では、この現象は14,5歳前後の思春期にも起こることがわかった。

若者が想像上の友だちにたよるのは、単にほんとうの親友がいないからではなく、それどころか、この現象を経験する若者は「社会的能力も創造力もそなえている」。

まれに普通のおとなでさえ、ある決まった状況になるとこの現象が起きる。

子供の頃に複数の遊び友達がいたある女性の場合、おとなになってストレスがかかったとき、「空想上の遊び友達がみな戻ってきたが、彼らは全員、女性と同じように成長していた」という。(p134)

イマジナリーフレンドの中には、幻聴としての声を伴うものもあります。

アメリカの心理学者ジュリアン・ジェインズは、空想上の遊び友達(イマジナリーフレンド)は、正確には「幻覚上の遊び友達」と呼ぶべきだとしています。(p162)

彼によると、声が聞こえるのは「二分心」という現象で、いつも優勢な左脳の活動が低下することで、創造的思考に関わる右脳の産物が漏れだすのだとしています。サードマンの存在が自分の「右側」に感じられることが多いのはそのためだといいます。(p164)

しかしスイスの神経科学者ペーター・ブルッガーは、サードマン現象は右脳ではなく左脳と関係していて、「幻肢」(手足を失った人が依然として手足の存在を感じること)に近いと述べました。

サードマンは一種のドッペルゲンガーであり、「自分の体に対する認識が体外の空間へ拡張したもの」だと彼は述べています。(p218)

いわゆる体外離脱や自己像幻視(自分を第三者視点から見ているような幻)と同じメカニズムではないか、というわけです。それらは、脳の側頭葉と頭頂葉の接合部で、感覚統合がうまくいかなかった場合に生じることがわかっています。

いずれにしても、これらは解離性障害でよく見られる現象であり、サードマンやイマジナリーフレンドは、解離という脳の正常な防衛機制と関係していると思われます。

イマジナリーフレンドもまた5つの条件で現れる

イマジナリーフレンドが、サードマンの近縁の現象だとしたら、イマジナリーフレンドが現れる理由もまた、サードマンの5つの条件と一致しているはずです。

1.退屈の病理

イマジナリーフレンドを持つ子どもは、第一子が多く、普段はとても社交的だといいます。そのような子どもが、弟や妹が生まれて、あまりかまってもらえなくなったり、一人きりになったりしたときに、イマジナリーフレンドが現れることが多いようです。

2.複数要因の法則

イマジナリーフレンドが現れる要因はいろいろあるとされていて、その中には種々の精神的ストレスも含まれています。たとえば虐待された子供が自前のストレスコーピングとして、イマジナリーフレンドを持つようになることもあります。

3.喪失効果

イマジナリーフレンドは親の離婚や家族の死とともに現れるケースもあります。また、愛着を感じるぬいぐるみ(「移行対象」と呼ばれる)を手放すときに存在するようになる場合もあります。

4.経験への開放性

イマジナリーフレンドを持つのは、多くの場合子ども時代だけです。子どもはたいていみな創造的で、好奇心旺盛です。しかし大人になると、イマジナリーフレンドを持たなくなります。「経験への開放性」が失われるからでしょう。

しかしときどき思春期以降もイマジナリーフレンドを持つ人がいて、大人になってもイマジナリーフレンドの存在を実感している人がいます。おそらく、そのような人は「経験への開放性」を保ったまま大人になったのでしょう。

5.必ず生き延びるという信念

イマジナリーフレンドは、「助け手」や「理解者」として現れることがよくあります。イマジナリーフレンドが脳の機能の産物だとしたら、「助けてほしい」「支えてほしい」という強い願いが根底にある、ということを示唆しています。そして実際にイマジナリーフレンドの助けによって人生の問題を乗り越える若者は数多くいます。

これら5つの条件は、これまでにこのブログの記事で説明してきた、イマジナリーフレンドが誕生する理由と、同じ点を述べているものと思います。

イマジナリーフレンド(IF) 実在する特別な存在をめぐる4つの考察という記事では、青年期以降もイマジナリーフレンドを持つ人は、子ども時代から空想傾向があったり、創造性豊かだったり、愛着の傷を抱えていたり、ときには発達障害を持っていたりするという点を説明しました。

今回の5つの条件のうち、「退屈の病理」は、つまるところ、いろいろ空想することにつながります。

「複数誘因」や「喪失効果」は、愛着の傷などのストレスと関係しています。

「経験への開放性」は解離しやすかったり、発達障害があったりするために、創造性が高い人の特徴と一致しています。

「必ず生き延びるという信念」は、イマジナリーフレンドが基本的に当人を助ける存在として現れ、励まし、力づける存在となるという特徴と一致しています。

「いつもきみのそばを歩くもう一人がいる」

このように考えると、やはりサードマンとイマジナリーフレンドは非常に似通っている、共通のメカニズムを持つ現象だと思われます。

そのメカニズムについて、詳しくわかっているわけではありませんし、超自然的存在の関与を信じる人もやはりいます。しかし、少なくとも、どちらも、精神の異常ではなく、積極的な意味を持つ現象であることは疑う余地がありません。

心理学者ピーター・スードフェルドは、サードマン現象について調べるうちに、次のような感想を抱きました。

極地探検家、単独航海家、登山家、宗教的隠者の話を集めるうちに、「他者や超人的存在の幻覚で、多くの場合体験者にとって助けや支えになり、救いの力があると感じられるもの」があることを知った。

そのような報告のなかに、統合失調症などの精神病患者によるものはなかった。

それどころか、「いずれも精神的に正常で身体的に健康な人であり、冒険心旺盛でみごとな偉業を成し遂げているような人も多い」ことがわかった。(p164-165)

サードマンの経験者は、正常な人たちだったのです。

それで、こう結論しています。

外から見て一部の精神病による幻覚に似ているという以外に、それを精神医学的症状に分類すべき事実的根拠はない。

…〈存在の気配〉は、ある種の異常な状況における正常な対処行動に加えるべきであり、その分、正常な対処行動として認められる範囲を広げるべきである。(p166)

そのようなわけで、サードマン、そしてイマジナリーフレンドが、正常な脳の働きであり、その人が危機的状況から脱するための救済者である、ということに疑問の余地はありません。

いつもきみのそばを歩いている第三の人は誰だ?
数えてみると、きみとぼくしかいない
けれど白い道の先を見ると
いつもきみのそばを歩くもう一人がいる

このような不思議な存在を経験した人たちは、みな、一つのことを実感しています。

その同行者は、害や恐怖をもたらすような恐ろしい幽霊や悪霊のようなものではないことをよく知っています。

むしろ、危機的状況を乗り越える救助者、また苦難を乗り越えるよきパートナーであり、いつもそばを歩いて、温かい安心感や励ましを与えてくれる存在なのです。

サードマンとイマジナリーフレンドに関するほかの詳しい論考は、以下の記事をご覧ください。

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空想の友だち研究 / 解離性障害