「子宮頸がんワクチン接種後症候群」の実態―全身の痛み,脱力感,重い記憶障害などの原因は何か?


年性線維筋痛症との関連で研究されている、子宮頸がんワクチン接種後症候群について、実体験が書かれた記事が報道されていました。どれほど深刻な問題であるかを如実に物語る内容となっています。

ただし、これが子宮頸がんワクチンにより引き起こされたものと断定できるわけではなく、別の原因によって引き起こされている重い症状である可能性もあるため、原因解明の研究が必要とされています。

症状そのものが存在するのは事実ですが、治療法を見つけるためには、原因が何であるかについては慎重な検討が行われるべきでしょう。

子宮頸がんワクチン:脱力、記憶障害…母を認識できず - 毎日新聞 はてなブックマーク - 子宮頸がんワクチン:脱力、記憶障害…母を認識できず - 毎日新聞

子宮頸がんワクチン…接種後、体調変化28% : 医療ニュース : yomiDr./ヨミドクター(読売新聞) はてなブックマーク - 子宮頸がんワクチン…接種後、体調変化28% : 医療ニュース : yomiDr./ヨミドクター(読売新聞)

30もの症状、重い記憶障害

記事によると、千葉県の高校生、深山さんは、2011年9月に最初のワクチン接種を受け、直後から疲労倦怠感や、背中や肩の痛みが生じました。

そして3回目の接種を受けた1ヶ月後の2012年4月から、症状が悪化し、力が入らなくなり、毎日倒れるようになったそうです。

■倦怠感
■全身の痛み
■絶え間ない頭痛
■全身に力が入らない
■まっすぐ歩けない
■記憶障害
■視力低下
■意思と関係なく体が動く不随意運動

など30もの症状が出て、入院を繰り返して学校は卒業できず、いつ倒れるか分からないので、「倒れたら開けてください」と書いて連絡先などを記したカードケースを首からかけているそうです。症状は年々悪化しているといいます。

特に、記憶障害によって、母親が分からず、「おばさん」と呼び続けているという部分を読んで、その深刻さがどれほど厳しいものかを感じました。

HANSとしての研究

子宮頸がんワクチン接種後症候群については、子どもの線維筋痛症と症状が似ていることなどから、線維筋痛症の専門医を中心に病態解明が勧められていて、「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群」(HANS)と名づけられています。

【子宮頸がんワクチン】救済と研究進め、再開判断 接種呼び掛け中止継続 : 47トピックス - 47NEWS(よんななニュース) はてなブックマーク - 【子宮頸がんワクチン】救済と研究進め、再開判断 接種呼び掛け中止継続 : 47トピックス - 47NEWS(よんななニュース)

 安易な再開に警鐘を鳴らす専門家もいる。東京医大の 西岡久寿樹教授や日本小児科学会前会長で横浜市立大の 横田俊平名誉教授らは、ワクチンに含まれる成分が免疫機能や脳、神経系に障害を起こした可能性を疑う。

 一連の症状を新しい病態「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群」と捉え、「ワクチンと症状の因果関係が明確になるまで接種勧奨は中止すべきだ」との立場だ。

現在のところ、線維筋痛症と似てはいるものの新しい病気であるとされています。

子宮頸がんワクチン副反応は「どの病気にも当てはまらない新しい病気」―若年性線維筋痛症の横田先生
若年性線維筋痛症の横田俊平先生が、子宮頸がんワクチン問題について「新しい病気」と述べています。
近年発症した10代の線維筋痛症の8割がHANS症候群?
若年の線維筋痛症に子宮頸がんワクチン接種がきっかけの患者が増えているそうです

若年性線維筋痛症との違いの一つは、HANSでは高次脳機能障害が顕著なことであるとされていましたが、今回の報道にあるような記憶障害は、確かに通常の線維筋痛症とは一線を画するほどの深刻なものだと思いました。

子供の体の慢性的な痛み「若年性線維筋痛症(JFM)」とは? 原因と治療法
子どもの慢性痛、若年性線維筋痛症とはどんな病気なのでしょうか。どんな治療法が可能でしょうか。東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センターの宮前 多佳子先生による「小児の線維筋痛症」

線維筋痛症の専門医である戸田克広先生は、先日、個人レベルではワクチンとの因果関係を明らかにすることは不可能だとしつつも、次のようなツイートを投稿されていました。

またブログにも、メールでのアンケートに基づく調査結果に関する記事を載せておられました。

子宮頸癌ワクチン接種後症候群 : 腰痛、肩こりから慢性広範痛症、線維筋痛症へ           ー中枢性過敏症候群ー  戸田克広 はてなブックマーク - 子宮頸癌ワクチン接種後症候群 : 腰痛、肩こりから慢性広範痛症、線維筋痛症へ           ー中枢性過敏症候群ー  戸田克広

まとめとして、慢性神経障害性疼痛、疲労、および自律神経機能不全の無力にする症候群はHPVワクチン接種後に生じるのかもしれない.

統計の調査と厚労省の反応

子宮頸がんワクチンをめぐるこれまでの経緯については、【子宮頸がんワクチン】救済と研究進め、再開判断 接種呼び掛け中止継続 : 47トピックス - 47NEWS(よんななニュース) はてなブックマーク - 【子宮頸がんワクチン】救済と研究進め、再開判断 接種呼び掛け中止継続 : 47トピックス - 47NEWS(よんななニュース)に書かれていました。

2009年10月16日 厚生労働省が子宮頸がんワクチンを初承認
10月22日 ワクチンの国内販売開始
10年11月26日 接種の公費助成を開始
13年4月1日 予防接種法に基づく定期接種に
6月14日 厚労省の専門部会が接種の推奨中止を決定
14年1月20日 専門部会が副作用は「心身の反応」との見解
8月29日 田村憲久厚労相(当時)が副作用報告の追跡調査実施を表明
15年3月12日 副作用の診療や相談が受けられる医療機関を全国で70ヶ所整備したと厚労省が発表
9月17日 186人が未回復との追跡調査結果を発表
18日 定期接種後の副作用について初の救済決定

別のニュースによると、2009年12月から14年11月までに接種を受けた約338万人のうち、副反応が出たと報告された2584人の症状について、医師が調査票に記入するアンケートで186人(10.7%)は症状が回復していなかったそうです。

子宮頸がんワクチン:副作用 1割が健康被害回復せず - 毎日新聞 はてなブックマーク - 子宮頸がんワクチン:副作用 1割が健康被害回復せず - 毎日新聞

186人は頭痛や筋力低下、失神、意識レベルの低下などさまざまな症状を訴え、87人が入院し、135人が通学や通勤に支障があるとのこと。

しかし、こうした調査に対し、若年性線維筋痛症なども診ている横田俊平先生は

我々だけでも200人以上診ており、調査は患者を見つけきれていない

と述べているそうです。

これに対し、今回の記事でも書かれていたように、厚生労働省の専門家検討会は2015年9月17日、これらの症状は「心身の反応」であるという従来の見解を変更しないことを決めたそうです。

中には、子宮頸がんワクチンの副反応は、昔からある偽発作にすぎないとして、疾患概念を否定している医師も多くいます。

しかし、厚労省の審査会は18日、救済を申請していた7人のうち6人について、痛みや筋力低下、学習障害などの症状に関し、接種との関係が否定できないと判断し、医療費の支給を決めました。

子宮頸がんワクチン、6人に医療費=被害の訴え、初の救済—厚労省 - WSJ はてなブックマーク - 子宮頸がんワクチン、6人に医療費=被害の訴え、初の救済—厚労省 - WSJ

深山さんの経験談の中に、

市内の病院での診断は「異常なし」。医師から「演技でしょ」「精神的なもの」と突き放され、泣きながら家に帰った。

とありましたが、そのような状況が一日も早く改善して、メカニズムの解明や治療法の開発が進むよう望みます。

追記:その後の進展

その後、厚生労働省研究班の報告によると、記憶障害や学習障害など脳の働きに関する症状を訴えた患者の7~8割は特定の白血球の型を持っていることが分かり、ワクチン接種による免疫反応が脳の症状に関与している可能性があるとのこと。

東京新聞:脳の症状、免疫関与か 子宮頸がんワクチン研究班:社会(TOKYO Web) はてなブックマーク - 東京新聞:脳の症状、免疫関与か 子宮頸がんワクチン研究班:社会(TOKYO Web)

 また横田先生など一部の専門医がワクチン原因説を固守する一方で、大半の医師はワクチンとの因果関係はないとする立場に移行しつつあるようです。

子宮頸がんワクチン論争 はっきり示された専門家の総意 小児科学会が投じた決着への一石 - 村中璃子 はてなブックマーク - 子宮頸がんワクチン論争 はっきり示された専門家の総意 小児科学会が投じた決着への一石 - 村中璃子

2016/5/23には、内科医の岩田健太郎さんによる以下のような総括記事が掲載されていました。

「子宮頸がん」ワクチンを総括する (1/6) はてなブックマーク - 「子宮頸がん」ワクチンを総括する (1/6)

 全6ページからになり、国内外のさまざまな研究データに言及した非常に詳細な記事で、なおかつ、それぞれの主張に理解を示した論議が展開されています。

またこちらの論文では、研究班の池田秀一先生が、より現場に近い位置から問題を総括しています。

子宮頸がんワクチン関連の神経症候とその病態 はてなブックマーク - _pdf

ワクチン接種再開について、それぞれの方ごとに意見をお持ちであり、原因となるメカニズムがわからない以上、どちらが将来的に正しい選択肢なのか、このブログとしては判断することはできません。

大勢としてはワクチン原因説は否定されていますが、脳脊髄液減少症のように医学会で村八分にされた理論が実は正しかったというケースはこれまでも少なからずあります。

一方で、確証バイアスにより、本来因果関係がないものを結びつけてしまった先例も事欠きません。たとえば胃潰瘍の原因は長らく心因性とされていましたが実はピロリ菌でした。

同時に、上の岩田健太郎さんの論考でも書かれているように、接種することで本当に大きな副作用がしばしば見られるのだとしても、逆に接種しないことでガンにかかって亡くなってしまう人もいるかもしれないという側面がこの問題にはつきまといます。

はっきり言えるのは、症状の存在自体は現実のものであり、医師は何が原因であると主張するにしても、しっかり自分で患者を診て、その苦しみに真摯に向き合い、治療に携わってからそうするべきだと感じます。患者の臨床を度外視した論議は机上の空論に過ぎません。

今のところは、様々なデータが開示され、それらを公平に国民が参照できるようにした上で、さまざまなリスクのある医療措置と同様、個人個人が接種の是非を判断するしかないかもしれません。

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